「ばっちゃん、腹減った!」
「そういえばアルも人になれるね。なる?」
「いいの?」
「何言ってんだい、あんたらの分全員分作ってあるから戻りよし」
「やったー!」
アル、大喜びで僕の幻覚を使って人の姿に戻り。
鎧さえ元に戻ればそりゃアルも人間にもどりたいのである。
アルにとってご飯は、空腹感はないから食べられなくても辛くないのだが、気持ち的にこういう場面では食べたくもなる。それはばっちゃん達も理解してるのでそこまで鬼じゃないという訳だ。
「あの組手って何か理由あるの?」
ウィンリィが聞く。
「俺達の師匠が「精神を鍛えるのはまず肉体を鍛えよ」ってんでさ。こうやって日頃から鍛えておかないとならない訳よ」
「それでヒマさえあれば組手やってんの?そりゃ機械鎧もすぐ壊れるわよ」
「まぁ、こっちはもうかっていいけどねぇ」
「ふむ。しかし、正論であるな。健全な精神は鍛えぬかれた美しき肉体に宿るというもの。見よ、我輩の筋肉美!」
食事中にいきなり脱ぐなし。少佐らしくて嫌いじゃないけどね。
「アル、そこのソース取って」
「はーい」
すっかりエド達は少佐の扱いになれたらしい。男でも塩対応してたのに女になったら余計ひどくなるよね分かるよ。
「明日朝イチの汽車で中央に行くよ。」
「そうかい、またここも静かになるねぇ。っていうかマスタング大佐は、東方司令部勤務だろう。あんたら籍はいつ入れるんだい」
「第一分館によってからでもいいかなとは。大佐もそれでいいって。あんまり帰ってくるのが遅かったらどやされるけど、そっち優先で。俺はともかくアルや兄貴が元に戻れるかもしれねぇし、こっちはこっちで国家錬金術師と憲兵狙いの凶悪犯が三人も居て危ないから大佐的には中央に居てくれた方が安心なんだとよ」
「か――っ、まったく能天気だねぇ。嫁入り前の人間が怪我なんてしたらすっ飛んでくるから気をつけな」
「図書館に行くだけだから大丈夫だって」
まぁ、その図書館は本体が先回りして燃やしちゃったんだけどね!運が悪いと燃やされたぞって連絡入るだろうけど維持と気合でエドのことだからセントラルに行くかも。それで普通に第五研究所に忍び込んで怪我するんだろうな。
その話をしていると、ウィンリィがあることに気付く。
「あ、それで少佐が護衛なのね……というかこの間のあの状況もしかしてとても危険だったりした。凶悪犯が付け狙う国家錬金術師のオンパレードだったわよね」
「おう。それであの大所帯だ。さすがにあの人数だと大佐が居るだけで一個大隊分ぐらいの戦力にはなってたからもし所在がバレてもあっちの方が不利だぜ。」
「大佐が居たらね。相手もあの二人だけで一個中隊分ぐらいの戦力はあると思うから危険なことには変わりないと思うよ。……あんまり僕達が此処に長居するのは危険だね」
「そんな危ないことに巻き込まれたのね。話には聞いてたけど、凶悪犯って本当に凶悪犯なのね」
「なんせ俺の機械鎧やアルをぶっ壊したのもそいつら二人だしな。兄貴も幻覚が使えなくなるぐらい能力フル活用してたよな」
「そうなのかい」
「相手が何分戦いのプロだったもので。また修行やり直さないといけないなとは。なんとか僕達極秘裏には帰ってきたとは思うから、常に移動を続けてたら必要以上に狙われることはないと思うよ」
「少佐の護衛が居る訳だわ……。ほんとにムチャしたらだめよ」
「うん。ありがとう、ウィンリィ。早朝には僕達旅立つから、安心してね」
「あっちについても護衛つけて貰うのよ。ただでさえミシェル君とか寝落ちする人で無能になりやすいんだし、エドは嫁入り前なんだから」
「え――」
「え――とか言わないの。少佐、あっちについてもエド達大丈夫ですよね?!」
