「グラトニー。スカーとザクはまだ、狙わなくていいわ。襲っても完食できないと思うから。」
「そうなの?ラスト」
「ええ。それに今襲ってしまったらラースに怒られるわ。マスタング大佐に後処理押し付けたらいつまでたっても鋼の坊や達結婚しないじゃない」
「ラース、さり気なく楽しみそうにしてたね」
「でしょう」
ラストは、ミミと相談しながらグラトニーを洗脳していく。
ミミとミシェルの存在がバレないのも洗脳によるものが大きい。
これらの命令はラストの意思ではない。やらなければ後からミミにとやかく煩く言われる他、快楽攻めに近い拷問がまっているのでやらざる得ないだけだ。色欲をやっている自分が快楽に負けるなんて屈辱的でしかないが、生殖機能を与えられてすぐの出来事だったので抗える訳がなかった。生殖機能が存在しないメリットはメリットであったのだとラストは今更ながらに後悔した。一度経験したが、自分以上に快楽を知り尽くした存在が居るのかと改めてラストはミミの存在を恐れた。
ミミ曰く、「先輩は先輩で尊敬しているので、そう(処女色欲)であってほしかったのですけど、ミミはこの通り色欲らしいビッチなので、先輩が逆らうのであればミミは性的に調教します♡」とのこと。
二人が近くに居るのが分かるのだろう、そわそわした様子のグラトニーが見られるがこうしてラストの言うことなら聞くのだから可愛いものである。他のホムンクルスにバレた時がめんどくさいが、同様に洗脳すればいいので対した問題はない。
1日1回ぐらいの洗脳なら残機も減らない上、その代わり急激な眠気が襲ってくるが、敵がいないのであれば寝ればいいので、2回以上使う必要性がないのであればラストは寝るようにしている。わざわざ賢者の石のエネルギーを使ってまで洗脳なぞしたくないものだ。今だってラストは眠たくて仕方がなかった。
「ラスト、眠たいの?」
「ちょっとね。」
「賢者の石があるのに、変なのー」
「とりあえず、私は私でお父様に報告しなくちゃいけないし、中央に戻るわね」
「はーい」
洗脳を終えたラストは、その場を離れていく。できればもうこれ以上他のホムンクルスに会いたくない。エンヴィーとか一番めんどくさいのだ。彼が居ると必要以上に洗脳を使ってしまう。プライドやラースもそうではあるが、グラトニーといるときが一番気楽である。
鋼の錬金術師が錬金術の事故で女性になったと聞いたときは、驚きはしたが、蓋を開けたら結局はこの二人のせいで女性になってしまったようなものだ。詳細を聞いたら眩暈がしたが、それで焔の錬金術師と結婚するならラストは別にそれでも良いと思った。内容が内容なので、錬金術による事故でというワードで誤魔化したあたり大胆だなとラストは感服もした。
確かにこれは世間に知らせられるような内容じゃないし、下手したら降格、スキャンダルものだろう。当然、ラストはこの話をホムンクルス側にすることはできないのだが。
ミミが、ラストと会話する。もちろんこの会話はグラトニーに周囲の人間には聞こえない。
「しかもこの現象ね、エドワード・エルリック限定なの。ミシェル君の吸血の対象ってエドワードしかいないから♡」
「それはそれでキモイわね。エドワード・エルリック以外を吸血するとどうなるのよ」
「それはもう相手を殺すまで吸血するのよ。でないと私達の空腹は補えないから。一度ウィンリィ・ロックベル相手に吸血してみたら殺しかけてね。以降他人を吸血するのはやめてるのよ♡彼女もエドと同じ条件であーだこーだしたら男になるのかもしれないけど、時効かもね。ミシェル君、彼女が発情しないように、定期的に微調整してるみたいだし。男になっても彼女付き合う相手がいないし、彼女が可哀そうだから、そうならないようにこの間再度きちんと設定しておいたわ♡あの子、分身ながら優秀ね。賢者の石の残機を幾つかあげてもいいかもしれないわ♡私もミシェル君の意思に反するようなことを強要するのは好きじゃないから♡私って、あくまでオマケみたいな存在だし♡解説役みたいな、そんな存在でいいのよ♡たまにえっちなことができたらなおヨシ♡」
「吸血事件待ったなしね。それはそれで面白そうだけど」
「もう、私の渾身の下ネタスルーしないでよ♡別にいいけど♡他者への吸血はこの国と敵対することになってもいいならありかもしれないわね♡でも、私達は、必要以上に吸血をする必要はもうなくなったわ。賢者の石があれば、私達の空腹を満たすことができるから。もっと欲を言えば、人工精霊が欲しいけどね。無いもの強請りはしないわよ。あれは、私達の世界「エマ」と「ノヴァ」特有の遺産だから。人工精霊の発生源となっている塔がこちらに来たら、再接続することもできるのだろうけど。あ、多分いらない知識だと思うけど念のために教えてあげるわ。もし仮にこちらの世界に塔が来てしまったとしても、不用意に近付かないことね。史上最悪最低の門番が居るから♡下手したら私達でも死ぬかもね♡」
「どんな門番よ」
「そうね、一言で言えばバーサーカーね。容赦なく敵を殲滅するAIみたいなものだから……国が、保有する部隊が全滅してもいいなら挑みなさい♡彼女と戦って生き残ったら私達の世界でも英雄視されるんだから♡」
「できれば一生会いたくないわね」
「でしょ♡だから、私は、もう完全復活することは諦めてるわ。ミシェル君が人工精霊だったのは偶然の産物よ。そう、フラスコの中の小人がクセルクセスで偶然産まれたように、ミシェル君も人の願いによって偶然生まれた存在なの♡」
「……偶然、ねぇ」
「そう。いつだって物語は、偶然から始まるのよ。おもしろいでしょ♡」