ナナコは可愛いですね   作:ゾエア

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ユウジはかわいいですね

 

 

「枷場は、人を殺したこと──」

 

 

里桜高校での任務を終え、安置所に佇む虎杖は菜々子に答えを聞こうとしていた。虎杖の復活。五条先生からの指示で他の学生には口外できない菜々子はその問の意図を考える。虎杖は今日人を殺した。それが彼のせいでなく、呪霊の改造によるものだとしても彼は自責し続けていた。トドメを刺したのは自分だと。

 

 

「──っごめん。やっぱ頭冷やしてくるわ。」

 

「沢山傷つけた。死ぬよりも酷い目に合わせた。あたしがやったの。」

 

「…枷場?」

 

 

菜々子は一連の事件で運ばれてきた遺体をみていた。その凄惨さも、生きたまま改造される苦しみも読み取ってしまった。

 

 

「選ばれるのは輸送や携帯に優れて足もつかない、口減らしや孤児の子供たち。」

 

「頭の中身とそこから続く背骨の途中まで。後は特殊な蟲と呪物の効果で生き永らえるようにして。」

 

「それだけ残して 他を全部()()()()()削ぎ落としていく…」

 

「"縛り"のため手足や余分な内臓、肉や骨…。徹底的に削いで小さくなった()()と蟲を再び肉と皮で包んで、骨代わりの呪物に詰める。」

 

「それが私の仕事だった。薬液で恍惚と恐怖を支配され…死ぬまで肩代わりする()()()()()()。」

 

「あたし…あいつが心底怖くて…恐怖に負けて…作るの手伝ってた…。」

 

「昨日まであたしと繋いでた手を…無邪気に見つめてくる目を…、痛い痛いって呻くアゴを…。丁寧に取り除いて捨てていくの。」

 

「なんにも見えないフリして…!この手で…何人も。何人も!」

 

 

「…!」

 

 

虎杖は目を見開く。自分の復活を無邪気に喜び、黙ったままで同級生に関わることに愚痴を言う、そんな菜々子の過去。あいつ。菜々子が高専に長いこといる理由は詳しく知らない。ただ、菜々子がミミコと呼ぶ人を失い、ここに来ることになった原因を作った相手だということは想像できた。その呪詛師としての業も。

 

 

「…虎杖は負けちゃだめだよ。絶対。」

 

「応…!!」

 

 

菜々子からの反転術式の治癒を受けながら、虎杖は覚悟を決めた。仄かな光が安置所の遺体袋に反射していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらお出迎え?気色悪い。」

 

「パンダだ!!おいメカ丸!パンダがいるぞ!」

 

 

姉妹校交流会のために京都から尋ねてきた学生()()は東京校との初対面が多かった。パンダの姿を見てはしゃいでいる女子もその一人だ。

京都校の面々はそこまで仲良くはなさそうだった。早速内輪揉めを庵歌姫に窘められている。

 

「ふかふかしててかわいいわね。しゃべれるの?」

 

京都高専二年生の明華(めいな)は早速パンダに話しかけている。距離感の詰め方は一流のようだ。

 

 

 

「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」

 

「はい!! おっぱっぴー!!」

 

 

虎杖の合流はつつがなく終えた。菜々子は一年生達に謝っている。五条先生に全責任を押し付けながら。

 

「なんか言うことあんでしょ。」

 

「ごめんねぇ。五条先生が言うなって。このサプライズはよくわかんないけど…。」

 

 

急に押しかけられていたパンダは押し黙った。前にもこんな経験がある。パンダはこんな時は人見知りだった。

 

「なぁ黙るなよ…。なぁ。話して…。辛い…。」

 

そろそろ目尻に涙が浮かび始めている。すると明華は気づいたようだ。

 

 

「──名前!名前だ! あたし明華!あんたらは?」

 

「パンダだ。」「しゃけ」「真希だ。」

 

「パンダとシャケと真希か! シャケって魚のやつか?」

 

