空想の錬金術師   作:篠原えれの

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里帰り編


 

 

 「兄貴、起きろ。着いたぞ。顔色わりーけど、大丈夫か」

 「大丈夫」

 

 さすがに一瞬本体と接続が切れて強制シャットダウン状態だった僕ですが、とりあえず気絶するだけで殺されない限り消滅しません。汽車内でよかった。幻覚も機能してるし寝落ちしただけと思われているようだ。その辺は最低限配慮してくれたらしい。さすがに空腹できついけど。

 さすが田舎。通行人が僕達しかいない。駅員はさすがに居るみたいだけど、駅さえ出たら人は中々通らない。

 

 「エド、ちょっと食事するね」

 「げ。お前こんな堂々と輸血パックで食事するなよな。」

 「むぎゅむごむぐむ(袋で見えなくしてるから大丈夫でしょ)」

 「飲みながら喋んな」

 

 エドに背中を叩かれて咽せそうになるが、正直輸血パックがあって助かった。もしなかったら容赦なくエドに吸血しないといけない事態まで追い込まれていた。これでも僕だって配慮してるほうである。人通りが少ないとはいえ白昼堂々遠慮のない吸血沙汰とかエドも嫌でしょ。

 賢者の石のエネルギーはまだ貰ってない状態だし、本体と合流するまではしばらくエドから吸血する必要がある他、エネルギーを貰っていないということは当然残機も1回分ぐらいしかないわけで、いや、残機すらないか。僕あくまで分身だし、死ねば本当に死ぬことに変わりない。死体も残らずに消滅するだろう。この吸血はほんと生命維持のために飲んでるだけだね。本体が僕の存在をヨシとしてくれるなら、僕自身の残機も今後は増えていくだろう。今は、その猶予期間だ。そうなるとどっちが本物か、偽物か分からなくなるデメリットもあるけど、僕達は元々人工精霊という名前の集合生命体だった。どれか1つでもミシェルという存在が存在するなら、それは僕であることに変わりない。賢者の石を得た今、人工精霊に劣るとは言えど、全盛期と変わらない力を得た。

 僕達の死は、『ミシェルとエドワード・エルリック』。『賢者の石』と『色欲ミミ』の消滅だ。どれか1つでも生き残っている限り、僕が滅ぶことはない。

 

 「輸血パックとは。便利なものもあるのですな」

 「兄貴が錬金術で俺の血液確保してんの。俺的にもそうしてくれた方が、色々ありがてぇし。」

 「なんと、ミシェル殿は医学の知識も心得ているのですか。それはすごいことであります!」

 「血液保管に関する知識だけね。簡単に傷口を防ぐとかできるけど……止血だけだからあんまり役に立たないかも」

 「それでも戦場では役立ちます。いざという時に止血の術があるのは、多くの兵士が救われますぞ」

 

 少佐が輸血パックに反応する。エドは、少佐は初めてだっけかと説明する。少佐、ほんとにさ、医学に関する心得があると話すだけで涙流すのやめてくない?恥ずかしいから!本職のお医者さんに叱られるでしょうが!

 

 「話には聞いていたが、間近で見ると斬新な飲み方だな」

 「でしょ。だから人前ではあんまりやらないようにはしてるけど、ちょっと体調悪くて」

 「それは別にいいけれど、もう仲直りしてるのね。あんなに喧嘩してるものだからどうなることかと思いましたけど」

 

 大佐とリザさんから、それぞれ話題を振られる。輸血パックのこと、喧嘩したこと。

 あれはもうなんか、エドが俺は言ったからな!って折れたから終わったっていう感じが強かった。僕もあんなことマルコーさんに言われるとは思ってなかったから、面を喰らってしまったというか。確かに僕、元に戻りたがらないし、エドのために死にたいって思ってるけど、目的のこと以外で僕ってほんとに中々死ねなくなったんだよね。あぁ、リザさん。そんなに心配しなくても大丈夫だよ!僕の目的が達成したらこの世界、僕が生かしたいと思った人がみんな生き残ってる上に僕の存在が消えるだけだから、その心配って気持ちも最終的に消えるし色々ハッピーエンドだよ!僕が消えてもロイリザにはならないっていう所だけはほんとにごめんだけど!

