移動を繰り返して、僕はやっと標的を見つける。一番乗りだ。これはついてる。
――……アイザック、見つけた。
「なに?!何故私は動けない!?床に叩きつけられている!?」
勢いよく建物から飛び降りた僕は、『認識妨害』の錬金術を発動しながらアイザックの身体を押さえつけることに成功する。
「
「なんだとぉ?!……なんてなぁ!
アイザックが、錬金術を発動して僕に攻撃をしかけてくる。
おそらく人体が水蒸気爆発する錬金術。
僕はそれを回避する。
アイザックには僕の声だけが聞こえてる状態で、僕がどこにいるのか分かってないはずだ。
認識妨害の錬金術をしかけるために相手の視界に入るか肉体を触る必要があったので少しリスクではあったが回避できたのでヨシとしよう。
「すごいね、まだ動けるんだ。
「……なに?!」
やっと僕の錬金術が効いたみたいで、アイザックは意識を失って倒れる。
僕の錬金術の得意分野なんだよね。精神を弄ることに関しては、本当に。それこそ洗脳とか大得意。この辺はバレたら本当にやばいからまだエド達や政府に公開してない僕の能力の1つなんだけど。単独行動する時に本当に便利なんだよね。
アイザック君には、一旦政府攻撃するのやめてもらってセントラルから離れて貰います。セントラルにはプライドもいるし、マジで逃げてほしいです。んまぁ逃げられなかったら君が死ぬだけだから別に困らないけど、これは君が生き延びるための戦いでもあるんだからがんばってほしいなぁ。
イーストシティでスカーと合流してくれたら一番嬉しいかな。あ、スカーと合流するのは再度イーストシティで僕が君と合流するまでまってね。
スカーも君と一緒に、行動するために洗脳しなくちゃいけないから。洗脳が終わるまでは変装とかして潜伏して。なるべく軍と、ホムンクルス、特に誰かに変身しているエンヴィーに気をつけて。
セントラルをなんとかして脱出して。そしたらあとはプライドに気をつけながらイーストシティにむかって。時が来るまで下水道に避難。そのうち僕たちスカー襲撃の標的にされるからそれまでかな。エドやアル、大佐、憲兵に、見つからないようにしながら僕と合流しよう。
タッカー邸が目印かな。グラトニーの迎撃とかも気をつけてね。身体と命、大事に。
大変だぁほんと。
僕の錬金術によって洗脳が完了したアイザックはフラフラしながら立ち上がる。
次の瞬間アイザックは地面にあった水溜まりを利用して爆発させる。
「あっつ!」
「これぐらいならどうとでもなる」
僕から逃亡するためだ。
もうアイザックは逃亡の準備に入っていた。
本来のアイザックなら僕をそのまま殺しにくるだろうから、恐らく洗脳は大丈夫だろう。
出来てなかったら君のせいで多数の憲兵が犠牲になるのと、翌日司令部に突撃して君は大総統に挑んで死ぬだけだし。
「これは仕方ないなほんと……」
僕はアイザックが逃げられる状況を確認する。
僕は咄嗟に、熱湯になった水を避けるためにとかそんな風に、見えるようにしながら分厚い壁を錬成した。天井付き。
これで熱湯を浴びる心配もない訳だ。
造るのが遅くてちょっとかかったけど。
「(多分今ので僕に逃亡幇助の疑いは無くなったかな。うまく逃げてくれるといいんだけど)」
エドとアルが僕に追いつく気配がする。それより先にアイザックは逃げてくれたようだ。洗脳が成功したようで他の憲兵と殺しあってる様子もない。逃亡だけに専念してるようだ。爆発音がたまに聞こえるが、逃げるためには多少は破壊も必要だろう。
「兄貴、何逃してんだよ」
「深追いするのは危険かなと思って。彼、水があればなんでも攻撃に利用するよ。1回は気絶させれたんだけど起き上がっちゃって。だいぶタフだね彼。捕えるのは簡単だろうけど、完全に気絶してからじゃないと連行するのは危険だよ。」
「兄さん、その傷……」
エドにアイザックを逃したことを咎められつつ、アルに怪我を心配される。
「ちょっと熱湯浴びちゃった。あとで血液ちょうだい、それで治るから。」
「兄貴、ほんとブレねぇなぁ。はぁ――……。あとでなぁ」
吸血に関しては本当エドから冷めたい目で見られる。気にしない。だって僕エドの血液がなかったらマジで死ぬんだもの。今のところまだ大丈夫そうだけど、力使ったせいでむっちゃ眠たいし。大佐のところ行くまでに血液貰うつもりだけど、貰ったあと寝てしまいそう。
「兄貴ほんと俺の血を飲むことに関しては全然いいけど最近眠そうじゃね?どっか体調悪いとか――」
「寝たら治るから大丈夫。あ、アル。何か食べたいものあったら言ってよ。疲れたでしょ。またアレ、やるからさ」
「(また普通に話そらされた。あの傾眠具合いはやばいって、そりゃアルがまやかしとはいえ人間の姿に戻ってご飯食べられるのはすごいことだけどさ……)」
ぽん、と錬金術を発動した僕はアルの鎧に細工を施す。すると、アルはみるみる人に戻ったように、鎧を包み隠すように、人そのものになった。子供の頃のアルが大人になったら、その姿になるのかなって。身長も鎧に合わせて大きくしてある。身長をエドより小さくすることもできるけど質量保存の法則を堂々と無視するのもなぁってあえてそのままだ。さすがに太らせるのはかわいそうだからそこはなんとか誤魔化して分からない程度に細くしてある。
「ありがとう兄さん。ほんとすごいよね、兄さんの味覚再現と僕の実体化。満腹感とか空腹感とかないからちょっともったいない感はあるけど、ご飯が食べられるのとご飯の味が分かるのは本当にすごい。兄さんの僕が成長したらこうなるって再現具合いもすごいし、本当に嬉しいんだ」
「ふふん、もっと褒めてくれたっていいんだからね。あ、でもこういうのができるのは毎回口うるさく言うようでごめんだけど大佐とか軍の人間には内緒だからねー。間違っても人前で鎧の姿に戻らないこと。人間になる時は僕が気を付けたらいいけど、鎧の姿に戻るとしても一目を避けて戻ること。よろしくね」
「はーい。兄さんのこれ、本当にすごいよね。僕の意思で元に戻れるんだもん。兄さんから離れても大丈夫だし」
「すごいでしょ。でも、その分アルに、拒絶されたら人間になれないとこあるから、よろしくね。僕のコレはアルの人間に戻りたいって言う願いも必要だから」
ずっと鎧の姿のままも不便だからね。ほら、普段僕だって姿を変えてる訳だし、それを他人にできない訳じゃないんだよ。錬金術の範囲内を越えてしまうから説明するのが大変だったけど。エンヴィーの変身能力と似て異なるって奴だ。感覚的にはそれの上位互換かなって感じだ。
認識妨害系の錬金術が得意な僕は、
ご飯を食べるときだけどうしても不便するので、本当にアルがご飯を食べられるように錬金術とは違う僕の能力を使って細工する。
『幻覚を現実に具現化する能力』。
そこにないものを本当にあるようにするのは僕の得意分野で、この能力だけは僕の容姿を変えるため、アルに人間に戻ってご飯を食べてもらうためにエドとアルにだけ打ち明けている。
これは錬金術じゃないんだよと言うと中々信じて貰えなかったが、エドの血液を使ってできる能力だよと説明したら渋々納得してもらえたものだ。
アイザックの一人称って私なんですね。
アニメ見返して思いました。