空想の錬金術師   作:篠原えれの

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 計画を実行するための用意が終わったので僕も生体錬成の資料を探す。なんか見つけてしまいそうな予感がしたので防音の札はつけたままだ。

 

 「あ、やっぱこの世界でも似たようなことはできるんだな」

 

 「見つけたのか」

 

 「うん。でもやっぱりこの技術は弟には見せられないや。人造人間(ホムンクルス)の複製方法が料理本として載ってあったよ。なんでこんなところに料理本が……って思って暗号解読したら分かっちゃったんだよね。タッカーさんもこれ知らないよね多分。これ使ったら人キメラとか作れそうなのに……。色々ややこしいことになるからこの本は燃やす予定だけど。昔元の世界でも僕達と同じようなことをした人が居たんだよね。それで分かっちゃった」

 

 「……そいつは生き返らせれたのか」

 

 「できたよ。生き返ってた。だから多分、この本を使えば、僕達の母さんは生き返るよ。生き返った母さんが本物かどうかおいといてね。後が怖いからやりたくないけど。エドにあの人と同じ思いはしてほしくない。」

 

 「やはりデメリットがあるのか」

 

 アイザックの言葉にミシェルは話を続ける。

 

 「――そもそも。大前提として僕の世界では、死者の肉体と魂さえあれば死者蘇生は可能な世界だったんだ。消滅した身体と魂を1から作ることは普通にご法度だったけどさ。人造人間の作製、人体錬成、この国では個人が軍隊を持つことになるからって理由だけで単純にNGだったけど、あっちは本当に色々うるさい門番が居てね。真理みたいにさ。僕達の世界では、彼女は願い屋と呼ばれていたよ。願いを叶えて貰ったあの人は、罰として絶対に死ねなくなったんだ。その上、周囲の身近な人間が次々死ぬようになっちゃってね。彼女、とんでもなく不幸体質になってしまったんだよね。酒浸りの日々さ。僕も彼女とは同じ部隊だったから分かるけど、何度彼女の不幸体質による災害に巻き込まれたことか。母親は生き返ったけど、無茶苦茶恨まれてた。やっぱ相手が望んでない蘇生ってよくないんだよ」

 

 この話をした僕は、料理本を燃やしていく。この世界はいいよね、火災報知器とかないから怒られないしバレない。火の後処理さえしとけば大丈夫だ。

 

 「また鋼のにバレたら怒られるでは済まない話題を……」

 

 「大丈夫、君が僕の居ないところでこれを話せるようになるのは僕が死んでからだし、その頃には僕の存在は完全に消滅してるから。君はこの話事態覚えてないよ」

 

 『防音の札』を剝がす。内緒話はこれでおしまいだ。また使うだろうから保存もかかさずに。僕の世界の錬金術は、札が消滅しない限り何度でもその錬金術を使える優れものだ。機械の修理とかよくそれで行っていた。

 

 内緒話を行ったためアイザックへ度重なる口封じの洗脳をしなければいけなくなり、軽くミシェルは眠気に襲われていた。

 

 

 ◆

 

 エドワードに見せても大丈夫そうな資料本を渡しつつ、資料を見てるフリをしたらさすがに眠ってしまっていた。

 

 「兄貴~~~!起きろ~~!」

 

 エドワードにいくら頬をつねられても起きない兄、ミシェル。今日もブレなかった。

 ミシェルの介抱をしながらエドワードの手伝いをしてたザックは話す。

 

 「疲れてしまったようですよ」

 

 「疲れたって……まぁ、兄貴も結構本読だりしたからなぁ。」

 

 「(鋼のがやけに静かだと思ったら旦那の奴幻覚で鋼の近くで本を読んでるフリしてたのか。私の幻覚も作っていたようだし、それは違和感持たれないな。暗躍しすぎだろう)」

 

 「ザックさん、アルは?」

 

 「弟さんでしたらあちらに居ましたよ」

 

 ザックの言葉に従って、エドワードはアルフォンスを探しに行く。兄はザックが居るから大丈夫だとすっかり信用してくれているようだ。

 

「ぎにゃー!」

 

 秒でエドワードはアレキサンダーの下敷きになっていた。

 

 「あ、兄さん」

 

 「あ、兄さんじゃねーよ!資料も探さないで何やってんだ!まだ兄貴の方が珍しく資料探してたぞ。気付いたら寝てたけど」

 

 「そうなんだ。いやぁ、ニーナが遊んでほしそうだったから」

 

 「なごむなヨ」

 

 「アレキサンダーもお兄ちゃんと遊んでほしいって」

 

 アレキサンダーに全力で顔を舐められたエドワードは苛立ちながら色々覚悟した。

 

 「ふっ……この俺に遊んでほしいとはいい度胸だ……獅子はウサギを狩るのも全力を尽くすと言う……。このエドワード・エルリックが全身全霊で相手してくれるわ犬畜生めッ!」

 

 どりゃぁあああと犬を追いかけエドワードは文字通り全力でアレキサンダーと遊んだ。

 

「あはは!お兄ちゃんおもしろーい!」

「(……子供だ)」

 

 そして迎えの時刻になった。

 

 「よぉ大将。迎えに来たぞ……何やってんだ?」

 

 ハボックが迎えに来てくれた。アレキサンダーの下敷きになっているエドワードを見て困惑を隠せないようだ。例によりミシェルは寝ているし。

 エドワードは言い訳するようになんとか犬から這い上がる。

 

 「いや、これは資料検索の合間の息抜きと言うか、なんと言うか」

 

 「で、いい資料は見つかったのかい?……お兄さんは本当ぐっすり眠ってしまうんだね」

 

 「愚兄はよく分からないけど資料はその……すみません見つかってないです」

 

 あまりにも冷や汗だらだらな様子のエドワードを見て、タッカーは許した。

 

 「……また明日来るといいよ」

 

 「すみません本当……」

 

 「お兄ちゃんたちまた来てくれるの?」

 

 「うん、また遊ぼうね」

 

 エドワードとアルフォンスはそれぞれニーナに挨拶する。ザックは先に、ニーナに勘づかれないように、ミシェルを抱えてお礼だけタッカーに述べて車に行っていた。

 

 「ありがとうございます、ハボックさん。助かりました」

 

 「ザックさんもご苦労さん。大将も見事な寝落ちっぷりで。資料は探せられたので?」

 

 「基本的な内容のものが多く、あんまりそこまでは調べられなかったですね。すみません(旦那は大当たり引いてたけどな。喋るな言われているから喋れんし、どうでもいい)」

 

 「そうかい。あぁ、タッカーさん。大佐から伝言が。「もうすぐ査定の日です。お忘れなく」だそうです」

 

 「……えぇ、分かっております」

 

 そう言ってタッカーはエドワード達を見送った。

 

 「ねぇお父さん。「査定」ってなに?」

 

 「うん。国家錬金術師になるとね、1年に一度研究の成果を報告しなくちゃいけない義務があるんだ。そこで良い評価をもらえないと資格を取り上げられてしまうんだよ。お父さん、去年はあまり良い評価を貰えなくてね。今年失敗すると国家錬金術師じゃなくなってしまう」

 

 「えー?お父さんなら大丈夫よ!だっていつも勉強ばっかりしてるもの!」

 

 「そうだね。がんばらないともうあとが無いもんなぁ……」

 

 

 ショウ・タッカーは娘を抱きしめながら呟く。

 

 「そう……。もう、あとが無いんだ……」

 

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