なんだかんだで、都会にある学校『中央都高校』にやって来た私達。1-Aの生徒として、これから3年間を過ごすことになる。自己紹介を終え、クラスの皆とも少し打ち解けてきた。そんな中、私たちは校長先生に呼び出された。いったい何の用なんだろう?
「皆さん、入学おめでとうございます。知っているとは思いますが私がこの学校の校長です」
空き教室で私たちを待っていたのは、背が高くて丸眼鏡をかけた、いかにも優しそうな女性。星野山学園で何度か会ったことがある。確か名前は、遊佐 愉香さん。いつもニコニコしていて、とても優しい人だ。ちょっと怪しい雰囲気を感じるときもあるけど、基本的にはいい人だと思う。
「さて、本題に入りましょう。実は、あなたたちにやってもらいたいことがありましてね……」
急に真剣な表情になる愉香先生。何をやって欲しいのかな?
「簡単なことです。クラスのみんなが無事に2年生になれるように、サポートしてあげて欲しいんです」
クラスのみんなを2年生に進級するために、私たちがサポートをする? ……どういうこと?
「もちろんタダとは言いません。報酬は用意してありますよ。例えば、そうですね……星野山学園の再始動とかね。どうですか?」
復興!? そんなことが本当にできるの……?
「来年入ってくる1ーAのクラス全員を、無事進級させること。あなた達がそれを成し遂げたら私の力で星野山学園を再開させてあげます」
星野山学園の再開。……願ってもないチャンスだ。でも、どうしてこんなことをしてくれるんだろう。私には、その理由がよくわからなかった。
けれど、ひとつだけはっきりしていることがあった。それは、私はこのお願いを受け入れるということ。愉香先生が本当に星野山学園を再開させてくれるかどうかは分からない。でも、もしそれが叶うのなら迷うことなんて何も無い。星野山学園を、守りたい。
それに、無事に進級できないなんてあってはいけない事。もしクラスの友達になにかあったら、先生に言われるまでもなく助けないと。
「分かりました。引き受けます」
私の答えに、愉香先生はとても満足したようだった。
「ありがとうございます。上手くいけば来年から、また同じ学校で過ごせるかもしれませんよ。では、頑張ってください」
そう言って、愉香先生は教室から出て行った。……本当に、星野山学園を再開させてくれるのだろうか。私達4人は、お互いの顔を見合わせる。
今日の授業を終えた私たちは、それぞれ寮に案内され、荷物を整理していた。部屋割りは基本的に、男子と女子で分けられている。どうやら、今年から女子寮が出来たらしい。二人の相部屋で、二人一組の部屋になっているみたいだ。
「一緒の部屋だね、ののか。頼んでみた甲斐があったよ」
嬉しそうにしているのは、私と同じ部屋に割り振られた葵ちゃん。星野山学園からやって来た私達4人の内の一人で、私の友達。ふわふわしていて可愛らしい、青髪が特徴的な女の子。性格も優しくて穏やかだから、一緒にいるだけで癒される気がする。
彼女は遊ぶことが大好きで、カードゲームや手遊びなどの色んなことをみんなと一緒にやっている。特に好きなのはトランプゲームらしく、よく私にも教えてくれるんだよね。
「……それにしても、さっきの話」
葵ちゃんが、何かを思い出したかのように呟いた。……校長先生の、あの話のことだろう。突拍子もない内容だったけど、正直驚いた。まさか、あんなことを任されるとは思ってなかったし……。やっぱり葵ちゃんも疑問に思っているみたい。
「あれって、どういう意味なのかな?」
「うん……。なんか、おかしいよね」
そう、今は明らかにおかしな状況。そもそもの話、この中央都高校はエリート校として名高い。そして、そのことは私もよく知っている。そんな学校なのに、どうしてわざわざ私たちみたいな普通の生徒を呼び寄せて同級生の進学をサポートさせようとしているんだろう? しかも、報酬付き。普通じゃありえないこと。
「……でも、楽しそうだよね」
突然、ポツリと呟いた葵ちゃん。
「私とののか。そしてみんなで協力して、クラス全員が2年生になれるようにするんだよ! なんだか、青春っぽくない?」
彼女は目を輝かせながら、そんなことを言う。確かに、言われてみると面白そうな気もしてきた。こういう経験、今までしたことないもん。ちょっと楽しみかも。私は自分のベッドに寝転がりながら、そんなことを考える。
「確かに、青春っぽいかも……。でも、具体的に何をすればいいのかな? 」
「う~ん……」
私たちが考え込んでいると、ドアがノックされた。コンコンッ、誰かが来たようだ。
「やほー☆ お邪魔しま~す!」
「どうぞ……」
入って来たのは金髪ツインテの女の子だった。
「ちょっと、のの。何その面接官みたいな対応」
「ごめん、ちょっと考え事してて」
この子は黄菜ちゃん。星野山学園からやって来た私達4人の内の一人で、私の友達。いつも元気いっぱいな明るい子だ。私たちの中では唯一お洒落に敏感で、昔から中央で流行しているファッションをチェックしたり、雑誌を買って読んだりしていた。
「考え事?」
「そうそう、これからどうしようかなって考えてたの」
「あーね。ま、積極的にみんなのお話聞いてけばいいんじゃね?」
そう言うと、黄菜ちゃんは近くの椅子に座って足を組んだ。……相変わらず、マイペースだ。
「そうそう、今文月が色々調べてるよ。この学校の事とか校長の事とか。もしかしたらいい作戦が思いつくかもしれないね」
「そっか、文ちゃんが……」
黄菜ちゃんが文ちゃんの事について話す。
文ちゃんも、星野山学園からやって来た私達4人の内の一人で私の友達。大人しくて真面目な性格の子だけど、知識に対する欲が強くいつでも何かを調べている。今も寮内のパソコンを使って、色々と情報収集をしているようだ。
文ちゃんについて考えていると、何かを思い出したかのように黄菜ちゃんが口を開いた。そして、衝撃的なことを口にする。
「あ、そうそう。文月によると、あたしのクラスに不登校児がいるみたい」
「えっ、そうなの!?」
不登校児。それは、何らかの理由で学校に来れない子の事。いじめられてたり、勉強が難しいから行きたくないと思ったり。理由は様々だ。……だけど、言えることがある。それは、学校に来れなくなるほど悩んでいるなら助けてあげないといけないということ。不登校児の一人や二人くらい、なんとかできるはず。
「不登校児は全部で4人。どうにかしないとね~」
「……えっ、4人!?」
何気なく放たれた黄菜ちゃんの言葉に、思わず声を出してしまう。不登校児が4人。私たちの狭いクラスの中で、そんなにも沢山の子が苦しんでるなんて……。これは、大変なことになりそう。