彼等の見る光天   作:無記名 to 稿

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やっと虹色の名簿が来たけど被りだったので初投稿です。



その後の話

あれから数か月。

早いもので、それだけ経った。

その間、色々あったものだ。

日傘の下。

アロハシャツの上にジャケットを着たまま。

太陽に目を向け、ふとそれらを思い返す。

 

 

 

ズァークとの対決。

敗北した私が先ずしたこと。

それは、代表取締役社長にデュエルディスクを届けることだった。

私のデュエルディスク。

それにはズァークとのデュエルのデータが全て詰まっている。

つまり、だ。

ペンデュラムとリンクに関する実地データも同様に詰まっていると言うこと。

モチロン、データ自体は時間があれば集められる。

だが、この時ばかりは時間が重要。

一分一秒とまでは行かずとも、一時間の差異は大きくなり兼ねない。

追加で数体のリンクモンスターと、EXモンスターゾーン増設用の試作アタッチメントも渡し、入場時の護衛に渡して走らせた。

 

「この命に代えましても……!」

 

その時の、あの二人の青褪めた顔は何だったのか。

別に爆弾を持って走らせた訳ではあるまいに。

疑問に思った私はともかく、お渡しした社長は流石に分かっておられた。

僅か三日。

試作アタッチメントをお渡ししてはいたが、EXモンスターゾーン増設用アタッチメントの実用化と販売可能な状況に漕ぎ付けられたのだから。

あのデュエル。

ズァークとのデュエルの際、リアルソリッドビジョンの謎の機能でEXモンスターゾーンが増設された。

されては居たが、それだけだ。

実際にEXモンスターゾーンが増えていた訳ではない。

あくまでも、リアルソリッドビジョンだから出来た荒業とでも言えば良いか。

要するに。

一般的なデュエルディスクのソリッドビジョンでは、Pモンスターは完璧には、リンクモンスターは全然、使用出来ないと言う問題が発生したのだ。

そりゃあそうだ。

リアルソリッドビジョン。

歴史的な革新ではあるが、モノがモノ。

割と高級品であるし、使用する場所等に制限がある。

子供同士がその辺でリアルソリッドビジョンでデュエルをしてみろ。

大惨事になりかねない。

子供向けの安心モード。

そんなものはない。

いや、一時期そう言ったアイデアがないでもなかったが、過激な言動に押されて立ち消えになった気配。

そう言った点もあり、基本的にはプロデュエリスト同士のデュエルでしか利用されない。

あとはまあ、イベントとか。

だからこそ観戦の価値も出て、人気も膨れ上がった面もあるだろうが。

 

「過激さばかりに目が行くのも、考え物だな」

 

閑話休題。

新しいカードが出れば真っ先にパックを開け、デッキを構築したくなるように。

新しいモノは誰でも試したくなると言うモノ。

しかし、それは出来ない。

リアルソリッドビジョンではないから。

マットで我慢しろよ、とも思ったがソリッドビジョンを知っている今時のデュエリストには満足出来なかったらしい。

その時の騒動は、筆舌に尽くし難いモノだったと聞く。

私はそんな騒動と無縁の場所に居たが。

そんな中。

あのズァークとデュエルしていたデュエル・マシン有するカイザーコーポレーションの発表した追加アタッチメント式のEXモンスターゾーン。

モチロン、他社のデュエルディスクにも対応。

結果。

通常のデュエルディスク製造ルートすら使い製造を追加アタッチメント一本に絞ってもなお在庫切れ続出。

アタッチメント自体の売値も、社長判断で、利益の出るギリギリを攻めたため加速する地獄絵図。

しかしその甲斐はあった。

お陰で殆んど誰もがカイザーコーポレーション製を使い、知名度も鰻登り。

株価も併せて鰻登り。

企業価値もモチロン鰻登り。

何から何まで鰻登りと高笑いが止まらない始末。

製造や開発部門関連は、忙し過ぎて高笑いが止まっていなかったそうだが。

 

それらひっくるめてが、まず一つ目だったろうか。

 

次いで。

私はそのまま強制的にある場所へと連行された。

何処か。

そこは、要するにデュエル協会。

正式名称はデュエルモンスターズうんたらかんたらと非常に長ったらしいのでデュエル協会で良いか。

とにかくそこへと半ば強制的に引きずり込まれた。

同じように引きずり込まれていたズァーク。

二人合わせて居並ぶ協会のお偉方に頼まれたのは、

 

「どうか、何卒……」

 

生放送への出演だった。

ペンデュラムモンスター。

ペンデュラムゾーン。

リンクモンスター。

EXモンスターゾーン。

四つ。

パッと挙げられるだけでもデュエルの新しくも重要な要素がこの四つ。

デュエル協会と言う格式のある組織が、それに対して分かりません等と言える訳がない。

だが、いきなり増えた新要素を完全に把握し切れるモノでもない。

すぐに何の発表も出来なければ協会の存続自体が危ぶまれ、しかして間違ったことを広げてしまってもまた危ぶまれる。

どうすれば良いか。

簡単だ。

分かる者を連れて来れば良い。

要するに、そう言うコトだった。

 

