不完全少女の生き方   作:出島二人

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2話目は初投稿です。お楽しみください。




2話 失神

 

 

 ────瞬時に頭を庇ったのは決して悪い判断ではなかった。吹き飛ばされた挙句、意識が一瞬途切れるだけで済んだ。問題は完全に体勢を崩した事か。時間が際限なく引き延ばされたような主観の中、宙に浮いた体と浮遊感で異様に夢見心地に近い頭で考える。

 

 あの白髪、仲間が近くにいるのに躊躇なく爆弾を使うとは想定外だった……いや、それは想定すべきだった事だ。先程カヨコと呼ばれた子は私の防弾仕様のパーカーを被り、気絶して倒れ込んでいる。姿勢もあいまって爆発の衝撃や熱をほとんど受けはしないだろう。これでは自らの手で自らの首を絞めたようなものだ。

 

 眼だけでもう一人を捉える。姿勢を低くして近づき、こちらに散弾銃を向けようと動いている。近距離で喰らえば今度こそ完全に意識を失う事は火を見るより明らかだ。突き崩せるとするなら彼女の体格。おおよそだが150後半、翻って私の身長は175、自慢では無いがかなり高い自信がある。抑え込めるはず。白髪の方はもっと低い。殴り飛ばせる。

 

 受け身を取る。アドレナリンやらエンドルフィンやら大量に出し散らかす脳味噌に感謝しながら、そしてイラつきながら、ゆっくり、緩慢とした動きで受け身を取る準備をする。空を向いているから倒立の要領で。地面に手をつく。

 

「ふッ!」

 

 それと同時に時間の感覚が戻る。倒立の状態からクラウチングスタートめいた格好になった瞬間、重力の感覚も戻り、体全体が軋む。特に苦痛を訴える足腰は無視して黒髪の子の銃口に、太腿のベルトに挿しておいたナイフ、投擲専用の(スローイング)ナイフを役割通りに投げつける。

 

「ッ!」

 

 それが当たるよりも前に走り出す。眉をひそめ、引き金から指を離す彼女にもう二本投げつける。今度は目だ。狙い通りの軌道を描いて突き刺さらんとするナイフを彼女は身を低くして帽子で受け止めていた。それを横目にして私は白髪の子に対し思い切りミドルキック。手ごたえアリ。と見えたが、またバッグだ。

 

「ざーんねんでした」

 

 銃口がこちらを向く。上着無しに撃たれたくはないが仕方ない。顔を庇いながら突っ込む。純粋なタックルの形だ。

 

「ちょっとちょっと!?」

 

 腕や胸に痛みが走るが怯みはしない、当たった瞬間に腕を使ってそのまま跳ね飛ばす。

 

「うわわわ!」

 

 間の抜けた声を出しながら吹き飛ぶ彼女への追撃を諦め、再びこちらに銃を向けた黒髪の子を見やる。

 

「殺します」

 

 強い殺意の籠った目つきと言葉に背筋が冷える。怖過ぎる。反射的に銃本体を掴んで銃口を上に向かわせる。引き金が弾みで引かれたのか、それとも殺意が前に出たのか、すぐさま弾丸が放たれ、銃声が鼓膜を暴力的に振るわせる。ポンプアクションが出来ない以上、これで次弾は無い。彼女が冷静に右足で蹴りを入れてくるが左肘と腹で掴み取る。

 

「うりぁ!」

 

 そのまま軸足を地から離すように持ち上げ、思い切り地面に叩きつける。痛みに顔を歪めながらも戦意を失わない彼女の首を掴み、持ち上げて腕で拘束し、復帰した白髪に見せつける。

 

「そこを動くな」

 

「あーあ」

 

 何かおかしい。確かにナイフでは人間はろくに傷つけられない。だが仲間が人質にされているのだから警戒してしかるべきだ。だと言うのに、あの表情は?イタズラが成功した時のような笑顔を浮かべる理由は?そう疑問に思っていると、金属製の何かが抜けるような音が、たしかに右の鼓膜を揺らした。

 

「絶対に許しません……」

 

 見やれば、拘束している筈の子の右手には銃ではなく、ピンの抜けた手榴弾が。

 

「な……!?」

 

 まさか、いつの間に。反射的に安全レバーを彼女の小さな手ごと掴んで押さえる。これで起爆はしない。だが両手が塞がり、私自身の顔が彼女の頭の横に出てしまった。

 

「ウチの社員を」

 

 前から声がする。狙撃手だ。長く時間をかけ過ぎて、接近を許してしまったのだ。

 

「離しなさい!」

 

 全ては一瞬の内に起こった。避けられるはずもない。

 

 

 

 ガツン、とキツい衝撃が頭を襲う。目の前で火花が散ったような気がした。痛過ぎる。再び時間が引き延ばされるが最早どうしようもない。痛みをゆっくりと味わいながら倒れるまでにたっぷりと後悔した。逃げれば良かったのだ。ろくに食事もせず、その上休みもせずに挑むというのは完全に失策だった。後悔先に立たず。まず頭が先に地面に触れるのが分かり、私は諦めて歯を食いしばった。

 

「がっ……」

 

 受け身も取れずに勢いよく倒れ込んだ事で全身が悲鳴を上げる。時間も元に戻ったとは思うが、視界が霞んでぐらぐらと揺れているせいでよく分からない。痛みに悶える気力は体の何処にも無かった。ただ、四人に囲まれている事だけはかろうじて分かった。気絶させたと思っていたがそうではなかったのか。

 

「大丈夫?二人とも」

「だ、大丈夫です、すみません、アル様のお手を煩わせてしまい……お詫びとして死にましょうか?死んでいいですか!?」

「待ってハルカ、まだ終わってない」

「すごいタフだねこの子」

「銃も使わず我々便利屋68相手にここまで立ち回るなんて、スカウトしたいところだけれど」

「今回の標的だもんね〜」

「一応気絶させとこう、私がやるから」

 

 銃口がいくつも見える。少なくとも正しい景色ではないはずだし、放たれた銃弾が複数に見えてもそれは違う。衝撃は一回だけだった上に、その一回で私は意識を失ったのだから。

 

 






今回はちょーっと短めです。何故短いのかと申しますと書いた文章を適当に切り分けているからですね。もっとちゃんと書け(豹変)

便利屋68、ギャグ要員でありながらその実チームプレイならキヴォトス上位に食い込める恐ろしい連中、実力的な意味でもキャラ的な意味でも強いのでこういうのを書く時は劇薬ですね。ちなみに私は便利屋の中ではハルカ推しです。可愛いですよね。
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