空想の錬金術師   作:篠原えれの

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 >よっこらしょ

 

 通気口の出口に辿り着いたエドは網戸を蹴破る。

 

 >(足下が見える程度に証明がついてる……。何が、現在使われておりませんだ。ビンゴだぜ)

 

 第5研究所の内に侵入できたエドは確実になにかあると確信した。

 それを見たこちらの世界のエド達は、ある違和感に気付く。

 

 「こうして見るとアニメってほんとすげーよな。考えてる登場人物の心理描写までばっちり」

 「というか兄さんもシェスカ並にすごい記憶能力あるんじゃ。いくら覚えやすいからってここまで正確に反映できるの?」

 「そうだね……。転生した以上本来なら、そういった記憶の保管はどうしても曖昧になるんだけど、僕のはちょっと特殊でね。またあとで説明するよ」

 

 僕単独だったら、確かにこの再現は難しかったかもしれない。

 今の僕には、賢者の石(バッテリー)やミミ(記憶媒体)が存在する。

 ミミを使えば、前世で使っていた独自の共有記憶保存スペースにアクセスできるので、あとはそれを賢者の石のエネルギーを使って引っ張ってくるだけである。

 つまり、共有記憶保存スペースのおかげで僕はここまで鮮明に物語を反映することができるのだ。

 僕自身が物語の全てを覚えてる訳じゃないし、どうだったけと漫画やアニメを見る感覚で共有記憶保存スペースにアクセスしているわけ。

 しかも、これを現実世界にもってくる際必要になるエネルギーは、幻覚を使えばとても省エネになり、賢者の石の残機を使わなくても記憶再現能力を実行することができるのだ。

 色々リスクを回避できるなら多少能力の詳細がバレてもやる価値はある、と僕は思っている。

 説明するのがめんどくさいので、今この説明をしなくていいならスキップしよう。

 

 「おう、また教えてくれな」

 「うん」

 「もしかして、この記憶の再現に賢者の石を使ってたりするの?」

 

 アルが聞いてくる。

 

 「動力源としてちょびっとだけね。記憶媒体事態は別にあるよ。この記憶媒体のおかげで僕は賢者の石(ホムンクルス)を支配できてるところあるから、また紹介するね」

 「それが、兄さんの幻覚とか洗脳といった不思議な力の正体だったりする?」

 「そうとも言えるかもね。彼女、僕と違ってかなり性格悪いから喧嘩しないでよ」

 「げ、女なのかよ」

 

 いいこと聞いてくるなあ。大体正解だ。

 エドに引かれてしまってるミミ、大変不運だが仕方ない。

 多分、僕の幼少期の原因みたいにエドが勘違いしてるから軽くだけでも説明しとかないとなぁ。

 

 「今まで彼女、動力源がエドの血液でしか動かなかったから、人格までは起動することができなかったけど賢者の石のおかげで絶好調でね。僕も正直調子がいいんだ。でも、人の命を使ってまで生きたいとは思わないから、やることやり終えたらちゃんと彼らをあるべきところに解放するから、安心してね」

 「……それはそうかもしれないけどよ。賢者の石に閉じ込められている人達も解放したら兄貴も死ぬとか言うなよ」

 「……さぁ、それは分からないかも」

 

 そう言って、またエドの機嫌が悪くなった。

 

 「(その問題はまだ、解決してないのねこの子達)」

 「(なんでミシェル殿ってこんなに死にたがりなんでしょうね……。賢者の石をもって、不死になったも当然なのに死のうとしてるあたりマジじゃないですか)」

 「(私に聞かないでよ、そんなの分かれば苦労しないでしょ!)」

 「(ですよねぇ)」

 

 小声で会話するロス少尉とブロッシュ軍曹。

 エドですら分からない疑問を、この二人が分かる訳ないだろう。

 ミシェルはただ、弟達を助けたいから死にたいだけだ。

 特に、ミシェルはエドの錬金術師としての才能を潰すのは惜しいと思っていた。

 例えそれが物語の着地点して大事なものであったとしても、自分の存在を対価にそれが覆るなら安いと思っていたから。

 これにはミミも同意しているし、この世界において最もやりたいことの1つなので、今更それを取り消すつもりはない。

 

 「(僕が消えてから、どうするか考えたらいいよ)」

 

 ミシェルはどこまでも自分のことに関しては、無頓着だった。

 

 ■

 

 >(兄さん、遅いな。迷子になってんのかなも――)

 

 アルは、いつまでも帰ってこない兄を心配していた。

 その最中、屋上に大きな鎧の姿の男が一人。

 

 >ヒュウ♪

 

 殺気を感じ取ったアルは、屋上から飛び降りて来たそれの攻撃を避ける。

 

 >なっ……誰だ!!

 >OK、OK!でかい割にいい動きだァ。そうでなくっちゃやりがいが無ェ!

 >誰だと訊かれたからとりあえず答えとくかァ。ナンバー66(ロクロク)!!

