空想の錬金術師   作:篠原えれの

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4.エルリック兄弟、ヒューズ邸で宿泊する。

 

 「エリシアちゃん~~~!」

 「ぱぱ、おひげ痛い~!」

 「そうか~~!じょりじょり~~~!」

 「いや~~!」

 

 無事、ヒューズ中佐。愛娘エリシアちゃん(2歳)を溺愛している様子をご披露。

 エルリック兄弟は、ヒューズ邸に招待されていた。

 

 「ほら、今日のお客さん。エルリック兄弟だよ!」

 「わぁ!大きな鎧~~!それから小さなお兄ちゃん二人?」

 

 エリシアの言葉にアル達は驚きを隠せなかった。

 今のアルの姿はミシェルの能力で人の姿の恰好をしている。鎧を着てないのでヒューズも「アルフォンス君は鎧を着てないぞ~?エリシアちゃん」「だって見えたの~~!」というやりとりをする始末だ。そういえば、と前にアルはミシェルが言っていた言葉を思い出した。

 

 「僕のこの能力ってさ、大人には有効だけど子供にはあんまり効かなかったりするんだよね。子供の方が大人よりも純粋だからさ。一瞬ぐらいならバレちゃうから気を付けて。バレたらなんとかして誤魔化してね。誤魔化せば僕の力の作用は強まって、子供にも嘘は通用するようになるから」

 

 アルフォンスはこの時ばかりは寝ている兄を少しだけ恨んだ。いつものように、盛大に誤魔化せばなんとかなるので次男は頑張った。小さい言われたし。

 

 「小さい言うな!鎧着てる方が一番下の弟。アルフォンス・エルリック!俺は次男のエドワード・エルリック!寝てるのが長男のミシェル・エルリックだ!分かる?俺ら二人ともアルよりもお兄ちゃんなわけ。それからエリシアちゃん!アルは今鎧着てないからね!よろしくな!」

 

 「あれ、ほんとだ。鎧のお兄ちゃん、鎧着てない……。なんかね、一瞬大きな鎧さんが見えたの!ミシェルお兄ちゃんも青髪に見えたけど……金髪だ。妖精見たいに見えたんだけど……ううん、どうしたんだろ。変わってるね、お兄ちゃんたち」

 

 「あらら、疲れちゃったのね。ごめんなさいね。」

 

 「……本当に鎧を着ている時もあるので、大丈夫です。こちらこそごめんなさい」

 

 その様子を見ていたヒューズは、少し考えるが娘の前だしなぁと三人を自宅に招き入れた。

 エルリック兄弟が、悪い人たちではないのは分かるから。

 空想の錬金術師が認識妨害の達人であることも知っている。もしかしたら娘の言っていることは本当で、訳ありなのかもしれないが深く思わないようにした。

 

 「よし、長男君には悪いがご飯にしよう!グレイシアのご飯はうまいぞ~~!」

 「ありがとうございます」

 

 そのあとは無事、エルリック兄弟は美味しくグレイシアの夕食を食べることができた。

 絶賛爆睡中の長男を除いて。

 

 「グレイシアさんのキッシュ、おいしかったね。お母さんの作ってくれたパイと似てた」

 「おう」

 「エリシアちゃんに僕達のことバレそうになって、びっくりしたね」

 「まぁ、子供には分かるって兄貴が前に言ってたからな――……」

 「ミシェル兄さん、相変わらず寝てるね。」

 「……そうだな」

 「多分、兄さん。僕達と合流したときにはだいぶ眠たかったんだと思うんだよ。だからこう、あの時無理にでも僕を人の姿にしたんだと思うんだけど……アイザックを見つけちゃったときは正直鎧の姿に戻ろうかと思ったよ。危なかったし。でも大丈夫だった。兄さんが、もしかしたらあのとき僕達の居ないところでアイザックに何かしたから、疲れてしまったのかなと。今日の泊まる宿だって、なんとなく分かってたんじゃないかって……じゃないと、辻褄が合わないよ色々」

 「言うな」

 「だって兄さん、最近のミシェル兄さんずっと変だよ。特に国家錬金術師の資格を取ってからまるで未来を知ってるかのように行動することが増えて……」

 「言うな。俺だって、聞きたいさ。兄貴に本当のこと。でも教えてくれないんじゃ仕方ないだろ。なんとなく嘘つかれてんのは分かるからムカつくけどよ……。アルがご飯食べられるようになった時みたいに、話してくれるまで待とうぜ。兄貴のあの容姿のこと、とかさ。」

 「うん」

 

 二人ともミシェルのことをよく知らなかった。特にあの日、人体錬成をして真理を見たあの日からミシェルに本当のことを聞けていない。それを聞けばアルフォンスも傷つけてしまうから、エドはずっと聞くことを我慢していた。

 アルもそれを聞けば自分のことに繋がるからずっと聞けないでいた。

 

 ミシェル・エルリックは本当にミシェル・エルリックなのか?ミシェル・エルリックのフリをする別人なのではないか?アルフォンスは本当にアルフォンス・エルリックなのか?

