不完全少女の生き方   作:出島二人

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は……初投稿ということか……そう簡単には書けないか……





24話 忘れられない

 

 

 いつもふとした瞬間に思い出す、彼女との出会い。何か劇的な事があった訳じゃないけれど、それでも忘れられない、大事な思い出。

 やはりというか、案の定、私達を繋いだのは映画だった。なんてことのない、新作映画を観た後のこと。期待していたものと違っていて、残念に思っていた時のこと。映画館の売店に、さっきまで観ていた映画のグッズを抱えて、それはそれは嬉しそうにレジに並ぶ女の子を見かけた。同年代だろう彼女に、思わず声をかけた、かけてしまった。

 

「さっきの映画、そんなに面白かった?」

 

 自分でも思う。まともな人間の声のかけ方では無い。と、いうか、明らかに怪訝そうな声のトーンで、純粋に楽しんだであろう子に、こんな言葉を投げかけるのは人としてどうかという話だろう。私は今よりよっぽどおかしな子供だった。ただ──

 

「え、いや、全然……」

 

 ──彼女も彼女で、何処か、あからさまにまともでは無かった。

 

 

◇◇◇

 

 

 何故、面白くもない映画のグッズを買おうとしていたのか、にはとりあえず触れず、お互い空腹だったので、適当なファストフードを頼んだ。ハンバーガーだったと思う。

 席を取っていた彼女が注文した物を手渡し、自分の分を持って対面に座った。

 

「……なんか、俳優の人、やけに棒読みじゃなかった?」

 

 座って早々、彼女がそんな事を口走った。

 

「それは、確かに……」

 

 実際、演技力は本当に酷かった。顔が良くてもアレではスクリーンの中の世界に入り込めない、大きなマイナスポイントだ。

 

「あと、BGM。あの雑なオーケストラ……耳障りだったね、あと──」

 

 その後も出るわ出るわ文句の嵐、あまり良い印象が無かった私でさえ眉を顰めるような批判……というよりは罵り。

 だからこそ、余計に気になった。何故そんなに気に入らない映画のよく分からないグッズを買おうとしていたのか。

 

「それは────」

 

 

◆◆◆

 

 

 胸元で何かが弾ける感覚、直後、喉と肺に拡がる灼熱、猛るそれを思うまま吐き散らすと、良く見れば濁った水で、私は当惑した。

 

「よし、蘇生完了」

 

 ヘリのローター音で掻き消され気味の、無感動な声を認識する、が、状況が分からない。ヘリ機内である事はおそらく間違いないが、さっきまでの記憶が曖昧だ。何度か水を吐きながら、状況の把握に努める。

 手錠、複数の傭兵?が私に向ける銃口、大きく離された私のナイフと拳銃……私の体に貼っ付けられたAED。濡れた髪と朧げな記憶から推察するに、私は溺死しかけていたらしい。それをわざわざ蘇生させたという事はつまり、私には生きていてもらわなければいけないという事だろう。

 

「長いこと低酸素状態が続いたから脳みそダメんなってるかも」

 

「まあ生け捕りとしか言われてないし」

 

 確か、10分で完全アウトだったか。素直に溺死していた方がマシな結末を迎える可能性もあった訳だが、どうせナノマシンが治したのだろう。生死の境を彷徨っていた割に頭が冴えている。黙って口の端から涎でも垂らしておこう。

 

「あー、ダメそう」

 

 その言葉を皮切りに、全員の視線が私から外れる。残念ながら快適な空の旅はここで終わりだ。すぐさま手錠を引き千切る。

 

「は?」

 

 振り返ろうとした勘のいい奴の後頭部に裏拳を──

 

「?」

 

 どさり、と、手応えが無いまま、相手が倒れた。少し逡巡するが、状況は待った無し、次々に殴りつけていく……が、やはり、返ってくるはずの手応えが無い。代わりにあるのは、静電気が起きたかのような感覚。試しに右手に集中し、まだ意識を保っている奴の頭に触れてみると、強い衝撃にバチン、と大きな音。手と頭が反発し合うかのように、お互いが弾かれる。

 

「……帯電してる?」

 

 体に起きる異変の一つだろうか?電流が頭を走った哀れな実験台は白目を剥いて失神している。有効活用出来るかも知れない。操縦席へ近寄る。

 

「ッ!」

 

 銃口をこちらへ向けようとしたパイロットの腕を掴み、電流を……出ない。充電切れか。仕方ないのでそのまま強めに握って腕をへし折る。

 

「ぎゃっ!?」

 

「今すぐUターンしてさっさと下ろしてくれる?」

 

 脂汗をダラダラと流しながらもパイロットは正確な手つきで私の言った通りに動いてくれた。このままタクシー代わりにでも使ってやろうかと思った矢先、警告音が鳴り響いた。

 

「何?この音」

 

「地対空ミサイルだよ!」

 

「フレアとかチャフとか無いの?」

 

「そんな贅沢なもん無い!」

 

 悲痛な叫びの直後、機体の後部に飛来したミサイルが着弾する。衝撃と爆音が全身に響く。

 

「ヤバい!高度がどんどん下がってる!」

 

「わざわざ言わなくても分かるよそれくらい」

 

 ヘリが回転しながら墜落していく。この高さではパラシュートの意味が無い。だがタイミングを見て跳ぶべきか?

