不完全少女の生き方   作:出島二人

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「この初投稿……この初投稿だ!」






ACT3
13話 宣告


 

 

 

 

「ああ、貴方でしたか」

 

 彼女の主治医とは長い付き合いだ。あの日からずっと。

 

「変わりませんか」

 

「ええ、現状維持しか……申し訳ありません」

 

 サイカはもう二年は眠り続けている。何も言わないし、動きもしない。実はもう彼女の魂は何処かへ行ってしまっていて、ここに残ってるのは単なる死体だけなんじゃないか、なんて嫌な考えが浮かぶ。生きていると信じないともう立ってもいられないくせに。

 

「黒服……」

 

 アレとも二年前に出会った。大金を渡す代わりに、彼女を甦らせるという『取引』を提示してきた。それから何度も連絡を。信用はできない、だがもし本当なら。そう思ってこの二年、ずっと傭兵業に精を出していた。つい先日の仕事の報酬さえ振り込まれれば、あと少しで。

 

「今なにか……」

 

「あ、いえ、すみません」

 

「……とにかく、信じて待ちましょう、きっと大丈夫ですから」

 

 何度目の言葉だろう。励ましてくれているのは嬉しいけれど。私にはもう空虚な音にしか聞こえない。同じ事ばかり言いやがるヤブ医者が。

 

 

◇◇◇

 

 

 バス停。あと30分程待たなければならない、退屈な時間だ。少しばかり寝ようかとも思ったが。

 

「どうも、時崎タキさん」

 

 ここに居座るこの黒服さえいなければ、今頃仮眠を取れていただろうに。

 

「なに?催促?」

 

「クックックッ……そう邪険にしないでください、そのようなつもりはありません」

 

「じゃあ……」

 

「先日の依頼の件で、少しお話ししたい事が」

 

 先日の……CL社(クルース・ラチェルタ)か。何故知っているんだコイツは。距離を空けて座席に座る。

 

「あの依頼は貴方に届く前に既に把握されていました」

 

「って事はわざと盗ませた……というより、わざと私を侵入させたって事?」

 

「ええ、目的は実戦データの収集……あのトカゲを模倣した無人機、社内でL.I.D.(リザード・イミテーション・ドローン)と呼ばれているものです」

 

 言われてみれば、トカゲ……つまり黒服の言うL.I.D.(リザードなんちゃら)と接敵してから警備員の動きが緩慢だった気がする。本来であれば気絶している間に囲まれていてもおかしくない。

 

「……まだ未完成っぽかったけど」

 

「どうもAIがまだまだ未熟なようでして、異常行動を繰り返すと社でも問題視されていますね」

 

 確かに、あんな高さからわざと落下するなんてかなりイカれた動きだ。あの時、アイツにはどれだけの殺意があったのやら。

 

「危うく一緒に死ぬところだった」

 

 40m近くの高さから落下して、挙句押し潰されかけ、そこから逃れたらナイフが腹に刺さった。正直、死んでないのが不思議だ。そんな事を言うと黒服は私の方を向き、

 

「ええ、まさしく。貴方は死んでいました」

 

 そんな事を口にした。何を言っているのか理解できず、固まってしまう。それを知ってか知らずか、黒服は続ける。

 

「なので厳密に表現するならば、一度死んで蘇った。でしょうか」

 

「そんな事がある訳が……」

 

「承知していただきたいのですが、今、私は事実のみを述べています。起こった事象のみを」

 

 否定しようとした私の反論を潰すように畳み掛けられ、再び固まる私。そんなはずはない。ここでこうして息をしているんだ。

 

「この状態は大変興味深い。果たして貴方は()()()()なのか?あるいは時崎タキの体を動かす()()なのか?」

 

 哲学的な問いを投げられ、ぐらぐらと揺れる意識。思考が全くまとまらない。

 

「いえ、今はよしましょう、こちらを」

 

 黒服の手に何かが乗っている。差し出されたそれを受け取り、何故か必死になって確かめる。箱だ。黒い、何か白くヒビの入った酷く既視感のあるデザインの。中を開けて見てみると、何かのアンプルがズラッと並んでいた。

 

「これは……?」

 

「いずれ必要になるものです」

 

「必要に?これが?」

 

「体に異変が発生した際、付属の注射器で注射してください、再び死にたくないのであれば、ですが」

 

 黒服は再び笑いを漏らす。そんなに面白いのか。不快な奴め。

 

「……こうなってる原因は何?」

 

「L.I.D.の運用に際し、組み込まれたナノマシン……それが貴方の体内に混入した」

 

 いつ、なんて考えるまでもない。ナイフか。

 

「本来人間向けじゃない物が人体に入ったから、って訳?」

 

「ええ、有り体に言ってしまえばバグです」

 

 思わず手で顔を覆い、ため息を漏らしてしまう。

 

「傷の治癒や蘇生が為されたのはナノマシンのおかげ……その代わりに死ぬかも知れないリスク……あとは何?もしかしてとは思うけど、注射にもなんかある?」

 

「ご明察ですね」

 

 黒服は面白くてたまらないといった様子で言う。

 

「その薬は劇薬でしてね」

 

「……結論を言って」

 

「行き着く先は廃人、でしょうか」

 

「……じゃあ、すぐ死ぬか、あとで死ぬかの差でしかないって事?」

 

「ええ、その通りです」

 

 こんなに人を殴りたくてたまらなくなったのはきっと生まれて初めての事だ。

 

「……ですが、貴方に選択の余地はありませんね」

 

「分かってる……分かってるよ……」

 

 こめかみを親指と中指で挟むようにして頭痛を堪える。そうだ。余地なんて残ってやしない。

 

「5000万、だよね」

 

「ええ、必要ですので」

 

 ふざけた話だ。私はあの時と同じくそう思った。

 

 

 






平熱が低いせいで37度出るとそれだけでダウンするくせに毎日昼から必ず発熱してる自律神経崩壊っぷりが酷い。
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