不完全少女の生き方   作:出島二人

28 / 28


この初投稿は!この評価乞食は!この必死さは!……色褪せる事なんて無いだろうからな。





26話 次に

 

 

 

「うわぁん……酷い目に遭いましたぁ……」

 

 気絶から叩き起こしたヒヨリはいつもの調子で泣いている。首に結構な電気を流されて気絶していたのは可哀想に思えるが、まあこれは泣き顔補正というものか。

 

「とりあえずこの廃墟で休憩してようか、風紀委員の連中が居なくなるまで」

 

 奴らに気付かれる前に潜り込めたのは不幸中の幸いだった。指名手配はまだ続いている、捕まれば矯正局行きだ。私はともかくとして、アツコもヒヨリも捕まるなんて、あってはならない。私にはサオリに託された責任がある。

 

「……5億は流石に夢を見過ぎたかな?」

 

 自らの銃を点検しながらアツコが言う。実際、かなり怪しい話ではあったし、本当に捕まえられたとしてちゃんと支払われるかも分からない。

 

「5億が手に入ってれば今頃新品の雑誌も……」

 

 ヒヨリが涙を拭いながら肩を落とす。何処か遠い所に家でも買って、半生をゆっくりと過ごせる程の金の使い道が雑誌とは……ヒヨリらしい。

 

「流石にアレを捕まえるにはサオリが要る、私達だけじゃ厳しい」

 

 事実、真正面から挑むような真似さえせず、罠を仕掛け、不意打ちすれば、勝てない相手では無かっただろう。しかし今の私達にはそこまでの余裕は無い。

 

「じゃあ()()()ダメだった、って事で」

 

 虚しい事ばかりの世の中だが、諦める理由にはならない、アズサも言っていた事だ。次のチャンスもいつかはあるだろう。

 

()()()期待、ですね」

 

 ヒヨリが代弁してくれたので小さく頷く。希望のある言葉だ。かつての私達にはそんな考えなんか無かったのに。

 

 ……暖かい雰囲気の中、ヒヨリが何かに気付いて窓の外を見た。

 

「……あれ?なんですかねあの白い……の、は……」

 

 ヒヨリの顔がどんどん青ざめていく。ゲヘナでヒヨリが青ざめる白い何か、心当たりはある。まさか、来たのか、アレが。おそるおそる私も窓の外を覗いた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 お互いがお互いに対して感じているであろうこの感情、それは間違いなく『面倒』だ。いわゆる千日手を繰り返している。

 周囲の部下達の援護射撃はあまり期待出来ないし、このままだと弾が切れかねない。私と時崎タキの本気の速度に部下が追いつけていないのが大きな理由だ。

 

「ふっ!」

 

 再度なけなしの弾丸で狙い撃つが、やはり避けられるし弾かれる。身体能力と反射神経がズバ抜けて高いのだろうが、流石にあんなナイフ如きでライフルの弾を落とすとは信じ難い。

 

「ヒナ委員長でも捕まえるのは難しいんじゃないか……?」

 

「イオリ」

 

 その声に肩が跳ねる。噂をすればなんとやら、そういえば通信で現場に来ると言っていたような気もするが、追いかけるのに夢中で聞いていなかった。小学生か、それとも犬か、猪か……そんな自戒を見透かしているのか、特に怒る様子もなく。

 

「アレが5億の?」

 

「う、うん……」

 

「後は私に任せて」

 

 そう言うと、彼女は地面に亀裂を作りながら、とんでもない速度で時崎タキの方へかっ飛んでいった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 追撃が止んだ。チラ、と下を見る。誰もいない。大きく息を吐き、膝を突く。流石に疲れた。無駄に付き合う必要も無かったのに、わざわざ暴れ散らすなんて……存外、ストレスが溜まっていたのかも知れない。

 

「ははは……」

 

 苦笑いを漏らす。何処かで休憩したい。とりあえず前を向いて……目に飛び込んできた大きな白いモフモフ。

 

「……布団?」

 

「……」

 

 思わずそんな事を言ってしまったが、違う事は分かってる。空崎ヒナ、認めたくない現実だ。銃と呼ぶにはあまりにゴツいマシンガンの銃口がこちらを向く。

 

「時崎タキね」

 

「違います!」

 

 撃たれる前に横に飛び退く。横に地面は無いが、それが目的だ。落下して逃げ──

 

「残念ね」

 

 まずった。そうだ、空中じゃ避けられない。失念してる、いつもそうだ。判断ミスばかりだ。

 だが撃つのではなく、胸ぐらを掴んできた。体格差をものともしない膂力で抑え込まれ、壁に顔を叩きつけられ、そして雑巾で拭くかのような気軽さでゴリゴリと押しつけられる。

 

「ぎえええ……」

 

 変な声が口から漏れる。慈悲のカケラも無い空崎ヒナは更に外へと私を放り投げる。

 

「うおおおっおおお!?」

 

 情けない叫びを続けながら、屋上からとんでもない勢いで飛んで行く。

 どうにか体勢を立て直そうとするが、空中できりもみ回転しながらでは無理がある。時間の鈍化も意味が無い。どうにかして地面への衝突を最小限のダメージで抑え────

 

「ぐっぼえぇぇ……」

 

 体がくの字に折れ曲がる。皮肉にも一時停止の標識にぶち当たったらしい、横隔膜が迫り上がって呼吸が出来なくなる。

 

「か、ぐ……」

 

 なんとか立ち上がり、胸の中心を全力で殴りつける。横隔膜がゆるゆると下がっていく感覚を覚えるが、それを面白がっている場合じゃない。

 

「まだ立てるのね」

 

 空崎ヒナが目の前に着地してきたからだ。どうすべきか。口に溜まった血を吐き捨てる。

 

「立たないと捕まっちゃう」

 

