デジモンバトルユニバース -Re:Tri Adventure-   作:地水

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第2話:選ばれし子供達

 都内、月島総合高校。

城南大学附属高校に負けず劣らず多くの生徒が通っているそこには、とある生徒が通っていた。

放課後、今は運動部が使っている校庭にてその生徒の姿はあった。

 

「よっしゃあ、気合入れていくぞ!」

 

後輩にあたる他のサッカー部員に景気づけの言葉を言いながら、フィールド上を走る一人の男子生徒。

ボサボサの髪にユニフォーム姿の彼は、相手の蹴っていたボールを巧みな足技で奪いとり、そのまま隙をついてパスを回していた。

 

彼の名前は、『志士神タイチ』。

かつてのデジタルワールドの危機を二度も救い、そして現実世界で起きた"ディアボロモン事件"や"アーマゲモン事件"を解決に導いた『選ばれし子供達』、その中心人物であるその一人だ。

相棒のデジモン、そして同じく選ばれし子供達として選ばれた仲間たちと共に冒険をしてきて誰かを助けてきた。

 

かつての英雄の一人であった彼も、今は青春を謳歌する学生の一人。

高校生になると大好きで得意なサッカー部に入り、デビュー戦して間もなく活躍。二年生になると中心メンバーとして取りまとめていた。

……学業も部活も大変、目指す未来も未だにつかめてないが、それでもタイチなりにがむしゃらに頑張っているのだ。

 

「いっけぇ!」

 

相手側のゴールの目の前へと走ってやって来たタイチは、目の前へとやってきたサッカーボールを蹴り飛ばした。

サッカーボールは真っ直ぐ飛び、ゴールキーパーの止める手をすり抜けて、ゴールポストへと入っていった。

ゴールシュートが決まり、仲間からの歓声が聞こえる中で、タイチはガッツポーズを披露した。

 

「よっしゃあ!」

 

「今日も絶好調だな、タイチ!」

 

「ああ!」

 

仲間と共に喜び合い、嬉しそうな笑顔を浮かべるタイチ。

……そんなタイチの様子を、人知れず見守っている存在がいた。

黄色の体表の恐竜のような姿、三本の爪、緑色のつぶらな瞳。

彼は校庭に植えられた木の枝の上からタイチの様子を見ていた。

 

『タイチ、頑張ってるなぁ』

 

彼の名は黄色の恐竜の姿をしたデジモン――『アグモン』。

タイチと共に冒険をしてきたパートナーデジモンでもある彼は学校で忙しそうにしている様子の彼を見守っていた。

足をブラブラと振って、アグモンはタイチを邪魔しないようにひっそりと身を潜めて眺めている所だが別段不満はなかった。

 

『タイチも暫くはサッカー部で忙しそうだし、暇だなぁ』

 

若干タイチに構うことができない寂しさを覚えつつも、アグモンはどうしようか悩んでいた。

するとそこへ、アグモンを声をかける人物がいた。

 

「アグモーン、ここにいたのね」

 

『ん?』

 

誰かに呼ばれてアグモンが下へ振り向くと、木の下にて一人の人物と一体のデジモンの姿があった、

一人はタイチと同じくらいの女生徒で、活発的な雰囲気のオレンジに近い髪色の少女。

隣にいるのはピンク色の羽毛に覆われた鳥型のデジモン。

アグモンにとっては見知った仲である彼女達を名前を呼んだ。

 

『ソラ、ピヨモン!』

 

木から降りてきたアグモンの前に立っているのは、かつての冒険で一緒に共にした者達。

少女――『小野原ソラ』と、彼女のパートナーデジモンである『ピヨモン』。

タイチと同じこの月島総合高校に通っているソラも今の青春を一生懸命過ごす高校生として頑張っているのだ。

遠くの方でサッカーをしているタイチの姿にソラはやれやれといった様子を浮かべた。

 

