神に愛されし子   作:心身劫奪輝偶像

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※今作でやっていきたいことの簡単な概要と注意事項

・【推しの子】+【ダークギャザリング】
・原作キャラ達の解明していない過去や設定を整合性取るために捏造したい放題(予定)



特に2点目が合わなさそうな人が今すぐブラウザバック!
大丈夫そうな人はレッツゴー(スト)!



第1話 

 

 

声が聞こえる。

 

あぁ、まただ。

 

何度もこの光景を見る。

何度もこの時の音が反響する。

 

絶対に忘れないようにと。

あの日の僕が魂に刻みこんだこの景色を。

 

 

 

だから僕は何度でも、あの夏の日に還ってくる。

 

 

 

 

 

『言ったはずだ。運命は変わらないと』

 

 

 

 

 

連れていかれる。

 

父さんはすでにあれに飲み込まれた。そしてそれから出ているナニカの先には、母さんが突き刺さっている。

 

 

 

 

 

『下手に希望を持つから、奴に目を付けられる。下手に輝こうとするから、奴に見つかる』

 

 

 

 

 

そして、大嫌いで大好きな姉さん。

 

この時からたまに映るようになった妙な景色。それがこの日だけは異様に明瞭で、その視界の中にそれは映る。

 

空中に不自然に開いた漆黒の穴。父さん母さんを飲み込んだあれとは別にあるそこから伸びたいくつもの白い手が、姉さんをつかんでいるのが見える。どうやら人のようだが、皆一様に顔に星の札が貼ってあって表情は見えない。

 

でも、一つだけわかることがある。あれに連れていかれたら、姉さんは戻ってこない。

 

確信した僕は手を伸ばす。しかし、その意志とは裏腹に体はピクリとも動かない。

 

そんな僕を、大好きな姉さんは笑顔で見ている。いつも皆を惹き付ける、僕の大嫌いな星の瞳から、耐えず涙を流しながら。

 

 

 

 

 

『妙な所で封印しよって。危うく輝夜まで食われてしまうところだったじゃないか』

 

『だがまあ、こうして間に合った。後数年は待つつもりだったが、あれのおかげでいい具合になってくれた』

 

『感謝するぞ小僧。お前のおかげで、輝夜をこうして早く迎えることができるのだからな』

 

 

 

 

 

どこで間違ってしまったのだろう?

 

姉さんが選ばれていることを知った時?

父さんと母さんと大喧嘩した時?

あいつを封じる方法を見つけた時?

 

僕が、余計なことをしなければ。みんな連れていかれるなんてことにはならなかったんじゃないか?

 

 

 

 

 

 

『だからお前は見逃してやる』

 

『奴も手を付けぬようだし、運が良ければ生き残るだろう』

 

 

 

 

 

僕のせいだ。

僕が何もしなければ。

僕があんなことしなければ。

 

僕がいなければ、こんなことにはならなかったのに。

 

 

 

 

 

『せいぜい興じさせろよ?』

 

 

視界が血で滲むなか、血まみれの手が僅かに動く。

 

ゆっくりと伸ばした手の先にいる白い少年が、嗤いながら僕を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――ジリリリリリリリ。

 

 

「…………ふう」

 

 

枕元でけたたましく時計が鳴る。それをたたいて止め、体を起こす。カーテン越しに日光が滲み出ており、自分が戻ってきたことを実感した。

 

階段を降り、洗面台で顔を洗う。顔を上げて鏡を見ると、そこにはいつも通りの空虚な自分の顔が映っていた。

 

 

オマエノセイダ

 

 

「――――ッ」

 

 

鏡の自分はひどく歪んだ笑顔で、僕に言う。あいつのような、気色悪い笑顔で――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう」

「おはようございます」

 

「先生、おはようございます。これ、今日分の宿題です」

「あぁ、おはよう。いつも悪いな」

 

「ねぇ、ちょっと聞いて。さっき亜紀がさあ!」

「まあまあ、落ち着いて下さい。それで、何があったんですか?」

 

 

 

音が流れる。

 