「「デュエル!」」

「これから新しいデュエルモンスターズの解説を、デュエルを行いながら進めていく。ズァークだ」

「対戦相手はカイザーコーポレーションの、カイザー・D・Mが勤めさせて頂く。よろしくお願い致します」

 

そこから十日間。

一歩も協会の外に出られることはなかった。

世界同時生中継の中で行われる新しい要素の説明。

併せて、ズァークとのデュエルの解説も。

この時はどうしてこうしたのかとか、一般的な解説者が分かる訳もなかったせいで一から十まで全部説明する羽目になった。

そう。

私の燦然と輝くプレミから敗北に到るまでの流れも含めた全てだ。

自分のプレミを何度も何度も説明させられるとか。

気ィ狂いそうになるわ。

と言うかなったわ。

しかも生放送でデュエルまでさせられるし。

いや、まあ。

そこに関してはカイザーコーポレーションのアタッチメントの新商品紹介にもなって良かったけども。

ご機嫌で絶好調なズァーク。

しかも、数少ない不足はリンクモンスターだけのほぼ完璧な【覇王魔術師】。

だが逆説的に完璧でないにも関わらず、数十回のデュエルをさせられた上で私の挙げられた勝利数なんぞ、片手で数えられる程度しかない。

本当に、リアルチートとはヤツのためにあるような言葉だと実感したモノだ。

 

「《Evil★Twins キスキル・リィラ》で攻撃ィ!!!」

「ぐァあああ!!!」

 

ちなみに。

生放送中しか私とズァークとではデュエルをしていない。

協会が渋った、と言うのもある。

その上でも、余裕がなかった。

と言うのも。

デュエル協会。

そこに、デュエル新時代幕開けの宣言をしたズァーク。

おまけで私。

そんなのが居ると分かり切っていて、大人しくしていられるデュエリストは多くなかったのだ。

表向きは新ルール把握のための実地。

裏向きは、下剋上。

本来ならあまりよろしくない挑戦も、新ルールを最もよく知っている相手への挑戦と言う形で認可されてしまったのだ。

ズァーク本人から許可の言葉があってのことだが。

前哨戦と称して私にも挑んで来る者もまた多かった。

ちなみに私は別に許可していない。

なのに何故か、何時の間にかやる流れになったのは勘弁して頂きたい。

腕のパーツが擦り切れるかと思ったわ。

だが、悪いことばかりでもない。

全世界から押し寄せて来ていたデュエリスト達と名刺交換をキチンとした。

その成果が、先日の発表会でもあるが、とにかく縁。

中でもプロデュエリストと言う各国の政治家に勝るとも劣らない影響力を有する連中と顔合わせを出来たのは、企業として実に価値の大きい所だったと言える。

政治家と互角の影響力のプロデュエリストって何だ。

いや深く考えるな、私。

とにかく。

睡眠の必要なズァークと違い、多少ならばどうにでもなるロボットである私。

お陰で昼夜問わずの一日五十戦を越える連続デュエルを強いられることになった。

間に、全世界向けのルール解説とかも挟みながら、だ。

今からでも協会を訴えれば勝てるのでは。

いや、流石に影響力が有り過ぎるからしないが。

それに数も数と言うことで、通常のソリッドビジョンでのデュエルのみとなったお陰か。

かなり楽しそうにデュエルしてたズァークも見れたので良しとしておこう。

 

二つ目は、こんなところだろう。

 

そして三つ目。

私が、変わった。

カイザーコーポレーションの、デュエルモンスターズ専任理事カイザー・D・M。

等と。

デュエル協会から監禁と強制デュエルを執行されていた私。

しかし、流石に十日も経てば落ち着きを見せて来る。

嘘だ。

全く落ち着いてはなかった。

だが、流石に私はカイザーコーポレーションの理事だ。

そしてオクトパスバンクの代表取締役。

 

「十日間も碌に仕事が出来てないのでは、流石に差し支える」

 

そう口にした時の、デュエル協会の面々の不思議そうな顔よ。

完全に私をデュエリストとしか思ってないと言う顔。

懇切丁寧に、理事であり代表取締役であるためやらなければならない仕事もあると伝え、漸く協会の外に出ることが出来たのだった。

そこから飛行機で戻る中、漸く頭を休ませることが出来たのだが。

私の根城とでも言うべきオクトパスバンクに戻って数日はその業務に煩殺。

月末を跨っていたら地獄と言うのも生易しいことになっていただろう。

しかしそれらの目途が付いたら付いたで今度はカイザーコーポレーションからの呼び出しだ。

丁度業務に一区切りが付いた所で連絡が来た所為で、内通者の存在を確信する羽目になった。

お陰でその存在の確認にも時間を割くことになったのは後のことなのでそちらはまた別の話となるのだが。

理事会。

カイザーコーポレーションの理事会だ。

その段階に至って私は、流石に覚悟を決めていた。

理事でありながらカイザーコーポレーションに黙って色々とコトを進めていたのだ。

皮を剥がされ、中身を入れ替えられる。

そのぐらいされ得る。

そう言う覚悟はあった。

あったのだが、

 

