空想の錬金術師   作:篠原えれの

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4.幻覚バレと吸血バレ

 「追うなよ」

 「追いませんよあんな危ない奴ら」

 

 マスタング大佐がハボックに警告する。

 

 「すまんな。包囲するだけの時間をかせいでもらったというのに」

 「いえいえ。時間かせぎどころかこっちが殺されぬようにするのが精一杯で……。それにあのザクという男、大剣で応戦こそされましたが、我々に関して加減していたようにも見えます。錬成陣を破壊された等言われましたが、恐らく実力だけで言えばスカーと同じぐらいはありました。運もありましたでしょうな」

 

 そう伝えると、素直にアームストロングはスカーとザク相手に戦った感想を述べた。明らかに手加減された死闘であったと。

 

 「お?終わったか?」

 「ヒューズ中佐……今までどこに」

 

 物陰からヒューズ中佐が話しかけて来る。どうやら隠れていたらしい。

 

 「物陰にかくれてた!ニーナ預けるのも大変だったしな!」

 「おまえなぁ援護とかしろよ!」

 

 マスタングがヒューズに苦情を言う。

 

 「うるせぇ!!俺みたいな一般人をおまえらデタラメ人間の万国ビックリショーに巻き込むんじゃねぇ!!」

 「デタ……」

 

 正論ではあるが他の憲兵も当然危険を犯して包囲を固めていたのでマスタングは自分たちを馬鹿にされて怒りを隠せなかった。

 

 「オラ!戦い終わったら終わったでやる事沢山あるだろう!市内緊急配備人相書き回せよ」

 

 そのかわり後処理は進んでやって貰えるみたいなので、マスタングは怒りながらも仕方ないとなった。

 ヒューズがミシェル達を見つける。

 

 「……おいおい、あの血だらけのやつ。って思ったらエドワード君か。あのエルフ耳、もしかしてミシェル君か?」

 「お前よくわかったな。私は分からなかったぞ」

 「娘が前にミシェル君の特徴を言い当てたからな。やっぱり俺の娘は天才だったんだ。はっはっは!……アルフォンス君も、あの時は人の姿で一緒に食事もしたが、本当は鎧だけだったんだな。娘があまりにも大きな鎧さんとか言いまくるもんだからな」

 

 その会話を聞いたエドワードは目を逸らしながら申し訳なさそうに真実を話す。

 

 「……兄貴の幻覚は、子供にはあまり効かないんだ。簡単に見破れる。ニーナちゃんにも終始俺達のことバレてさ。大変だったな俺達。だからあの時、エリシアちゃんが言ってた話は本当だ。」

 「その幻覚は空想のしか使えないのか」

 「兄貴にしか使えない。」

 「そうか。また後で詳細は聞くことにしよう」

 「……騙してて、ごめんなさい。」

 

 事実確認をしていく。エドワードとアルフォンスの謝罪にヒューズは罰が悪そうにする。

 

 「あー、いいんだよ。別にあの時、何か隠してるんじゃねーかなぁとは思ってたが、こういうことだったんだな。ん?でもあのときアルフォンス君、俺の嫁のご飯しっかり食べてたよな。幻覚ってそういうこともできるのか」

 

 ヒューズが細かいところにも気づいていく。質問されるので正直に答えるしかなかった。

 

 「美味しかったです。はい、味覚や食物の消火もしっかり再現できるみたいで本当にありがたかったです。多分、僕は兄がいなければ今も、何もご飯が、食べられない生活が続いてました」

 

 その言葉に思わずヒューズは良い笑顔になる。幻覚が使われて無ければあの時、アルフォンスはご飯を食べることができなかったのである。そういうことなら安いものだと思った。

 

 「そうか。騙すだけじゃなくて、そういった良いこともできるなら別に俺は何も言わねーよ。犯罪とかするなら容赦しないけどな。アルフォンス君の大きな鎧はともかく、この国でエルフ耳と青髪赤目は目立つからな。容姿を誤魔化すのはもはや仕方ないか……。あの金髪赤目が本当の姿なのか?」

 

 今度はまだ眠っているミシェルの質問だ。それはエドワードが答えていく。

 

 「いや、兄貴は本当は俺と一緒で金髪金目なんだけど……俺達、過去に錬金術で失敗してこうなってしまったんです。俺は左脚、アルは身体と魂そのもの、兄貴は……俺もよく分からないけど容姿って言っていました。睡眠障害とか他にも色々あるみたいだけど具体的に教えて貰ったことないので。その時から幻覚が使えるようになったと言ってました」

 

 人体錬成のことはぼかしつつ、素直に錬金術で失敗ことを話す。どんな錬金術だって聞かれたら答えるつもりだが、まだここには大勢人がいる。兄の容姿やアルフォンスの鎧姿だけでも十分やばいだろう。コスプレや置物で誤魔化すしかないのだろうか。

 でも喋ってしまってるから緘口令を敷くしかないのだろう。

 質問に答えると、マスタングが一番聞いてほしくないことをエドワードに直接聞いてきた。

 