耳を通る音が、脳を過ぎ去ってどこかに消えていく。周りの人達はなにか喋っているけど、どうにも頭の中の入ってこない。

 

 

……あぁ、退屈だ。

 

 

いつもの様に返事することで、何事もなく過ぎていく日々。今日もまた平凡な日として終わるのだろうかと考えていた時、正面に座っている女の子の顔をふと見ていた。

 

 

「でさ、――君もやってみない?」

「えっと、何を?」

「もう、話聞いてなかったの?」

「いや、聞いていましたよ。最近流行っているおまじないですよね?」

「そう、なんでも教えてくれるおまじない! それで今日、早めに終わるじゃない? ちょうどいい時間帯にできるんじゃないかなって思って」

「……えぇ、いいですよ。確か名前は――――」

 

「こっくりさん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業も終わり、周りの生徒は次々に教室を出ていく。

 

部活や委員会に所属している人たちは適した施設に移動するし、そうじゃない人はさっさと帰路に就いている。

 

詰まる所。30分もしない内に僕たち3人以外、教室には誰もいなくなっていた。

 

 

「ねぇ、本当にやるの?」

「やるに決まってんでしょ? もう……怖いならいいよって言ったのに、結局着いて来といて何言ってるのさ」

「まあまあ、僕たちがやると知って着いてきてくれたんです。きっと鷹橋さんのことが心配なんですよ」

……私じゃないと思うけどね

「え?」

「なんでも無い、さっさと始めよ!」

 

 

鷹橋はそう言いながら机の上に紙を広げる。

 

その紙は上両端に【はい】と【いいえ】、そしてその間に鳥居がある。そこから下には五十音に濁点や半濁点の行を加えたものと、0~9までの数字が書かれていた。

 

そのまま彼女は財布から十円玉を取りだし、鳥居の上に置く。それを見た僕たちはお互いに頷き、それぞれ席についてから指を伸ばす。

 

3人の指先が十円玉の上に乗り、タイミングを合わせて口を開いた。

 

 

「「「こっくりさん、こっくりさん。どうぞおいでください。おいでになられましたら、【はい】へお進み下さい」」」

 

 

 

 

 

「「「…………」」」

 

 

沈黙が続く。

 

それは数分かもしれないし、実は数秒だったのかもしれない。でもどうにも、この時間は妙に長く感じていた。

 

 

「……動きそう?」

「いや、特には……」

「これって都市伝説でしょ? 作り話だったんじゃ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズッ――

 

 

「「「!」」」

 

 

指先の十円玉、それが静かに動き出す。鳥居から少しづつ移動し、【はい】の上まで来た所でピタリと動きを止めた。

 

僕はこの間一切力を加えてないし、動かそうとも思っていない。じゃあ次の可能性はと思い、他二人の様子を見るために顔を上げる。

 

 

「嘘、今勝手に動いた……?」

「きたきたきた、来てくれた……! ねぇ亜紀、あんた今動かしてないわよね?」

「う、動かしてないよ! 理恵ちゃんが動かしたんじゃないの!?」

「なわけないでしょ。――君は?」

「いえ、何も。それで、確かここから質問をするんですよね?」

「そうそう。質問する度に【鳥居の位置までお戻りください】って言って戻すのを忘れずにね? じゃあお試しで……私たちの質問に答えてくれますか?」

 

 

 

はい

 

 

 

「私の名前は何ですか?」

 

 

 

 

 

 

「おぉ……正解だ。次、亜紀だよ」

「えっと……好きな食べ物は何ですか?」

 

 

 

 

 

 

「ミ、ミョウガなんだ……。じゃあ、――君」

「はい。……僕の兄の名前はなんですか?」

 

 

 

いいえ

 

 

 

「……あれ、動かなくなっちゃった」

「…………」

「聞こえなかったのかな?……って、また動いた」

 

 

声が聞こえてくるが、それに返事をする前に再び十円玉が動き出す。そして動きが止まった時、その内容に僕は目を見開いていた。

 

 

 

 

 

 