 

 これだけは絶対に聞いたらダメだと。

 少なくとも弟の前では聞いたらダメだと。

 エドワードは我慢していた。

 

 アルフォンスは本物だろう。ミシェルを見ればよくその違いが分かった。明らかにミシェルの方が別人だ。エドワードの彼への評価は特にひどかった。

 

 ミシェル・エルリックとしての記憶がある「何か」。あのエルフ耳を見れば見るほど疑問は深まる。ミシェルはあの容姿のことに関して、「まあ、僕に対しての罰じゃないかな」としか教えてくれず、その割にあの姿を嫌がってないのもエドは知っていた。この国で青髪と赤目は目立つからとエルフ耳を人間の耳にし、金髪赤目に変えた兄。赤目はどうしても元の金目にならないと言っていたから本当に罰なのだとは思う。

 

 兄は以前からあそこまで『認識』や『幻覚』に詳しいわけではなかった。考えたくないが『洗脳』にも詳しいような気がするとエドワードは考える。恐らく、あそこまで情報をなんでもかんでも変えることができるのは後にも先にもあの人ぐらいだけだろうと。

 

 『感触』『食感』『視覚』『味覚』『嗅覚』等人の感覚に関わるもの大体全て触れるし変更できると聞いた時は驚きを通り越して呆れたが。

 兄のことだから『洗脳』をするにしても悪いようには使わないのだろうとエドワードは深くかんがえないようにしていた。

 

 もし真実を話してくれるその時が来るなら、絶対殴ってやろうと心に誓っていた。もちろん真実を聞くときもまず殴ると心に決めていた。アルフォンスは眠れないのに、自分はいつも寝てるんじゃねえとミシェルが起きたら怒るつもりだ。言ってもあんまり意味がないのは仕方ないとしても。

 

 

 アイザックがセントラルから逃亡したという知らせが入る。

 最後に憲兵が目撃した情報はセントラルを出てすぐ、東に向かって人気の無い方へ姿をくらましたのだという。

 

 目標がセントラルから脱出してしまった以上、アイザック・マクドゥールはアメストリス国内にて見つかり次第捕縛するという指名手配犯になった。幸い、アイザックが犯した犯罪は建物の破壊とミシェルがアイザックを見つけるまでに殺された憲兵達だけだったので被害は少なかったが。死亡者が出ている以上軍はアイザックを逃す訳にはいかなかった。

 

 攻めて来ないなら放置でいいという認識であるが、完全に雲隠れされるとは大総統側も把握していなかったので困惑を隠せない始末だ。

 アイザックは何かしろ目的があって、セントラルに攻め込んできた。軍に対して相当恨みを持っていたのは間違いないのだから。

 

 なのに急に目的が変わった。何故攻めて来ない?誰かと手を組んだのか?

 アイザックの体には賢者の石もある。人柱候補でもあるし、監視対象だ。

 その監視からも完全に、逃れるように動いている。

 自分たち以外に、これからこの国でやろうとすることを知っているものが居る?

 アイザックと接触したものは少ない。皆彼と接触したものは死んでいるからだ。

 最後に憲兵を殺さなくなったのはいつからだ?

 

 ……『空想の錬金術師』ミシェル・エルリックに接触してからだ。

 

 そういえば彼も人柱の一人だったな。

 『空想の錬金術師』は再度アイザックと接触した際、戦闘に巻き込まれている。

 しかも彼は寝落ちしているところを容赦なく襲われたのだという。

 他の兄弟も容赦なく巻き込まれて……だが、危険は報告よりも少なかったとマスタング大佐からあがっている。

 

 いくら相手が子供とはいえ、怪我もさせないのは人が変わり過ぎてないか?軍に所属する人間なのに?他の憲兵にも死傷者はでなかったようであるし。

 考えすぎか、というのがブラッドレイを含む他のホムンクルスの認識である。

 

 アイザックの気が変わったのは気がかりであるが攻めて来ないのであれば、見つけ次第捕縛するまで。事が大きくなるようであればキンブリーを使ってでも捕縛すればよい。イシュヴァールの生き残りの動きも怪しいからな。まとめて片付ければよいだろう。

 

 動いている組織までは見えてこなかったが、その対処方法はしっかりしていた。

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