不完全少女の生き方   作:出島二人

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初投稿です。
この文章には過激な表現や暴力的な発言が含まれています。お楽しみください。




ACT1
1話 時崎タキという少女


 

 

「何処行きやがった!」

「ぶちのめしてやるぞゴルァ!」

「出てきやがれオラァ!」

 

 私は現在騒がしい不良達に追いかけられている。発端は肩がぶつかった事だが火に油を注いだのは私だ。不愉快だという念を込めて『君達の軽い頭に相応しいモノの言い方をするじゃん』と煽ったのはどう考えても良くなかった。

 

 仕方がないのでとりあえずゴミ箱に隠れやり過ごそうとしている私、キレ散らかしながら私を探す不良、そして私の体を這おうとする茶色いアイツ。

 

「うわあああ!」

 

 思わず飛び出した。16歳の乙女にこれはキツい。地面を転げ回りアイツを引き剥がし、ようやく一息ついた、が。

 

「……」

 

 ちょうど、不良と目が合った。

 

「バカかコイツ!」

 

「ほんとにね!」

 

 仕方なく腰に手を伸ばし、目的の物を鞘から抜き放つ。刃渡り20cm程のナイフ。左手に逆手持ち。私の基本スタイルだ。ここは幸い狭い路地裏、ビルの隙間。失くす事もあるまい。

 

「なんだァそのナイフ?こちとら銃だぞ?」

 

 そう、ここはキヴォトス、銃などそこらに転がっている日用品だ。何故そんな街でナイフなど使う必要があるのか。当然の疑問だろう。それも一対三で?

 

「ふっ!」

 

 その疑問から生じた油断を狙い銃を掴み、驚く暇も与えず銃本体を持ち主の顔にぶつけてやる。

 

「がっ!?」

 

 人間、顔面への攻撃を受ければどうしたって怯む。防衛本能だ。そのままマガジンを抜き取り、横にいるもう一人にぶつける。過たず顔に吸い込まれていった重量のある弾倉で同じく怯んだ不良を確認して目の前の子に組み付き、喉元にナイフを突きつけ後ろに回って拘束する。

 

「はっ、離せ!」

 

 そうはいかない、盾になってもらう。無事な三人目が引き金に指をかけた頃には既に一連の行動は終わっていた。

 

「卑怯者!」

 

「なんとでも」

 

 喉を勢いよく掻っ切った所で大した傷はつかない。それでも捕まえていられるのはひとえに私自身の腕力と、このナイフのおかげだ。グリグリと首に押し付けてやれば誰もが怖がり、抵抗する気を失くす。しかしモタモタしてはいられない。行動を起こす。

 

「ふんっ!」

 

 少しだけ離れていた三人目に捕まえた子ごとタックルをかます。余程射撃の腕に自信が無ければ私だけを狙うなどという芸当は不可能だ。手持ち無沙汰な仲間外れの子に対し捕まえていた子の銃を投げつける。

 

「うぉわっ!?」

 

 視界を覆う自動小銃をなんとか避ける彼女に姿勢を低くして詰め寄り、全力の蹴り。

 

「でぇあっ!」

 

「ごぶっ……」

 

間違いなく鳩尾に入った。壁に叩きつけられ、くずおれる彼女の側頭部に後ろ回し蹴りを叩き込み無力化する。

 

「テメェ……!」

 

 復帰した二人の片方、捕まえていた子に対し先程気絶した子の銃を投げつけ、少し間を置いて先程抜いておいたマガジンも投げつける。

 

「その手はもう喰らわねえ!」

 

 と、左手で払った瞬間、彼女の眉間にマガジンの陰に隠して投げたナイフが飛来する。タングステン合金製の頑丈かつ極めて重いナイフ(なまくら)が頭部に当たれば意識を刈り取るには充分な衝撃が加わるだろう。ガン、と嫌な音が響いた時には、もう片方の子に対しても私は行動を終えている。全力での跳び膝蹴りだ。頭を手で押さえながら顎に思いきり膝を叩きつける。

 

「ぐぇあ」

 

 膝蹴りを喰らわせてやった子は間違いなく気絶した。だがナイフを投げつけた子は。

 

「がっ……クソが……痛ぇ……」

 

