デジモンバトルユニバース -Re:Tri Adventure-   作:地水

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第3話:放課後の邂逅

 城南大学附属高校、放課後になったとある教室。

そこではカズトは自分の席に座り、向かい合っているユウナの前で難しい顔を浮かべていた。

カズトの手には今度はいる新入生についての資料があった。

 

「小太刀ミミ……一体どんな子なんだ?」

 

「先生によると、中学生になってから海外で生活していて高校生になった今に返ってきたいわば帰国子女って感じね」

 

「予算は先生が負担するとはいえプレゼントを用意しろって言われてもな、どんなの揃えろっていうんだよ」

 

「うーん、Welcomeって英語の標識を作って掲げるとかどうかな」

 

二人はキヨカ先生から託された仕事である転校生の小太刀ミミの出迎えにどう対応するか悩んでいた。

一度も出逢ったことない相手に失礼のないようにしたいが、一体どうすればいいのか……。

 

「たっく先生も無茶言ってくれるよなぁ。会ったこともない女子生徒の歓迎を計画しろって」

 

『元々はカズトが寝坊して、ユウナに起させて遅れたが原因じゃないか』

 

「うぐっ、ドルモン……」

 

ひょっこりと顏を出して指摘したのは相棒であるドルモン。

その隣にいるリュウダモンと共に今はいないクラスメイトの席に座り、カズトとユウナが終わまで様子を伺っているのだ。

意外と手こずっているカズトの様子を見て、リュウダモンが訊ねる。

 

『ねぇ、誰か親しい人に聞くってのはダメかな?』

 

「リュウダモン、どうしてなの?」

 

『だってユウナ。何を上げたら喜ぶのか分からないならそのミミって人と親しい人に聞いたらいいんじゃないかと思って』

 

「ああ、なるほど。リュウダモン、いい所思いつくね」

 

リュウダモンの意外な意見を聞いて、ユウナは納得してリュウダモンの頭をなでた。

気持ちよくしている様子を浮かべていると、そこへドルモンが気になった事を指摘する。

 

『でも、小太刀ミミに親しいヤツ、カズト達の近くにいるのか?』

 

「とりあえず先生に伺ってみるしか……ん?」

 

教室の外にある廊下から誰かが歩いてくる足音が聞こえてきて、カズトは振り向く。

その隣ではユウナがドルモンとリュウダモンに隠れるように催促し、二体はすぐさま教壇へと隠れる。

丁度ドルモン達が教壇の中へと隠れた瞬間、扉が開いて誰かが入ってきた。

 

「あれっ、藤原君に飛鳥さん。まだいたんですか?」

 

二人の苗字で呼ぶのは同級生でクラスメイトである男子生徒。

カズトより少し小さな身長といった小柄な印象を受けているその彼の名前は『氷川コウシロウ』。

この春から一緒のクラスになったが、そんなコウシロウへユウナが恐る恐る話しかけた。

 

「確か……氷川コウシロウ君、だったよね?」

 

「はい、そうです。ああ、そっか。こうしてお二人と面と向かって話すのは初めてですもんね」

 

「中々話す気概がなかったもんな。俺達と氷川って」

 

そう、カズトの言う通りコウシロウと話す機会は二人にとってなかったのだ。

というのも、城南大学付属高校に進学したコウシロウは成績優秀だけでは言い表せないほどの卓越した知力を有しており、その才能はアメリカの知り合いの事業に手伝っているほどの噂があるという。それ故に自分専用のオフィスを構え、学業の傍ら高校生らしからぬ多忙な日々を過ごしているという事をまた聞きしていた。

こうして話すのも実は今まで一度もなかったのだ。

 

「僕は教科書の忘れ物の取りに来たんですが、お二人は何を?」

 

「実は先生に頼まれて、今度来る新入生の歓迎企画を考えることになってね」

 

「飛鳥さんと藤原さんのお二人でですか? 大変ですね……」

 

「ただまだ日本に帰ってきてない帰国子女だから、何渡せばいいの変わらなくて。名前は小太刀ミミって言うんだけど」

 

「ええっ、ミミさん?」

 

コウタロウが目を見開いて驚いた様子を伺った。

まるで聞き覚えのある知人を耳にして驚いているような様子を見て、カズトとユウナは互いに顔を見合わせる。

もしかして……と、そう思った二人は、まずカズトの方からコウシロウへと訊ねた。

 

「氷川、小太刀ミミって子の事知ってるのか?」

 

「えっと、はい。ミミさんとは小学生の時からの知り合いでして……」

 

「ホント?じゃあ彼女の事教えてもらっていいかな? このクラスに転向することになってね!」

 

カズトとユウナは藁にも縋る思いでコウシロウへと迫った。

二人の必死な押しの強さにコウシロウはたじたじになりつつ、自分の知る限りのミミの好む事を少なからず教えた。

あらかた教えた後、カズトとユウナは感謝を込めて頭を下げた。

 

「ありがとう、氷川。これでなんとか彼女に渡すプレゼントを決められそうだよ」

 

「僕は大したことしていませんよ。それよりお二人と話せてよかったです。少しだけですが印象変わりました」

 

「んん? 印象って?」

 

コウシロウが口にした【二人の印象】というユウナは言葉に引っかかりを感じる。

すると笑いながらコウシロウは冗談交じりに答えた。

 

「だってお二人、仲がいいじゃないですか。こう言っては何ですが、お付き合いして何年も経っているってクラスメイトが言ってました」

 

「「えっ!?」」

 