 

 「……汽車に乗れたのがよかったかも。いつもだったらもうちょい拗れてるかな。」

 「二人とも頑固なのは昔からだな」

 「エドが大人になってくれたのがありがたいかも。昔だったらほんとにしばらく口効いてくれないし、嫌いな食べ物は全部僕におしつけてくるし」

 「兄貴なんか言った?」

 「いや全然、なんにも」

 

 エドが嫌いな野菜とか牛乳とか僕が全部食べてたのマジで色々今思えば無茶苦茶感慨深いんだけど、って思っていたらエドにむっちゃ睨まれたので黙ります。

 

 「もうすぐピナコばっちゃん家だ。なんで俺電話で色々報告したんだろ……今からでも帰ったらダメかな」

 「アルの鎧直せるのはエドだけなんだから行かなきゃダメでしょー。怒るどころか祝ってくれたじゃん。あともう少しで着くのになんで嫌がるのさ」

 「そりゃぁもう色々……兄貴も聞いたじゃねぇかあの怒声」

 「機械鎧よくも壊してくれたわねー!って無茶苦茶怒り倒してたね」

 「スパナ飛んで来たらどうしよう」

 「それは大佐が身代わりになってくれるってさっき言ってたよ」

 

 久しぶりの里帰りだというのにどんどんブルーな気持ちになっていくエドに対して、僕は励ましの言葉を述べていく。僕が言った適当発言に大佐が反応して嫌と言われなかったが、代わりに僕の頭を無言で叩いた。

 

 「適当なことを言うんじゃない」

 「でも、してくれるでしょ。結構ウィンリィその辺狂暴だから覚悟した方がいいよ大佐」

 「年上を揶揄うと罰が当たるぞ空想の」

 「ごめんって。大佐も、エド励ますの手伝ってよ。」

 

 むむむってなってる大佐を見るのは新鮮であるが、ブルーな状態でエドをロックベル家に連れて行くのは中々申し訳なさが勝った。元気になってくれるならその方がいいのである。

 

 「ただいまー」

 「お帰りミシェル!相変わらずちっちゃいねぇ!」

 「この姿の時はね、ちっちゃいんだよばっちゃん。元に戻れば大佐と同じぐらいの身長はあるよ僕。というか戻ってもいいよここの面子みんな僕の本当の姿知ってるから」

 「ふん!戻れるなら戻ってみな……本当に戻りよった!その姿に戻れるってことは……あんたたち、相当この子らと仲いいんだね。こら!ミシェル!身長伸びたのは分かったから、そのエルフ耳目立つからやめなされ!」

 「はーい」

 「まったく、あのチビも随分でかくなったねえ。いきなり幻覚を解いた時はびっくりしたが、元気いいみたいでよかったよ。ミシェル、エドはどこに消えたんだい」

 「ピナコばっちゃん、あっち。むっちゃ隠れてる。多分この中で一番小さいねって言うと怒りながら反撃してくると思うよ」

 「そっか、エドも相変わらず小さいんだねえ。縮んだかい」

 「縮んだかも。機会鎧あってないと思うよ。ここに来るのだいぶ勇気居るみたいだからまあ優しくしてあげ 「聞こえてんじゃ人が出るタイミング無くす勢いで縮んだとか豆粒どチビだとか精神的に色々来るんだわボケかす!!」ほら、元気なの釣れたよ。」

 

 スパナが飛んできた。どうやらウィンリィから借りたらしい。あまりに酷い言われようにウィンリィもエドを応援したようである。スパナが見事に命中した僕はものの見事に頭部から出血していた。

 

 「あれは因果応報って奴だね、デン」

 「ワン!」

 「アルも壊れたのかい。ミシェルは元気そうで安心したけど、あんた達相変わらず無茶するねぇ。」

 「ねぇねえ、ばっちゃん。エド見た?!言われないと分かんないよね。」

 「あ、ウィンリィ。それからピナコばっちゃんも。大佐達は分かるよね、こちらアームストロング少佐。色々あって僕達の護衛してくれてるの」

 「よろしくお願いします」

 「ピナコ・ロックベルだよ。しかし、しばらく見ないうちに……やっぱり縮んだねエド」

 

 ピナコは原作通り、アームストロング少佐とエドを見比べて感想を呟く。

 容姿そのものは変わってない。確かに、言われないと女性になったかどうかなんてわかりにくいだろう。なのであえてそこには触れなかった。

 

 「このババア絶対少佐と比べて言ってるだろ少佐と比べたら誰でも小さくなるんだわ!!豆粒ババア!」

 「なんだって?!もうちょっと年上は敬いなどチビ!」

 「言ったなこのマイクロちび!」

 「ミジンコババア!」

 「こらエド、そのぐらいにしといて。大佐達びっくりしてるから」

 

 僕の言葉に、リザさんが違うわと首を振る。

 

 「ミシェル君、何を勘違いしてるのか分からないけど私達どちらかといえば一瞬とはいえ君が元に、戻ったことに驚いてたのよ」

 「あぁ、そっち」

 「「あぁそっち」で終わらせないでくれ空想の。まったく」

 「相変わらずマスタング大佐も、ミシェルの破天荒振りに苦労してるみたいだねぇ。ひさしぶりだね。まったく、結婚すると聞いて驚き倒したよ。申し開きは何かあるかい」

 

 その後、娘さんを貰いに来たと言って盛大にスパナでぶん殴られるマスタング大佐が目撃されたそうな。

 

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