準備室を出て俺達三人は図書館に戻った。そのさいE組のドアを確認したがまだ鍵がかかっている。
「E組、宮内君の兄弟が生きてるのかな。それとも別の人なのかな?」
高橋が不安そうにそうつぶやいた。先生の予想だと一番可能性があるのは林真刈矢。けど、そいつは今学校にいないからこの殺し合いに参加はしていない。次点が宮内兄弟。けど、こいつらはどちらしか出てこれないはずだ。だから俺はその兄弟も出てこないと考えて、他の人が出てくると予想している。ただ、ほかの28人についての情報は全くない…いや…そうだよ。いるじゃないか。俺と未由以上に詳しいやつ。
「高橋、そういえばE組の担任てどんな人なんだ?つか誰」
「E組の先生は英語の関根先生だね。でも、あの人って聞いた噂だと酒癖が悪くて学校内で飲酒していたとか悪い噂しか聞かないね」
なるほど。真っ先に殺されるな。
「じゃぁほかに高橋が知っている範囲で出てきそうなやつ誰かいたりするか?例えば運動神経がいい人とかテストの点が良いやつとかそういうやつ」
とりあえず高橋なら一人ぐらい知っていると思う。なんせ、俺と未由以外で唯一のまっとうなコミュニケーションをとれる人だからだ。
「う~ん…ちょっと僕も分からないね…」
ダメだったか。少し期待しすぎたか。まだ入学して2、3ヶ月。そこまで人脈はないか。
「暦さん。先生のところではその情報は必要性はないって言ってませんでしたっけ?」
「そうだけど、やっぱ少し気になってさ。殺し合うかもしれないし、こうやって集団で行動するかもしれないからな。どちらにしろ、出てきたらゲームが進む。先に知っていればこちらが少し有利になると思うんだ」
そう、E組のやつがどんな奴であれ、教室のドアが開き出てきたら1年生は全員出たことになりゲームが進む。
「ゲームが進む…」
高橋は少し沈んだ顔をしている。高橋は自分のクラスの連中の命を背負っているという考えが俺と未由より強い。だからゲームが進むことに緊張していると思う。
「やっと進むんですね」
逆に未由は少し明るかった。その気持ちは俺も同じだ。ゲームが進めば別の階に進むことができる。つまり、図書館のおろされているシャッターもどいてさらに本が読める。
「けど、それはE組のドアが開いた時だ。今はまだ開いてないから結局はまだ待つところだ」
そしてE組のことを考えながら本を読むことにした。今の俺たちにはそれしかできない。
その後、暦たちは図書館で本を読んだり調理室に行ったりE組のドアを確認をしたり、高橋のクラスや特別教室で道具を調達などをして変化のない二日過ごした。そして、殺し合いが開始されて7日目の朝10時。一年生三人は、もはや軽い日常になっている調理室で食事をしている。
「ごちそうさまでした♪今日おいしかったです♪」
未由は食べるだけ食べて作らないし片づけをしないでドアの近くで待機した。結局俺と高橋で片づけをすることになった。ちなみに、今日の朝食はレシピ本を見て食べたくなったスコーンだ。ヨーグルトソースとブルーベリージャムをつけて食べた。
「暦君は料理できるんだね。やっぱり本を読んで作り方学んでるの?」
皿洗いしながら高橋は聞いてきた。
「そうだな。両親が共働きだったから自分で作ることが多かったし、今一緒に住んでいるおじさんも帰ってくることは少ないから一人で作っているな」
それに、興味を持ったら作る。一人だからこういうのが無償に作りたくなる。
「そうなんだ。一人で大変じゃないの?」
「いやぜんぜん」
一人で大変ということはない。むしろ一人でいる方が落ち着く。そうこうしているうちに洗い物が終わり図書館に戻る…いや、そろそろ目覚めてるか。
「すまん高橋、未由。先に戻っててくれ」
高橋と未由に先に戻るように言っておく。高橋は不思議そうな顔でうなずいてくれたが、未由は少し不満そうだ。
「暦さん。私もついて行っていいですか?」
だろうな。きっと未由は気づいている。そう、俺は先生の所に行く予定だ。けど、未由がいると結局は予定が狂うからできれば一人で行きたい。
「すまん。俺トイレいくんだ」
俺は愛想笑いでそういう。こういう時は大人の対応を…
「待ってます♪中で!!」