コウタロウの口にした言葉を聞いて、一気に顏が赤くなる二人。

確かに自分達はあの事件――クラモンに襲われるユウナをカズトが助けたきっかけで自然と知り合うようになった仲だが、男女の仲のようにお付き合いしていない。

……正直、彼女/彼とそんな仲睦まじい関係になりたいと二人は思っていた。だが内に秘める気持ちを今伝えてもいいものなのか、もしかしたら迷惑するんじゃないかと2人は足踏みをしている。

だから、今日初めて喋ったコウタロウにすら"付き合っている男女"と認識されていた事にカズトとユウナは戸惑った。

 

「えっと、その、あの、氷川、あの、俺達は、そのな」

 

「……う、うぅー」

 

カズトは慌てて弁解の言葉を探すが、先程の言葉を意識してしまってか言葉と思考が纏まらない。

ユウナは赤くなった頬に手を当てて、小さく唸ることしかできなかった。

二人の様子に自分が犯した失態に気づいたコウシロウは謝罪の言葉を二人へ述べる。

 

「す、スイマセン。僕、失礼な事を……」

 

「「だ、大丈夫です!」」

 

「えっ、あっ、はい?」

 

カズトとユウナの重なった言葉にコウシロウは気圧される。

少しの静寂の後、カズトとユウナが落ち着きを取り戻した後、コウシロウは自分の腕につけた腕時計を見てハッと我に返った。

 

「しまった、もうこんな時間か」

 

「あっ、ホントだ」

 

ユウナが教室の備え付けられた時計を見て、既に短い針が午後5時半に差し掛かっている頃に気づく。

自身の席の机から教科書を回収し、鞄に入れたコウシロウはカズト達の方向へ向くと、別れの言葉をかけた。

 

「じゃあ僕はここで失礼します。またミミさんについて聞きたかったら聞いてください。お力になります」

 

「ああ、また明日な。氷川」

 

「本当にありがとうね。ミミさんの歓迎、絶対成功させるからね」

 

感謝の言葉を口にしたカズトとユウナに見送られて、コウシロウは教室から去った。

思いもよらない助っ人が完全に去った後……カズトとユウナはそれぞれの机に突っ伏した。

まるで壊れた機械のように湯気を上げん勢いで顏を赤くしながら。

 

「うぐぐ……俺達、あんな仲って認識だったのかぁ」

 

「しかもクラスメイトが言っていたってことは、きっと皆も同じ認識なんだよぉ」

 

「「うぅ……」」

 

自分が今顏を赤くしている様子を相手に見られたくないため、突っ伏したまま動けない様子の二人。

そんな恥ずかしい思いをしている二人へ、教壇から出てきたドルモンとリュウダモンが追い打ちの言葉をかけた。

 

 

『『いっそのこと、付き合えばいいじゃん』』

 

 

容赦のないパートナーデジモンからの一言が思春期のハートに突き刺さる。

素直になれないがために再起不能寸前まで追い込まれる二人であった。

 

 

 

~~~~

 

 

 

カズト達がいた教室を去ってすぐの事。

かつての仲間との再会を密かに楽しみになったコウシロウへ、そこへ小さな影が出迎えてくれた。

 

『コウシロウはん、随分と長話してましたね』

 

「テントモン、待っててくれたんだ」

 

『そりゃもちろん。ワテはアンタのパートナーデジモンですさかい』

 

親しい様子でコウタロウを待っていたのは、一体の昆虫型デジモン。

赤いテントウ虫のような姿をしたデジモン『テントモン』はトコトコと歩いて並び立つ。

コウシロウにとって見慣れた帰りの光景を繰り広げながら、先程あった事を話した。

 

「どうやらミミさん、うちのクラスに転向するみたい」

 

『ほう、ミミはんがコウシロウはんと同じクラスに。耳寄りな情報でんなぁ』

 

「うん、こう言っては何だけど騒がしくなるだろうなぁ」

 

脳裏に思い浮かべているのは、かつての冒険で見た表裏のない彼女の姿。

中学生に進学した時は父親の仕事の都合でアメリカへ行ったが、この度帰ってくる事になった。

それは仲間内でも事前に知らされていたが、まさか自分のクラスに編入してくるとは驚きの限りを尽くす。

 

『ミミはんが来るってことは、パルモンも一緒に帰るってことでっしゃろ?』

 

「そうだね。アグモン達もきっと喜ぶよね』

 

『そうでんな。あとで皆はんにメールで共有しときましょ』

 

「アグモン達もきっと喜ぶんじゃないかな……あっ」

 

彼女のパートナーデジモンであるパルモンの名前を口にして、少しウキウキと浮つくテントモン。

そうして校舎の上履き入れの所までやってくると、コウシロウはある事を思い出す。

 

「そういえば藤原さんと飛鳥さん、あの二人以外に誰かいたような気が……」

 

『藤原はんと飛鳥はんって、同じクラスメイトのお二人でっか?』

 

「うん、僕が入る前に二人以外の誰かと会話していたような。そんな声を遠くから耳に聞こえたんだけど」

 

『案外ワテらのようなパートナーがお二人についてたり』

 

「あの二人が僕達と同じ、か。きっとそれは、夢のある話だね」

 

コウシロウはテントモンが口にした冗談に対して、思わず笑みを浮かべた。

カズトとユウナ、彼ら二人が自分達と同じデジタルモンスターの存在を知り、なおかつパートナーデジモンと一緒に生活している……。

ある意味、コウシロウのような選ばれし子供達にとっては夢のある話であった。

 

 

 

こうして、運命は動き出しつつあった。

カズトとユウナ達――のちの"バディリンカーズ"と"選ばれし子供達"の運命の出逢いはすぐそこまで迫っていた。

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