【完結】某海の超一流コックにドハマりした顔とスタイルの良いお兄ちゃんが歌姫先輩と硝子先輩に「絶対に逃がさないから」と死ぬほど追われてる件。 作:SUN'S
私は炎代燦、炎代サンとか呼ばないようにね。
結界術と式神の得意な伊地知くんと一緒の任務はハッキリと言えば楽で簡単だ。これは彼を貶しているわけでもないし、バカにしているわけでもない。
さっきの楽で簡単というのは「戦いやすい」と言えば分かりやすい。役立たずや結界しか出来ないヤツ蔑む奴らはバカだ。後方支援がいるから戦いやすいし、周囲への被害を最低限に抑えられるのだ。
「そ、それじゃ、行きましょうか」
しかも伊地知くんは私を普通の女の子のように扱ってくれる。自分のほうが怖がりで臆病なのに私より前を歩いてくれるし、私が怪我しないように瓦礫やゴミなんかは蹴っ飛ばして退けてくれる。
やっぱり、七海くんより紳士だね。と、私は密かに伊地知くんを讃える。いつも五条先輩にパシられてるのを止められなくてごめんね。この任務が終わったら一緒にご飯を食べようね。
ふと伊地知くんが立ち止まる。
「…炎代さん、あれは私が蹴ったものです」
そう言ってお菓子の箱を懐中電灯で照らす。
いったい、どういうことなの?と伊地知くんに問いかける。彼は額に滴る汗を拭き取りながら「ここは結界の中です。それほど高度な結界でないのが幸いで……ああ、いえ、これくらい炎代さんなら簡単に看破できるものです」と教えてくれた。
「こんな弱い私ですが、一緒に居ます。どうか焦らずにこの結界の核の破壊するために頑張りましょう、炎代さん」
うん、わかった。
私はいつでも「火箭操術」を使えるように両手を銃に見立てて構える。………さっきの伊地知くんの「一緒にいます」って言葉はやばかったね。あやうく私も歌姫先輩と硝子先輩みたいになるところだった。
ギヂギヂギヂッ!!
どこかで物凄くでかいものが動いている音が聞こえてくふ。そんなことを考えていると、いきなり伊地知くんに抱き上げられた。
ま、まさか、そういうことを!?とか一瞬だけ考えたけど、普通にばかでかい呪霊が後ろに来ているのが見えた。
「火箭操術"神火"」
私は伊地知くんに抱き締められながら両腕を振り上げ、熱波で彼が火傷しないように威力を調節する。とりあえず、これくらいかな?
「不知火!!」
あっ、やばい。
伊地知くんに怪我はないけど。
普通に呪霊ごと建物を壊してしまった。どうしよう、あとでお父さんに立て替えてもらえば大丈夫かな?などと考えながら私を押し倒す形で結界を脱出できた伊地知くんと見つめ合う。
「伊地知ィ……どういうつもりだ?」
「うひぃ!?」
お兄ちゃん、ほんとにタイミングが悪い。
〈神火"不知火"〉
火拳の技。
大きめの火箭(火の矢)を作り出して、槍投げの要領で叩き付ける。シンプルであるがゆえに火力も高く炎代燦の決め手となることが多い。
〈伊地知潔高〉
3級呪術師兼結界師。
炎代燦の同級生。自分が臆病者で怖がりなのは自覚している。自分より強い炎代燦も女の子として扱うし、なんなら自分が囮になってでも逃がそうとする土壇場での反応の速さは1年生でずば抜けている。尚、頬を赤らめる炎代燦を床ドンしているところを助けに来た同級生や先輩に見られる。