 手品に合わせる為の手加減のせいか、少し投げる力が足りなかったようだ。とはいえ脳震盪を起こしているのか平衡感覚を失って起き上がれないらしい。私は足元に転がっていた銃を拾い上げた。散弾銃、装填されているのはスラグ弾か。

 

「さて」

 

 悶えている彼女の体を踏みつけ、仰向けに固定する。脳震盪の波が引くまで少し待ってやる。

 

「んだよ、やるならやれよ……」

 

 第一声が虚勢とは。

 

「人間、皮膚は硬いけど」

 

 とりあえず彼女の言葉は無視して言葉を紡ぐ。

 

「眼球に至近距離で銃弾なんか浴びたらどうなるかな」

 

 そう言った後、顔を踏みつけ、更に銃口を目に突きつける。

 

「潰れるかな?それとも死ぬのかな?実験させてくれる?」

 

 曰く、笑顔とは威嚇であったと言う。今回の私の笑顔は間違いなく威嚇であり脅迫であり、そして喜びの顔だった。

 

「ひっ……」

 

 怯えた顔を至近距離で睨め付ける。何かしょわわという音が聴こえるが気にしない。アンモニア臭もするけど気にしない。

 

「やめて、アタシたちが悪かったから、謝るから、ごめんなさい」

 

 銃を持つ手が震え始める。脳裏に過ぎるあの光景、赤くぬるぬるとした液体がこびりついた手のひら、水溜りのような何かに沈んだ彼女。別に大した事ではない。いつもの事だ。

 

「ヘタレ」

 

 顔をそのまま強く踏みつける。これで制圧完了だ。持っていたショットガンは弾を全て抜いて膝で圧し折る。これでしばらくは悪さ出来ないだろう。多分。人前で漏らしたなんてバレれば仲間内でずっとイジられる羽目になるだろうし可哀想なので少し移動させておく。服や下着が乾かなかったらその時はその時だ、そこまで面倒は見られない。

 

「……逃げよう」

 

 ナイフを拾い、鞘に挿して上着に隠す。フードを被り、路地裏から出る事にした。

 

 

◇◇◇

 

 

 時崎タキ、16歳。所属学校ナシ。仕事は傭兵もどき。どちらかと言えば探偵に近いのかも知れない。事務所はつい先日追い出された。口座からの家賃の引き落としが上手くいかず、大家さんに問答無用で。それは良い。まだ。問題は仕事が無い事だった。原因の一つとして挙げられるのは……

 

「シャーレの先生……」

 

 直接会った事は無いが、噂だけはどうしたって耳に入る。曰く、着任してすぐ生徒の指揮を取り厄災の狐を撤退させる戦果を挙げたとか、曰く、気に入った生徒を夜な夜な当番と称して連れ込んでいるとか、曰く──

 とにかく、真偽の分からない噂話ばかりで本人の情報は優しげな大人である、くらいのものだった。実際どういう顔なのか、年齢はいくつなのか、それらの核心に迫るような情報は不思議な程に聞こえてこなかった。生徒の問題を解決して回ったり治安維持をしたりと、八面六臂の活躍を見せる有名人にも関わらず、だ。

 

「会えば分かる?」

 

 好奇心は常にある。だが会う気はあまり無い。何故だかは分からないが、自然と避けてしまっている。それで良いとも思う。会ったところで何も変わらないだろうし。

 しかし、雑踏に紛れながらそんな事を考えていても、空腹感は決して消えず、胃をキュッと締め付ける。昨日からろくに食べていない。

 

「……」

 

 原因は視界の端に見える誰か。恐らくゲヘナ生か。尾行中なのか、時折、角から現れ、そのまま通り過ぎていく。尾行とは後ろから追いかけるものではなく、基本的には横から追うのだとか。その点で言えば基本に忠実だろう。先程不良に絡まれた際も自然に撒くように(一応は)していたというのにすぐさま私の事を見つけている。他の何処かから別の誰か、恐らく仲間に見られている可能性もある。こんな状況で何かを食べる気にはとてもなれない。

 

 流石に、ムカついてきた。恨みを買う心当たりならいくらでもあるが食事くらい静かに摂らせてくれないものか。非常に腹が立つ。こちらからアクションを起こしてやる。

 

「あ、そういえばモモフレンズグッズの発売日だ」

 