「それもそうね」

 

 無感動に銃口がこちらを向く。やはりイカれたサイズ感だ。ならこちらもイカれたサイズ感の武器を扱おう。先程ぶつかった標識の根本をナイフで切断する。

 

「こっちの番だよ、風紀委員長」

 

 掴んだ標識を全力で振り抜き、彼女の顔面を狙う。だが、余裕の表情で避けられる……いや、そもそも真顔だ、少し驚かしてやろう。ホルスターから銃を抜く。

 音速を超えて動き、左に振り抜いた標識を反対側に回り込んで今度は右へと持ち替える。狙うは背中。

 

「!」

 

 少し驚いたような顔をする空崎ヒナ、気分が良い。だが、驚いているという事はつまり。そんな懸念を振り払うようにフルスイングを叩き込む。

 

「吹っ……飛べ!」

 

 予想通りに、というより予想以上に吹き飛んだ。流石の彼女もこれには……いや念には念を入れるべきだ。標識を標識たらしめる部分を引き剥がす。

 

「これも!」

 

 全力を以って投げつけてやると、弧を描いて飛んで行く。鈍化した時間の中でも投擲物は主観的には普通の速度だ、これを避けるのは、不可能……でも無かったらしい。

 

「え……?」

 

 掴んでいる、私が投げた一時停止標識を。何か皮肉めいた絵面だが、そこからその何かを感じ取っている場合ではない。反撃が、投げつけられる。

 

「ぐっ!」

 

 ナイフで防ぐのは失策だ、あまりの勢いで腕ごと弾かれた。まずい、防御手段が無い。空中の空崎ヒナはこちらに銃口を向けている。回避は……無理だ、完全にバランスが崩れた状態で時間の鈍化が終わった。世界に平時の音が戻る。

 

「やば……」

 

 破滅の雨が降る。せめてもの抵抗に顔だけは腕で隠した。

 

 

◇◇◇

 

 

「……終わったかしら」

 

 ボロ雑巾のようになった時崎タキを見下ろす。吹き飛び、叩きつけられた車に真っ黒な液体が飛び散っているが、これは……血だろうか。口からも吐いていたが、一体何故こんな色に?とりあえずヘイローは消えている。捕縛してセナに任せようか、そう考えながら近くにしゃがみ込む。

 

「ん……?」

 

 よく見れば、傷口がどんどん塞がっていっている。トリニティの正義実現委員会の長、剣先ツルギと同じ体質か、あるいは何かしらの技術か。だが意識までは戻るまい、捕縛の為に触れようとした、その瞬間だった。

 

「起きろタキ!!」

 

 気を失っている筈の時崎タキの口から、突然の叫び声。警戒して飛び退き、様子を伺う。

 

「うあ……ぐ……」

 

 ヘイローが浮かび上がる、覚醒した?まるで映画に出てくるゾンビのようにゆらゆらと立ち上がってくる。だがやる事は変わらない、再び銃口を向ける。

 

「悪いわね」

 

 ゾンビのような相手なら、これが効くかも知れない。躊躇なく車のガソリンタンクを狙う。

 

 

◇◇◇

 

 

 熱い、熱い、熱い。叫んでいる、自覚も無いまま叫び続けている。外からだけじゃない、発作だ。同時に内外から灼かれる苦痛。目覚ましにはファンキー過ぎる。

 

「あ、ぎあぁああぁあああ!!!」

 

 のたうち回って火を消そうとするが、何処かの神経が溶けたのか、半身が動かない、呼吸をする度に肺が焼かれる感覚がある。口から溢れる血で消そうにも全く量が足りてない。

 

「ぐ、う……」

 

 どうしようもない、なら、イカレた方法を取るしかない。ナイフを首に押し当てる。覚悟は出来ていないが、余裕なんてもう無い。勢いよく引き切り、頸動脈を断つ。

 相当量の血が噴き出て体に着いた火の勢いを弱め、注射を取り出す余裕が生まれる。バックパックが不燃性で助かった。

 

「フゥー……」

 

 体内の熱を全て吐き出すように大きく息をする。傷が痛覚のみを残して消えていき、火は急速に収まっていく。血が抜けたせいで視界がグラつくが、それは仕方ない。立ち上がり、怪訝な表情でこちらを見る空崎ヒナを見据える。

 

「インナーが……」

 

 使い物にならなくなったそれを破り捨て、前を閉じる。無くても大丈夫ではあるが、流石に少し恥ずかしい。

 

「さっきのは何?」

 

 それを無視して当然の質問を投げかけてくる彼女には応えず、私はそっとバックパックから取り出したものを投げ渡した。

 

「答える義理も無い」

 

 催涙弾だ。すぐに噴出を始め、ガスが空崎ヒナの目を洗い、強い刺激で呻き声を漏らさせる。

 

「おおっらあっ!」

 

 全力で地面をぶん殴る。私の体にはまだある程度電気が残っているはずだ。全て空崎ヒナにぶつけてやる。全身全霊をもって集中し、電流を叩き込む。

 

「くっ……」

 

 反動でこちらの腕が高熱を持つ。だがそれなりに有効打が入ったように見える。気のせいかも知れないが、今はあの空崎ヒナに隙が生じているのだ。逃げない手は無い。今度こそ……近くの建物へ目掛け、跳躍した。

 

 

 






プライベートでえらい目に遭わされて一ヶ月程精神が沈んでいました。他にも毎日のように高熱を出したり頭痛のあまり病院に駆け込んだらCTで頭に白い影が見つかったりと散々な目に遭っていますがなんとか生きてます。数ヶ月後どうなってるかは分かりません。生きてたらなんとか投稿します。


そんな中でもコラボEGOは全て揃えた賢明な候補者、ワン・ダーウェイと申します。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。