不完全少女の生き方   作:出島二人

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他人に初投稿と言うのは好きか?





16話 混乱

 

 

「うわぁっ!」

 

 扉前にいたスケバンが私の蹴りで鍵のかかった扉を強引に開け放ちながら吹っ飛ぶ。倒れ込んだ彼女の頭を掴み地面に何度も叩きつけ、意識を奪う。

 

「オイなんなんだよ!」

 

 倒れた彼女の手にあったバットを掴み取り、慌てるもう一人のスケバンに投げつける。顔面に直撃し、尻餅をついて壁にもたれかかった彼女の顔を蹴って壁と足の裏で挟み込み、気絶させる。

 

「はぁ……」

 

 ため息一つ。投げつけたバットを拾い、更に先へと進む。幸い敵の位置がバラけていたおかげか、戦闘音はろくに聞こえていないようだ。防音なのだろうか、それとも耳が悪い奴らの集まりなのか。

 

〈左の扉の先に二人、おびき寄せられる?〉

 

 口を動かして答えるよりも先にバットで扉を強かに打つ。どちらも木製だが、作りは丈夫だ。問題なく大きな音が鳴り響き、足音が近づいてくる。

 

「なんだ?」

 

 間抜けにも顔を出した一人目の顔面にフルスイング。驚いて顔を出した二人目の顔面もフルスイング。部屋に入って床で悶える一人目の頭を踏みつける。

 

「ぶぐっ」

 

 あんまり間抜けな様と声に思わず鼻を鳴らす。ついでに二人目も踏み躙り、両方横へと蹴飛ばす。

 

〈聞こえたよ笑ったの〉

 

 おっと。

 

〈そのフロアは片付いた、次へ行って〉

 

 

◇◇◇

 

 

 この階は廊下に多くの扉……ホテルのような構造になっている。とても面倒くさい。だがこれで最後だ。ここが終われば残す所は無い。屋上に人がいない事はサチコが確認済みだ。

 

〈最後、四名、少ないけどこれは……一人強そうなのがいる、気をつけて〉

 

 サチコの受け取っている情報は建物の周囲に展開しているドローンからもたらされる物だ。今は電磁波の反響を使って、室内の人間や機械の動きを把握しているのだとか。これにより彼女は戦場を俯瞰する。狙撃が出来ない位置に私がいる以上、オペレーター役に徹してもらう方が良い。

 

〈あ、そこのすぐ左の扉に一人〉

 

 言われた通り、左にある木製の扉を開く。中で誰かが無感情にテレビの画面を見つめていた。すぐに後ろに回り液晶に向けて頭を蹴り、突っ込ませる。ドーナツ状の座布団を被った猫のような姿になったそいつを置いて部屋を出た……ところでまた一人に遭遇する。

 

「だ」

 

 口を開いた瞬間、その口にバットを突っ込み、更に掌底で押し込んでやると、痛みと直接脳を揺らされる感覚で参ったのかすぐに倒れ込んだ。バットは口に突っ込んだまま置いておき、先へ進む。

 

〈動いた、強そうなのじゃない……普通な方!〉

 

 迂遠な言い回しだ、他に表現方法は無かったのだろうか。確かに足音が聞こえる。さて、武器は何かあったかな。辺りを見回す。

 

「なんだドタバタしやがって……ぇあ?」

 

 私は近づいてきた普通な方へ向けて引っぺがした扉を思い切り投げつける。手裏剣でも投げつけるかのような気軽さと軌道で飛んでいったそれが相手へと直撃し、押し倒すのを確認した後、転んだ普通な奴の顔面に全力の踵落としを叩き込む。

 

「ふべっ」

 

 動かなくなったそれをぐりぐりと踏み躙り、気絶しているのを確認し、横へ蹴り飛ばす。これで三人。残ったのは……

 

〈来た、強そうな方〉

 

〈ああ、なるほどね〉

 

 目の前に現れたのは完全な丸腰の相手。ここキヴォトスにおいて銃を持たず、徒手空拳で戦闘態勢に入る人間が私以外にいるとは。まあ私はナイフくらいは持っているけども。

 

「全員打ちのめして来たのか、凄まじいな」

 

 吟味するような視線に肩をすくめる。答える義理も無い。

 