 >もっとも、こりゃあ仕事上の呼び名だがなァ!本名もちゃんとあるけど、聞いたらおめェチビっちまうからよォ

 >とどめ刺す時に教えてやらァ!!

 >……それって、ボクを殺すって事?

 >げっへっへ、なぁに。きれいに解体してやっからよ。安心して泣き叫べ。

 

 66の容姿を見て驚くエド達。

 

 「アルとそっくりさんでてきた!」

 「ええ、なんかこれ中身空っぽでした言われても驚かねー……もしかしてこれ、兄貴が言ってた囚人の成れの果て?」

 「うん」

 「あー、この人と戦うことになるから、危険だからやめろ言ってたんだね」

 「ってことはもう一人いるの?」

 「それは見てたらわかるよ」

 

 エド達の疑問に、続きを見るようにミシェルは諭す。

 ミシェルが一番エド達に見て欲しいのは次のシーンからだ。

 

 ■

 

 >……!

 

 賢者の石の錬成陣を見つけたエドは驚いていた。

 明らかにその錬成陣には、血痕跡があり、使用済みであることを匂わせていた。

 壁画には何らかの遺跡の模様があり、それの意味までは理解することができなかった。

 

 >なんだこりゃ……。

 >ひょっとして賢者の石を錬成するための……。

 >その通り。どこの小僧か知らんが、石についてよく知っているようだな。

 >私はここの守護を任されている者。ナンバー48(ヨンハチ)と、とりあえず名乗っておこうか。

 

 落ち武者の様な容姿をした鎧の男が、やってきた。

 

 「これが賢者の石の錬成陣か、関心する暇もないぐらい次から次へと」

 「よく見ておいてね」

 「この錬成陣ってこっちの世界でも使えるの?」

 「そりゃもちろん。だから見て貰いたいんだし。この錬成陣でも、最低5人は生贄が必要だけどね」

 「うげぇ」

 

 想像してしまったエドが、気分悪そうに言う。

 

 「賢者の石の材料が人間だって分かってる俺らなら、これが賢者の石の錬成陣だってのもよく分かるだろうな」

 「しかも相手の人相当手練れっぽいよ。これは単独行動するの危険だね僕達」

 「これを無傷で突破できるだけの自信は……あると言いたいところだけど、きつそうだな」

 「この人達ってやっぱり僕と同じように、鎧に血文字で魂の定着がされているの?」

 「そうだよ。まぁ、アルのことが国にバレるのは時間の問題だけど、僕達は基本的に、()()()()()()()()()からその時が来るまでは大丈夫だよ」

 「()()()()()()()()

 「うん。まだ、アルまではそうだとは分かられてないけど、そのうちあの人達もそうだと理解するよ。その説明もまた、やっていくね」

 

 >ここに入り込んだ部外者は全て排除するよう命じられている。

 >悪く思うな小僧。

 >……そっちこそ。

 

 エドは機械鎧(オートメイル)の一部を錬金術を使って鋭い刃にして変形させる。

 

 >()()に倒されても悪く思わないでくれよな。

 >ほう!錬金術というやつか。どれ。

 

 ナンバー48が一瞬で間合いを詰めて来る。

 

 >手並み拝見……!

 >速……!

 

 ナンバー48による横切りを、エドはしゃがんで回避する。

 刀を持ち替え、今度は縦切りで攻撃してくる。

 エドはそれを機械鎧(オートメイル)を使って防いだ。

 

 >……っ!!

 >肩まで鋼の義手か。命拾いしたな。だが!

 >我が愛刀は鋼さえも貫く!!

 >……冗談じゃねぇ!義手(これ)また壊したらウィンリィにぶっ殺されるじゃねーか!!

 

 ギャリンッ!

 

 エドは機械鎧(オートメイル)を使って48の攻撃を防いでいく。

 蹴りをいれて、48に対して一撃を入れることに成功するが、ここでようやくエドは48の違和感に気付いた。

 

 >む……!

 >おいおい、この空洞感……!ひょっとしてあんた。その中空っぽなんじゃねーの?

 >――――おどろいたな。よく気がついた。

 >あんたみたいなのとしょっちゅうう手合わせしてるんでね。感覚でわかったよ。

 >ほう。表の世界にも私と同じのがいるのか。

 >嫌になるね。オレ以外に魂を鎧に定着させるなんて事を考える馬鹿がいるなんてよ。

 

 「このタイミングでそっちの世界の俺は気付くのか。確かに、兄貴の事前情報がなきゃ、相手が死刑囚だってのも分からねぇだろうしな」

 「本当に危険なことに手を出してしまってるんだね、僕達」

 

 アルの言葉に、僕は更に警告を重ねる。

 

 「よく見てて。これから戦うことになる奴らは、こいつらよりも強いから。ホムンクルスって、彼等より強くて、何度も生き返るんだよ。」

 「戦闘は避けられないのか」

 「まぁ、そこは僕の力量次第だけど、僕の戦闘法って基本ワンパン戦法だから初手ミスるとどんどん後手に回るんだよね。自害させるか、僕らの仲間になるか。これに失敗したらそのあとはもう戦闘するしかなくなる」