「なにこれ? 確か――君の兄さんの名前、優さんじゃなかったっけ?」

「え? あ、もしかして……」

「……えぇ、そうです。事前に質問を決めた時、僕は2人に嘘を言いました」

 

 

口を開きながら十円玉を見つめる。ただ静かに。ただし内心を悟られないよう、努めて冷静に言葉を紡ぐ。

 

 

「僕に兄はいません。ただ姉はいました」

「嘘でしょ……?」

「嘘じゃありませんよ。僕が幼い頃、交通事故で亡くなったんですけどね」

「え、いや、えっと……なんで?」

「もう何年も前の話です、心配をかけたくなかったんですよ。ついでに確認できるかなと思って、兄の存在をでっち上げたんですが……」

 

 

当たり前だが、僕は指を動かしていない。そして態々架空の兄を作った時点で、姉さんの事を言うつもりもなかった。

 

つまりこいつは、今僕たちが触っている十円玉を動かしている奴は――本物だ。

 

 

「ね、やっぱ本物だって!」

「う、嘘だよね? ――君が動かしたんだよね……?」

「…………」

「何か言ってよぉ!」

「どうもこうも、言うつもり無かったんでしょ? じゃあ動かす理由ないじゃん」

「そ、そうだけど……!」

 

 

富崎の身体が震えている。瞳には涙がうっすら滲んでおり、不安で押しつぶされそうになっていた。

 

 

「ビビってんの? これから楽しくなるって言うのに」

「え、続けるの!?」

「みたいですね」

「当たり前でしょ?それじゃ、次は……」

 

 

そう言いながら、鷹橋さんは質問を続ける。まるでこれを動かしているのが僕たちでは無いという、確信を持っているかのように。

 

そしてそこから質問は続く。最初は軽く明瞭に、徐々に大雑把で曖昧に。

 

 

 

――私たち、ずっと一緒にいれますか?

 

 

 

はい

 

 

 

――僕たちは来年、同じクラスになれますか?

 

 

 

 

 

 

――次のテスト、私は補習を受けずに済みますか?

 

 

 

いいえ

 

 

 

――亜紀の好きな人は誰ですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、動かない」

「富崎さん」

「な、なにかな?」

「指、すごく震えてますよ」

「気のせいじゃない?」

「……亜紀、あんたまさか」

「鳥居にお戻りください!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだかんだ、たくさん質問しちゃったね」

「時間も時間ですし、そろそろ終わりますか?」

「うん、理恵ちゃんもそれでいいよね?」

「えー、もっと聞きたいことあるんだけどー?」

「いやいや、もう勘弁して……」

 

 

指先は話さないようにしつつ、富崎さんが机にうなだれる。無理もないと思いつつも、僕は指先の十円玉をじっと見つめていた。

 

ずっと気になっていることがある。だがそれを聞くのはまだ早いかもしれない。……だけど、もうあまり時間が無さそうだ。

 

 

「じゃあ最後にいいですか? 気になることがあって」

「いいよー」

「ど、どうぞ……」

 

 

「では……あなたは今、どこにいますか?」

 

 

 

 

 

 

「そこ、って……底ってことだよね! どこかの水底かな!?」

「いや、ここでしょ。どう考えても」

「ですね」

「なんで二人共そんなに落ち着いてるの!?」

 

 

怯えながら富崎は周囲を見渡す。まるでその様子は、ここに来ることを予想していなかったようだ。

 

そしてその様子を見ていた鷹橋は暫く頭に疑問符を浮かべていたが、あぁと言いながら指をパチンと鳴らす。

 

 

「言ってなかったっけ? こっくりさんってさ……こっくりさんを呼び寄せて質問するおまじないなんだよ」

「え?」

「ですから、この教室のどこかにもうこっくりさんはいるでしょうね」

「えぇ!?」

「やば、ウケる。通りで怖がる割に嬉々として質問するわけだわ」

「はいもう終わり終わりにしましょう帰っていただきましょうそうしましょう!!」

 

 

もう何も聞こえないとばかりに富崎は耳を塞ぐ。とはいえ片方しか動かせないので周囲の音は丸聞こえのままだ。

 

