「で、兄貴。結局幻覚で追体験ってなにするんだよ?」
エドが幻覚で追体験するにあたって、詳細を聞いてくる。
なんとなく、それがどういうものなのか理解することはできているのだろうが、ちゃんと説明は聞いておきたいのだろう。
僕は正直にそれの説明をする。
「僕の記憶を幻覚で完全に再現することができるんだよ。エドとアルがこのあと、少佐たちに黙って第五研究所に行くのが正史なんだけど、その様子を完全に再現することができる。」
「……分かってはいたけど、兄貴の幻覚って前から便利だ便利だと思ってたけど、ここまでくるとなんでもありだな」
「イメージを現実に持ってくるのは僕の専売特許だからね。まぁ、でも訓練したら誰でもできるんじゃないかな。幻覚使いって皆そんなもんだよ」
正直な感想を僕は述べた。
そうだ、注意点あった。これは説明しとこう。
僕はエドになるべく伝わるように説明した。
「あ、思い出した。これは説明しとかないと違和感あるよね。この記憶って僕が見てきた本当の「鋼の錬金術師」の世界だから、エドはもちろん男のままだし、大佐と結婚なんてしてないし、僕ももちろん存在しない。その前提で見てね」
「おう。本当だったらこうなってたってのは、見てみたいから別にいいよ。結局どんな世界線でも俺らが第五研究所に行った内容は大体同じなんだろ?」
「うん。 怪我するのも、真実を知って傷つくのも、一緒」
「なら、兄貴の記憶で色々見せて貰った方がいいや。別にそれって俺だけじゃなくて、アルや他のみんなも見れるんだろ?」
「見れるよ。ホムンクルスがどんな奴らかってのもわかるから。見ておいてほしいな。」
他のメンバーも見るように諭す。
「本当に、なんでもありね。驚き疲れたわ」
「なんと。ぜひ見てみたいですぞ」
みんな、驚きつつも受け入れてくれるようだ。
「よし、じゃぁ始めるよ」
僕は幻覚で、その全てを見せた。
まずは、第五研究所の場所をあてるところから。
「この辺は、本当こっちと変わりないんだな。」
「少尉達もちゃんといるね」
「君たちの好奇心旺盛さはここから来てるからね。まぁ、よくみておいて」
話が進んでいく。
>刑務所絡みってことは、やはり政府も一枚かんでるってことですかね。
>一枚かんでるのが刑務所の所長レベルか政府レベルかはわからないけどね
>……なんだか、とんでもない事に首をつっこんでしまった気がするんですが。
>だから聞かなかった事にしろって言ったでしょう
怯えるロス少尉とブロッシュ軍曹をバッサリ切り捨てるアル。
それを見て弟達二人はこの世界の自分達は正直に少尉達に賢者の石の材料を話してしまったんだなと悟る。
「確かに俺、兄貴の警告聞いてなかったら普通に喋ってそうだわ」
「こんなことありえるかって怒ってそうだよね」
「それを私たちが聞いてしまうって事ですか。面白い違いですね」
感想を述べていく。
正史だと、本当はこうなっていた。
それがわかるだけでもすごい事である。
>うむ、しかし現地点ではあくまでも推測で語っているにすぎん。国は関係なく、この研究機関が単独でやっていた事かもしれんしな。
>うん。
「やっぱここの部分は兄貴がいねえと国レベルかどうかってのはわからないよな」
「そうだね。刑務所レベルだったらこの摘発もそこまで危険じゃないけど、今回は国レベルの大犯罪だから国家転覆を企ててると思われて逆に処分されるのが僕たちの危険もある。下手に動けない状況のはずなのに君たちは単独で動いてしまうわけだ」
「貴方が弟達のことを好奇心旺盛なじゃじゃ馬って言うのもわかる気がするわ……」
「これ当然少佐は行くなって止めますよね」
「うん」
ロス少尉がそれを聞いて天を仰ぐ。このあと、自分達の護衛を振り切られた時の心情を考えると同情しかしないのだ。
結局助けに行くのは自分達だ。エドは、自分が死に急ぎやろうと思われても仕方がないと反省した。
真実を知りたがるのは結構だが、リスク管理もしてもらいたいものだ。
>この研究機関の責任者は?