 「吸血は。空想のは、吸血もしているだろう。鋼の」

 「(あえてぼかしたのになんで聞くんだよ。)……吸血しないと兄貴は生きていけない。一週間もったらいい方だけど、基本的には俺の血しか無理みたいで、俺のしか飲まない。今の状態が続くのは、正直まずい。俺が死んだら兄貴は一週間もしないうちに飢えて死ぬ。兄貴だけでも元に戻さないとやばいのに、あいつ、いつも自分のことは二の次でさ。俺も人のことは言えないけど……」

 「そうか……」

 

 嘘を喋っても仕方がないので、本当のことを話していく。そこまで喋って。アルフォンスの様子を見たのが喧嘩の始まりだった。

 

「アル!大丈夫か?」

 

 アルフォンスは我慢できずにエドワードをぶん殴った。

 

 「……この……バカ兄!」

 「!?」

 「あとでミシェル兄もぶん殴る!ほんとバカ兄二人!なんで二人とも僕が逃げろって言った時に逃げなかったんだよ!エドワード兄さんは俺殺したらミシェル兄も殺せるとか意味分かんないこと喋ってるし!マジでありえないから!そんなこと言ったらミシェル兄さんはエドワード兄さんの盾になるしかなくなるんだよ!エドワード兄さんは別にミシェル兄さんが生きてなくても死なないから!あんまりだよ!」

 

 殴られつつ、正論を吐かれつつもエドワードは反論した。

 エドワードは客観的に自分たちを評価し、スカーに関係性を暴露しただけだ。自分を狙えば兄も死ぬ、と。スカーは自分の他に兄も狙っていた。一番下の弟だけでもと。エドワードはアルフォンスを逃がすことに、必死になりすぎていたかもしれない。

 

 「たしかに、あんまりかもしれないけど、あのときスカーが狙ってたのアルじゃなくて俺達二人だったし、それは兄貴も分かってたからアルから注意逸らすならこの方法が一番だって……。」

 

 「それがバカだって言うんだ――!!」

 

 全力でエドワードを殴り飛ばす。

 

 「なんでだよ!全部おまえを助けようとしてやったことじゃねーか!兄貴だって俺が死んだら兄貴もやべーのは分かってたから、自然と体が動いただけだろ!あの時俺はどっちにしてもスカーからは逃げられなかったのは間違いねーんだから!」

 

 「それでも言い方ってのがあったじゃないかー!兄さん、動揺して体張ることしかできなかったかもしれないじゃん!」

 

 「んなこと言われても……もし本当にそうだとしたら兄貴に謝るけどよ!そんなに怒るなよ!」

 

 「怒るよ!生き延びる可能性があるのにあえて死ぬ方を選ぶなんてバカのする事だ!二人ともほんとにバカなんだよ!!」

 

 「俺が悪いのは分かったけど兄貴にむかってあんまりバカバカ言うなーーっ!」

 

 アルフォンスはエドワードの胸ぐらを掴む。

 

 「何度でも言ってやるさ!!生きて、生きて、生きのびて、もっと錬金術を研究すれば僕達が元の体に戻る方法も見つかるかもしれないのに、それなのにその可能性を投げ捨てて死ぬ方を選ぶなんてそんなマネは絶対にさせない!!」

 

 ベキャとアルフォンスの腕が崩れる。

 

「ああっ、右手もげちゃったじゃないか兄さんのバカたれ!」

「はは……ボロボロだな俺達。兄貴が1回ぐらいなら死んでも大丈夫だってのは知ってるのにな……1回死ぬことには変わりないんだし、兄貴が元の姿に戻ったらやばいのは知ってるのに、頼りにしてさぁ。ほんとにカッコ悪い」

「……あとでミシェル兄さんに謝ろう。ほんとに。これも、全員が生きてるからできるんだよ。僕達」

「あぁ、そうだな。」

 

 ■

 

 「あの空の鎧が鋼の錬金術師の弟ですと?魂の錬成など聞いたことがありませんぞ!」

 「おそらく彼は、命を捨てる覚悟で錬成に挑んだんだろうな。だから、あの兄弟の絆は強い。……どうやら彼らの方は一段落といったところか」

 「まだ、聞きたいことが」

 「何かね」

 「あの青髪のエルフ耳が、ミシェル殿だとは……。一度死んでも再生するとは、不死身なのか?吸血も吾輩、しっかり見てしまっておりまして……」

 

 その言葉に、マスタングは深いため息をつきながらもアームストロングに説明する。

 

 「長男である空想の錬金術師も、睡眠障害だけだと聞いていたが、吸血をしないと生きていけない身体になってしまったのだという。鋼のへの吸血も彼が生き残るためなのだろう。不死身……というよりは吸血のストックが持つ限り等色々再生には制限があるみたいだ。あの容姿に戻っている間は色々弱体化するか、不意に戻ってしまったときは暴走もありえるそうだ」

 「それであの戦闘なんですな」

 「話を聞けば我々を迷わせたあの霧も幻覚によるものだそうだ。よほど必死だったのであろうな。」

 

 その会話にヒューズ中佐が入ってくる。

 

 「しかしまぁ、エルリック兄弟がどうあれ、やっかいな奴に狙われたもんだな。また襲われる可能性もあるだろ。」

 「……イシュヴァールの民か……まだまだ荒れそうだ」

 

 雨が止むことはなかった。

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