とはいえこのままでは埒が明かないので鷹橋に目配せをする。すると彼女は頷き、富崎の方を見ながら口を開く。

 

 

「わかったって、これで終わり。……ごめんね、こんなことに巻き込んじゃって」

「ありがとうございます! ありがとうございます!!」

「はいはい。それじゃ――――」

 

 

そして再び声を揃えて口を開く。これを言い切り、十円玉があるべき場所まで行くことで、この(まじな)いは終わる。

 

 

「「「こっくりさん、こっくりさん。どうぞお戻りください」」」

 

 

 

 

 

 

「よかった、これで一安心だ……」

「…………」

「……さぁ?」

「いやいや、これで鳥居まで移動すれば終わり……って、あれ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ただしそれは、ただの(・・・)こっくりさんだった場合の話だが。

 

 

「鳥居に、行かない……」

「行かないね」

「ねえ、もういいって! 私を怖がらせたいのはわかったからさ、もうやめようよ!」

「何言ってんの、私は何もしていないわよ?」

「僕もです。……ところで鷹橋さん、富崎さん」

 

 

さて、盤面を次に進めるためにも、そろそろ状況を把握してもらおう。先程から何とかしようとはしてみたが、どうにもならなさそうだ。

 

 

「この十円玉に乗せてる指、離せますか?」

 

 

「え……?」

「離しちゃダメでしょ? 途中で終わったら、呪われちゃうよ?」

「えぇ、そうですね。でも……もう今更関係ないでしょう?」

 

 

もう、遅いのだから。

 

(まじな)いは(のろ)いになってしまったのだから。

 

 

 

 

 

彼女はもう、既に現れているのだから。

 

 

「いつまでやるんです、こっくりさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんだ、キヅていたんだ』

 

 

――瞬間、笑顔だった鷹橋の目が開く。

 

そこにはあるべきものがなく、ただ暗闇が広がっていた。

 

 

「ヒッ!?」

『だけどもうオソい。ダレもここからカエれない』

「それはなぜ?」

 

 

頬に汗が流れないよう細心の注意を払い、言葉を続ける。あくまで丁寧に、それでいて冷静に。

 

 

『だって……ワタシたち、ヤクソクしたでしょう? ずっとイッショにいる、って』

「ッ!?」

『だから……』

 

「一緒になってもいいですか?」

 

 

瞬間、声が高橋に戻る。そしてその言葉が聞こえてから数秒の沈黙の後、鷹橋は震えながらこちらを見つめて口を開いた。

 

 

「ご、ごめんね2人とも。……ず、ずっと声がするんだよ。あの時からずっと……ずっとさぁ」

「り、理恵ちゃん……」

「呼べって、もっと欲しいって。でないと殺す、って……」

「なるほど……」

 

 

そういう仕組みか。

 

恐らくだが、鷹橋は前にもこのこっくりさんをやった。そしてその時、誰かから移動したアレに取り憑かれたのだ。

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

「ヒッ……!」

 

 

再び十円玉が動き出す。

 

当然それを止めようと僕と富崎は力を込めて押し付けるが、止まる気配は微塵もない。他の指も使おうとするが、人差し指のみを伸ばしたこの状態から動かない。

 

 

「なんで、どうして離れないの!?」

『イったでしょう、ずっとイッショにいるって?』

 

 

そう言いながら鷹橋……ではなくアレは空いている左手で紙をめくる。半分だけ裏返ったそこが見えると、思わず僕たちは目を見開いた。

 

 

 

私達はずっと一緒にいる

 

 

 

『コレは、ワタシのイチブ。みんな、ワタシとヤクソクしたの。ワタシがユルすまで、ここからハナれることはできない』

「り、理恵ちゃん……理恵ちゃんをどうしたの?」

『サぁ?』

「取り憑いたのでしょう? ……恐らく、以前誘われた時に」

『フフ……このコはあのガキにクラべてキレイでスみやすいわ』

 

 

 

 

 

 

「いや……いや、イヤァ!!」

『もうすぐ……もうすぐヤクソクをはたせる』

「……あぁ、ところで」

『?』

「なぜ僕に姉がいるとわかったんです?」

 

