不完全少女の生き方   作:出島二人

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3話目も初投稿です。お楽しみください。


3話 矜持

 

 

「依頼は成功よ」

 

 その声で目が覚める。酷く頭が痛むし体は縄で椅子に縛られているが、それでも生きている。何処かの倉庫か、えらく埃っぽい。肌寒さが無いのは上着を着せられているからか。

 

「流石ですね便利屋68、噂通りだ」

 

 その名前には心当たりがあった。裏社会では割と有名な、かなりやり手の傭兵集団だ。ゲヘナ風紀委員と戦って逃げ果せるような真似が出来る連中はそうはいない。少なくとも私の知っている限りでは。銃も無しに挑むならもう少し準備が必要だった。それでも勝てるとは思えないが。

 

「約束通り報酬は現金で頂けるかしら?」

 

 陸八魔アル。便利屋68の社長。尊大な態度に見合った実力とカリスマを兼ね備えた危険な人物だと聞く。依頼人の為ならば事務所を捨てて空き地でテント生活を厭わないプロ意識の高さには同業として尊敬の念を覚える。そんな女が率いる社員達が弱い訳がない。

 

「ええ、ええ、もちろんですとも。こちらに用意しています。捕縛してくださりありがとうございます」

 

 さて、そんな便利屋68の依頼人は誰なのか?少なくとも私に恨みがある人間だろう、だが心当たりがあり過ぎて何とも言えない。あちこちの企業から機密情報を盗み出したり、妨害工作を行ったり、迷い猫を探したり、引ったくりを捕まえたり、盗まれたお菓子を探したり、強盗を叩きのめしたり……やっぱり心当たりはあまり無いかも知れない。

 

「コイツには私達の新型兵器の情報を盗まれましてね」

 

 そう言われて思い出した。二足歩行型兵器の設計図。確か名前はウォークウーマンだったか。後日依頼主の企業は自社の製品として発表、すぐさま発売して見事に大ゴケ、あえなく製造中止となった。そもそも兵器としては駄作だったらしい。バカバカしい話だ。むしろ感謝してくれても良いのでは?

 

「私に恨みをぶつけられても」

 

 思わず毒づく。

 

「……起きていたか」

 

「そんなに騒がしくされたら誰だって起きるよ」

 

 視界の端で陸八魔は何かを考え込むような表情をしている。報酬の値上げでも考えているのだろうか。

 

「それで、どうするの?」

 

「そうだな、マグロ漁に興味はあるか?」

 

「カニの方が好みかな」

 

「フン……」

 

 洒落たスーツに身を包んだビジネスマン気取りのロボット野郎にんべっと舌を出す。敵意を込めた挑発だ。それしかする事も無い。

「待ちなさい」と、横から陸八魔。何か言いたげなようだった。

 

「騙したわね」

 

 その声色には怒りが浮かんでいた。何故?どうして?

 

「何を言っているのです?」

 

「時崎タキがただの傭兵である事は調べがついてるわ」

 

 おっと、そう言えばそうである。

 

「雇われただけの相手を捕まえて、挙句には強制労働させようだなんて、そんな事を同業者として許す訳にはいかないわね」

 

「ではどうすると?こちらも一人でありませんよ?」

 

 その言葉通り、私兵がゾロゾロと湧いて出てくる。いかな陸八魔アルと言えどこれでは……

 

「私だって、無策で突っ込む程マヌケじゃないわよ」

 

 そう言って指を鳴らした陸八魔アル、その合図を待っていた浅黄ムツキ、鬼方カヨコ、伊草ハルカの三名が建物内部に爆弾を投げ込み始める。

 

「伏せてなさい」

 

 そう言われても。とにかく体を揺らして椅子を無理矢理倒して地面に転がる。次の瞬間には爆発の衝撃と熱が身体を打ち、飛び散る何かの破片が縄を擦った。しめた。

 周りを見れば私兵のほとんどは吹き飛んで昏倒しており、残っているのは散らばった三十名程、それでも多いが。

 

「ぐぐぐぐ……むん!」

 

 力を込めて縄を千切る。ようやく解放された体に血が巡る。気力が湧いてきた。

 

「助かった、ありがとう便利屋の社長」

 

「助けたつもりなんか無いわよ、礼なんて言われる筋合いも無いわ」

 

「そう言わずに、ほら、今度お茶でも」

 

「競合他社とは馴れ合わないの」

 

「……それもそっか、そりゃっ!」

 

 フラれたモヤモヤを私を殴ろうと近づいてきた私兵を殴って発散。持っていた特殊警棒を奪い取って喉元を突いてやればすぐ昏倒する。その体を掴んで銃撃の盾にしてやる。何発か当たったところで銃声が一旦止む。

 

「ナイフの方が使いやすい……」

 

「コレの事かしら?」

 

 社長が持っているのは確かに私のナイフ。重くてなまくらの愛用のナイフだ。持っていた敵の体を横に退けて、投げられたそれを左手でキャッチ、そのまま逆手持ちに変え、警棒は右手に順手持ち。

 

「助かるよ」

 

 感謝を述べた後小銃の銃口をこちらに向ける私兵に向き直る。発射を止める事は出来ないが、弾丸の軌道さえ分かっていれば。

 チュイン、と、金属が弾けるような音が響き、少しの痺れが左手を襲う。

 

「ナイフで防いだだと!?」

 

「見えるんだよそれくらい!」

 

 驚愕に固まるそいつに向かって姿勢を低くして詰め寄り、大きく振りかぶった警棒で頭を殴りつけてやる。その勢いで体ごと回転し、左手のナイフで同じ場所を突く。また一人ダウン。

 横を見れば、数名がこちらに銃口を向けている。回避は出来なさそうだ。フードを被って腕を顔の前で交差させ、防ぐ。衝撃が上半身全体を襲うが、頭は守られている。

 

「上着も着せてくれてるとか大助かり」

 

「寒そうだったから着せただけよ」

 

 社長の正確無比な射撃が私兵を次々と倒していく。突入してきた社員もそれに続いている。私はと言えば銃弾の雨を耐え、避け、ようやく一人、更に一人と倒す。私がやっと六人目を倒した辺りで、既に便利屋68の四人は他全員の無力化に成功していた。

 

「クソ……傭兵如きが……」

 

「成功報酬は頂いていくわよ」

 

 見れば、便利屋の依頼人がのされている所だった。警棒を捨て、側に寄る。

 

「終わり?」

 

「ええ、終わりよ」

 

 それは良かった、と続ける前に、社員達が集まってくる。

 

「社長、報酬金のケースは確認しといた」

 

「タダ働きせずに済んで良かったねアルちゃん」

 

 まあ私はと言えばタダ働きどころか狙われ損のくたびれ儲けナシと言ったところだが。とても語感が悪い。

 

「今日は一人ずつラーメンを好きなトッピングで頼んでいいわよ!」

 

「ひ、久しぶりの贅沢ですね」

 

 ……競合他社の悲しい懐事情については聞かなかった事にしよう。

 

「そうだ、あなたもどう?タキ」

 

 突然のお誘いに少し思考が止まる。確かに空腹だが、少し前まで敵対していた仲だというのに、良いのだろうか。

 

「……ありがたくご馳走になろうかな」

 

 まあ良いか。人間、ある程度の図々しさは必要だ。

 

 






誤字報告ありがとうございます。チェックの不完全なモノをお見せしてしまい誠に申し訳ありません。今後はさらに細心の注意を払いますのでよろしくお願いいたします。

あと左手小指をケジメいたしましたのでごあんしんください。
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