京都校のやつにしては珍しく人懐っこい。それに根明で呪術師っぽくないが、悪い奴ではなさそうだった。三人はとりあえず自己紹介する。狗巻のことをしゃけ呼ばわりする明華を二年生は暫くいじっていた。

 

交流会一日目、団体戦の種目は呪霊討伐レースである。区画内に放たれた二級呪霊を先に祓ったチームの勝利。時間制限内に終わらなかった場合は他に放たれている三級呪霊の討伐数を競うこととなる。

 

 

 

 

団体戦が佳境に入る。既にメカ丸や三輪などの脱落者が出た。

狗巻の前に人型の特級呪霊が姿を出していた頃。

 

 

「さて 俺らも仕事を始めよう」

 

「ハンガーラックを作ろう… い〜いハンガーラックが作れる。旦那も加工場を用意してくれたしな…」

 

 

真人と、全身黒づくめで仮面を被り、エプロンを上からかけた男が敷地内に潜入していた。奇妙な紋様が入った仮面は怪しく光っており、声を微妙にくぐもらせている。手に持った斧は彼のお気に入りか、脂と血肉を裂いた証が残っていた。

 

 

 

仮面の男は地面に釘を打ち付ける。呪符が巻かれたそれは呪文とともに帳を下ろすことを可能とした。

 

「ガキンチョばっかり卸してもなぁ。やっぱり大人のも作りてぇ。ジジイかババアでもいい。加齢臭たっぷりのやつでいこう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおやおや おやおやおやおや!! 五条悟いねぇじゃん」

 

帳に入った楽巌寺学長と歌姫は濃厚な呪いの気配に気圧されたあと、目の前の人間のセリフに気づいた。呪詛師。仮面で表情は窺えないが、その気配から敵であることは想像できる。

 

「あの生臭坊主め。騙しやがったな。」

 

学長は歌姫を先に行かせ、学生の保護を優先するよう指示をする。

 

「待て待て女を殺らせろ!! デカいのを作りてぇんだ!! スカスカのジジイやチビのガキより詰まってるだろ!!」

 

学長はギターを鳴らしながら構える。どうやら相手の趣味が悪いようだ。

 

 

「スカスカかどうかは 儂を殺して確かめろ」

 

 

「牛乳飲めばいけるか…? 老い耄れでも試してみるか」

 

 

 

かき鳴らされるギターの音色。それが呪力となって組屋の腹部に直撃する。手に持った斧を振るいかき消しながら、仮面の中身は術の考察をしていた。

 

 

──成程ね。アンプもねえのにいい音出すと思ったら。このジジイ自身がアンプか!!奏でた旋律を増幅させ 呪力として打ち出す術式!!

わかりやすい中距離タイプ。近づかれたくねぇのが見え見えだ。

 

「財布を作ろう。加齢臭たっぷりの──」

 

 

 

帳が上がる。空中に浮かぶのは最強の術師。30分も経たずに結界を破壊し、眼下の戦闘を見下ろす。

 

 

「さて どこからいこうか。」

 

五条は掌印を組む。術式に呪力を流し、高速で引き寄せられる物体は一瞬で組屋の元に到達する。

 

「優先すべきは──オマエだな」

 

「──ラック!! ラック!!」

 

「殺すな!!」

 

学長は叫んだ。情報を聞き出すために生かして確保するためだった。

五条の術式は既に発動している。空間に発動された四つの力場は的確に黒装束の四肢を潰した。血を流しながら倒れる黒い達磨。その仮面の光は明滅し──

 

「死なせちゃダメだよ。ほら手当して」

 

 

学長がイラつきながら手当をする。

──何か様子がおかしい。

五条は虚式によって呪霊に攻撃をしかけ、その豹変に気が付かない。そして──

 

 

 

「ジュウゾウ。 よく頑張りましたね。」

 

 

 

 

 

仮面の光が消えた。

 

 

 

 

 

 








明華ちゃんは騙されて速攻眠らされてます。
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