神に愛されし子 作:心身劫奪輝偶像
ここまでカミキ以外誰も推しの子キャラ出てなくて草。ただのホラー風バトルな二次小説じゃねえか。
い、一応次話から登場予定ではあります。
「……着いた」
ここが、S山。
現時刻は21時36分。日中なら人がいるであろう総合案内場前に立ち、眼前の山を見上げていた。
見たところは普通の山だ、特に嫌な気配は感じない。
(これは、出会ってみないことにはわからなさそうだ)
そう考え、石階段を上って目的地に向かって歩き始めた。
今回向かうのは頂上付近にある展望台。ここが人気の絶景スポットであると同時に、心霊スポットでもあるらしい。
取り合えずそこから行ってみようと進みだしてすぐ、道のわきにそれを見つけた。
「…………そうだな」
せっかくだし、お願いもしておこう。
そう考えた僕は祠の前に立ち、両手を合わせて目を閉じる。数秒でそれを終え、再び階段を上りだした。
――どうか、素敵な出会いがありますように。
今のところは、特に何もないか。
そう考えつつ、階段を上り続ける。事前に集めた情報だと、入り口から20分程度で着くと書いてあったのだが。
そう考えた矢先、やや前が開ける。深夜に近づきつつも星空やライトも相まって見える前方の景色、階段のその先に目的地が見えた。
「あそこが展望台。……そして、やっぱりあるんだね」
視線の先で階段が途切れており、その先が広間になっているのが予想される。
だがそれよりも気になっている事、それは展望台の入り口であろう場所に建っている鳥居だ。
石造りの白い鳥居。確かに麓には火の神等を祀った神社があったが、なぜこんな離れた場所にも鳥居が?
疑問を抱いたが、それを一旦振り払って歩みを進める。鳥居の下をくぐり、目的の展望台にたどり着く。
「…………ふむ」
何もない。一先ず広間を一通りまわってみるも、特に何も感じない。写真を撮ってみるも、特に何も映らない。
さて、どうしたものか。
ベンチに座って考え出したところで、資料として挙がっていた心霊写真たちを思い出す。
(……確か写真のほとんどは、頭部に異常が見られていた)
歪んでいる、首から上が消えている、半透明になっている。等々……身体の一部ではなく、頭部に集中して異変が起きていた。それでありながら不思議なことに、最近になるにつれてその類の写真は数を減らしていたのだ。
そして逆に、見知らぬ誰かが映っているような写真は最近になって増えている。とは言ったものの、その殆どは信憑性が低すぎるものだが。
数が減っていると言うことの解釈を変えれば、それはその写真を撮った者たちの数が減っているということ。
もしかしたら、写真に何か写ることがトリガーになるのではないか?
そう思った僕は物は試しと携帯のカメラを切り替え、ピースをしながら写真を撮る。
「ッ!」
撮った瞬間、異変に気付いた僕は素早く振り返ってライトで照らす。
――視線の先。通ってきたばかりの鳥居が、真紅に染まっていた。
(いつの間に。……通ってきた時か? それとも最初から?)
何故気づけなかった、明らかに変だったはずだ。この時間帯だ、暗闇で見間違えていたのかもしれない。
(おそらく奴はすでに僕を認識している。たとえそうでなくても、既に領域内にいると考えるのが妥当か)
傾向も能力も現時点では不明だ、警戒しなければ。
こうなるとリスクは承知で、森の中を探す必要があるだろう。
(なんだ、さっきから何かが妙な……?)
何かが変だ、妙に思考が掠れているような。
なんとなくだが、先程人の気配がした。あの森の中に、同じ目的の人がいるかもしれない。
(ッ、しまった。トリガーは領域内での被写体か!)
写真に写った人間の身体主導権を握る、もしくは思考を誘導する類だろう。
行かなければ、みんなが待っている。
(まずい、意識、が……持っていかれ…………)
「――て。起きて、照」
声が聞こえる。
……なんだ、何が起きた?
あそこで意識を奪われたのは間違いない。今こうしている間にも、操られている僕の身体はどこかへ移動している事だろう。
じゃあ今聞こえているこの声は?
夢、と言うよりは幻覚だろう。だがこの声、どこかで聞いたことが……?
