空想の錬金術師   作:篠原えれの

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 突然現れたザクは、容赦なくエド達目掛けて雨を使って創り上げた氷の錬成を繰り出す。

 

 「新手?!」

 「兄さん!」

 

 無数の氷の錬成は、アルの鎧をいとも容易く貫いた。鎧が砕け、体勢を維持できなくなったアルは地面に崩れ落ちる。ザクの中身はもちろんアイザックなのでアルの錬成陣を崩さないように攻撃してくれたようである。

 

 「派手に暴れ過ぎだ、同胞よ。もうすぐ焔の錬金術師と豪腕の錬金術師を率いた憲兵隊がやってくる(何が同胞だ。私もロールプレイに力が入るようになったものだ。何もかも、これらの行為は全てこの国を変えるためにある。もうしばらくの辛抱が必要だ)」

 「今までどこに居た。ザク」

 「司令部の方を探索をしていた。あの辺りは警備が厳しい。散策も必要だと思ったまで。激しい戦闘音が聞こえたので合流した次第だ。さぁ、始めるぞ。私達の復讐を」

 「……いいだろう。」

 

 あれ?これ僕ら結構ピンチじゃね。ちょっとでも応戦しないとまずいや。僕はたまらず、錬金術で細剣を創り上げる。僕にだって最低限剣の心得ぐらいはある。実話剣自体は前世では能力使ってひたすら速さと幻覚で誤魔化していたのであんまり得意では無い。前世の僕は人工精霊だったので何の負担も考えずに速度をあげ続けることができた。僕の剣は本当におざなりである。その場に人工精霊さえあれば、僕は光速移動も可能としたから。速さだけなら誰にも負けない自信はあったけど、人工精霊を捨てた僕はもうそれができない。もっと当時の剣王に鍛えてもらったらよかった。彼の剣術は本当にすばらしかったから。今の僕は人を操ること以外本当にポンコツなのだ。

 

 「アル!!……野郎オオオオオオオッ!!!!」

 

 アルを破壊されたのを見たエドワードが、錯乱したまま錬成したナイフでザクに攻撃をしかける。

 やっばい、あれは本当に無防備がすぎる。

 

 「遅い」

 

 ザクに辿り着くよりも前に、スカーによってエドは腕を掴まれる。人体破壊の錬金術だ。激しい錬成音が鳴り響く。腕を掴まれたのが機械鎧の方で助かったが、次はない。衝撃で、エドワードは自分の武器を落とす。

 

 エドは溜まらずコートを脱ぎ捨てる。

 

 「む……機械鎧(オートメイル)か。なるほど人体破壊では破壊できないはず だ」

 「それに鎧の方も中身がない」

 

 「てめぇら!アルに少しでも触ってみろ許さねぇからな!」

 「アルの方は任せて」

 「兄さんダメだ。2人とも、逃げた方が良い。」

 「お前置いて逃げられるか!クソ兄貴、アルは絶対護れよ」

 「言われなくてもそうするから安心して」

 

 「変わった奴らよ……おかげで余計な時間をとったではないか」

 

 スカーから距離を取りつつ、エドはアルの前からどこうとしない。

 

 「今日は私にとって好都合にも雨でね。全てを武器にすることができる」

 

 ザクは水を使って爆発を起こす。僕は反射的に壁を錬成し爆発を防ぐことができた。壁は崩れてしまった。武僧二人同時はさすがに厳しいなぁ。戦闘終了条件としてはアルの鎧破壊と、エドワードの機械鎧破壊だ。最悪僕は死んでもいい(復活するから)からこの2つはやり遂げるつもりだ。

 

 僕とザクの戦闘を見ていたエドはザクが使う錬金術がアイザックと似てると気付いたようだ。

 

 「お前、どっかで見たことがあるような錬金術の攻撃の仕方するのな。」

 「ふん、そう思うなら貴様の記憶を少しでも頼ってみるべきだな」

 

 ザクと会話しながらエドは自分の機械鎧を武器にすべく錬金術を施す。ザクは本気で殺しに来ないとはいえ、避けないと怪我をする攻撃はしてくる。その上スカーは隙あらばと人体破壊と破壊物質を理解した上で錬金術を使用してくる。このコンビが強敵なのは間違いなかった。