 

「そういえばここ何処の自治区?」

 

「ゲヘナだよ!もう終わりだ!」

 

「ゲヘナかぁ……」

 

 とりあえずこの場の危機を脱しない事には話にもならない。銃とナイフを持ち、時間を鈍化させていく。

 歪んだ扉を無理矢理蹴り開け、外の様子を伺うと、思ったより地上が近かった。この高さからなら。

 

「じゃ、頑張って」

 

「はぁ!?」

 

 言い終わるよりも先に、回転速度の落ちたローターに向かって飛び出す。今なら余裕だ。そのまま羽を蹴り、反動で更に遠くへ跳ぶ。およそ100メートルほどジャンプし、ビルの外壁にへばりついた。市街地が近くだったのは幸いだった。

 

「……」

 

 墜落していくヘリを見やる。あの中にいないとバレればすぐに捜索が始まるだろう。その前に離れないと。起こりかけた発作へ注射で抵抗し、行動を再開した。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「標的ダウン……場所が悪いね」

 

 予定が狂った、と言うべきだろう。自治区の境目で落とすつもりだったが、空中で妙な動きをしてゲヘナ自治区に墜落するのは流石に想定外だ。

 

〈さ、作戦を続行しますか?このままだと、5億が……〉

 

〈ミサキ、どうする?〉

 

 私に指示を仰ぐ二人、こんな時に姉さん──サオリが居てくれたら少しは違っただろうか。

 

「作戦は……続行。ゲヘナならトリニティよりはマシだろうし、墜落地点で伸びてる時崎タキを捕まえれば……」

 

〈あの……その事なんですけど……〉

 

 遮るように発言したヒヨリの言葉に耳を傾ける。

 

〈多分脱出してます……ヘリからジャンプして……〉

 

「……とにかく、続行」

 

 やっぱり予定通りとは行かないようだ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 ゲヘナの治安の悪さはキヴォトスでも指折り、文字通りの危険地帯だ。治安維持機構であるゲヘナ風紀委員会の存在が無ければより悲惨な事になっているのだろうが……

 

「なんで賞金関係無く喧嘩吹っかけてくるかなぁ……」

 

 私が今掴んでいる頭は突然絡んできた不良のものだ。リーゼント……もといポンパドールの部分が非常に掴みやすい。引き千切ると悲鳴をあげて泣き出した。そこに痛覚があるとは思ってなかったので割と驚いた。そのまま路地裏のゴミ捨て場に投げ込んだ。

 そんなこんなで街中をなるべく目立たないように歩こうとした矢先、普通のゲヘナ生二人の会話が聞こえてきた。

 

「ん?あれ時崎タキじゃない?」

 

「捕まえたら5億だっけ?でも人違いかも」

 

 そんな会話の最中、突然の発砲。完全に直撃コースだったので体を捻ってなんとか避ける。

 

「人違いなら人違いで別に良いでしょ」

 

 考え方の治安が悪い、と言うべきか、とにかくこちらとしては迷惑極まりない。負けじと撃ち返す……べきではない。大きく跳躍し、ビルを登って逃げる。

 

「引き金が羽毛みたいに軽い場所だなホント……」

 

そうボヤきながら壁を蹴って更に跳躍しようとした所で足に衝撃。

 

「あ、ごめん」

 

 スローになっていく視界の中、足元、というより壁……正確には誰かの開けた窓。何故外開きなのかは知らないが、とにかくそれが私のバランスを崩した。何処で運を落としてきたのか、とにかくそれで終わり。

 

「うおわぁ!!」

 

 狙いが逸れ、とんでもない方向へ……具体的には市街の路地の方へ……思い切り飛び出した。今日ほど自分の身体能力を恨んだ日は無い。なんとか空中で体を捻り、上手い事着地する、が。

 

「あー、5億だ!」

 

 とんでもない数の視線がこちらを向いていた。仕方ないので周囲に両手で中指を立ててやる。

 

「5億だよ!来な!」

 

 自棄になって無理に叫ぶ。また無茶をやる羽目に陥った。





お久しぶりです。
多忙や精神の不調につき更新と執筆が滞り、ハーメルンすら開けない状況が続いていました。しかし立ち直ったとは言い難く、読まれる方が少ない、そして大して評価もされない拙作を更新する意義を、全く感じられない状態に陥っており、もしかしたらこの作品を削除するかも知れません。
数少ない読者の方には本当に申し訳なく思いますが、ある程度更新したらしばらく熟考した後、進退を決めさせていただきます。
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