ナナコは可愛いですね   作:ゾエア

3 / 14
イジチはかわいいですね

 

 

「通常呪霊と同等級の術師が任務に当たります。つまり二級術師は二級呪霊に勝つのが当たり前。二級術師は一級呪霊に近い実力というわけです。」

 

「具体的な基準はありますかー?対する呪霊に合わせて等級を決めてるなら、強さとか危険性?」

 

「通常兵器が呪霊に有効と仮定した場合、四級呪霊は金属バットで余裕に祓える程度、三級呪霊なら──」

 

 

黒のスーツ姿に、眼鏡をかけた少しやつれた雰囲気を持った男は、少女に向けて軽い講義を行っていた。呪術や呪具、呪物に対しては何故か詳しい少女は、基礎的な部分や高専の任務については無知であった。そこで暇してた伊地知に──普通に事務作業はあった──五条が押し付けて、菜々子に授業を任せたのだった。

 

 

「五条先生はー?最強なら超特級くらい?」

 

「彼は特級術師です。その中でも最強であることは間違いありません。特級の認定基準は他の等級とは別にあります。」

 

「そうなんだ。伊地知先生はー?」

 

「私は補助監督です。基本的に戦闘は禁止されています。結界術の補助や式神によるバックアップ、ある程度の任務方針の指示などが担当ですね。いわゆる裏方です。それと──」

 

どこからか取り出した眼鏡をかけて熱心にメモをとる姿は、勤勉さを印象づけた。時折質問を混じえながらも、きちんと理解しようとする菜々子に伊地知は感動すら覚え始めている。菜々子はノートの隅っこに『ワンポイントナナコ!』の丸文字を描いていた。

 

 

「私は高専教師ではないので、先生と呼ばなくて結構です。」

 

「でもあたしに教えてくれてるじゃん。今は先生だよ。忙しそうだったのに時間作ってくれたんでしょ?」

 

 

──なんていい子なんだ…!

五条と上層部との板挟み。術師を送り出すことしかできない自分の葛藤とストレスを浄化してくれているようだった。伊地知は目を閉じ目頭を抑えながらしばらく黙った。菜々子は不思議そうに首を傾げている。

 

「変なのー。 そういえば、あたしはどうなるの?反転術式で治せるけど、任務でも出る感じ?」

 

「いえ、他人を治せる使い手は特に貴重です。五条さんですらできない。ですから、基本的には後方待機になるでしょう。癒す力とは敵からすれば非常に厄介なもの。狙われやすいとも言います。それに、貴方はまだ子供です。」

 

 

「そっかー。あたし何すればいいかわかんなかったけど、高専でもできることあるよね!」

 

「そうです。貴方は呪術界の未来ですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ!ふわふわだ!んー!お日様の匂い!なんて言うのこの子!」

 

「正道ー。こいつ取って。擦り寄り方が怖い。」

 

 

夜蛾学長の紹介で会ったのはパンダであった。白黒のツートンカラーに成長中の肉体。特殊な呪骸であるパンダだったが、その特殊性故にそこまで距離を詰めてくる相手はいなかった。今までは。

 

 

「パンダだ。その子は枷場(はさば)菜々子。仲良くしてやってくれ。ふわふわした人形が好みのようだからな。」

 

「どうかなー。触り方もなんかいやらしい感じがするし。」

 

パンダを認識した瞬間、駆け寄り抱きついた菜々子だった。今は顔を押し付けて匂いを嗅いだりしている。パンダは若干引き気味だった。正道のお気に入りみたいに扱われる女子に思うところがないわけではなかったのだ。

 

「でもいいお姉ちゃんとお兄ちゃんだねー。パンダよかったねー。」

 

「…?正道言ったの?コイツに?」

 

「──言っていない。菜々子。分かるのか?」

 

 

「…あの日から色んなものを感じるようになりました。感情によって振れる力。意識によって動くふわふわしたもの。美々子には意味なかったけど。先生達はそこまで悪い人じゃなさそうだったから。」

 

「──悟が視たもの…か。」

 

美々子から貰った祝福(呪い)。それは魂の知覚と意識の動きを見る力を与えていた。五条は、美々子から菜々子への想いについても気づいていた。深い精神的な繋がりを。だから高専で学ぶことを促した。彼女達のために。

 

パンダは、自らの秘密をあっさり見破った菜々子をじっと見る。しかし目を合わせた瞳には悪意の欠片もなかった。少なくとも、姉兄(きょうだい)を褒められて悪い気はしなかった。

 

 

「ところでパンダってなんの動物?というかぬいぐるみ?」

 

「──パンダ知らんのか。パンダってのはなぁ。おれみたいな白と黒の模様の熊だよ。」

 

「へー。そんな変なのいるんだー。」

 

「変なのじゃない。人気なの!」

 

 

まだまだ学ぶことは多いが、高専ではやっていけそうだ。夜蛾は学長として、呪術師として、大人として彼女の幸福な未来を祈っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか分かった?東雲について。」

 

五条は目の前の相手と東雲という男について話しているようだった。金髪に綺麗な七三分け。特徴的な眼鏡をかけた相手と情報を交換していく。

 

 

「僕がいるのにあんなことできる呪詛師はそう多くない。コソコソしてるにしてもね。しっぽ見せないのもきな臭いな。」

 

「菜々子さんの仰った場所は既にもぬけの殻。激しい戦闘のあとが見られますが、術師からの報告もなし。呪詛師同士の勢力争いの結果かと思われます。」

 

 

「裏では噂になってんでしょ?10年やそこらで次々と()()を打ち立ててるって。ヤダヤダ。呪詛師ってのはどいつもこいつも…。」

 

 

「孤児院の人数と行方不明者の数だけでも被害は予想できます。しかし彼女たちの受けた実験は…!」

 

 

「恐らく"縛り"の押し付け。相手と自分の間で一方的に有利な条件を自ら選ばせ、呪術全ての底上げと術式の開発。倫理を無視すれば呪術界は数段飛ばしでかけ登れるね。」

 

 

「……そう簡単に他者との縛りは結べない。しかも非術師との締結による利益など微々たるものでしょう。それを──」

 

 

「精神的な繋がりと価値観による上乗せを子供から搾取する。子供は純粋だからね。呪術的にもある意味価値がある。居抜きの孤児院も少なくないだろう。」

 

 

「好きだから力になりたい。シンプル故に恐ろしいですね。まともな倫理観ならありえない。呪詛師であるにしても…。」

 

 

「愛ほど歪んだ呪いはないね。そいつが愛を語ってるなら尚更。」








時系列がふわふわしてますが、ナナミン復帰とパンダ誕生してるくらいで
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。