「反対一名。よって、カイザー・D・Mのデュエルモンスターズ専任理事を承認とする」

 

そう言うコトになった。

反対一名。

私だけである。

これは流石に予想外。

反対に乗れると思っていたのだが、デュエルモンスターズと言うモノの影響を甘く見ていたと言う訳だ。

何度目になるかも分からないが。

要するに、大半はメリットよりデメリットが大きいと見たのだ。

私を処分することは勿論。

リンクモンスターやサイバース族、追加で言えばデュエルディスク用のEXモンスターゾーンもか。

それらを結果的に齎した私よりも、デュエルモンスターズ関連に対して上手く立ち回ることが出来るかと問われ。

出来るとは誰も思わなかった。

カイザーコーポレーションでデュエルモンスターズに関わるとなれば、それらに携わった私に比べられる。

言ってしまえば、世界チャンピオンのズァークを相手に回すようなモノ。

準備が整わなければ、無謀。

で、あるならば。

目に見える失点が出るまでは、押し付けておくのが吉。

思考を巡らせれば当然だが、処分される可能性の方にしか頭が回っていなかった。

出来ることが増えたと言えば聞こえは良いが、その分だけ振れ幅も大きい。

成功の影響も大きければ失敗の影響もまた大きい。

しかし。

逆に、今はとても都合が良い。

私の長年の構想が遂に動かせる。

ズァークの宣言やデュエル環境の変化もあって、大規模な変革をしても良いだろうの精神で。

そしてデュエルモンスターズ専任理事と言う大義名分で。

 

「デュエルモンスターズ及びソリッドビジョンに関して意見や企画があれば募集する。

 ただ、目は通すが採用されるかは別だ。

 それに、似た考えを持つ者が複数居れば、既に実績を挙げている者を優先することも十分に有り得る」

 

カイザーコーポレーションの社員から意見を募集するにはこれ以上の立ち位置はない。

とは言え。

実のところ募集した段階で大凡の方向性は既に、私の頭の中ではだが、定めていた。

あとはそれに合った企画や考えを持つ者を選出する、と言う方向での募集だ。

ズルい。

卑怯。

何とでも言え。

我、デュエルモンスターズ専任理事ぞ。

責任を引っ被るのは我ぞ。

そんな精神で居れば、まあ、私の考えと合致する考えの者も見付かる。

ついでに、全く考えていなかった方向性の考えも見付かる。

そう言った意味では、日に下手すれば千に届く意見書の閲覧も楽しくなると言うモノ。

嘘だ。

いくらハイスペックデュエルマッシーン、カイザー・D・Mと言えど後悔した。

シャットダウンして暗闇に浸る時間が恋しくて仕方がなかったが、そうも言ってはいられない。

私的に、半年程度が勝負と考えていたからだ。

半年もあれば新しい常識も染み付いてくると言うモノ。

新しい常識の影響がない部分に関しては、古い常識が鎌首を上げて来る。

そう言う、悪しき風習とでも言うべきモノを取り払うのに、今こそが絶好の機会であった。

なんやかんや。

専任理事の地位を悪用して集めた大集会。

サインとか握手を求められたがともかく。

そこで私は彼ら彼女らの企画案や意見を取り纏めた物をスクリーンに映し出しながら、演説を行った。

 

「かの世界チャンピオン、ズァークの宣言にあった。

 これからデュエル新時代が始まるだろう。

 いや、既に始まっている。

 それらの中を私達は進めているか?

 進んでいるか?

 諸君等に問いたい。

 我々は、新時代を己の脚で進めているだろうか?

 否。

 我々はまだ、新時代を見ているに過ぎない。

 ズァークの背を見ているに過ぎない。

 己の脚で進んではいない。

 故にこそ――この場に集まった諸君等に頼みたい。

 我々の脚で。

 我々の持つ技術で。

 我々の考え出した時代で。

 共に世界チャンピオンを追い抜こうではないか!

 共に世界チャンピオンを置き去りにしようではないか!