 

疑問をぶつける。それを聞いた瞬間、笑いで震えていたアレの身体がピタリと止まった。

 

 

『ふ、フフ……フフフ…………!』

 

 

ただしそれは数秒のみ。その直後、アレは口を大きく開けて嗤いだす。

 

 

『アハハハハ!……なんて、なんてカワイそうなリエ!!』

 

『あんなにイッショウケンメイにキいてたのに! ヒッシにキをヒこうとしてたのに!』

 

『ニュウガクシキのヒにカゾクのコトはキいてたのに、ワスれられてるなんて! アハハハハハハ!!』

 

 

笑う。

 

嗤う。

 

ワラう。

 

全てをさらけ出すように。全てを抉り出すように。

 

鷹橋の目だった場所から血を流しながら、アレは笑い続けていた。

 

 

そしてひとしきり笑った後。アレは満足したかのように一息ついてから口を開く。

 

 

『ワタシとリエもイッショなの。このコがケイケンしてきたオモいデを、ワタシもケイケンしている』

「記憶の同化……。も、ってことは……複数人」

『あぁ。ずっっっとイロんなコにウツってきたから、ナンニンイッショになったかオモいダしキれないなあ』

「な、なんで平気でいられるの!? 私、なにがなんだかわからないよ!!」

 

 

富崎が限界に来たのか、取り乱しながら泣き叫ぶ。

 

それ聞いたアレは富崎のほうを向き、ニッコリとほほ笑んだ。

 

 

『ダイジョウブ。あとヒトモジで、ナニもコワくなくなるから』

「離して、離してよぉッ!!」

 

 

富崎は反対側の手で手首をつかみ、全力で引き離そうとする。

 

だけどそれは剥がれることは無いだろう。そう考えつつ僕は自分の指先を見る。

 

 

 

ネエ

 

イッショニイコウヨ

 

 

 

 

ようやく見えてきた光景。僕たちの指先で、黒いヘドロのようなナニカが纏わりついていた。そして泡立つように口が生えてきて、共に引きずり込もうと言葉を浴びせてきていた。

 

 

『キミもワタシとイッショになろうよ?』

「あぁ……ああぁぁァァ……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか。では答えてくれた御礼に一言」

 

 

そう話しながら、自由な右手を鞄の中に突っ込んで――――

 

 

「自分の弱点晒すとか、君は馬鹿じゃないか?」

 

 

――布を巻いた金属を振りかぶり、紙ごと机に突き刺した。

 

 

『ギャアアアアアアアアアアアッ!!??』

「自分の一部をむき出しにして、なおかつ教えるなんて。随分優しい世界で遊んでたんだね?」

 

 

そう言いながら、左手を離す。もう一度刺してやろうと思ったが、すぐにアレは紙を消し去った。これ以上は、本体を叩くしかないようだ。

 

そう考えつつ、ふと富崎のほうを見る。妙に静かだと思ったが、どうやら許容範囲を超えてしまったみたいだ。

 

 

「鷹橋さんはもとより、富崎さんは怖くて気絶したか。……都合のいい状況を作ってくれて、どうもありがとう」

『な、なぜ……!?』

「なぜもなにも……君と鷹橋さん、全然オーラが違うよ。変なのが混じっていたら、すぐに分かる」

 

 

そう答えつつ、十字架を模したナイフを机から引き抜く。巻き付いた布からするアルコール臭が若干鼻につくが、それに関してはアレのほうがもっと辛いだろうし我慢するべきだろう。

 

 

『サ、サイショからゼンブわかってて……!』

 

 

「鷹橋さんは明るく、人とのコミュケーションが好きな人だからね。君みたいな淀んだ陰気なオーラじゃ、似ても似つかない」

『おマエ、おマエおマエオマエオマエッ!!』

「うるさいなぁ」

『アアアアァァッ!?』

 

 

指を差す。ただそれだけのことだと言うのに、アレは叫び声をあげながら苦しみだした。

 

ただ指人形をつけているだけじゃないか。まるで脳天を貫かれたかのような叫び声を上げなくてもいいだろう?

