時刻は十時半、カランカランと言う音と共に、目立ちやすい赤髪と鮮やかな青と白い髪の二人がこっちの方へと向かって来た
「いぬゅい、来たよ~!」
「とこちゃん。おはよ~」
「二人とも、おはようさん」
「いぬゅい聞いてよ!」
「どうしたん?」
アンジュが嬉しそうに目を光らせ戌亥に話しかける
話を聞く限り、彼氏を錬成するに当たっての必要な錬金術が上手くいったようだった
「いや~!これは彼氏を錬成出来る日も近いね!」
「うん、そうやね」
二人が席へと座り、アンジュがどんどん話を進めていく、相づちを言いながら食器を拭いたり棚に戻したりする
「あんまり言いふらさないようにね」
リゼもアンジュへ注意をするが顔は笑っている
これが普段の日々、平和な時間であり、生きていく上で最も大切な時間でもある
...だが、そんな平和も長く続くだろうか
戌亥はアンジュやリゼと違い、数百年を超える時を過ごしてきた。だからこそ、二人の安静、そして、永遠に続いて欲しい時間だった
心からの願い
「でね...」
アンジュが元気に話を続けようとした瞬間...
「「「!?」」」
突然な大きな揺れ、いや、大きいと言えるレベルではなかった
「な、なに!?」
「二人とも!カウンターの下に!」
「わ、分かった!」
二人は下へと隠れ、私自身もカウンターを掴み、耐える
食器は大半が閉まってあったから落ちることはなかったが、さっき入れたばかりの棚はまだ開いており、食器が落ちる
「!」
落ちる瞬間に揺れは収まり、その瞬間腕を伸ばし、驚異の体幹で食器を支える
(あ、あっぶな~...)
ここ数百年で一番焦った、寿命縮むて
「っと...二人とも、大丈夫やった?」
「う、うん...」
「とこちゃんは...大丈夫そうだね」
「うん、正直食器の方が危なかった」
「って言うか、今の揺れ...」
「うん、明らかにおかしかった」
「そうやね」
仮にあの揺れが自然現象として行われたのならもう少し長いはずだ。だがさっきの揺れは言っても数十秒、考えたくはないが、意図的に行われたとしか思えなかった
「ちょっと外出てみる」
「あ、アンジュ、私も行く」
「私も」
三人で外へと向かい、外の様子を確認しに行く
「特に何もない...地震でもないし、意図的にするには相当な力が要るから出来るとは思えないし...」
「うーん...あ!二人とも、あれ!」
「あれ?どうしたんィゼ...え?」
「あれって...なに...?」
空を見上げると、そこには大きな亀裂が入っており、時空が歪んで要るようだった
「これって...夢?」
「いや...夢じゃない...はず」
「.......」
「....戌亥?」
戌亥は、今までに見ないような顔をしていた。それもそのはず、戌亥には、あの風景には見覚えがあった
「...いや、二人とも、大丈夫や、ただ...契約が行われてるだけや」
「え?契約って...」
「あれは...私達には関係ない」
「で、でも...」
「.......」
(....でも、約束したもんな)
「二人とも、できる限り逃げて、出来れば周りにいる人達の事も連れて」
「え....でも戌亥は...」
「とこちゃんは...どうなるの?」
「私も、約束を果たしにいくだけや、別に死にもせんし怪我もしん」
「だから、安心して」
「...分かった。戌亥、信じるよ」
「え?アンジュ!」
「ありがとう。ンジュ」
「ん~...とこちゃん。絶対に無事でいてね!」
「おおきに、安心しといて」
私は亀裂の方へと向かい、二人は反対方向へと向かっていった
大きな揺れが収まり、外に出ると大きな亀裂が空へと出来ていた
「これは...なんだ?」
亀裂の中から一人が降りてくる
「契約を果たしに来たぞ。叶」
「貴方は...残念ながら、貴方のことは覚えていないようです」
「まあ、そうだろうな。あれは数百年も前の事だ」
上からあからさまに神の様な人物が叶を見下ろす
「あいつはいないのか?それとも見放されたか?」
(誰のことを言っているんだ?)
