空想の錬金術師   作:篠原えれの

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ティム・マルコー邂逅編


 

 結果として、ドクター・マルコーには会えた。少佐が原作通り見事なファインプレーを見せてくれたのである。僕が行きたいと言った訳じゃなくて、エドが原作通りのこと言って大勢振り回したって感じだ。大所帯なので目立ったが、エドが知りたいことなら大佐もリザさんも否定的ではなく、むしろ協力してくれたので大変ありがたかった。

 

 「なんでドクターは逃げたんだ?」

 「ドクター・マルコーと言えば……行方不明になった際、極秘重要資料も消えたってそういえば騒動になってましたね」

 「我々を機関の回し者だと思ったのかもしれん。警戒してなければいいが……。鋼の、待ちなさい。私が開けよう」

 

 少佐の情報はどうやらリザさん達も把握していたらしい。さすがに原作そのまま無謀備にエドが玄関を開ける訳では無さそうである。っていうか人数多いから場合によっては誰か被弾する可能性があるのでマルコーの銃弾に関しては僕が幻覚で防ごう。僕の幻覚って作用する限りは、あたったものをなかったことにするのも得意なんだよね。幻覚を現実に具現化する能力の特権だと思う。

 

 「開けるぞ、ドクター。うおっ?!」

 

 大佐がドアを開いた瞬間、銃声が鳴り響く。条件反射的に大佐は中尉が蹴り飛ばしてくれたので無事だったが普通に僕に銃弾が当たりそうになったので幻覚で回避した。やっぱり幻覚使う判断してよかったよ。ドクターに会うの全体的にあぶなすぎない?

 

 「何しに来た!!」

 「落ち着いてください、ドクター」

 

 錯乱するドクターに、なんとか落ち着くよう少佐が呼びかける。

 エドなんてビビり散らしてる。思いっきり僕に銃弾があたったのを見てしまったせいだ。

 

 「(今兄貴に銃弾当たんなかったか?!幻覚使った?!)」

 「(使った、とりあえずここに居る全員僕が居る限りは大丈夫だよ。銃相手なら全然余裕で回避できる。安心してね)」

 「(心臓に悪すぎるわ!!)」

 

 幻覚に関しては大佐達にも詳細を伝えてある。

 僕の幻覚がどれぐらい優秀なのか今ので改めて認識できたはずだ。

 リザさんもすっかり呆れた表情をしていた。

 僕が戦場で堂々と寝落ちする人間じゃなかったらリザさん来なかったんじゃないかなぁ。

 来てくれて正直助かってるけど。

 

 大佐とエドの関係に関して、彼女はずいぶん前から知っていた様子だ。

 ほんとにリザさんと大佐の関係って、そういうことなんだろうね。

 ロイリザ嫌いじゃないのに残念がすぎる。

 

 この世界では、僕のせいで二人が恋愛関係になりそうでなれなかったパターンの奴だ。

 一度でも僕に洗脳されたことのある人間は、嫌でも僕が吸血した人間に魅かれてしまうから。つまり、みんな無意識にエドのことが大好きになってしまうのである。そう。僕じゃなくて、エドのことが大好きになるのだ。過去に吸血したことのあるウィンリィにも当然魅かれてしまうので、申し訳なくなって大佐なんてここまで来てしまっている始末だし。申し訳ないと思うならヤるなと言いたいがそれぐらい魅力的なんだろうね。エドのことが。

 

 ザックを知っていた人がもれなく僕の洗脳の対象なので、リザさんも当然その一人になる。よくわかってないのこの中じゃ少佐ぐらいだけど、少佐は僕があーだこーだしなくても最初からエドに対して好印象だしで。エドが愛されてる世界って素敵だけど、これはもう一種の呪いだ。

 愛され過ぎて強姦まがいの被害も受けてるからね。

 

 「私を連れ戻しに来たのか?!もう、あそこには戻りたくない!おねがいだ!かんべんしてくれ……!」

 「違います、話を聞いてください」

 「じゃあ、口封じに殺しに来たか!?」

 「まずはその銃をおろし……」

 「だまされんぞ!!」

 「落ち着いてくださいと言っておるのです」

 

 等々少佐がキレてアルを放り投げてしまった。すっかり荷物扱いで空気だったアルフォンスもびっくりである。ほぼ原作通りの展開だから助かるけどさ。

 僕達はドクター・マルコーから話を聞くことができた。

 

