ブラック鎮守府と自由人の喜劇な日常   作:一般通過提督

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思いつき


提督やれと言われても

 

 

 

「──君には明日から"提督"をやってもらう」

「………はぁ」

 

埃ひとつ無い豪華な執務室で厳格そうな初老の男の言葉に変な声が漏れた。

 

「聞いているのかね?」

「聞いているんだと思います」

「……なぜ他人事なんだ?」

 

キリッとキメ顔で言うがそれに対して返ってくるのは怪訝そうな顔だけ。

この人、ノリが良くないからつまらんのよな。

 

「てか、なんで俺が提督?おかしくないですか?」

「ふむ……詳しくは教えられん。が、君の類まれな才能を活かすには提督しかない、という大本営()の判断と考えれば良い」

「だっはー、わっかりやすい嘘ですね!」

「………」

 

こちらの言葉に目をつぶるだけ。つまりは認めたということ。これは建前の話で本来の目的は別だ。

 

だって俺、"軍学校に通ってないただの清掃員のバイトをしてる一般人"だもん。最近やっと高校終わった若者ぞ?

その証拠に軍服なんて着てませんことよ?基本上下ジャージよ?汚れ仕事の時はつなぎ服よ?そんな奴が提督とかなんか生贄にされんのか、ワシ。

 

「とにかくだ。明日から"ここ"の鎮守府に移動してもらう。荷物をまとめて準備しておけ」

「え?明日?」

 

早すぎじゃない?もっとこう……時間に余裕持たせたりとかしない?普通?

 

「そうだ」

 

なんてこったい。余裕の無いクソジジイめ。

 

「さあ、早く出ていった。私は忙しいのだよ」

 

そうして手にした資料を押し付けられつつ扉の外へと追いやられた。

バタンと閉められる扉。

 

どうしてこうなった。俺はボケっとそんなことを思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺はどこにでもいる男子高校生。少しヤンチャだけどそこはご愛嬌ってことで。

 

その日はお金が無くバイトを始めようと色々探していた。その中で目を引く職。それが【提督】というものだった。

 

 

 

ある日、唐突にこの平和な日常を謳歌する世界に現れた謎の敵。誰が名付けたか、彼女らを【深海棲艦】と呼んだ。

現代兵器の諸々が何故か全く通じない"彼女"たちに対し、同時に世界に現れたのは、かつての大戦の記憶を宿した艦艇の化身、【艦娘】。

深海棲艦に唯一対抗出来る存在だ。

 

提督とはその艦娘の力を最大限引き出し、唯一使役することの出来る特別な者たちのことである。

 

 

 

さて、そんなヒーローのような職。やはり世界を救うだけはあって羽振りも良い。が、誰でもなれるものでもない。

その条件のひとつが──

 

「お、妖精さんだー」

 

──そう、いま部屋を飛び漂っているちっちゃい女の子。通称【妖精さん】。まずはこの存在を視認出来るが出来ないかで提督の資質というのは判断される。

俺はちなみに妖精さんは見ることが出来な……うん?

 

もう一度部屋を見てみる。

 

 

 

 

 

なんかちっこい女の子がいますね。

 

部屋を漂ってますね。

 

あら、あちらもこちらに気が付きましたね。

 

目が合いましたね。

 

手を振られました。

 

手を振り返しましょうねー。

 

うふふ、可愛いねー。

 

…………………

 

………………

 

…………うん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妖精さんだぁぁあッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんてことでしょう!我が部屋に妖精さんがいるじゃないですか!てか、そんなことより俺、妖精さんが見えてるじゃないですか!

 

来ちまったな、俺の時代。

初の高校生提督なっちゃう?なっちまう?ヒューヒュー!

 

さてと、テンションも上がったところで早速海軍の方へ向かってみよう。

どけどけぇい!未来の提督様のお通りだぜー!

 

 

 

 

 

そして気がついたら、ジャージ姿でモップとバケツを両手に鎮守府を掃除してる俺が出来上がった。

 

……んーーーー………ナンデェ?

