早朝、目を覚ましたミシェルは「ここどこ?!」と盛大にビビり散らしながら飛び起きた。起きたら知らないところに居たのだからビビったのは本当だ。なんとなくアニメの展開を覚えていたミシェルは、間取りからしてヒューズ邸かなぁと苦笑いの表情を浮かべ、落ち着きを取り戻す。いいなぁ、グレイシアさんのご飯僕も食べたかった等呑気に考えていた。
「おう起きたかクソ兄貴。昨日あれから色々あってヒューズ中佐の家に泊めて貰ったんだよ」
エドワードは一目散に兄が起きたのを確認すると派手に
「……!起きて早々殴らなくてもよくないエド?!というかなんでそんな怒ってんの……あ、そうか!また肝心なところで寝落ちしたからか!って、ほんとにごめんって!下手したら死んでたのも分かってるって!2発目はさすがに避けるから僕!」
ベッドから飛び起きて、なんとかエドによる2発目をミシェルは回避した。
「アイザックのはもう仕方ないから許してやるけどよ、なんでお前はそう毎回初めて会うはずで名前すら知らないはずなのに「ヒューズ中佐って誰?!」って、ならないんだよ!「ここどこ?!」もワザとらしくてキメェ!マスタング大佐に初めてあった時からそうだからもう慣れてきたけどいい加減俺らより先に行動してぶっ倒れるの勘弁してくれよ。兄貴のことだから、アイザックのことも知ってたんだろ」
「えっ。何の話?!ヒューズ中佐って誰!?もちろん聞きたかったけど……!?」
その言葉にカチンときたエドワードはミシェルの胸ぐらを掴む。
「とぼけんな。あの時あの場でアルを人間に戻したのも違和感しかねぇんだよ。全部知ってたんだろ。ヨキの時だってそうだっただろ。兄貴がそうやってとぼけ続けてるのも結構限界が来てんだよ。」
エドはミシェルの顔面を殴る。さすがに今度は機械鎧じゃない方の手のひらだったが。
ミシェルはその平手打ちを避けられたが、避けてはいけないと思った。
弟たちの不満を受け止めるのも兄の役目だから。
気をつけては居たが、勘のいいエドとアルを誤魔化すのは、それはもう毎回大変だった。
その割にアイザックの件は完全に行き当たりばったりで対処してしまったのでそれはもう勘づくよなぁとも反省している。能力を使えば眠くなるのも最近は勘づかれてるような気がするし。
軍に公開している僕の錬金術は『認識妨害能力』だけだ。後はエドとアルも使える錬金術少々。
それからエドとアルだけが知っている錬金術とは違う力『幻覚を現実に具現化する能力』。
この2つは何回使っても大丈夫。眠くならない。
僕が眠くなるのは主に『洗脳』や『常識改変』といった能力のせいだ。
こういった能力は、どうしてもこの世界の抑止力みたいな何かが働くのか、何回も使用する度に眠くなる傾向がある他、どうしても兄弟達に勘づかれやすくなるのも理解していた。
この2つを使えば、ホムンクルスたちやお父様だって『自害しろ』や『仲間になれ』でどうにかできるのも理解していたが、使えば勝手に眠たくなる能力なんて恐ろしくて何も考えずに使えないのだ。基本的には1体1の時ぐらいしか使えないだろう。アイザックの時みたいに。
……どうするかなぁ。またエドとアルの二人を『洗脳』してごまかすしかないかなぁ。
起きたばっかりなのに。次起きるのはいつだろう。検討がつかない。うーん、さすがになぁ。ヒューズ中佐にもあってないのに。
それでも。どう考えても、全部話すのはまだだ。リスクが高すぎる。
はぁ。嫌だなぁ。僕だって実の兄弟に『洗脳』なんてしたくないのに。
「ごめん。ちゃんとその時が来たら話すから。」
「その時っていつだよ!」
「兄さん、やりすぎだよ――」
エドに胸ぐらを掴まれながら、僕は弟たちに『洗脳』をした。
最低な兄貴でごめん。
「だって、エドは嘘つけないから。巻き込めない。――ごめんね」
「そうやって兄貴は俺達を騙すのかよ。――……クソ兄貴。また、俺達に何かしたな」
『洗脳』を施された瞬間、エドは違和感に気付いたが、違和感だけで何を問いただそうとしたのか思い出せない。それは傍にいたアルも、そして会話を盗み聞いていただろうヒューズにも作用した。
今の会話は全て、なかったことになった。
アイザックの騒動で感じた不満も、弟たちは何も感じなくなっていた。