この変態が…!!けど…ダメだ…冗談かもしれないけど未由なら本当にやりかねない…
「すまんが未由。今回だけはおとなしく戻ってくれ。これは俺だけの問題だ」
未由は流石に聞き分けのない駄々っ子ではない。これで『それでも行く』といわれたら俺が諦めて未由を連れていくか。
「…わかりました。お昼ご飯期待していますね♪」
…これはついて行かない代わりにおいしいの用意しろってことか?ともかく、おとなしく下がってくれて助かる。
「わかった。夕飯期待してろよ」
「…あれ?お昼なんですけど。私が言ったの…」
「時間が足りねぇよ。夕飯豪華にしてやるから待ってろ」
「…わかりました」
少しふくれ面だがは聞き入ってくれて未由と高橋は図書館に戻っていった。俺は図書館に戻らず社会準備室にいるあれとまた対面する。うす暗く、埃だらけの準備室。二日前に来たときは古臭い紙のにおいだけだったが、今はその中に少し焦げたような臭いと数種類の汚臭が混ざっている。そして、教室のなかに目的の人物が二日前と同じ状態でいた。しかし、以前来た時以上に息は荒々しくなっているし、その真下の床の少し濡れている。
「よう。起きてるか。」
相手は俺の声に反応するように唸り始めた。口の中は未由が口いっぱいにティッシュを入れてあるしガムテもしてあるから話すことなんてできない。だから、俺は口に張られているガムテを取る。そうすると相手はすぐに口に入っているティッシュを吐き出した。
「ハァハァ…おい…本田。わかってんだよなぁこんなことしてぇ!!」
まぁ、当然の反応だよな。相手からすると不意打ちを喰らったんだ。怒っているのは当たり前。
「そうだな。未由の件については悪かった。」
「俺が言いたのはそんなことじゃね…」
相手は大声を出したが腹の傷が痛んだのか、すぐに声がかすれた。
「なんで俺はまだ拘束されている…情報を吐いたら拘束を解く約束だろうがぁ…」
「あぁ、なんだ、そのことか」
「はぁ?…てめぇ…そんなことかとはどういうことだ…」
こいつ、気が付いていないのか。まぁ、気づかれても関係ないけど。
「バカかあんた、いい加減気づけよ。俺に騙されてること」
「騙されている…だと!!」
「あぁ、そうだよ。俺は最初からあんたの拘束を解くつもりなんてない。不可侵条約って言っても、こちらとしては、厄介なあんたを騙して縛り付けておきたかっただけなんだが」
「ふざけるなよガキがぁ!!」
「そもそも、俺とアンタは殺し合いをした仲だ。『極限の殺し合い』の最中、俺は一か八かの賭けをしてその賭けに勝った。あんたは気絶したけど俺はその時、いつでも殺すことができたんだ。今生きているだけ感謝してほしいな」
「なにが感謝しろだ!餓死を考えていないというところですぐに思い出していればよかったよ・・・おまえは意図的に『エコノミー症候群』にさせて俺を殺そうとしたことを…!!」
エコノミー症候群とは、肺塞栓症、または、深部静脈血栓症ともいわれる病気。長い時間座り続けることによって発生することがあって、静脈に血の塊ができて、それが血流にのって肺の血管を塞ぐ病。だったか。
「残念。それも違う。それは確実に発症するとは限らない。それとは別の方法だ。ただ、わからないなら考えても無駄だ。」
「何が無駄だ!約束だろ解けよ!!そしてすぐにお前を殺す!!」
「…呆れた。ここで『はいそうですか』と解くバカはいない」
「バカとかそんなのじゃなくて人間として『あたりまえ』だろうが!!なんのための条約なんだ!!」
あたりまえ。ここにきて一番似合わないその言葉を聞いて俺は思わず笑ってしまった。
「『あたりまえ』ねぇ。天上天下唯我独尊。俺を含めた人間という生き物は自分が一番大切で他の奴なんて二の次だ。殆どの奴が、常に誰かの上に立ち、自分が有利になるように考え、不満があるならどんな相手だろうと突き落とすしたり、暴力を振るったり、嘘偽りを平然と言う。場合によっては常識やモラルなんていう言葉を悪用する。逆に自分が不利になって許して欲しい場合は、どんな相手に対しても、プライドを投げ捨てていくらでも涙を流して頭を下げる。現に、あんたも俺に対してそうだったよな。つまりは、最終的に自分の周りが平和なら後はどうでもいい、自己中心的なエゴの塊だ。あんたの言った『あたりまえ』も当然これのなかに該当している。生き残りをかけたこの空間、言うなれば太古の弱肉強食の空間とでも言うべきだな。ここでは騙された奴が弱者だ。どんな形であれ、どんな手段を使ってでも生き残る。生き残ったやつの方が偉い。力のない奴が強い奴に対してどんなに泣き叫んでも無慈悲に喰われるだけ。つまり、あんたは初めからここで生き残ることなんて出来なかったんだ」