 共に世界チャンピオンよりも先に、新時代を創り上げようではないか!!!」

 

等と言う風に。

一気にコトを進めるに至った。

世界チャンピオンであるズァークを越える。

ズァークを越えろ。

デュエルの勝ち負けではない、もっと大きな部分で。

そう言ったコトを口にしたお陰。

何よりも時代の流れを自分達で創り出せるかも知れないと言う全能感。

当然、成果への報酬も忘れないと口にしておけばやる気も皆一様に十二分。

やる気のある有能ほど便利なモノはない。

その分だけ我が強い者達も居たが、その辺りを折衝するのが私の役割と考えておけば良し。

数か月もすれば成果が出る。

その成果が出た結果が、

 

『ご来場の皆さま。そして、視聴者の皆さま、こんにちは』

 

真っ暗な会場。

そこで、スポットライトを当てられたのに合わせて口を動かす。

 

『カイザーコーポレーションのデュエルモンスターズ専任理事、カイザー・D・Mです。この度は、我々のお送りする新しい商品の説明会に来て頂き、あるいは見て頂き、誠にありがとうございます』

 

あの発表会に失敗は許されなかった。

可能な限りの準備を整え、故に、最高の人員を揃えた。

 

『まず一つ目の新商品――我々のお送りする、新しい、リアルソリッドビジョンの機能を有したデュエルディスクをご紹介致しましょう』

 

手を向ける。

光に照らされ現れるのは、ズァーク。

此度の発表会に参加させるのに苦労はなかったが、報酬を受け取らせるのには苦労した。

お前との仲だと断りを入れてきた所為で本当に難儀した。

友人関係だろうが、いやだからこそ金銭のやり取りはキッチリしておくべきだろうがおバカ。

次いでもう一人。

手を向け、照らされるのは赤馬レイ。

此方の方は、新商品開発に併せて赤馬零王博士にご協力を仰いだこともあってのお礼の意味合いもある。

いや、本当に。

異世界との繋がりが出来易くなり観測の精度が上がったとか何とかで、半ばマッドと化していた博士の説得には苦労した。

最終的には快く付き合って下さったが。

具体的には一週間の合計睡眠時間が七時間を切ってるとか何とかだったから寝かせて脳ミソを落ち着かせることが第一だったが。

とにもかくにも。

向かい合うズァークと赤馬レイ。

実際のデュエルではないが。

先に動くのは、赤馬レイ。

彼女の使うデッキは四種類。

【幻奏】、【WW】、【LL】、そして【月光】。

一人で使うには豪華過ぎる四種類だと感心したのを覚えているが、とにかく。

 

『――――』

 

まずは一体目。

《幻奏の音姫プロディジー・モーツァルト》。

同時に半袖ながら落ち着いた朱色のスーツが、レイの上体を包み。

二体目。

《WW-ダイヤモンド・ベル》。

名前のように、透明なベルを思わすスカートが下半身を覆い。

三体目。

《LL-アセンブリー・ナイチンゲール》。

水色と桃色からなる、翼に似た衣装袖が姿を現し。

四体目。

《月光舞剣虎姫》。

その身に着けているモノに似た半面が顔を隠す。

 

「「「「「おぉ……!!!」」」」」

 

会場に仕込んでいるサクラから歓声が上がる。

普通の観客からも上がってはいるようでもある。

召喚の度にポーズを決め、それぞれの衣装が分かり易く示されたお陰もある。

要するに。

リアルソリッドビジョンを応用した簡易お着換え機能。

演出のために四分割した衣装なので、冷静に全体を見ると無理矢理併せている感はあるが、今は些細なモノだ。

知名度と空気で押し通す。

続くズァークが出すのは、四天の眷竜。

《覇王眷竜オッドアイズ》。

《覇王眷竜スターヴ・ヴェノム》。

《覇王眷竜クリアウィング》。

《覇王眷竜ダーク・リベリオン》。

紅い手甲。

紫の手甲。

蒼い脚甲。

黒の脚甲。

四肢を覆うようにそれらが装着されていく中、真っ黒な装束の《クロノグラフ・マジシャン》が現れ光の剣を天へと掲げる。

導かれるように空へと昇って行く眷竜達。

観客の誰しもがその先の姿を想像するだろうが、生憎違う。

私も驚いたが。

 

「――四天の竜よ! 今こそ一つとなりて、破顔一笑の光となれ! 現れろ! 《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》!!!」

 

闇を思わす黒から、光へと身を転じた《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》。

その姿に合わせるように。

赤と緑と黒の球体と緑の結晶のような翼に棘の付いた、若干の暗さはあれど全体的に見れば明るい色合いの鎧に。

四肢の装甲もまた姿を変えていた。

と言うか《クロノグラフ・マジシャン》。

本来の効果ならこのモンスターを特殊召喚出来ないのにアドリブが利く。

そんなことを思いながら、衣装のデザイナーとリアルソリッドビジョンのモデル担当が発狂していたのは別の話。

まあ、なんだ。

当初の予定だと《覇王龍ズァーク》をモデルにした鎧で如何にもな覇王で倒すべき敵――要するに、覇王十代――みたいな衣装で進めていたのに三日前の最終打合せで突如お出しされたこの《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》。