 なんてわざとらしい独り言と共に方向転換、ゲヘナ生の方へと走り出す。

 

「!」

 

 驚きの色を瞳にほんの一瞬浮かべ、すぐ平静を装う彼女。いいセンスだが私の目からは逃れられない。

 

「こっちのはずなんだけれど」

 

 上着の前を開ける。ナイフを抜きやすくするのと、あと一つ理由があるが、それは後。

 黒髪と白髪の混じった彼女に殺気を向けぬよう意識しながら通りすがる通行人を装う。今考えてみれば、冷静さを欠いた行為だっただろうが、その時点では良い作戦だと思っていたのだ。

 

 そして通りすがる間際、私は彼女に上着を脱いで被せた。

 

「なっ!?」

 

 思わず声を上げる彼女に内心でざまあみろと毒づき、ナイフを抜いて──

 

 刹那、手に鋭い痛みが走る。見ればナイフを取り落としていた。この時、狙撃と気付くのが少し遅れた。故に続いて頭を狙った第二射を私は無理矢理体を捻って回避せねばならなくなった。腰が悲鳴をあげるが気にしてはいられない。狙撃手の位置は大体割り出せたがここからでは反撃は難しい。それに妙な足音が二つこちらに近づいている。

 

「くそっ……」

 

 ナイフを拾い、上着を被せてやった子を捕まえて路地裏に向かう。ここでは射線が良く通る。私の不得意な場所だった。やはり冷静さを欠いていたのだろう。完全に陰に隠れた事を確認して上着を剥がし、顔を見る。

 

「……なに?」

 

 やはり知らない顔だが、今朝からよく見る顔だ。質問している時間は無い。怖い顔をされるのも嫌なのですぐさま被せ直し、近づいてくる二人を待つ。狙撃手含め、恐らく三人だが、全員を一気に相手するには手が足りない。もう少し策を。

 

 ナイフを、正確には左手を見やる。おそらく7.62mm、一般的な狙撃銃のそれだ。耐えられるが、何発も受けたくはない。それに狙いも正確。どう考えても手練れだ、対処するのは難しいが、かと言って逃げようとしてもここは袋小路。壁を登ろうとする間に合流してくる二人にやられてしまうだろう。

 

 やはり、一人ずつ対処していくしかない。まず捕まえた子の頭部をナイフで強かに打ち据える。というより、突く。頭部への衝撃はそのまま意識を刈り取り、彼女はグッタリと項垂れた。上着は被せたまま体を横に置く。

 

 足音がさらに近づく。警戒した足取りだ。走ってこない辺りかなり冷静だと言える。おそらくは狩りをしている気分なのだろう。格好の餌に食いついた私を冷静に、冷酷に追い詰め、そして狩る。だが逆に教えてやる、罠にかけられた獣は極めて凶暴になるのだ。ナイフを握り直し、じっと息を潜める。

 

「おーい、生きてるー?」

 

 安否確認の声。呑気なものだ。確かに私達は死ににくい。だがそれは決して不死である事を意味しない。生物ではあるのだから。だからこんな呼びかけをふざけ半分で言えるのだ。奇妙な怒りが湧いてくる。必ず叩きのめす。あと五歩。

 

「カーヨーコーちゃん」

 

 三、二、一。タイミングを合わせる。片方だけで良い、片方だけ拘束すれば。飛び出した瞬間、何かが飛んで来た。

 

「あ〜げるっ」

 

 眼前に現れた大きなバッグ。直感する。これはすぐ爆発する。対応せねばならない。どうやって?もちろん跳ね飛ばす、何処に?目の前だ。手を使え。

 

「ッ!」

 

 柔らかく掌底を打ち込む。衝撃で爆発する可能性もある。ただ押し返すように。

 

「あっ、それ時限式なんだよね」

 

 残念なことに予想は外れ、私の視界は閃光に包まれた。

 

 

 






初めましての方しかいないので初めまして。出島二人と申します。多分後で変えると思います。
承認欲求の高まりと創作意欲の高まりが発生した為、こうして書いたものをハーメルンに投げつけさせていただきました。
皆様からの評価や感想、お待ちしております。



本当は普通の百合が書きたかったのに何故こうなるのかさっぱり分かんねぇなァ……
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