「タイチのヤツ、サッカー頑張ってるようね」

 

『うん、タイチ、サッカー部のエースになったんだよ』

 

「うん、知ってる。私が話を聞いた時は喜んでいたけど、大変な事もあるのよね」

 

アグモンの言葉を聞いてソラは優しそうな笑みを浮かべる。

その隣にいたピヨモンも付け加えて嬉しように話しはじめる。

 

『ソラ、あなたも華道部で頑張ってるのよ』

 

『確かお花を使って芸術を表現するんだよね。凄いなぁ』

 

『とってもすごいんだから、この前なんかソラの生け花が入賞したのよ』

 

ピヨモンは嬉しそうにソラとアグモンの周囲を飛び回る。

どうやら彼女が賞状を取った事を自分の事のように喜んでいるようだ。

文字通り空へ飛ぶような勢いのピヨモンにソラは思わず噴き出す。

 

「ふふっ、喜んでくれてありがとうピヨモン」

 

ピヨモンへとニコリと笑いかけながら感謝の言葉を口にしたソラ。

パートナーからの何気ない言葉を受けてピヨモンは俄然嬉しそうに飛び回る。

そんな二人の様子を見て、アグモンは少し見つめて、何処か羨ましく思えた。

 

「二人は仲良しなんだね」

 

アグモンはソラとピヨモンの仲の良さを見た後、校庭へと視線を移す。

そこでタイチが回されたパスを受け取り、相手チームの選手を掻い潜っている姿が見えた。

変わらず大好きな事で活躍しているパートナーの姿を見て、アグモンは何処か誇らしく思った。

 

『タイチー! がんばれー!』

 

アグモンのタイチへ向けて応援する声が校庭へと響く。

その期待に満ちた声に答えるように、ボールがゴールへ叩き込まれた音が自分達の元へ届いたのであった。

 