 

いやまあぶっちゃけ言うと提督希望者やら候補者やらってめちゃめちゃいるっぽい。

提督になるための適性を持つものは世界中、累計して約七百万程。

人口が約七十億と考えても大体"1/1000"だ。

希少は希少だけど、ぶっちゃけ少なくはない。

 

さらに言うと、不思議なことに七百万の内、約半分は日本人だったりする。数にすれば三百五十万だ。

人口一億二千万と考えれば約"1/35"の確率である。

 

なんてこったい。適正持ちなんて日本じゃそこら辺におるやんけ。

 

さらにだ。提督候補者がそれだけいるのに日本の鎮守府の数は累計して20~30。数が合わん!

 

はい、結論を言いましょう。提督なれへんかった。

 

その代わり妖精さんが見えるということで鎮守府にて清掃員、妖精さんお手伝いのバイトはどうかねというありがたき申し出があり、させてもらってる次第でございますね。

 

やはり鎮守府、バイトなのに羽振りも良くてね。お世話様になっておりますと。

そんなバイトを続ける事3年。高校も終わり、ようやく酒もタバコも解禁の大人へと変わりゆくそんな時に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──提督、ですか?」

「そうなの。どうしましょこれ」

 

事の経緯を仲良しの艦娘【明石】へと話した俺。

この娘はノリが良くて一緒にいて楽しいのだ。趣味が合うって……いいよね!

 

「でも前は提督なりたかったんですよね?ちょうどいいのでは?」

「いや、いきなりバイトくんに"君、明日から提督ね"とかやばいやろ。これは何かの陰謀ですね。俺には分かります」

「……少し、資料見せてもらっても?」

「あいよ」

 

明石に渡された書類一式を渡す。パラパラと捲り目を通していく明石の顔はやがて苦い顔へとなっていた。

 

「ま、まさか"あの鎮守府"へ派遣なんですか?」

「知っているのか!雷電!」

「うむ。……俗に言う"ブラック鎮守府"ってやつですよ。世間一般的に艦娘は兵器という認識をされていますがここの鎮守府を勤めていた元提督はなかなか度が過ぎるほど横暴な方で好き勝手やっていたそうですよ。そこから後任の人が行くも軒並み失踪。生死も何も分からない。まあ、十中八九この鎮守府にいる艦娘たちがなにかしたんだと思いますけど。……つまり"生贄"に選ばれました、おめでとうございますってことですね」

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

「まあ提督なれるからヨシっ!」

「それでこそ君です」

 

命の危険がいっぱいの新しい職場。でも給料上がるんでっしゃろ?

お金もらえるならOKです。

 

「でも、俺一人だと命の危険が危ないから明石着いてきてよー」

「あ、いいですよ。てか行くつもりでしたし」

「……俺が言うのもなんだけどここの鎮守府の所属なのに大丈夫?」

「あ、無断でこっそり行くので問題ないです」

「それでこそ明石だ…!」

 

この娘やっぱり俺と同じでノリで生きてるタイプだ。だから気が合うんだろうな。

 

「とりあえずあの二人(▪▪▪▪)にも声掛けてこよー」

「彼女たちは難しいのでは?ここの鎮守府の主戦力ですし」

「分からんぞ。アイツらもノリで生きてるタイプだ。着いてきてくれるかもしらん」

「君と関わってノリで生きるようになっただけじゃないですか?」

 

さて、そんな会話を工廠で明石と続けていると、

 

「あのすいません、そろそろ仕事して貰えませんかW明石(▪▪▪)さん……」

「「あ、ウィッス!」」

 

おっと、注意されるまで話してしまってたか。

とりあえず今日は残された仕事を消化しておこう。その後にあの二人に話に行かなくちゃ。

 

 

 

男、【明石(アカシ)忠臣(タダオミ)

明日から提督始めます。




続きは気の赴くままに。
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