Verloren Violet   作:烊々

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第二話 「使命」

 

 

「友よ、今度は何を創ったのだ?」

 

 長身の銀髪の女性が、小柄な金髪の女性に話しかける。

 

「守護者……と云うべき者たちでしょうか」

 

 金髪の女性は、ゆりかごとも棺ともいえる箱の中に眠る自身の創造物を、まるで子を見守る母のように見つめながら応じる。

 箱には『C.P.U 001 Blanc-White Heart』と書かれていた。

 

「守護者? 少女のようにしか見えんが……」

 

 箱の中に眠っていたのは、小柄な茶髪の少女だった。

 非覚醒状態であるが、その力は胎動しているからか、数十秒に一回のペースで髪の色が水色に光る。

 

「戦闘時の形態と、通常時の形態を分けていますので。その方が効率がいいのです。それに、見た目の愛らしさは重要ですよ」

「そうか……だが、何故?」

「世界の安寧を守る為……主に『ゲ界』のですが」

 

 『ゲ界』、その言葉を聞き、銀髪の女性の表情が曇る。

 

「……何故、天上の民である君がゲ界の守護者など創る?」

 

 『神界』の住人である『天上の民』にとって、『ゲ界』の守護者を創るということは、同族への背信行為と捉えられてもおかしくないからだ。

 

「彼らは、可能性に満ち溢れています。私たちよりも、世界をより良いものにできるでしょうから」

「脆弱で、長くとも百年程度しか生きれんゲ界の民たちが、か?」

「ええ。一つ一つはか弱き命でありますが、いつかはその力を合わせ、私たち天上の民すらも超えるでしょう。だからこそ……今は守らねばならない。そう考えています」

 

 それは、銀髪の女性とっては信じられぬ発言であった。

 しかし、目の前の相手、金髪の女性は、神界の叡智を司る『研究機関』の長である。

 

「……君が言うのなら、それは真実なのだろう」

 

 そしてそれ以上に、親友の言葉だからこそ、銀髪の女性は金髪の女性の言葉を信じた。

 

「評議会に今の発言が知られたら、私は処分されるでしょう。これは裏切りにあたる行為になりますから」

「ここには私しかいないさ」

「悪い人ですね、あなたも評議会の一員でしょうに」

 

 金髪の女性がくすっ、と笑う。

 

「評議会は保身のみを考え、世界を考えてなどいない。身を置いているとはいえ、私もあの者たちとは考えを異にしている」

 

 応じるように、銀髪の女性もふっ、と笑う。

 

「しかし、評議会は最近君たち研究機関……いや君を疎んでいる。君の数々の研究成果による神界への貢献が、評議会以上の影響力を持つことを恐れてな」

「う〜む、私としてはそんな影響力など必要ないのですが」

「だからこそ、奴らは君を支配、場合によっては処理する名目を探している。その守護者の件は目的をぼやかした方が良い」

「わかりました。そうします」

「では、私は君の研究成果を評議会に提出するよ、仕事をしているフリはしないといけないからな。守護者の件は、まだ報告しないでおくことにするさ」

「助かります」

 

 神界の政を司る『評議会』の一員である銀髪の女性は『研究機関』の監視という名目で、度々友である金髪の女性に会いに来ているのだ。

 

「君と私の仲だろう? イストワール」

「ええ、そうですね、マジェコンヌ」

 

 そう、これは、神界に天上の民と呼ばれる者たちが住んでいたほどに昔の話である。

 そして、天上の民が世界から姿を消すたった数年前の話でもあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       超次元ゲイムネプテューヌ

 

         Verloren Violet

 

         第二話「使命」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ネプテューヌは、自分より少し体の大きいコンパを表情ひとつ変えずに背負い、軽い足取りで歩く。

 応急処置が済み、命に別状が無くなったコンパが穏やかに眠っている様に、アイエフは安堵する。

 

「……」

 

 安堵しながらも、恩人ではあるが女神であるネプテューヌを警戒していた。

 

「ねー、あいちゃん」

 

 そんなアイエフを気にすることなく、ネプテューヌは話しかける。

 

「……"あいちゃん"?」

 

 目の前の女神がまるで旧知の仲のような愛称で自分を呼び出したことに、アイエフは警戒を通り越して困惑した。

 

「あいちゃんあいちゃん〜」

「なによ?」

 