誰に対しても秘密にしてたのか、出してすぐ私に対してドヤ顔を晒すズァークよ。

ちなみにどうやって間に合わせたかと言えば。

人間、二日三日なら寝ないでも何とかなる。

なお、今際の言葉は「急な仕様変更はクソ」だった。

折角の渾身の逸品の晴れ舞台を見れないのは可哀想だが、仕方ないね。

ズァークがわざわざ「別に変える必要はない」と言ったのを、勝手に挑発と受け取って「出来らァ!」した彼ら彼女らが悪い。

いや本当に、出した理由が私に見せたかっただけと言うのが恐れ入る。

そうそう。

私に見せたかった、と言うことだがコレを一番最初に見たのは私ではない。

赤馬レイだ。

赤馬零王博士に何かしら思うことがあったのか、アポイントをキチンと取って会っていたズァークと交流を深めたらしい。

私にはアポを取らないのに、他所には取るんだな。

閑話休題。

 

『ズァーク様、レイ様、ありがとうございました。このように、リアルソリッドビジョンを応用した服飾の着替え機能を搭載したデュエルディスクとなりますが――機能はこれだけではありません』

 

ここから。

ここからがある意味で本番。

入念な事前検査。

試運転。

確認。

出来ることは全てキチン執り行ったつもりだが、それでも心配は尽きない。

それでもこの場でしなければならない。

ゆっくりと準備を進める中、会場に進み出たのは、彼。

ズァークとのデュエルで大怪我を負ってしまったプロデュエリスト。

幾度の敗北を乗り越え、少し前にようやく一勝をもぎ取ったそうだが、そこは今は関係ない。

彼。

この場で彼がそれをすることに意味がある。

ゆっくりと。

互いにデュエルディスクを構え、

 

『『デュエル』』

 

デュエルディスクが展開。

同時に、彼の体を、朱色を基調とした旅人の装束に包まれる。

小さく、しかし会場のざわめきにかき消される程度の声音で「ターンエンド」を呟き、私へとターンが回って来る。

ドロー。

今回はビンゴマシンを使ってないからドロー運はどうかと思っていたが。

 

『――手札より《パワー・ボンド》を発動。手札の《サイバー・ドラゴン》三体を融合し、《サイバー・エンド・ドラゴン》を融合召喚。《エターナル・エヴォリューション・バースト》を装備して《リミッター解除》を発動。バトル。攻撃力16000』

 

観客席から悲鳴が聞こえる。

リアルソリッドビジョン。

質量を持ったソレの攻撃は、普通の人間が受けるには些かキツイ。

そして何より、装備魔法の《エターナル・エヴォリューション・バースト》の効果で相手はバトルフェイズ中は魔法も罠もモンスター効果も発動出来ない。

モンスターが居ない以上。

いや、居たとしても。

攻撃力16000の貫通ダメージ。

防げるハズもないが、それにしては相当な過剰威力と言わざるを得ないだろう。

 

『エターナル・エヴォリューション・バースト!』

 

《パワー・ボンド》。

更に《リミッター解除》までした一撃。

三頭の口が煌く。

出力は通常の4倍。

己の頭すらも半ば自壊させながら放たれる、破滅の光線。

それが真っ直ぐに彼へと放たれ、爆発。

轟音と共に空へと、枯れ葉か何かのように舞い上がる彼。

その身に着けている旅人の装束が破けるように剥がれていく中、背中から会場の床に叩き付けられた。

 

『…………………………』

 

たっぷり。

十秒ほどの沈黙。

彼の身に纏う朱い装束が完全に消え去ると同時に、

 

『……よっ、と』

 

背中から、手も使わずに跳ねるように立った。

そうして。

両腕を広げながら辺りを軽く一周見渡していく。

 

『……安全防護機能。リアルソリッドビジョンを用いた衝撃吸収機構』

 

最後に目が私に向けられたのを確認してから、口を開く。

 

『我々には、憂いていたことがございます――プロデュエリストになろうと言う方々は居りはしても、その数は減少傾向にあります』

 

何故か。

簡単だ。

リアルソリッドビジョン。

それを用いていながら、安全面を疎かにしているからだ。

安全モードなどない。

ひたすら過激を好む観客によって、その道は閉ざされている。

そうなればどうなるか。

 

『私のようなデュエル・マシンでもなければ、リアルソリッドビジョンによるダメージが積み重なれば決して軽いものではありません。若き才能や老練な者には少し堪える――と』

 

無差別な格闘技の試合。

そこに十代、あるいはそれ未満の子供が立っているか。

五十代かあるいはそれを越えている老年の者が立っているか。

立てるかも知れない。

しかし、立ち続けるのは不可能。

単純に体が持たない。

現状の、リアルソリッドビジョンを用いたデュエルはそう言う状況と言えるだろう。

更には現状のデュエル業界に嫌気が差してリタイヤした者や、デュエルで人を傷付けるのを是と出来なかった者達等々と単純なデュエルの腕以外が合わなかった者達も含まれれば。

