空想の錬金術師   作:篠原えれの

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 「エド、ザックさんもその手の資料は探せるよ。困ったら頼っていいから(アイザックさんへ、僕の幻覚を見破れるニーナとの邂逅はなるべく避けてね。もし元のアイザックだってバレそうになったら全力で誤魔化して。アルも今日はそれがあるからあえて鎧のままにしてるから)」

 

 「マジか。……そういやザックさんも兄貴に錬金術教わってるんだっけか」

 

 「簡単な錬金術ならできます(私も腐っても元国家錬金術師だ。下手すれば鋼のより理解はある。……確か子供には旦那の幻覚は見破れるんだな。面倒な)」

 

 エドワードと会話しながらアイザックとサインを取りつつミシェルは行動にでる。

 物陰に移動して、ミシェルとアイザックは小声で会話する。

 

 ミシェル手製の防音効果のある錬金術の札を本棚に張り、盗み耳聞きされないよう細心の注意をはかる。これは元の世界でも存在した錬金術の1つだ。この世界の錬金術と仕組みが違うので開発する際大変ではあったが媒介となる札さえ用意できれば再現するのは簡単だった。ミシェルの世界の錬金術はどちらかといえばシンの錬丹術とよく似ている。おそらくこれは訓練すればメイでも使用することができるだろうとミシェルは予想した。なので当然ながらこの錬金術は軍には公開していない。弟達にも。この錬金術は、あくまで錬金術の範囲でしか作用しない。盗み聞きはされないが口の動きとかで会話の内容は悟られてしまうし、使用の際は要注意だ。エドワードは本を読むのに集中して周りが見えてないし、アルフォンスはニーナとアレキサンダーに捕まってそれどころじゃない様子だ。タッカー氏の居ない今なら大丈夫だろう。この錬金術が意味をなさないのはシン組が来たときぐらいだ。彼等は盗み聞きの天才だから。

 

 「もうすぐ、タッカーさんの査定の日が近付く。ニーナとアレキサンダーがタッカーさんの錬金術で近いうちに、犠牲になることが決まっている。あの子達、合成獣にされてしまうのをなんとか止めたい」

 

 「相変わらず旦那は変なことを考える天才だな。旦那はなにを思って2人を助けると思ってるのか知らないが、まだそいつらと交流もないのに助ける価値があるのか?」

 

 「あるよ。彼等を助ける理由。君を助けたのは偶然だけど、そうだね。助けると決めたら僕はとことんやるタイプなんだ。ごめんだけど、次の君の立ち位置だってもう決めてある。」

 

 「ザクと呼ばれるイシュヴァール人になって、スカーと呼ばれているイシュヴァール人の男と一緒に行動しろ、だな?突拍子すぎて驚いたが不思議とその気持ちももうない。旦那はバケモンだ。私のことを人間とみていない。実験動物か何かと思っているだろう。以前の私なら吐き気が止まらず、全力で旦那を排除しようとしただろう。中央を氷漬けにしてしまいたいのと変わらないぐらい旦那に対して嫌悪感を抱いているが、今はそれすらできなくなっている。私はもうここまで来たら何も抵抗しない。抵抗する時は死ぬときと決めている。」

 

 「……君も自分のことがよく分かっているようで助かるよ。本当に優秀な助手だね。ま、抵抗するタイミングによっては、強引に抵抗しようとしたこと事態忘れてもらうけど、それまではごめんね。君には不自由な生活を体験してもらう。それが罪もない憲兵を殺した僕なりの君への罰だよ。僕が何もしなかったらそれはそれでお好きにどうぞってことだから止めはしないけど。スカーと合流したら別に殺しは再開してもいいし。辻褄が合わなくなるからね、死なない程度に頑張って。」

 

 「好きにさせて貰おう」

 

 「それから、君の彼らを助ける意味はないんじゃないかという質問の答えだけどね。大前提として、まず、あくまでもこれは僕の自己中心的な考えがあるから成り立ってるんだ。でないとやらないよ、こんなこと」

 

 「……鋼のが聞いたら怒るどころじゃないかもな」

 