>名目上は“鉄血の錬金術師”バスク・グラン准将という事になっていたぞ。
>そのグラン准将にカマかけてみるとか……
>無駄だ。先日
>ええ!?
>むう!!さてはおまえ達!!この建物に忍び込んで中を調べようとか思っておったな!?ならんぞ!!元の体に戻る方法がそこにあるかもしれん!とはいえ、子供がそのような危険な事をしてはならん!!
>わかった、わかった!!そんな危ないことしないよ
>ボク達少佐の報告を大人しく待ちます。
言って、その場は解散になった。
そのあと、窓のカーテンを使って宿を脱出するエド達を見てこちらの弟達二人は笑いを隠せなかった。
「絶対嘘じゃん」
「これで信じてくれる少佐いい人すぎでしょ」
「あんなの言われたら私たちは出ていかないように表の見張りするしかできなくなりますよ」
と、ブロッシュ軍曹。ロス少尉も同様に呆れたように話す。
「普通は表の方から出ていくと思うわ。この子達本当、普通じゃないんだから。全く……」
「僕の苦労わかってくれた?」
これは干されてるなと感じたエドは素直に謝った。
「ごめんって。それにしても軍上層部の人間が
「そうですな。こっちの世界もそちらの世界同様グラン准将は第五研究所の責任者でありますし、
少佐の説明に、ほへーと納得した。
「情報共有できてよかったね。」
「事実確認してる感じってこういうことなんだね。正史と違うところがないか確認するのが兄さんの仕事みたいなものなんだね」
アルが感想を述べた。その通り。これがわかると次、どう動いたらいいかってなるでしょ。
「うん。この辺りはまだいいけど後半になってくるとガラッとものごと変わってくるから、知りたくなったらまたこうやっておしえてあげる」
「頼んだぜ」
>オレたちがこんな体になっちまったのはオレ達自身のせいだ。だから、オレ達の責任で、元の体に戻る方法を見つけなきゃならねーよ。
第五研究所付近に到着する。
>ふーん……使ってない建物に門番ねぇ……怪しいな。
>どうやって入る?
>入口、作っちまうか?
>それやると錬成反応の光で門番にバレちゃうかも
>……と、なると……
>よいっしょ
>悲しいけどよ、こういう時は生身の手足じゃなくて良かったって思うぜ
>はは、同感
アルに体を持ち上げてもらい、エドは塀の上にある鉄格子をバラしてロープのようにする。それを使ってアルも第五研究所の中へと侵入していった。
「むっちゃやりそう。それしかなさそうだしな」
「普通じゃないからどんどんそれも利用して出来ちゃうもんね」
「ほんとこんなのこっちの世界ではやらないでくださいよ。みるからに危ないじゃないですか」
「うーん、そういう状況になったら全然やっちゃうかもなぁ」
「まぁ、どうしようもなくなったら仕方ないと思うよ」
「いいんですか」
「怪我するより全然いいと思うよ」
「よっしゃ」
正史の自分達の行動に納得する弟達と、肯定する兄、それを白い目で見るロス少尉。
この後、自分達がどうするのか見守る。
>うげ、入口もがっちり閉鎖かよ。……奥まで続いてそうだな。アル、ここで待ってろ。
>ええ?一人で大丈夫?