緩やかにプロデュエリストが減少するしかない状況。

要するに、

 

『現状では、屈強な肉体を持つ者でもなければプロデュエリストにはなれない。続けられない』

 

これに尽きる。

その上で、彼だ。

今回、彼に対戦役を選んだのは、

 

『それに彼のように――あるいは不慮の事故に遭う者も居るかも知れない』

 

このためだ。

事故の実例。

視界の端に映る、悔いるように顔を歪めるズァークとそれを慰めている彼の姿。

まあ、事前に頼んでおいた演技なんだが。

さておき。

 

『皆さんは、満足ですか? 世界チャンピオンがその実、本当の意味で頂点と言えない現状! なのに満足してしまったのですか!?』

 

沈黙。

 

『どうなんですか?』

 

問い。

してない。

してない。

してない。

してない。

してない。

 

『まだ足りない! 様々なデュエルを見たくはありませんか?』

 

囁き。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

 

『屈強ではない者――遍く者全てに機会が訪れていない!』

 

喋り。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

 

『まだ見ぬ強者が居るはずだ。まだ見ぬ才能があるはずだ。まだ見ぬデュエルが有るはずだ』

 

叫び。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

 

『様々なデュエルがあるハズなのに!』

 

喚き。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

 

『もっと!』

 

金切り。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

もっと。

 

『もっともっともっと!』

 

怒号が。

もっともっともっと。

もっともっともっと。

もっともっともっと。

もっともっともっと。

もっともっともっと。

 

『もっともっともっともっともっとデュエルはあるはずなのに! そんな限られた中にあってチャンピオンだとズァークを持て囃している現状で満足ですか!?!』

 

もっともっと見たい。

もっともっと感じたい。

もっともっと見ていたい。

 

『皆さんが求めているのは、ただ過激なだけのデュエルではないでしょうっ!!!』

 

最早衝撃となった声が周囲から。

四方から。

世界から放たれる。

全身を叩くような振動。

その中に立ち、内心で、嗤う。

 

『――――故に、全てに機会を授ける』

 

そう小さく零すように。

マイクに声を落とす。

シン、と。

会場が静まり返る。

誰も彼もが身動きすらしない。

 

『デュエル協会より、既にこのデュエルディスクとシステムには認可を頂いております』

 

実際問題。

デュエル協会としても競技者が減ればその分だけ収入も減る。

そう言った所で競技者の、特にプロの、保護を行える機能は諸手を上げて喜んだ。

何せ観客の求める過激さは、ライフポイントに服飾の破損を連動させる形でだが、ある程度は残してある。

デュエル協会で過ごした地獄の十日間の中で知り合った引退デュエリスト達も、この機能で幾らか引き戻せることを伝えたのも良かった。

煩い部署にはそのお口を黙らせるためにロールケーキ、じゃなくて札束をぶち込んだから万事良し。

賄賂じゃない。

私がしたのはあくまで、カイザーコーポレーションのデュエルモンスターズ専任理事就任に際して今後のより良い協力関係を結べればと言う、ちょっと遅れただけの個人的な寄付であって賄賂とは一向に無関係。

 

『老いも若いも関係ない――――これが、カイザーコーポレーションのお送りするデュエル新時代へのご提案です』

 

まあ。

これ等に関しては流石に特許だとかの動きもしている。

利益を上げなければならないから仕方ない。

疎らに上がり始める拍手を受けながら、一息付いた。

 

『――ちなみに防護機能に関してはデュエルディスクのみではなく、小型端末に取り入れることで車等によるお子様の事故による怪我防止――

 

 

 

こんな所か。

思考を断つ。

過激が目立つデュエルから、比較的通常のデュエルに舵を切れたのは大きい。

まだ反応は賛成反対と半々か。

だがズァークが私の、表向き、挑発に対して誰を相手にも逃げないと宣言したこともあって防護機能付きのデュエルが加速していくだろう。

デュエル協会も追随してその方向に切るはずだ。

元プロを呼び戻しに際して彼等彼女等をカイザーコーポレーション所属にしているから今後が実に楽しみだ。

そんなことを考えながら、手元の――トロピカルと行きたかったが――パイナップルジュースを回す。

 

「カイザー? なにしてるんですか?」

「暇潰し」

 

太陽から視線を落とす。

水着姿の赤馬レイが居る。

 

「私達を招待していながら、あなたは泳がないんですか?」

「マシンなんだが?」

「……そうでしたね」

 

そう言えば、とでも言うように頷く彼女から視線を逸らした。

今。

私達は南国リゾートに来ていた。

先日の発表会に携わった全員+αでの慰労会である。

あと、あのデュエル中にズァークが《ファイアウォール・ドラゴン・シンギュラリティ》を越えられたら南国リゾートを奢ってやると内心宣言してたからその達成も兼ねて。

ちなみに会社の金で、だ。

水着を着ている社員も居れば、ホテルでエステを受けている社員も居る様子。

とにかく慰労だ。

そのはずなんだが。

終盤のソレに目を向ける。

 