 

~~~~

 

 

都内某所のとある音楽スタジオ。

そこでも一人の選ばれし子供達と呼ばれた少年が通っていた。

自身の仲間たちと共に防音に効いたスタジオブースにて、彼らは自慢の楽器をそれぞれ持つ。

やがて準備ができると、一人の少年が叫んだ。

 

「みんな、いくぞ。――1、2、3、4!」

 

合図の後に一同……音楽バンドの少年達は楽器を鳴らし、メロディを奏でていく。

ドラムはスティックを振るって鳴らし、キーボードは指先で奏で、ギターは激しくピックをかき鳴らす。

そして号令をかけた少年はベースギターと歌を兼任しながら自分達の音楽を作り出していた。

 

彼の名前は『岩畑ヤマト』。

彼も選ばれし子供達の一人であり、タイチとはライバル関係だった。

時には迷い、時にはぶつかり合った彼も自分自身を見つけ、こうして普通の仲間たちと共に自分の大好きな事にうち込んでいた。

かつての仲間たちとの冒険の日々は懐かしいが、今のバンド仲間との過ごす生活も大切だ。

そう思いながら胸に秘める情動をギターに込めて奏でていた。

 

やがて一度終わるとヤマトは外の風を浴びに開放された屋上へとやってくる。

程よく吹き抜ける風が素肌に当たり、演奏で火照った熱を冷ましてくれる。ヤマトが一息ついていると、そこへ誰かがタオルを差し出してきた。

見慣れた獣の手の主はつぶらな瞳で相棒であるヤマトへと声をかけてきた。

 

『ヤマト、お疲れ』

 

「ああ、ガブモン。ありがとう」

 

感謝の言葉を述べながらヤマトが振り向くとそこにいたのは青と白の毛皮を纏った一体のデジモン。

頭部には立派な一本の角を生やしているそのデジモンの名前は『ガブモン』。

ヤマトと共に冒険を共にし、一緒に成長してきたかけがえのない相棒だ。

 

『バンドの演奏はどう?』

 

「上手く行っている。ここ最近はみんなも練習に一層打ち込んでいるからな」

 

『そっか、ヤマトも頑張ってるもんね』

 

「ふっ、まだまださ。まだ目指したい夢も付きたい職業も何も見つかってないからさ」

 

自分は頑張っていると言ってくれるガブモンに対し、ヤマトははみかみながら答えた。

既に赤く染まりつつある空を見ながら脳裏に浮かべるのは、かつての冒険の思い出。

デジタルワールドでの出来事、リアルワールドでの出来事、そして二つの世界の存亡をかけた決戦。

そのどれもが今でも色鮮やかに思い出せるほど印象が強かった。

その思い出を大切に、そしてその冒険で生み出した大切なものを守るためにこれからどうするべきか考えていた。

 

『ヤマトは何になりたいの? あ、音楽が好きならミュージシャンになるのは?』

 

「それもいいかもしれないが……音楽は趣味の範囲でやりたいな」

 

『ん、どうして?』

 

「音楽は好き。だが音楽を仕事にすることってことは好きなだけじゃダメなんだ」

 

ガブモンの提案を聞いてヤマトは申し訳なさそうに苦笑する。

自分の身近にいる存在で言えば、両親の仕事が自分の好きなものがきっかけだった。

二人を見てきたからこそ言える……好きなだけじゃ仕事にはできない、と。

だから音楽は趣味のまま好きでいたいとヤマト自身はそう決めたのだ。

 

「まだまだ悩むことは多いかもしれないけど……オレの夢、見つけてみせるよ」

 

『オレもヤマトと一緒に頑張るよ。力になれるかは分からないけど、一緒に悩んで答えを見つけていきたいよ』

 

「ありがとう、ガブモン」

 

『えへへ……』

 

ヤマトの感謝の言葉を聞いて照れるガブモン。

そうして彼らの束の間の休憩を仲間のバンドマンから呼ばれるまで過ごしていた。

 

 

思い思いに青春の過ごしている今の選ばれし子供達。

彼らは己に悩みながらも夢と未来に向かって少し、少しずつ歩いていた。

 

だが彼らは知らない。

新たなる脅威が選ばれし子供達の前に迫っている事を。

 

 

~~~~

 

 

某所。

渦巻く闇の中、そこに妖しい光を纏っていた異形の人影があった。

いや、人型の異形といっても差し支えないほどの禍々しさを兼ね備えたそれは、その中心を見つめていた。

中心の闇は依然渦巻いており、まるで混沌を孕んでいるように何もかも見えなかった。

だが異形の人型――両腕がモザイクのようにぼやけている事と、騎士にも戦士にも見える外見であるその存在はボソリと言葉を発した。

 

『生まれ出でろ、虚ろの影法師よ』

 

異形の人型が口にすると、渦巻く闇の中から何かが生まれる。

まるで絵の具で塗りつぶされたようなその【影】は這い出るように闇の中から出てくると、そのまま蠢動しながら形を取っていく。

そして目の前に浮かび上がった次元の門――デジタルゲートへと【影】は飛び込み、そのまま消えていく。

門の向こうへと消え去ってデジタルゲートが閉じた後、異形の人型は再び口を開く。

 

『貴様は一体どこにいる、■■■■』

 

異形の人型が口にした呟きは、虚空の闇へと消えていく。

その瞳には異形の姿らしからぬ、燃える闘志の瞳が宿っていた。

 

 

その一方、デジタルゲートを通っていく【影】は未だ蠢動しながらその姿形を変えていく。

いくつもの腕と足を生やし、二つの大きな顎が生え、巨大な翅が生まれる。

まるで昆虫のような姿に変わりながら、【影】は別の所へと辿り着こうとする。

 

 

――――その先にあるのは、人間がいる世界・リアルワールド。

選ばれし子供達が住む世界に、忍び寄る脅威が少しずつ、しかし確実にやってきていた。

 

 

 

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