ドクター「何も分からん」 作:オリジニウム爆弾
「ドクター。そろそろ会議のお時間では?」
「ん? あ、そうだった。ありがとうパゼオンカ」
ケルシーに次の作戦について呼び出されていたことを、わざわざ自分の所にまで来て教えてくれたパゼオンカに違和感を持ちながらもブリーフィングルームへとドクターは足を運ぶ。
「ドクター。今回の作戦は長丁場になるようですので、おやつのバナナと歌舞伎揚げをお渡ししておきますわ」
「確かに……持っていこう。ありがとう」
また別の日。
作戦前にドクターの部屋を訪れたパゼオンカに間食を渡される。
その作戦に参加するオペレーターの中にドゥリン族も居たので、そのためだとドクターも思っていた。
戦場でのカロリー管理は大事なため、かなり助かった。
それが月曜日のことだった。
「ドクター、ホッカイロを」
火曜日。
「ドクター、手持ち扇風機を」
水曜日。
「ドクター、モバイルバッテリーを」
木曜日。
「ドクター、タイプライターを」
金曜日。
流石に何かおかしいと気付いた。
「タイプライターを!? 流石にスキル使えないし……というか最近何かあった? 俺ドゥリン族じゃないけど!?」
ひょんなことからロドスに入職したパゼオンカは人間嫌いで、ドゥリン族や小さい子供以外には、かなり冷たい態度を取ることで有名になっていた。
彼女の境遇も知っていたドクターは、それを気遣ってあまり接触することも無かったのだが、ここ一週間は毎日彼女に何かを貰っている。
「いえ、ドクターは身体は大きなだけで、精神はドゥリン族だとお聞きしたので、暫く観察させていただいたのですが、おおよそ間違いではないと知りましたので……」
「違うけど!?」
デッけぇドゥリン族。
ドクターがゲーミングパワーローダーに目を輝かせていたり、書類仕事が終わると椅子に座ったまま、すぐに寝てしまうことから一部のオペレーターからの通称である。
「ですから、お気になさらず。あと、私のスキル選択変え忘れて2のままですわよ。次回以降変え忘れて泣きを見ぬように」
「あ、本当だ……今のうちに変えておこう」
パゼオンカの疲弊した心を救ったのは、自由を愛し、明るく能天気だが、その行動に伴う責任は自ら背負うドゥリン族の精神だった。
ドクターもまた、能天気で心に正直過ぎて子供っぽい所はあるが、最終的にケルシーの説教から逃げずに、後始末もしっかりやる姿に共通点を見出だした。
「スルーしそうになったけど、実は裏で滅茶苦茶なめられてない!? 一応ロドスだとそれなりに偉い人なんだけど!?」
「良いことではなくて?」
「えぇ……」
あまり周囲とのコミュニケーションを取らない彼女の心を開く足掛かりになればとも思ったが、もう少ししっかりしようと決意しながらドクターはほんのり落ち込んだ。