 「いいよ。君がこれを弟に話せる頃には僕はもうこの世に存在しない。君も僕のことは忘れてる。……アイザック、君の不自由な生活は僕が死ぬまでだ。僕が死んだら君は自由に行動したら良い。死ぬにしろ、生きるにしろ君は自由だ。僕は、最終的にこの世界から消える。遠からず、約束の日が終わる頃には僕は消えて居なくなる。死期は多分、下手すると父さんが死ぬより早いかもね。僕はね、元の世界に帰らないといけないんだ。ついでにエドが望めば錬金術の才能だって与えられる。足はどうだろな、ウィンリィのために残してあげた方がいいかもしれないし、機械鎧に頼り過ぎてるところあるから、あの子腕や足を戻してもすぐダメにしそうだしさ。」

 

 「それは言えてるが、本当にそれでいいのか?鋼のは絶対納得せんだろう。」

 

 「アイザック。この世界のためにも僕は、この世界に居ちゃいけない存在なんだ。だからこれらの行為は全て、僕が生きた証を残すための物語なんだ。ニーナやヒューズ中佐、バッカニア大尉、フーじいとか生き残ってたら大成功だよ。君みたいに殺す予定だった人達が生き残ってたりしても面白いかな。まぁ、何人かはどうしても助けられなかったりするけど助けたい人は助けていくつもり。それで、ある日突然弟達が僕のことを思い出してくれたらそれだけで嬉しい。僕の洗脳は完全じゃないからふとしたことで思い出すなんてよくある話なんだ。例えば、なんでニーナは生きてるんだ?ヒューズ中佐もなんで生きているの?って。君もそうだよ。君も最後まで生き残っているだけでみんな疑問に感じるはずだよ。なんで、お前あの時死んだはずじゃってある日突然そうなってくれたら僕はそれだけで満足だよ」

 

 「どうかしてるな。本当に、私が否定できないことをいいことに好き勝手ぺらぺらと。分かった。私は貴様について行こう。私は貴様を肯定する。アイザック・マクドゥーガルとしても、ザック・テイラーとしても、ザクとしても、この三人は全て私だ。私であり、私はミシェル・エルリックの全てを肯定しよう」

 

 「だから重いって。小声で話してくれるのはありがたいけど、やっぱりこれ此処で話すような内容じゃないね。まぁ、此処で話すぐらいじゃないと時間がないのが現実だけど」

 

 ミシェルも防音されていることをいいことに十分重い内容を暴露しているがあまり自覚はなさそうである。その言葉にアイザックは若干ながら引いていた。

 

 エドワードが本を読み終える前に、ミシェルは錬金術を発動しておく。

 自分たちが居ない間に犯行が実行されるのは確実だ。だから、やらかされる前に色々対策しておく必要がある。不法侵入だけど。ニーナさえ守れたらそれだけで良い。

 

 一応、計画としてはしっかり練ってきた。

 人工精霊だった頃の僕がよくやってた手段の1つだ。今はエドの血液しか使えないから不便だけど。

 

 まず、僕の体内にあるエドの血液を媒介に僕を増やします。

 所謂、記憶を共有できる影分身の完成である。

 

 これは一時的に増殖したに過ぎないため、攻撃されたり衝撃を加えられると消滅してしまうのがネックであるがこれが非常に便利なのだ。分身君には『認識妨害の錬金術』で姿を消してもらい、タッカー邸に潜伏する。

 容姿もコスト削減のため幻覚は使わず、青髪赤目の元の容姿で実行していいだろう。タッカー氏は金髪赤目の僕の今の容姿しか知らない。分身体には、なるべくタッカー氏の近くに張り付いて貰う。タッカー氏が犯行に及ぶタイミングで逮捕してもらう。

 

 犯罪者を捕獲するのは得意だ。特にタッカー氏は戦闘職ではないから分身の僕でも簡単に捕獲だろう。不法侵入と暴行罪で訴えられたらそのこと事態忘れて貰うまで。

 

 また、現場を抑える必要があるので合成に必要な錬成陣などしっかり残しとかなければならないが、ニーナが錬成陣の上に倒れている状態がベストな事件現場だろう。ニーナが元気だと証拠不十分でタッカー氏を捕まえることがでいないからだ。ニーナもタッカー氏が捕まえられることは嫌だろう。子供は親を選べない。あんなのでもタッカー氏はニーナの親なのだ。

 

 理想としては、本当に大佐達が現場を見つけてことの実体を把握できたら一番いいだろう。倒れているニーナを見つけたエドがタッカー氏に「あんた何をしようとしたんだ!」ってブチ切れている状況も見られたらうれしい。未遂とはいえその現場を見ただけでも弟達は十分ショックを受けるだろう。

 

 僕は自分の計画に絶対の自信を持っていた。

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