「ほら、早く目を開けて。やっと見えてきたのよ?」
「そうだぞ照、起きるんだ」
「ここに行きたいって言ったのは照でしょ?」
「……この、声は」
幻覚だというのに鼓動が早くなるのを感じる。
期待と不安の両方を抱きつつ、閉じていた眼を開くとそこには――――
「あ、起きた」
「おはよう照、よく寝てたな」
「起きてくれて嬉しいわ。せっかく……」
「この光景を見せることができるのだから」
体が動かない。
車内だったはずなので頭上からは日光が降り注ぎ、風を素肌で感じている。
熱い。上からではなく、周囲にも熱源がある。ぱちぱちと音を立てて、車から火が出ていた。
――そして僕の視線の先。そこには僕の家族3人が血まみれで笑いながらこちらを見ていた。
「お前が余計なことをしなければ、私たちは死ななかった」
「お前が無謀にも神に逆らうから、私たちの魂は蹂躙された」
「お前が無暗に光を見たから、私たちは惑わされた」
皆、僕を責め立てる。
血涙を流しながら、体中から血を吹き出しながら。
「なぜおまえだけが生きている?」
「なぜ?」
「どうして?」
下半身がつぶれている、父さんが。
首があらぬ方向に曲がっている、母さんが。
……そして胸に大きな穴が開いている、姉さんが。
「お前が死ねばよかったのに」
「みんなに好かれたあの子ではなく、お前が」
「命の価値なんてない、お前だけが」
腕が伸びてくる。
全員の腕が、僕の首にかかる。憎悪の表情を浮かべながら僕を睨みつけている。
僕は動けず、その様子を見る事しかできない。
そしてそれが分かっているかのように、みんなの言葉が頭に反響し始めた。
「死ね」
「消えろ」
「いなくなれ」
死ねしねしねシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネシネ――――
森の中。静かに足を踏みしめながら複数名が歩いている。
外出用の装備を整えている者。
部屋着に身を包む者。
何日も洗っていないのか、薄汚れた服を纏う者。
一見バラバラに見えるが、彼らは一列に並んで森の中を進む。
その者たちの瞳は、どこまでも薄暗く濁っていた。
何分経っただろうか。
目的地にたどり着いたのか、彼らの動きがぴたりと止まる。そして彼らの目前には、大きな樹木がそびえたっていた。
その規模は大きく、周囲の木に比べて一回りも二回りも大きい。
しかし、何よりも特徴的な個所はそこではない。
梅雨も終わり、本格的な夏に入り始めたこの季節。
その桜は満開の花を咲かせ、神々しく、そして妖しげに佇んでいた。
『――――』
列の先頭、若い女性が再び歩き出す。
続くように歩き出した計4人が横一列になって、桜に背を向けて立ち止まった。
『――――サァ』
どこからともなく声が響き、風に吹かれて枝葉が音を鳴らす。
スルスルと異様な速度で枝が伸び、それに絡みつくように蔦も伸びていく。そして少しずつ形を変えていき、4人の目の前にそれはぶら下がった。
それに呼応するかのように人々は前に出る。そして目の前にある……首吊り縄を模した蔦を首にかけた。
『ちょうだァい』
全員が首に掛けた瞬間、蔦が引き上げられる。足が地面から浮き、体が空中に浮きあがる。
何人かが苦しそうにしているのを眺めつつ、それは姿を現した。
恐らく、人だったのだろう。二本足で立ち、白い服をその身に纏っている。
しかし足元まで届くほど長い黒髪と、その間から見える血走った眼。そして何より、体のあちこちから生える桜の花。
それがこのモノを常識外の存在であることを示していた。
「ッ……!?」
「あが……ッ」
『みんな、とってもオイシそう。あなたも、あなたも……』
苦しみもだえ、それでも自由なはずの両手を縄にかけない人達。彼等を見ながら、ソレはどこまでも歪にほほ笑む。
『……あら?』
その中でふと、微動だにしない男性が目に入る。
既に生気を失ったか。そう考えたソレは絶望の表情でも見てやろう近づき、頭を掴んで顔を上げさせて―――――
「やぁ」
――三日月状に口角を上げる神木の声が聞こえた瞬間、左目に鋭い痛みが走った。
『ギャアアアアアアアッ!?』
亡霊の悲鳴を聞きながら、神木は奴の目に突っ込んでいった手を引き抜く。その人差し指にさしてある指人形が、血を纏って妖しく光を反射していた。
「なるほど。意識を奪った相手には幻覚を見せ、文字通り生気を奪い取っていたのですね」
「抵抗する気力も奪ったところで縊り殺し、死体ごと魂を取り込む。どおりで自殺者が減って、行方不明者が増えるわけです」
そう話しつつ、神木は指人形をふるう。
いつの間にあったのだろうか。彼と枝の間には細い糸のようなものが繋がっており、今の一太刀ですべて切り裂いていた。