これは本だ読んだ知識も含んでいるが、少しは俺の持論だ。上に立とうとは思わないが、俺自身は本が読めるなら周りはどうなっても構わないという人間だ。当然、邪魔するやつがいたらぶっ飛ばす…
「ざけんなよ上から偉そうに!!なら、お前にとって自分以外の他人である白々木と高橋はどうなんだ!!」
未由と高橋についてか…他のやつは二の次とは言ったけど、俺にとってあいつらは仲間だ。すぐに見捨てるつもりはない。高橋はどう考えているかわからないが、未由は何かない限りずっと俺についてくるだろう。だが、今俺がこのことを考えるのは違う。そう、
「それは今この場では関係ないことだ。だから言う必要ない」
「て!てめぇ!!本当にいい加減にしろよぉ!!俺を怒らしてただで済むと思うなよぉ!!」
ただ、いい加減こいつに話すこともなくなってきたしムカついてきたため俺はあいての額に銃口を直接突きつける。そうすると声は次第になくなってきた。
「ほら、こうすると今、自分が今どこに立たされているかわかるだろ。ほら、お得意の詭弁の一つでも言ってみろよ。まぁ、こっちはいつでも殺せるんだから関係ないけどな」
「・・・ふざけるなよ!!ガキッ…!!
あいてが叫んでいる途中に固いもの同士がぶつかる音する。なぜなら、俺が相手の叫んでいる間に持ってきておいた厚さ2cmぐらいの鉄の板を口に入れたからだ。叫ぶことが明確で、十中八苦『ガキ』と発するのを予想して、口が閉じるキの発音の前に、鉄の板を相手に噛ませる。そして、ひるんでいる隙に板を噛ませたままガムテープで口を塞ぐ。相手は唸り声を上げて何かを言いたそうにしているが大体わかるから無視する。
「あぁ、そうそう、一つだけ言っておくよ。俺が次来るとき、あんたは俺に『殺してくれ』て乞うだろうよ。けど、慈悲深い俺はそんなことしないから安心しな」
俺はそんな捨て台詞を吐きながら準備室を出た。実際は捨て台詞ではなく予言だ。先生が言ったエコノミー症候群になったならそれはそれで構わない。ただ、俺の狙いはそれ以上の苦痛だ。殺してくれと乞うほどの痛み。常人では予想もつかないだろう。俺自身、本で知っただけだで、そのことについて半信半疑ではあるが、もしその通りなら、昔の拷問レベルの苦痛を与えることができるらしい。あんなやつには慈悲など与えるな。殺すときは限りなく残酷に、無慈悲にすべてをズタボロにする。これで俺の私怨を晴らすことが出来る。そんなことを考えていたらすぐに図書館の前だ。そのまま入る前にE組のドアを確認。…まだ鍵がかかっているようだ。そして図書館に中に入る。
「あ、磨さんお帰りなさい」「お帰り本田君」
入口のすぐ近くの机で未由は本を読んでいた。高橋はカウンターの後ろにある書類を見ていた。
『ヤッホー!みなさんお久しぶり~!アキちゃんです!』
そして唐突にいつ振りかの放送が入りウザったいアキの声が響く。
『三人ともそろったしすこしお知らせがありま~す!!』
お知らせ…俺には何も予想できない。恐らく未由と高橋もだろう。
『え~ゴホン。今、1年生たちはA、B、C、D組の4クラスが開いています。しか~し!!ここで異例の事態が起きました!』
「異例の事態?どういうことだ!」
俺はすぐに叫んでしまった。このゲーム。異例の事態が起こってしまうということはこちらの命が危険になる可能性がある。そういうのには敏感になっておかないと死んでもおかしくない。
『ちゃんと説明するから大丈夫だよ暦君。それで、異例の事態とは…ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルバン!!E組が全滅しました~!!』
E組が、全滅…?どういうことだ全滅って…つまり、生存者がいないってことなのか…じゃあ、ゲームは・・・どうなるんだ…?