 「私は、耐えられなかった……。上からの命令とはいえ、あんな物の研究に手を染め……そして、それが東部内乱での大量殺戮の道具に使われたのだ……。本当にひどい戦いだった……。無関係な人が死にすぎた……。私のしたことは、この命をもってしてもつぐないきれるものではない。それでもできる限りの事をと……。ここで医者をしているのだ」

 

 マルコーの表情からは後悔の表情が滲みでていた。後悔してなかったらぶん殴るところではあるが、今後もっと彼には後悔してもらうので自分のしたことを反省しながら話すにはいい機会だろう。

 

 賢者の石の正体、作り方、僕はマルコーから聞かなくても全てを把握していた。僕自身の手で造ることや弟達にそれを暴露する予定は今のところない。原作通りに進んでほしいのでその辺りはあんまり強引にしない予定だ。

 

 複数の人間を使って創り出される賢者の石。

 僕は、正直言って、賢者の石事態はどうでもよかった。

 実際問題、どうでも良過ぎてアイザックの賢者の石をそのままにしてあるぐらいだし。

 いつか消えてしまうものだしね。あえてアイザックにもその存在は伝えてない。色々教えたけどアイザックのこと事態をあんまり教えなかったのは罪かもしれないね。多分、派手に暴れるようなキンブリー戦の時に彼、自分の中に賢者の石があるって気付くと思うよ。なんで教えなかったんだって怒られるかな。だっていつ消えるか分からないもの不用意に教える訳にはいかなかったんだよね。原作のアイザックは結構がっつり錬金術使ってたし。この世界のアイザック、あんまり賢者の石に頼るような錬金術をしてないんだよね。それはある意味一種の成果かもしれない。アイザックの賢者の石は保険程度に思ってくれるとうれしいかも。

 

 賢者の石かぁ。改めて欲しいか、欲しくないかと言われると悩ましい立ち位置ではる。

 

 あわよくばホムンクルスの誰かから賢者の石を強奪できたらいいなとは思っているけれど。

 再生のストックが増えたり、洗脳をしても眠くならなくなるメリットは強い。洗脳すれば賢者の石の残機減っちゃうのかな。それはそれで嫌だけれど。もったいない。

 

 僕自身は、エドやアルみたいに元の体に戻りたい訳じゃないけれど、そういう便利さを求めて賢者の石を手にするのはありだと思っている。僕、この世界に未練がないんだよね。僕の存在を丸ごと真理に捧げて、エドの錬金術の才能を取り戻せられたら最高じゃんと思うぐらいには本当に未練がない。

 

 そんな今後の段取りを考えていたら、少佐が熱心にマルコーに話を聞き出そうとしていた。

 

 ■

 

 「いったい……貴方は何を研究し、何を盗み出して逃げたのですか」

 

 口に出すのもおぞましい。マルコーは悩んだが、周囲に押されて喋る決心をした。

 

 「賢者の石を作っていた」

 

 あまりの衝撃的な一言に、一同空気が凍る。

 

 「私が持ち出したのは、その研究資料と石だ」

 「石を持ってるのか!?」

 「ああ。……ここにある」

 

 マルコーが取り出したのは液体状の賢者の石だった。

 

 「『石』って……これ液体じゃ……」

 

 エドが呆れながら、本当?という様子で賢者の石を見る。マスタングやリザも見入っており、色々思うところがある様子だった。

 

 それを、マルコーは容器から机に垂らしていく。

 容器に入れると液状になる賢者の石だが、机に出たそれは半固体になって石の形をしていた。

 

 「『哲学者の石』『天上の石』『大エリクシル』『赤きティンクトゥラ』『第五実体』賢者の石にいくつもの呼び名があえるようにその形状は、石であるとは限らないようだ。だが、これはあくまで試験的に作られたものでな。いつ限界が来て使用不能になるかわからん不完全品だ。それでもあの内乱の時、密かに使用され、絶大な威力を発揮したよ」

 「(不完全……そうか、あいつが持っていたのは……)」

 

 そこでエドは、リオールで司教が使っていた不完全な賢者の石の存在を思い出す。

 それで賢者の石が壊れてしまったのかと理解した。

 

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