>大丈夫も何もおまえのでかい図体じゃここ通れないだろ。んじゃ、ちょっと行ってくる。
>(好きででかくなったんじゃないやい)
通気口を使って侵入を試みるエド。ミシェルがいないので兄の幻覚にも頼れず、入口に置き去りにされるアル。
それを客観的に見て、こちらの世界のエドは色々思うところがあったみたいである。
「あ、アル。みるからに落ち込んでる。……ごめんな。そんな体しか見つけてやれなくて」
「いいよ、もう。好きでこの体になった訳じゃないって思ってたのは本当だけど、こっちだとミシェル兄さんが好きな時に僕を元の体に戻してくれる訳だし。寝れないのは辛いけど、今の僕が本当の僕じゃないとは考えないようにしてるから」
その話を聞いたブロッシュ軍曹が述べる。
「その話、ミシェル殿だけじゃなくてアルフォンス殿にも当てはまったんですね」
「……だから俺、なるべくその話には触れないようにしてた。二人共傷つけたくなかったから」
「その割に僕には容赦なく疑ってかかったよね」
「仕方ねえじゃん!あまりにも兄貴らしくない行動が多くて気持ち悪かったんだよ。結果的に、アルは絶対本物だって思えられてよかったけど。ちゃんと命懸けであっちから連れてきたからな。」
「……そんなに前世の記憶がある僕とない僕で違う?」
ミシェルの疑問に、弟達が好き勝手に話し始める。
「そりゃぁ、うん。似てるところは割とあるけど、ここまでしっかりしてなかったような」
「もうちょっと幼かったよな。泣き虫だったし。覚えてるかわかんねーけど、島に放り出されたとき兄貴のやつアル以上にピーピー泣いてたぜ。虫とか大嫌いだったしな。今の兄貴は人生を何回も経験した年長者って感じ。一回も泣かなくなったし、虫見て驚かなくなったし、ちぐはぐしてんの。喧嘩は相変わらず俺らの中じゃ一番弱いけどよ。」
「覚えてるよ。……仕方ないじゃんか、僕だって前世で色々経験するまでは強くなれなかったんだし。そこまで言わなくても」
「泣き虫って……中々想像できないわね」
「だろー?兄貴ほんとによく泣いてた。いじめられても泣いてた」
「人の黒歴史をそんなに喋んないの。違うのは分かったから」
「……叩かれるか思った」
「本当のことだしね。あんまり言わないでほしさはあるけど。」
昔のことを言われて、ミシェルは頭を抱えた。
記憶が戻る前のミシェルは本当に色々正直者だったのだ。
前世も、一般日本人男性のイマジナリーフレンドとして生まれたミシェルの性別は女の子で、人見知りで、当然虫なんて触れない少女だった。彼は妹が欲しかったらしい。
それがそのままそっくり幼少期時代繁栄されたのだろう。
性別は前世で全盛期だった時のまま。
違和感しかなかったはずだ。
それでも記憶が戻る前のミシェルは、長男なりに頑張っていたのだ。
「昔は俺以上に女っぽかったよな」
「え、こんなにしっかりしてるのに?」
「ミシェル兄さん、今でこそ違和感ないけど料理とか得意でしたよ」
「生きた動物を殺そうとした時は可哀想だよとか言われて中々殺せなくて大変だった。俺ら飢えて死にそうだったのに」
「その後兄さんが力尽きて倒れちゃって先生来た時は笑っちゃったね」
「おまえらは大丈夫だけどこいつは破門だ!みたいなの言われてなかったけ」
「それで兄貴また大泣き。泣きながら自分で鳥とって捌いて食べてた」
「あれはあれで可哀想だったけど先生に見直されてたよね」
「小さな子供を島に放り出すその先生って人も大概だけど何歳の時島に放り出されたのよ……」
天を仰ぎながらロス少尉が聞く。
「8歳と9歳と10歳?もちろん兄貴が10才な」
エドが話す。
「ええ?!」
「しっかりしすぎね……」
「母さんが死んで、俺らどうしても錬金術を習いたくて弟子入りしたんだよね」
「あの時の先生、すごかったからな。弟子入りするならこの人!って感じだった」
「話脱線しすぎ、うん。僕がそんなに記憶があるのとないので違うってのはよく分かったから!ほら、話しすすむよ」
「お、おう。悪かったって」
ミシェルはエド達に自分の前世の話をするのはまだはやいと思っていた。今自分の元々の性別を公表しても混乱するだけだ。前世はひたすらに気弱だった性格を直したくて男になったところもあった。友達を助けたいと思う内に恋して、失恋したりとか色々あったが後悔してない。
男になったこと事態は失恋した時、後悔したかと言われると嘘であるが、別れもあれば出会いもあり、今の自分になれたことで現実を受け入れられるようになったから感謝はしている。昔の気弱な性格のままなら、消えていなくなってただろうから。
結局ミシェルも、