 「うげぇ。その1か100かみたいなのやめろよな――……」

 

 天を仰ぐエド。

 

 「何人か既に仲間にできそうな雰囲気もあるけど、この国の主要人物がホムンクルスだから中々殺せなくて参ってるんだよね。敵に回しても詰むしさ。」

 「兄貴、それってもしかして相当偉い人?俺達あったことあったりする?」

 

 ミシェルの言葉で、エドは気付いてしまった。

 ミシェルも別に気付いても困らないかなと話していく。

 

 「偉い人だしむっちゃ強いね。偉い人だからすぐに死なれても困る。自害はさせたくないね。国が機能しなくなるから。国が真っ黒でもそれを運営する人がいなくなれば一大事だ。とりあえず、隣国の荒事をどうにか終わらせてから退任してほしいもんだね」

 「なんとなく誰か分かってきた。それって大総統だったりしね?ほら、兄貴、ホムンクルスには最強の目を持ってるやつが居るってさっき言ってただろ。大総統眼帯してるし、その、もしかしたらあの眼帯を外したらウロボロスの入れ墨が――とかならね?大総統がホムンクルスなら、確かに兄貴がすぐ死なれても困るっていうのも分かる」

 「なんと」

 「――それはさすがに違うのでは。考え過ぎよ」

 「そうですよ。もし本当にそうだったとして、俺ら完全に手のひらの上で踊ってるみたいになるじゃないですか」

 

 エドの推理に、思わず少佐たちは否定的にになっていく。

 アルもそんなことがありえるのかと思わず考える。

 

 「兄さんたちの結婚も了承してくれたの大総統だよ?あ、もしかして兄さん――仲間になりそうってそういう」

 「うん。大正解。実話僕、先回りして、大総統相手に真理戦をどんどん仕掛けてるんだよね。細かい洗脳をどんどん行ってるの。でも、まだまだ彼はあちら側だ。彼の近くに厄介なのが一人居るしね。彼の一言ですぐ大総統は正気に戻る。だから、迂闊な行動はしないこと。ちょっとでも変なことしたら処分対象だから、僕らはあくまでも何も知らない道化を演じるの」

 

 冷や汗を流しながら、少佐が話す。

 

 「それにしても、おかしいですぞ。大総統は結婚して奥様もいらっしゃいますし、お子様も――」

 「確か、セリム様って養子でしたよね。大総統と奥様の、本当の子供ではない」

 「もしかして、そいつが厄介なホムンクルスか?」

 

 ロス少尉がはっとしてセリムのことを思い出して話す。

 エドがそれらの話から、これまでの話と合わせて、推理する。こいつもホムンクルスか、と。

 

 「うん。一番危険人物かもね。セリム・ブラッドレイ。通称、傲慢(プライド)を司るホムンクルス。彼とはあいにく接近する接点がそんなになくてね。たまに僕があちら側のホムンクルスとして会話するこそあれど、いつ影からとって喰われるか分からないって怯える毎日さ。」

 「それが、兄さんが言う影を操るホムンクルスの正体?」

 「うん。本当に彼の存在が厄介でね。僕自身の戦闘法としては、彼を取り組むか自害させるかしか視野に入れてないよ。仲間にしようなんてそんな難易度高い遊びは大総統だけでお腹いっぱいでね。大総統も正直恐ろしいから最終的に殺すので精一杯になってしまうかもしれないし、セリム・ブラッドレイも大総統の息子っていうポジションが中々そうはしてくれない」

 「奥様は?」

 

 少佐が聞く。

 

 「あの人だけは普通の人だよ。かわいそうに。ブラッドレイ大総統も言ってた。あの人だけは自分で選んだって。愛されてはいると思うんだけどね。バケモノに囲まれて、そうじゃなかったら、普通の生活したかっただろうになぁ。大総統が普通になれば、その辺もどうにかできるかもね。あの性格をうまい具合に調教して僕らの仲間にするのはきついけどさ。彼、生まれも育ちもかなり特殊だから。途中まではちゃんと僕達と同じ人間で、途中から僕と同じようにホムンクルスになった、国によって選ばれた人間だから。彼もある意味国の被害者だよ。」

 「大総統も普通の、人間だったんだ。あー……やばい、情報量が多すぎて眩暈してきた」

 「そういえば、大総統の出自ってよく分かんないよね。聞いたことないや僕」 

 「確かに……でありますな………」

 

 アルの疑問に、少佐も頷く。

 エドがはっとして叫ぶ。

 

 「まてよ。大総統も被害者ってことは更に黒幕がいるの?!」

 「うん。それもまた後で、話していくね。彼が居るから、この国はできあがったんだ。彼のしょうもない願望を叶えるために、アメストリスという国はできた。そういう訳で、今の話は聞かなかったことにして、あくまでも彼等の前でこういう話をしたらいけないんだなって自覚をもってくれるだけで僕は嬉しいよ。あまり気張りしすぎてもバレるからね」

 

 気付いてないフリを徹底しろと、ミシェルはエド達を諭していった。

 

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