「傭兵か?……まあ、どうあれここに来た事を後悔する時間だ」

 

 そう言うと彼女は両の拳を顔の前に持っていき、身構えた。

 

 

◇◇◇

 

 

 初めに仕掛けたのは私の方。姿勢を低くし、下からの掌底で顎を狙う。それを読んで相手が上を向きつつ回避したのを見て手首を回して胸倉を掴み、壁に叩きつけようと力を込めた。

 

「!」

 

 足に痛みが走る。向こう脛を強く蹴られた事で動きが固まったのを相手は見逃さない。逆に掴まれ、更には持ち上げられる。

 

「キツツキみたいにしてやるよ」

 

 そう言うと彼女は壁へ向けて私をまるで突き刺すように頭から叩きつけた。目の前に火花が散ったような錯覚に怯み、マスクの下で小さく声を漏らす。

 

「そぉれっ!」

 

 二度目。マスクのせいでよく見えないが壁の方からピシピシという音が聞こえる。まさか。

 

「オラァ!」

 

 嫌な予想が的中した。三度目にして壁が壊れ、隣の部屋に投げ込まれる。視界がぐわんぐわんと揺れるが、暴力的な酩酊に浸る暇は無い。無理矢理立ち上がろうとするが、今度は後ろから肩を掴まれる。また嫌な予感がする。

 

「まだ終わってないぞ?」

 

 振り解こうとするが、自力で立ち上がる事も出来ない状態ではそれもままならない。無理矢理立たされ、外側の壁に顔を押し付けられる。

 

「この程度で下の連中を倒せるとはな、ウチもレベルが落ちたか?」

 

 頭蓋骨からミシミシと音が鳴り、視界が暗く染まっていく。だが意識は失えない。常に圧迫されているから。

 

「があああああ……!!」

 

「良い鳴き声だキリン女、そらもっと強くしてやる」

 

 その言葉通り圧迫感が強まる。絞り出されるような苦悶の声が勝手に喉から発される。破れかぶれに腕を振り、必死にもがくが上手く届かない。

 

〈タキ!壁!壁壊して!〉

 

 サチコの悲鳴じみた叫び声がイヤホンから聞こえる。簡単には壊れそうにないが……今ならやれるかも知れない。

 

「ぐうううううう……!」

 

 壁に手を突き、押しつけてくる力に抵抗する。

 

「オイオイ何を……」

 

 相手が困惑と共に更に力を込めるタイミングに合わせ、壁に頭を再度……今度は自分から全力をもって叩きつける。

 

「うああああああ!!!!」

 

 四度目、渾身の頭突きと後ろの女の力が合わさり、容易く強固なコンクリート製の壁は砕け散った。目の前には青空、そして──

 

「な……」

 

 サチコのドローン。

 

〈喰らえこんにゃろ!〉

 

 サチコの放った弾丸が、女の眉間に直撃し、昏倒させる。壊れた壁と共に落下しそうになったが、ドローンに押されて部屋の中へ倒れ込んだ。

 しかし、立体駐車場は丁度反対側に存在する。どうやってサチコは狙撃を成功させたのか?脳震盪から回復した頭で少し考え、一つの答えに思い至った。

 

「ドローンで跳弾?」

 

〈そうだよ、ぶっつけ本番だけど上手くいって良かった〉

 

 とんでもない芸当だ。銃が使えた時分でも私には無理だろう。一息ついて立ち上がり、服の埃を払う。マスクもボロボロだ。

 

〈大丈夫?〉

 

「うん、問題……」

 

 言葉の途中、全身に強い痛みが走る。血液が煮えているような感覚。発作だ。

 

「……発生、3分待って」

 

 注射器を取り出し、首に突き刺す。薬液が血管を巡り、全身の熱と痛みが収まっていく代わりに強い頭痛が走る。

 

〈タキ、こっちも問題発生〉

 

「ゴホッ……何?」

 

〈下を見て〉

 

 頭を振って痛みを誤魔化しながら、崩れた壁から下を見やる。

 

「うわっ……マジで……?」

 

 目に飛び込んできたその景色に思わず顔を顰める。

 

『ヴァルキューレ公安局だ!この建物は包囲されている!抵抗せず出てこい!』

 

 

 






俯瞰は良いですね。
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