 女神のことを忌み嫌っているアイエフだが、愛想良く構ってくるネプテューヌを邪険にすることはできず、恩人であることからも、愛称を受け入れて応対する。

 

「わたしたち、どこに向かってるのー?」

「あー、えっと、女神の庇護下である南の地に……」

 

 言いかけて、アイエフはハッ、と気づいた。

 コイツも女神じゃん、と。

 

「ねぇ、ネプチュ……ネプテャ……ネペ……ネ……ネプ子」

 

 アイエフは諦めた。面倒でもあった。そして、先に愛称を付けてきたのは相手だから、自分もすればいいと勝手に納得し、そう呼んだ。

 

「ネプ子? わたしのこと?」

「そう。呼びづらいから」

「そっか。それで、どうかしたの?」

「あんたって女神よね?」

 

 どう見てもネプテューヌは女神だが、本人に直接聞いて再確認する。

 

「そうだよ!」

 

 ネプテューヌはニッコリと笑い、サムズアップしながら答えた。

 

「あんたは……他の女神みたいに、戦うことが使命、みたいな感じなの?」

「……う〜ん」

 

 単純な質問だが、ネプテューヌは考える。

 

「モンスターや守護女神がゲ界の民に害を為す、なら……?」

「どうして疑問系なのよ?」

「だって、人で言うならわたしはさっき生まれたようなものだからさ、創造時に魂に刻まれた使命と、頭の中のデータベースにある範囲での世界のこと以外何も知らないんだもん」

「そういうことか」

 

 こうして普通に会話できる相手ではあるが、生まれたての雛鳥のような存在だと知ったアイエフは、ネプテューヌへの警戒が徐々に薄れていっていた。

 

「なんだろう……わたしも守護女神だけど、他の守護女神とは違うっていうか……」

「ていうか、あんたがさっきから言ってる『守護女神』って何? 特に"守護"って」

「守護女神はゲ界の人間を守る為に創られた存在なんだよ。だから守護ってこと」

「……はぁ?」

 

 アイエフは、ネプテューヌの言葉を疑った。

 女神が人々を守護しているところなど見たことがないからだ。

 むしろ、常に争い、その衝撃で周囲を破壊していく、守護とは真逆の存在だからだ。

 

「あいつらが守護してんのなんて見たことないけどね。いっつも戦ってばかりで、周りの被害も気にも留めない。今向かってる場所にいる女神は守護してるって噂だけど」

「じゃあやっぱり……だからわたしが起動したってことなんだね」

「それって……今さっきあんたが言った『魂に刻まれた使命』ってやつ?」

 

 アイエフの問いに、ネプテューヌは頷く。

 

「創造主は、わたしを、天上の民やモンスター、そして守護女神から、ゲ界の民を守るために創った。だから、それがわたしの使命ってことになるかな」

「天上の民……いつの時代よそれ……」

「え?」

「天上の民って、私が生まれる数百年前にはもう世界から姿を消してるわ。しかも『ゲ界』って言葉も、歴史書にしか出てこないし。こういうのなんて言うんだっけ……えーと、死語か」

 

 『ゲ界』という言葉の成り立ちは非常に簡単である。『下界』の『下』という文字を嫌った昔の人間が、『下』を『ゲ』に変えた。それが世界中、果てには天上の民にも広がった。ただそれだけ。

 そして、天上の民が消え、神界という場所が忘れ去れられると、ゲ界という呼び名も使われなくなった。

 

「忘れ去られたとはいっても、その神界で創られた女神やモンスターが、世界をめちゃくちゃにし放題なのは今でも変わらないんだけど、ね」

「……そっか」

「というわけで話を戻すけど、あんたの使命ってやつは、人々を守ることなのよね?」

「そう……だね。そうなるね」

「なら、私たちのこと守ってよ……あ」

 

 言った直後、アイエフがバツの悪そうな表情をする。

 

「……いや、ちょっと待って、今の厚かましくてなんか嫌だから……えーと……」

 

 たとえ相手が女神であっても、自分のために利用することに後ろめたさを感じていたからだ。

 

「私たちが、他の人たちが安全に住める場所を作るのを手伝って欲しいです」

 

 ネプテューヌの耳元で、目を覚ましたコンパが、アイエフの言葉を訂正するように呟いた。

 抱えられながらも意識は戻っていたようで、ネプテューヌとアイエフの会話は聞いていたようだ。

 