「事前にお願いしていたとはいえ、助かりましたよ」
『ヘァッ!!』
「おや」
指人形を見ながら話した神木を見て、隙と見た亡霊は反撃に出る。
四肢に、体幹に、すでに縄のかかっている首に。
そのすべてに急速に伸びた髪が巻き付き、一気に絞め殺さんとする勢いで締め付けられていく。
『――ナ、ナゼ!?』
「なぜ?」
だがしかし、それでも神木の声色が変わることはない。
本来ならすでに死ぬか、少なくとも意識を失っている。なのに奴は平気な様子で、首吊り蔦にぶら下がり続けている。
自分が理解しがたい化け物のはずなのに、目の前のこいつを理解できない。無意識にあるその恐れから、亡霊は思わず声を荒げて口を開いた。
『おマエにミせたのは、サイアクのユメ! ココロをクダくトラウマ!』
『なぜ、イきている!?』
『なぜ、ヘイキでいられる!?』
『なぜ、そのメができる!?』
「なぜ……なぜ、ですか。そうですね、ではその前に」
そう言ってから、神木は初めて顔を上げる。
どこからともなく風が吹き、彼の前髪を浮き上がらせる。そこで初めて、亡霊は彼の素顔を見ることになる。
「限りない感謝を。ありがとう、S山の亡霊。あなたに出会えて、本当によかった」
『――――ッ!?』
そう言って微笑む神木。その彼の眼には、黒い星が強く光り輝いていた。
その様子にひるんだことを見逃さす、神木は指人形をふるって自分に絡みつく髪を全て切り裂く。
「どうにも僕はまだ不安定でして。昂らなければ、あなたを認識しきれないのです。」
「いつまでも見つからず、形跡を見つけたかと思えばすでに術中。このまま終わってしまうかと思いましたよ」
「だけど、あなたは見せてくれた。僕にあの夏の日を、あの原初の光景を!」
地面に降り立ちつつ、神木は両手を広げて話し出す。
それはまるで、亡霊のことなど見えていないかのように。それはまるで、自分自身に言い聞かせているかのように。
「えぇ……えぇ、その通りです。あの日から、僕は自分の命の価値がわからなくなった」
自分に生きる価値などないと。愛されるべきなのは、生き残るべきなのは自分ではないと。
「あの日から、ずっと考えていた。そんな僕がこれから生きていくには、どうすればいいのかを」
死にたくはない。だが、自分が生きていい理由が思い浮かばない。
病院のベッドの上で。
家族の写真が並ぶ葬式会場の中で。
自分を引き取った呪具屋を営む男性と食卓を囲む最中で。
ずっとずっと、考え続けた。
――そしてあれらの存在を思い出した時、全てを理解した。
「だからこそ、僕にはやるべきことがある。何よりも優先し、成し遂げねばならないことがある」
自分の命には価値はない、そしてより価値のある命を知っている。じゃあどうすればいいか?
簡単だ。価値ある
そして何より、その行き先を知っている。神木照が知る中で最も価値のある命、それを持ち去った存在を覚えている。
「姉さんを、
だから、こんなところでつまずいてる場合じゃないんだ。
最後の言葉は心のうちにとどめ、縄を掴んで首から外す。この間も吊るされ続けられていたはずなのだが、神木自身は何事もなく普段通りの様相を呈していた。
「君にも感謝を。僕の考えは、やはり間違いではなかった」
リュックを開き、その中にある首が破けて綿が飛び出している人形を見て呟く。
そして目的のものを取り出し、それを亡霊の前に突き出した。
奴自身の能力は操作系。さらに髪は人体にも触れられる。
周りの様子から、桜の木から攻撃が来る可能性あり。目の前のこいつが、本体ではないかもしれない。
数も、質も。どちらも指人形とリュック内の
ならば、圧倒的な個で。
そのすべてを、蹂躙してやろう。
さあ。
君の命の重みを、僕に見せてくれ。
「
※オリ設定解説:神木輝夜①
神木照の実の姉。若干不幸体質ではあったが、気にすることなく笑顔で生き続けて、両親や周囲からの寵愛を受けていた。弟が生まれてもそれが変わることはなく、それを彼は妬んでいた。……その理由が彼女の白星の瞳にあり、両親がどこか悲しそうな顔で接していることに気づくまで。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
いやー、これがやりたかったんですよね。ちなみに卒業生はオリジナルですが、元ネタはあります。わかった方は作者と握手。
今更ですが、作者はホラー小説初挑戦です。表現が拙いかと思いますが、意見があれば咀嚼して取り込みたいと思っています。
……あと少し気になったのですが、ダークギャザリングに関する用語や設定はもっとちゃんと説明したほうがよろしいでしょうか?
クロスオーバー系は双方知ってる前提で書くことが多いのですが、推しの子に比べたら流石に知名度に差がありそうで……。