「いけ、《覇王眷竜ダーク・リベリオン》で攻撃!」

「く、くそ……ぐァあああああ!!!」

 

南国リゾートでも過酷させられているデュエルディスク。

リアルソリッドビジョンを使っても相手が怪我をしない。

そんなテンションアゲアゲチョモランマ状態なズァークがゲリラ開催した『ドキッ☆水着だらけの勝ち抜きデュエル ~ポロリはないよ~ 』のお陰で整備班には慰労の時間がない。

最初はズァークの生デュエルが見れると興奮してたけど。

もう三日目なんですよ、アレ。

素直に可哀想。

まあ、カイザーコーポレーションから見れば勝手に海の近くと言う悪めな環境で稼働テストをしてくれてるから助かっているのだが。

せめて彼等にはボーナスを弾むとしよう。

 

「ああ、ところでなんだが」

「なんですか?」

「ズァークの元に行かなくても良いのか?」

「彼とはそう言う仲じゃないわよ! ……失礼。ないです」

 

一瞬言葉を荒げ、取り繕う。

内心「嘘だッ!!!」とは思いながらも頷いてはおく。

いや、でも間違いなく嘘だろう。

《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》。

赤馬レイとのデュエル中に、新しく現れたと言うモンスター。

改めて。

《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》。

オッドアイズ・アークレイ。

オッドアイ「ズ・アーク」「レイ」。

「ズ・アーク」「レイ」。

「ズァーク」「レイ」。

おっと特別なモンスターの名前に二人の名前を発見伝。

これで何の仲でもないと言うのは些か以上に無理があるんじゃあないんですか。

おら、もっとズァークに水着見せに行け。

あのデュエル馬鹿に見せ付けに行けや。

等と言う内心は機械故に完全に抑えられるから表には出さないが。

凄く胡乱な目が私に向けられている気がするが、気のせいだろう。

多分。

 

「それよりも」

「ハ? さっさと水着見せに……いや、失礼。何かな?」

「…………………………そちらの、ジャケットから見えている脚は?」

 

指を差される。

その、脚。

私は今、ジャケットを羽織ったままだ。

と言うかデッキをジャケットに入れているから下手に脱ぐことが出来ないのだ。

幸いこのジャケットには冷却機能も付随されているのでロボットの私が熱でやられることは早々ない。

とにかくとして。

ジャケットの内側。

無言で捲る。

子供が一人、私の脚にへばり付いている。

 

「ああ……養護施設の」

「そうだ」

 

慰労会+αの、α部分。

カイザーコーポレーションで運営している児童養護施設。

その中から一部の子供達を今回、招待していた。

一部の、デュエルモンスターズの才能がある子達。

その一人。

将来的に関わり得る子供達に、早めに最新と最先端を味合わせておこうと言う趣向。

ちなみにこの子に関しては、オクトパスバンクに比較的近い所の子で、割と顔を出していたからか懐かれた様子。

若干レイに警戒しているようだが、パイナップルジュースを飲ませることで此方に意識を向けさせる。

正直、私よりも懐くならレイの方が適当だと思うのだが。

とにかく他の子達と違って、海で遊ぶよりも誰かとずっと居たいと言う子なので私が対応している。

私、理事なのだが。

まあ、海に入れないから良いけど。

 

「と言うことはこの子も?」

「まだカードは揃ってないが、強いぞ」

「まだ? ……へぇ。まだでそれだけ……」

 

レイの眼が細まる。

強い。

そう口にしただけあるのか気になっている様子だ。

カードが揃っていない、と言うことに関しては、ある程度揃える所も含めて才能と考えているからだ。

「カードは拾った」と言っていたバケモノみたく。

流石にあそこまでは期待しないが。

 

「デュエルしてみるかね?」

「……良いんですか?」

「行ってきなさい」

 

不安げに見上げて来るその子の、レイによく似た色合いの髪を撫で、ついでに着けていた麦わら帽子を被せて送り出す。

まあ、良い子ではあるから大丈夫だろう。

ちょっと依存の気があるような気もしないでもない。

それよりも、レイが油断しないと良いのだが。

あの子の使うのは、《魔封じの芳香》搭載の【永続罠】とか言う割とガチ寄りのデッキ。

下手したら喰われる。

と言うかプロ数名が少女と油断して喰われているレベルの強者だ。

 

「『カイザーミニオン』としては既に十分なレベルだが……」

 

そう。

漫画の方の、かのペガサス・J・クロフォードの考えた『ペガサスミニオン』を参考とした養護施設。

ロボット故に後継者をどう足掻いても出来ようのない私が、カイザーコーポレーションの運営している養護施設を利用させて頂いたのだ。

これに関してはデュエルモンスターズ専任理事になる前。

私が機能停止した際に、有しているデッキを預けられる者を見出すために。

子供を利用するとは如何にも悪い大人である。

だが、

 