疑問に思っていると、後ろから聞き慣れた声が近づいてくる
「なあ叶、今の...音...」
後ろから葛葉がやってくるが、上にいる神を見た途端、目の色が変わる
「てめぇ...何のようで来た?」
「ほう、見放されてはいなかったようだな」
「ああ...葛葉の事を言っていたんですね」
「というか...葛葉、知り合い?」
「いや...知らなくて良い...あいつは、お前を殺そうとしたクソ野郎だ」
「何を言う、輪廻転生の掟を破った大罪人を制裁するだけだろう?」
「というか...あの小娘はいないのか」
「小娘...?何言ってんだ?長生きしすぎてボケの度を超したか?」
「まあいい...お前達を殺した後、小娘を探し出せばいい話だ」
「叶、逃げろ」
「え?でも」
「っ!良いから逃げろ!」
「死ね」
神が拳を振り下ろすが、直前で葛葉が受け止める
「とにかく!遠くへ逃げろ!」
「っ、分かった」
叶は葛葉とは逆方向へと向かって走り始める
「どうした?アレクサンドル・ラグーザ、力が落ちて要るぞ!」
「てめぇみたいに何百年も暇じゃ無かったんでね!だがそんな奴に攻撃を止められて恥ずかしくねえよかよ?自称神さん?」
「俺は正真正銘の神だ、しかも、まだ俺は十%の力も使ってない、お前をここで即殺すことだって出来るんだよ!」
「へぇ?ならやってみろ!」
互いに殴り合う、だが少し葛葉が押されていた
走って向かっていると奥から誰かが走ってこちらへ向かってきていた
(あれは...)
「あ、戌亥さん。どうも」
「ど、どうも...」
(あんまり今は顔見たくなかったな)
「今、危なかったやろ。早く行き」
「はい、ありがとうございます、では」
横を通り走って行く
「...はぁ、今は、あっちが問題や」
「押されて要るぞ。ラグーザ!」
「その名前で呼ぶな、今は立派な『葛葉』って名前があんだよ」
互いに言葉をぶつけ合う
葛葉が未だに押されており、少しずつ体力が削れてゆく
(まずい...このままだと...)
「隙が出来て要るぞ!」
「っ!しまっ...」
隙を突かれ心臓へと手が伸びる...このままだと、死ぬ
その瞬間...
「久しぶりやね、まだ懲りてへんのやな」
「っ?!」
神の手がもがれ、宙に浮く
その刹那、蹴りが飛び神は即座に後ろに下がる
「ついに会えた...見つけたぞ!」
「別に私は会いたくなかったし、神さんなら早く天界に帰ってもらってええ?」
「貴様に...何年間封印されたと思っている...」
「何やったっけ...覚えてへんわ、ごめんな」
「貴様!許さないぞ!」
次の瞬間、神の体に光が差し、肌色から白の肌へと変わり、青い線が入り込む
「絶対に許さない!ここで殺してやる!」
「くずはん。まだやれそう?」
「くずはんって...初めて言われた...まあ、いけますよ」
「二人で、こいつもう数百年封印しよや」
「そうっすね。なんなら千年は封印しましょう」
「戯れ言を...死ね!」
時空が歪むと同時に、戦いの合図が始まった
走り続けると、また二人の人と会った
「貴方達は...」
「あ、叶さん」
「アンジュさんに...」
「あ、どうも...リゼヘルエスタ...です」
「....コミュ症?」
「ウッ...(絶命)」
「何で叶さんが...?」
「あっちの方で、神と名乗る奴が、今葛葉と戦ってて、それで逃げろって言われて逃げてる最中です」
「...っていうことは...もしかして叶さん、戌亥と会いました?」
「はい、会いましたけど...」
「何か言ってましたか?」
「何も言ってなかったけど...」
少し考え込み、言い放つ
「どこか、諦めた様な目をしてました」
「「っ!?」」
その瞬間、二人の顔が暗くなる
「分かりました」
その時、アンジュが手から何かを出す
その何かは突然大きくなり、杖へと変化した
「...アンジュ、何をしようと...」
「今から、魔界に行く」
「え.....?アンジュ....?」
「それ、本気ですか?」
「ええ、勿論」
「理由を聞いても?」
「今のまま、戌亥を放っておくことは出来ない...戌亥は...自分の命を使ってでも、止めようとしてるんだから」
「...なら、私も行く」
「リゼ...?ダメ...絶対に」
「ダメじゃない。なら、二人が命を差し出してる中、私だけ逃げろって言うの?...なら、私は二人の事を恨むよ」
「...分かった。ただし、何もしないこと...これだけは守って」
「うん...」
魔方陣を作り、二人が陣の中へ入る
「叶さんは直ぐにでも逃げてください」
「.......」
魔方陣は間もなく完成する
その時、叶が言葉を放った
「なら、僕も連れて行ってください」
「...何でですか?」
「...何でですかね。でも...今ここで行くことを諦めると、僕は死ぬまで後悔する気がする...それだけです」
「分かりました...ただし...いや、良いです」
「こういう時って、アンジュさんかっこいいよね」
「せめてかわいいって言ってください...さぁ、行きますよ」
三人が入り、魔方陣の光が強くなる
「戌亥...絶対に死なせない」
「とこちゃん...待ってて」
「葛葉...死ぬなよ」
思い思いの言葉を言い、三人の姿はなくなった
その瞬間、大きな音と揺れが、瞬く間に世界に響いた
前編なので、後編もあります