 

 「僕と剣術勝負しよう。」

 「おもしろい、一度貴様とは本気の殺し合いをしてみたかった」

 

 ザクは錬成陣を驚きの速さで書いていき、剣を錬成する。こんなところで僕と修行した錬金術を生かさなくてもと思うが、ザック期間中に僕は彼に氷と水以外の錬金術もできるよう色々叩き込んだので彼は本当に錬金術のスペシャリストになりつつあった。

 ザクが錬成した剣は大剣であった。

 

 「細剣使いの僕に大剣で挑むとか君も負けず嫌いだね」

 「そうでもしないと釣り合わんのでな!」

 

 細剣と大剣による攻撃が続く。ザクの剣術は軍に所属している間に学んだ物が多いだろうが、どちらにしろ僕と同じで我流で挑んでる癖がある。体力勝負という意味では彼の方が勝機はあるだろうが、僕には幻術がある。攻撃があたり、致命傷になっても僕の幻術が消えるだけだ。

 

 「兄さん、いいの?!幻術を戦闘で使うなんて。大佐達にバレたら」

 「大丈夫。そうでもしないと動けないアルを庇いながら戦闘なんてできっこないからさ。この際僕が幻術使いだってのもバレてもいいから全力でこの場を対処するしかないかなって。僕がアルを直せたらって思うけどそれもできないし……この場に居るのがほんと僕じゃなくてエドだったらな。エド、こっちこれそう?!」

 

 ザクの攻撃を回避しながら、器用に僕は弟達と会話する。

 

 「無理!機械鎧壊されそうで行けねぇ!なんなら全体的に俺殺されそうで行けねぇ!あと兄貴の幻覚のせいでどれが本物か分かんねぇから迂闊に動けねぇ!こっちにも兄貴の幻覚が作用してるのはありがてぇけど!何回か命拾いしてる!」

 「だねぇ。諸刃の剣ってこういうこと言うんだね。そういう訳だから……ほんとごめん、アル」

 「兄さん……!」

 

 この際、幻術に関しては大佐やスカーにバレてもいいので酷使する。僕ではアルフォンスの崩れた鎧を再構築することができない。やはりこの場は僕ではなくエドの方がよかったが、状況的に仕方ないだろう。僕の幻覚は基本的に、当たったと思ったら当たっていないという不可思議な現象を繰り返す作用がある。因みにエドワードの幻覚は機械鎧だけ壊れるように設定してある。そうしないと戦闘が終了しないからだ。

 

 今のエドではスカーに勝てないのは分かり切っているので、エドがスカーの人体破壊によって死にそうになった瞬間幻覚が発動し、エドはスカーの攻撃を避けられる設定にしてある。運悪くスカーの物体破壊がエドワードの機械鎧にあたったら試合終了である。何回か僕の幻覚にやられるうちにスカーも気付くだろう。

 もしや機械鎧だけを狙えば命中するのでは、と。

 

 「貴様らが幻術を使って逃げないのは、そこの鎧の弟が動けないからだと。正気か」

 「あぁ、そうだ。俺は弟を見捨てたりしねぇ。クソ兄貴だってそうだ」

 「鎧の弟は空想の錬金術師では直せない。直せるのは鋼の錬金術師だけ。鋼の錬金術師は己れが足止めしているから鎧の弟に近づけぬと。」

 「そうだよ、わりぃか。アルは俺しか直せねぇんだよ。文字通り訳ありだから俺達は!」

 「ふむ。何度己れに殺されても立ち向かうその心意気は認めよう。兄の幻覚に救われたな鋼の錬金術師。どういうつもりか分からぬが、この機械鎧は破壊できそうだぞ?エドワード・エルリック」

 「そんな訳あるか……(嘘だろ。幻覚の俺じゃなくて本体を直接狙ってきやがった。こいつ……!)」

 「まずはこのうっとうしい右腕を破壊させてもらう」

 「兄さん!!」

 

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