ブラック鎮守府と自由人の喜劇な日常 作:一般通過提督
「来ちまったな、ついに…!」
「えぇ、来てしまいましたよ、ついに…!」
翌日。朝から車を走らせること数時間。
要約俺が提督になる鎮守府へとやってきた。
門の前にて明石と背中合わせで立ち、グラサンをかけポーズを決める。
方やセーラー服、方やジャージ姿。こういうのはスーツと相場が決まってるが買う金なんてあるわけなかろう。
何なら軍服もくれなかった。ケチんぼ共め。
「今日からここが私たちの愛の巣ですね明石くん。いいえ、提督!」
「そのとーり!今日から我々はここでにゃんにゃんするのだよ明石くん!」
そうしてキャッキャウフフと門の前に停めた車の周りで戯れること数分。
「よし、とりあえず荷物下ろそ。そうしよう」
「ええ、そうしましょう。そうしましょったらそうしましょ」
さてさて、我が愛車のアホみたいに改造しまくった軽トラ。それの荷台から荷物を下ろそうと早速荷台に積まれたキャンピングカーのような箱の扉を開け中へと入る。
え?愛車が軽トラなのって?
軽トラ馬鹿にすんな?クソかっこいいんだからな(涙目)(金欠)
そんなことはさておき荷物を………なんかいない?
「「………」」
「「………」」
「「………」」
「「………」」
明石と共に中に目を向けると2人分の目、4つの目と視線が合った。
………うん、
「何してんの?」
「「お気になさらず/着いてきちゃいました」」
そこにはすまし顔の【加賀】と舌を出しおちゃらける【赤城】が居た。
ほら見ろ、やっぱり着いてきた。
「やっぱり明石さんも来たんですねー」
「色々と問題のある鎮守府ですから、あなたがただけでは不安なので着いて来ました」
「ほら見ろ、来たろ」
「……あっちの鎮守府、戦力ダウンすごくないです?これ」
青いスカートの弓道着を着た加賀、赤いスカートの弓道着を着た赤城。
彼女たちは"一航戦"と呼ばれる航空母艦の記憶を持った少女である。
あ、ちなみに明石は工作艦ね。なんか色々作るのが得意な女の子。少しおちゃめなお転婆さん。
「……あれ?そういえば荷物は?」
「私が先にここに送ってます。私たちが乗るスペースが欲しかったので」
すごい勝手に色々やるね加賀ちゃん。今に始まったことじゃないから何も言わんけど。
「……もしかして無断で来ました?」
「明石さん、シーっですよ」
いや、シーっじゃないのよ。
後で俺の方に連絡来るどー?怒られちゃうの俺なんだぞー?
「ま、そんなことはさておきとりあえず中へ向かいましょうか」
「そうだな。行くぜ、我らW明石連合軍」
「……ダサい」
何おう!?加賀このやろ、てめ…!おぉん!?
「提督」
「む?どうした?」
「W明石連合軍だと、私たちみたいなW明石が何組もいる、みたいな感じになりません?」
「……つまり俺たちは何人もいることになっちまうのか。何人くらいいることになるんだ?」
「……10人くらいですかね?」
「多重影分身の術ッ!」シュバッ!(高速反復横跳び)
「ダニィッ!?」
「ふっ、着いてこれるかな?」(高速反復横跳び)
「ふっ、負けませんよ…!」(高速反復横跳び)
「遊んでないで早く行きますよ」
「………」
「……赤城さん?」
「私も混ぜてもら「赤城さんお願いします。あなたは毒されないでください」」
赤城ちゃん、君もこちら側の住人だろう?さあ、遠慮せずに来なさい。
「早く行きますよ」
「「あーれー」」
「あ、待ってくださーい」
こうして俺と明石は加賀に首根っこを掴まれ引き摺られる形で鎮守府へと足を踏み入れた。
新しい日々の始まりだぜ。
引きずられるままにたどり着いた執務室。
ここまで来るのにそれはそれは壮絶な……出来事は何も無く。逆に何も無さすぎて怖くなるレベル。
ここの鎮守府の所属の艦娘1人にも会わなかった。人の気配すらない。
嵐の前の静けさというかなんというか。恐ろしやー恐ろしやー、なんてことを思いながら扉を開け執務室へと足を踏み入れると、
「………」
「うわぁ…」
「……酷いですね」
なんということでしょう。他の鎮守府のような豪勢な絨毯は穴だらけの泥まみれ。机はバキバキのぶっ壊れ。椅子はどこぞへ?
棚はもう棚と呼べるのか?ただの中が空洞の木の箱でしかなく、さらに一番目につくのが、
「あらヤダ、風通しの良さそうな部屋ね」
天井や壁の一部が吹き飛びお外が見えるような状態に。自然と一体化のお部屋。なんとも個性的なレイアウトですね。
なるほどな。最初にやるべきことは決まった。
「お掃除タイムだ!」
「棚、どうしましょう?」
「捨てちゃえ捨てちゃえ♪」
「机の方は……?」
「捨てちゃえ捨てちゃえ♪」
「絨毯どうしますー?」
「捨てちゃえ捨てちゃえ♪」
「天井と壁は?」
「捨てちゃえ捨て「脳死、やめましょう」……ウィッス」
「──新しい備品の発注しておきました。届くのは大体一週間後です」
「おっけぃ!」
「天井と壁は私なら一日で直せますよ!」
「おっけぃ!」
「お腹減りましたー」
「おっけぃ!じゃあ……飯行く?」
とりあえず一段落は着いた。
外ももうお昼時。近くの町にでも繰り出してお腹を膨らまそう。いや、ここにも食堂はあるか?……場所分かんねー。
町行くか。うん、そうしよう。
そうして、俺たちは4人並んで散歩がてら、歩きながら町へと向かった。
背中に刺さる視線には誰も気づくことなく。
「あれが新しい提督、か」
「……どうするの?」
「消えてもらうしかないだろう。今まで通りにな」