 

 

 

……さあ、アレを引きずり出すためだ。とことんやろうか。

 

 

 

 

 

「ねえ、実は覚えてるんじゃないの?」

『…………!?』

「教えてくれよ、今まで何人取り込んできたか」

 

 

 

『や、やめ……!』

「みんなの記憶を、思い出を背負ってるんだ。それくらいわかるだろう?」

 

 

 

 

 

さぁ……君たちの重みを、僕に教えてくれ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

家の扉を開ける。いつものようにリビングに入り、いつものようにソファに座る。

 

そしてかばんを隣に置き、テレビをつけようとしたとき。そこで僕は鞄の反対側に少女が座っていることに気が付いた。

 

 

「『やぁ』」

「来てたんだ。久々じゃない?」

 

「『なんとなく、ね。……で、それは?』」

「ここ数ヶ月で、何十人も廃人を生み出していたこっくりさん擬き。魂の一部を契約書にして、同意した相手を縛りつけられる便利な能力持ち」

「『あらら……それはご愁傷さまだ』」

 

 

カバンから取り出した小さなぬいぐるみを見て、少女は問いかける。それに答えながら僕は用意していた紙を開き、中央に十円玉を置いた。

 

 

「大収穫だよ。これで、今まで行けなかった場所へ行ける」

「『もう目星はついてる、と』」

「あぁ。……ようやくだ、待たせてしまったかな?」

「『いや、あの日から僕は退屈していないよ。そして、多分これからも』」

「へえ、そうなんだ」

 

 

会話をしつつ、僕はぬいぐるみに話しかけてそれの腕を十円玉の上に置く。すると少しずつだが、十円玉が動き出した。

 

 

 

「あれ、もう帰るんだ?」

「『どうせ今から躾るんだろう? うるさくて叶わない』」

「残念、それじゃあまた」

 

 

少女が立ち上がり、リビングから出ていく。

 

それを見送ろうと視線を移した時、十円玉が素早く鳥居のほうへ動いていき――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駄目だろう?

 

 

――僕はぬいぐるみの腕を持つ右手と、首を持つ左手を強く握りしめた。

 

 

「悪い子だ。まだわからないかい?」

 

「君はもう僕のものだ。僕の一部なんだよ、要望通りだろう?」

 

「じゃあ……僕のお願い、聞いてくれるよね?」

 

 

ガタ

 

ガタガタ

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ

 

 

 

 

本来無機物なはずのぬいぐるみ達が震えるのは、きっと僕が力んでいるせいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『――嘘じゃないとも。あの日から僕は、君を見初めているんだから』」

 

 

そう呟きつつ、少女は窓からリビングの様子を見る。

 

真っ暗なリビング、テレビの光だけが映すその光景。

 

大量の人形に囲まれた部屋。その中央のソファに鎮座している少年は、両手に紙を握っている。その前には人形が置かれているのだが、それに向かって無数の手が影から伸びている。

 

 

 

 

鷹橋理恵と富崎亜紀は、私に関することを全て忘れる

 

 

 

 

 

何度も紙の内容に目を通し、意味や解釈を確認する。

 

一通り終わった時、怪しく微笑む彼の眼には、暗闇よりも黒い星が輝いていた。

 

 

 

 

 

私たちは苦しみや傷を分かち合う

 

 

 

 

 

「『さあ、ここからだ。ここからもっと彼は輝いてくれる。僕は、それを特等席で見たい。だから――――』」

 

 

 

 

 

神木照が負う傷は、全て私たちが代わりに引き受ける

 

 

――もっとミせてくれ、カミキヒカル。

 

 





※知らない方向け。ぶち込まれたダークギャザリング要素解説

★星の瞳 ➡神様に見初められた者につく証。ホラー漫画においてメリットだけなんておいしい話があるわけない。


この小説を読んでもし気になるようでしたら、皆様もダークギャザリングを読んでみませんか?
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星の瞳に関して、また作者が大好きな卒業生初登場シーンも無料範囲内で読めます。ぜひぜひ。

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