「…………あの子はなぁ…………」

 

問題がないでもない。

あの子。

記録上はずっと前から養護施設に在籍していることになっている。

だがどうにも、見た記憶がない。

施設の職員に確認しても、ずっと前から居る、と皆口を揃えて言う。

だから多分、本当に居たんだろうとは思う。

全体的に優秀ではあるし、デュエルの実力もあるし、やや言動が不穏なコトを除けば大きな問題点は見当たらない。

依存気質な所も、カイザーコーポレーションに依存させればそれで良いと言う考えがないでもない訳だが。

しかし、名前が。

 

「………………まあ、良い」

 

デュエルの序でと言わんばかりに、ジュースを持っていかれた。

仕方なく、ジャケットに手を突っ込んでおく。

別に、今すぐ機能停止すると言う可能性がある訳じゃあない。

私のデュエルディスクにも防護機能は搭載されているから、大抵のことは大丈夫だ。

あとは、そう。

心配なのは、この世界自体の行く末。

 

「………………」

 

ズァーク。

彼がラスボスかは分からない。

だが、そうでないとは思っている。

現状の彼は闇堕ちし掛けていた主人公か大ボスのように思える。

少なくとも、如何に《覇王龍ズァーク》を擁していようとも世界崩壊には何手か不足していると思われるのもあるが。

赤馬レイ。

彼女はまあ、ヒロインだろう。

本人は否定しているが、《覇王天龍オッドアイズ・アークレイ・ドラゴン》と言う実例が居る。

そうでなくとも、私とのデュエルの時に諦め掛けていたズァークを復活させた訳だし。

赤馬零王。

名前だけ見れば如何にもなラスボスだった。

だが彼は便利な博士枠と言うことで既に片が付いている。

そうなれば。

残るラスボス枠は少ない。

有名どころは一通りの確認を済ませているが、不足。

ああ、そうだ。

灯台下暗し。

一つ、忘れていた。

カイザーコーポレーション。

海馬コーポレーションによく似た名前で、大企業。

ズァークとタメを張れる私と言うデュエル・マシンを製造した会社である訳だから普通ならラスボスでもおかしくはないが、遊戯王にはよくある世界崩壊の危機に携われるほどの技術力は流石にない以上、章ボスが精々か。

と言うか、私が実質的な章ボスだった可能性すらある。

 

「誰か、もう居ないのか!?」

 

叫んでいる声に、足を向ける。

考えることは多い。

赤馬博士の研究成果。

世界に生じた歪みからこの世界に侵略者が現れるのか。

それとも歪みを察知した宇宙の何者かがこの星にやって来るのか。

あるいは、全く関係のない厄ネタか。

カイザーコーポレーション内にもアンテナを張っておく必要がある。

赤馬博士に、異世界が何も幸せな所ばかりでない可能性も伝えて警戒を促すか。

今までなかったから使っていなかった「No.」モンスターも出てきたから実は厄ネタの可能性も現れた。

ああ、多い。

やることが多い。

考えることが多い。

 

「俺に挑戦する奴は居ないのか!」

「私が相手をしよう」

「ッ! はは! やっと来たか、カイザー! モンスターの声がずっと聞こえていたぞ!」

 

だが、構わない。

今更ながら、一つ言おう。

私には、許せないことが一つあった。

実のところ、許せないことが。

一つだけあった。

 

「皆が疲れているようなのでね、時間潰しぐらいにはなるだろう」

「時間潰し? いいや、お前とはそうはいかないさ!」

 

遊戯王を。

デュエルを。

楽しめていない、ズァークと言う存在が。

 

「さあ、楽しいデュエルを始めようじゃあないか!」

「なら――良かった」

 

そのために、随分と骨を折った。

長い交流の中でプロデュエリストの世界を知った。

楽しめていないのはズァークだけでないとも知った。

しかし既に固まっていた世界を変えるのは無理だと悟った

だからこそ随分と骨を折った。

ペンデュラムモンスター。

その発生に伴って、世界情勢が大きく変わるだろうと予想はしていた。

ペンデュラムモンスターの大暴れを抑制したいがためにEXモンスターゾーンの用意も進めた。

出来ることは進めた。

世界のデュエルが大きく変わってからも、随分と骨を折った。

防護機能を根拠に、去ってしまっていたプロデュエリスト達に声を掛けて呼び戻しにも尽力した。

やがては、ズァークが孤高の時代も終わりを告げるだろう。

これからだ。

全ては楽しいデュエルのため。

楽しくないデュエルに、何の価値があると言うのだ。

だから。

今だけは棚上げにしよう。

何れ来るかも知れない世界の危機も、何もかも。

ズァーク。

お前が、

 

「「――デュエル!!!」」

 

今を楽しめているのなら。





 ~ 完 ~


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