23話目でございます
1週間後に次話を投稿できたことに自分でも驚いていますw
この回を書いているとき、結構遅い時間で、眠気を押し殺していたので意味わからない文章が多いと思いますw
この話は正直暦君と先生の会話が見所ですかね?
サブタイトルについて。
異例は一番最後の方ですね
違令は元々は「法令に違反する」という意味ですが、この場合暦君が条約を破るという感じのニュアンスで使っています。意味違いますが…
こまけぇことはいいんだよ!!だってかっこいいんだもん!(個人的に)
それと、この回で使った「天上天下唯我独尊」これは私の勝手な解釈がたくさん入っていますw簡単に言うとみんな自己中て感じのニュアンスで考えてください。暦君の「俺を含めた人間」というのは個人的にポイントですね。
実際、暦君は有利ということが分かっているから色々偉そうなことをいえるのです。
後、セリフの中に「あんたの言った『あたりまえ』もこの中に該当している」
これは「~場合によっては常識やモラルなんていう言葉を悪用する。」のところに該当しています
それと、友人に『未由ちゃん偉そうじゃない?なにもしてないじゃん。後、暦君のなに?』
といわれたのでここで投げやり気味に返します
なにもしてない?そうだよ!あの子自由奔放で何考えてるかわからない子だもん!!
そして暦君なに?と言われて。これは、学校内で一番暦君に接している時間が長い人と言っておきましょうかね。少しづつわかってくると思いますよ
そして、本文に出た「エコノミー症候群」について
ググりました。
ということで、もう少し詳しく知りたい人はググれば出ます
23話目もできる限り早く投稿する予定です!
今後も私と私の作品をよろしくお願いします!
もし面白いと思ってくださったなら感想やお気に入り登録などお願いします♪
23話現在で多分、今までで一番山場に時間かけたかもしれない…特に暦君の「天上天下~」の自論ところは5,6回以上書き直して本文になりました。気まぐれ、というかもったいないので書き直した中で二番目の候補を最後にのせておきます
「『あたりまえ』ねぇ。天上天下唯我独尊。俺を含めた人間という生き物は自分が一番大切で他の奴なんて二の次だ。。自分のことを棚に挙げたがり、常に誰かの上に立ち、その愉悦感に浸りたがる。我が強く、自分が優秀と思う人ほどこれは強くなる。相手が完全に格下だとなおさらだ。さらに、なにか不満があるならどんな相手だろうと突き落とすしたり、嘘偽りを平然と言う。場合によっては常識やモラルなんていう言葉を悪用する。逆に自分が不利になって許して欲しい場合はどんな相手に対しても、プライドとかを投げ捨てていくらでも涙を流して頭を下げる。現にあんたも俺に対してそうだったよな。相手をいたぶることを楽しみ、弄ぶ。けど、あんたの絶対的な確信のせいで隙が出来、負けた。そしたら、情けなく涙流しながらの命乞い。そう、絶対的確信というのがこの空間では命取り。格下相手に負ける要因。この空間は言うなれば太古の弱肉強食の空間とでも言うべきだな。どんな形であれ、どんな手段を使ってでも生き残る。生き残ったやつの方が偉い。つまり、あんたは初めから生き残ることなんて出来なかったんだ」
ボツになった理由としては、読んでもらってわかると思いますが、言ってるうちに話題がそれすぎてしまったからです
(書きたいことがまず、観点ずれていました…)
24話目もできる限り早く投稿したいと思っています
これには理由がありますが…今は内緒です