不完全少女の生き方   作:出島二人

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初投稿?あー……





15話 依頼

 

 

 

「とりあえず結論から話そう」

「その発作を放置してたらまず死ぬだろうね」

 

 分かっていた事ではあるが、噂に聞くヴェリタスの人から言われると心に来る。

 

「そしてこの薬……これが発作を抑えるのに効くのは確かだけど……」

 

 各務チヒロさんと言ったか、副部長らしい。部長は何処にいるのやらと、現実逃避へと意識が向きかける。

 

「分解の速度を凌駕するまで再生力を高める……例えるならオーバーヒートを起こした機器を冷ます為に氷の山に突っ込むような、そういう無茶を通すための物だと思って欲しい、長期的に見れば単なる毒だよ、これは」

 

「ナノマシン自体を取り除くってのは……」

 

 半ば分かってはいるが、一応聞いておく。

 

「難しい、と言わざるを得ないかな。なんてったって自己増殖機能まで付いてる……透析じゃ無理、それこそ血を一気に丸ごと入れ替えるとかそれくらいしないと……」

 

 予想していたよりもっと酷かった。思わず顔を顰めて黙り込む。

 

「……ごめんね、力になれそうにないよ」

 

 謝られても困る。一番困るのは返答にだが。

 

 

◇◇◇

 

 

「で、この注射、何?」

 

 サチコに詰められ、また返答に困る。

 

「……自作」

 

「んな訳……」

 

 ダメか、まあダメだろう。薬学なんて齧ってもいない。というかそもそも学校にすら行ってない……あとこの話題をやめたい。

 

「死ぬかも知れないっていうのにずっとつまんなそうな顔しちゃってさ……本当に分かってる?死ぬんだよ?あんなに苦しんで……」

 

 サチコは泣きそうになったのか、顔をくしゃっと歪めて私を睨みつける。

 

「分かってる」

 

 すぐに死ぬか、もう少し後で死ぬかだ。気にしていた所で、何が変わるというのか。

 

「だったらもう少し……もう少しくらいさ……」

 

「何?怖がって欲しい?みっともなく泣き叫んで欲しいの?」

 

「……」

 

 サチコの沈黙と共に私も黙り込む。喧嘩がしたい訳ではないのだが。耐え切れなくなったのか、サチコが再び口を開く。

 

「……アタシ、アンタの事よく分かんなくなっちゃったよ」

 

 私もそう思う、という言葉は口から出る事なく、喉元に引っかかり続けた。私は今どう思っているんだっけ?

 

 

◇◇◇

 

 

 どのような時であれ、仕事というものは舞い込んで来る。傭兵である以上、贅沢は言えない。

 今回の依頼はグルービーファミリーというとあるスケバン集団からのもので、敵対勢力……名をベレスというらしいが、そいつらの部隊がシマの近くでウロチョロしているとか。おそらく存在するであろう仮拠点を突き止めてあわよくば排除して欲しいとの事。普通自分らでやる案件だろうに、何やら上の連中が手出しはするなと強く言ってきており、折衷案として私に白羽の矢が立った、という事らしい……無茶振りと体の良い捨て駒扱いはいつもの事だ。全員無力化したら後は自分達で処理するという。幾分かマシに感じるのは色々毒されているかも知れない。

 サチコの協力で拠点自体はすぐに見つかった。グルービーファミリーの縄張りの近くにあった廃ビルだ。問題は……

 

「なーんで君もここにいる訳?」

 

「アンタが心配だからに決まってるじゃん」

 

 サチコが珍しく前線に出てきた事だろう。しかもやる気満々で。

 

「……張り合い無くなるからあんまり来て欲しくないんだよね」

 

「いつ発作が起きるか分からないのに楽しもうとするなバカ!」

 

 それもそうではあるが、仕事のモチベーションが落ちるのは良くない。

 

「とりあえず、ここから狙撃するから」

 

 有無を言わさぬ調子でサチコは愛銃、『ATD』を持つ。立体駐車場が近くにあったのは好都合だった。

 

「ドローンは展開する?」

 

「もちろん、このタグ着けといてね」

 

 サチコから投げ渡されたタグを腕に括り付ける。識別用だ。

 

「射線上に入らないでね、まあ調整はするけど」

 

「了解……」

 

 依頼主から『素敵な衣装』と称して送られてきたキリンのマスクを被る。上着は今回は白を表にした。

 

「じゃ、行こっか……」

 

 お仕事開始。

 

 

◇◇◇

 

 

「あ?誰だテメェ?」

 

 正面入り口から入った所で見張りに遭遇する。

 

「デリバリーを頼まれた方がいらっしゃるはずですが……」

 

「そんな服装とマスクした配達員なんざいるか!」

 

 その言葉と同時に発砲……する前に。

 

「人を見た目で判断するのは良くない」

 

 懐に潜り込み、鳩尾に全霊の拳を打ち込んだ。

 

「む、ぐ……」

 

 崩れ落ちる見張りの胸倉を掴み、目の前の扉へと引きずっていく。

 

「オイなんだ!?」

 

 一階の大部屋にはパイプ椅子だのに座った六名。見張りの叫びを聞いてこちらに視線を向けていた一人の困惑が全員に波及していく。

 

「敵しゅ……」

 

 口を開いた一人へ向けて見張りの体を投擲する。振り抜いた腕の勢いのまま、投げナイフを三本取り出し、銃を構えようとした三人へ向けて投げつける。顔面へと強くぶつかったナイフが床に落ちる前に、サチコの狙撃が残った二人の頭を撃ち、無力化する。

 もちろんそれだけでは終わらない。よろめく三人の内で余裕のありそうな一人へと飛びかかる。

 

「っのヤロ……!」

 

 反撃を狙いアサルトライフルのストックで殴りかかる腕を止め、銃本体を掴んで体を一回転させるように投げ飛ばす。銃を手放してしまった事で肩から着地し、仰向けになった彼女の頭へ踵落とし。ぐぎぇ、という断末魔を確認した後、復帰した二人目へ今度は銃を突きつける。

 

「動くな、なーんて……」

 

 カタカタと震える手を無視し、振り回しながら引き金を引いてあちこちへ乱射する。あまりの事に飛び退いた三人目に弾丸が何度か直撃した後、サチコの狙撃がその意識を刈り取っていたが、二人目はまだ健在だ。近くにいるのに当たらないとは……

 

「あ、弾切れ」

 

 好機と見た二人目がサイドアームの拳銃を取り出し、引き金を引く。良い速度と判断だが、私の方が速い。銃をかざし、発射された弾を防ぐ。まあどうせ私の物じゃないし。一瞬で使いものにならなくなったそれの銃身を持ち、まるでゴルフのようなフルスイングで彼女の顎に叩きつけた。

 完全に意識を失い、受け身も取らず地面に倒れ伏した彼女の体を検め、鍵の類を探す……後ろで、誰かが倒れる音がした。見張りを投げつけてやった子だ。

 

「その子に聞きたい事あったのに」

 

〈え、マジで?ごめん〉

 

 過ぎた事は仕方ない。しかも鍵は見つからなかったが、気にしないでおこう。きっと大丈夫。多分。

 

 






死は誰にでも訪れる普遍かつ不変の概念ですが、本人にとって悲劇かどうかは分かりません。とりあえず、時崎タキにとっては自分の死は悲劇ではありません。
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