「うむ。既に護衛は大佐と話していて吾輩の部下を付ける予定だ。安心してくれたまえ」
「よかった」
「なら安心だね」
そうして、一夜が明けていく。ほんと、ロックベル家に迷惑かけっぱなしだ。色々その分料金は倍額で支払ったけども。帰れる家があるってのはいい。大事にしよう。僕達の家は、元の体に戻る旅をするために燃やしちゃったから。
早朝。
「たまにはご飯食べに帰ってくるんだよ」
「うん。そのうちまた」
「エド、アル!ミシェル君も、いってらっしゃい!」
「おう」
一夜漬けで眠たいはずなのにウィンリィも見送ってくれた。まぁ、あの感じだとネジが一本抜けてるとか気付くのは速くても今日の夕方だろう。朝早いからまだ大佐から図書館が燃えたって連絡来てないし、色々ついてる。僕も気分がよかった。
■
やはり帰りの汽車は窮屈だというのもあってアルは人の姿のままにする。それにしても幻覚だとアルの身長って高く設定してあるから脅威的なでかさだよなと。少佐より低いとはいえあんまり変わらないからこれで14歳ってマジ?ってなるよね。
「来たぜセントラル!楽しみだなアル」
「うん。すっかり浮かれてるね、兄さん」
「そりゃそうだろ。」
改札を出ると、護衛の二人が僕達を待ってくれていた。
「アームストロング少佐、おむかえにあがりました」
「うむ。ごくろう、ロス少尉、ブロッシュ軍曹」
「えっと、どちらが空想の錬金術師殿で、鋼の錬金術師殿でありますか?」
ブロッシュ軍曹が質問する。僕はそれに答えていく。
「僕が空想の錬金術師で、あっちが鋼の錬金術師ね。僕よりもエドの方を護ってあげてね。大体話は聞いてるでしょ」
「錬金術の事故で女性になられて、東方司令部のマスタング大佐と今度結婚するとは、はい。三人ともよく似てらっしゃいますね。身長と、瞳の色が違うので助かります」
「誰がウルトラ豆粒ミジンコドチビで小っちゃいって?」
「ひいっ!そこまで言ってないですよ。まだご結婚はされてないんですよね、デニー・ブロッシュですお手柔らかに、ひいい」
「失礼しました。あとで色々詫びさせますので。マリア・ロスです。よろしくお願いします」
「相変わらず身長の話なると過剰反応するんだから。ごめんね、そこまで怯えなくていいよ。小さいとか身長の話題に触れると怒るだけだから。いたっ」
スパナでぶん殴られ頭部から出血するのが分かる。痛いなぁもう。
「兄貴のそれワザとだよな?な?」
「エドワード兄さん、いくらなんでもスパナでぶん殴るのは目立つからダメだよ」
エドの暴力具合いは女性になって以前よりも増したと思うんだけど、ひどいなほんと。かわいいから許すけど。
「ま、まぁ。この通り弟に関しては嫁入り前なんだけど防犯も兼ねてるから前の性別通り男扱いしてあげてね。嫁入り前なのに怪我するような無茶したら怒っていいから。僕が許す」
「は、はぁ」
「それには吾輩も賛成でありますな。まだ慣れてない様子でありますし」
「だから図書館に行くだけなんだから怪我をする要素ないだろー」
「あ、その図書館なんですが――」
「え、どうしたの?」
「目的地は確か第一分館でしたよね?つい先日不審火で中の蔵書ごと全焼してしまいました。」
「へ?」
「それから、マスタング大佐から伝言です。私ごときが申し上げていいのか、大変恐縮ですが失礼します。『燃えてしまった以上、目的のものが見つかるかわからないが、調べる価値はあるだろう。引き続き図書館で調べ物をしていい。私も大総統へ結婚の報告も兼ねて後日中央へ行くので、それまで中央で自由にしてなさいとのことです。籍もその際入れるとのことです。』」
「……え――――?!」
しばらく間が空いたが、ロス少尉の報告内容が凄まじく。驚き通り越して色々放心状態のエドが目撃されたそうな。