「えと、その前に自己紹介ですね、私はコンパっていいます。よろしくです。ネプチュ……ネプテェ……ネプァ……ネプ……ねぷねぷ」

「そんなに言いづらいかなわたしの名前……? うん、よろしく」

「あと、その……降りた方が良い、ですよね?」

「え? どうして? 怪我してるのに?」

「だって……お、重くないですか?」

「全然? まだ怪我治りきってないのに歩くのはしんどいでしょ? だからこのままでいいよ」

 

 そう言って、ネプテューヌはコンパが自力で降りられないように背負う腕をガッチリと固める。降ろしてもらえない、という名目で、コンパに気を遣わせないように。

 

「それと二人の頼み、勿論聞くよ。守ることはわたしの使命だから」

 

 ネプテューヌは態度には出してないが、安心していた。

 守るべき民に拒絶されてしまえば、自分は使命を果たすことが難しい。そして今この世界で、女神とはあまり好かれてはいないことをアイエフから知ったからだ。

 だからこそ、アイエフとコンパからの提案は、ネプテューヌにとっても必要なことだったのだ。

 

「それになんか、会ったばかりだけど、二人のことはすごい好きだから」

 

 そして、照れ臭そうに言った。

 初めて会ったはずのアイエフとコンパだが、ネプテューヌは何か運命めいた親しみを感じていた。その理由をこの世界の誰も知ることはないが。

 

 

 

 

「……っと、完成ー!」

 

 数週間後、三人は、風の噂で聞いたグリーンハートの治める土地に存在するらしい『ある建物』を真似たそれを建て終えた。

 

「これぞ、女神ネプテューヌの『教会』だーっ!」

「ぱちぱちぱち、ですぅー!」

「ま、素人三人で建てた小屋だから、完成度はお察しだけどね」

 

 その小屋をただの居住場ではなく、女神に祈る場所である教会として作ったのは、女神の力を借りて沢山の人を救う、そのための拠点としての意味であった。

 

「そりゃぁーっ! 『ジャンピングアーツ』!」

「『天魔流星斬』っ!」

「えーい! 『ふるぱわー』です!」

 

 そして、教会周辺のモンスターを、女神ネプテューヌが先陣を切って蹴散らし、討ち漏らしはアイエフとコンパが討伐していく。

 すると、噂を聞きつけ、行き場のない人たちが集まり、小さな町ができていく。

 自分たちの手で安全圏を作り、モンスターの被害に苦しむ難民や防衛の難しい小さな村に住む人々を集め大きな街を築く、そんなアイエフとコンパの目標は少しずつだが確実に進んでいた。

 

「モンスターが減って、人が集まってる。だからそこには……」

 

 しかし、そんな人々の平穏の為の街の噂は、招かれざる客までも呼ぶことになる。

 

「……女神がいるってことよね!」

 

 黒い影が、狙いを女神に定め、飛来した。

 その影の着地と同時に、ドン! と衝撃音と共に街が揺れる。

 明らかな非常事態に、町の人々は逃げ惑う。

 

「出てきなさい! ホワイトハートッ!」

 

 女神の身体能力は人よりも高い、それは肺活量においてもであり、街全体に響き渡るぐらいの声量で、逃げ惑う人々を気に留めることもなくその者は標的の名を呼ぶ。

 

「あれは……」

「ブラックハート……!」

 

 騒ぎを聞きつけ、現場に駆けつけたネプテューヌたちは、女神ブラックハートと対峙する。

 

「……え、誰? ホワイトハートじゃ、ない?」

 

 すると、ネプテューヌを見たブラックハートの口から困惑が漏れた。

 

「誰……って……あ、そうか」

「ねぷねぷのこと知らなくても無理はないですね」

 

 アイエフが起動したことで初めてこの世界に誕生した女神ネプテューヌは、他の女神にもその存在を知られてはいなかった。

 

「わたしの名前はネプテューヌ! よろしくね!」

「ネプテューヌ……? まさか……私の知らない女神がいるなんて……」

 

 ブラックハートは、他の女神よりも完全な存在となる目的に執着している。故に、他の女神を斃して力を得ることだけに限らず、日々の鍛錬や知識の収集を欠かしていない。

 そんなブラックハートにとって、ネプテューヌの存在──目の前の未知は、自身の不完全さを意味している。その事実が、ブラックハートを苛立たせる。

 

「……認めないわ、そんなこと」

 

 ブラックハートは、ギリ、と強く奥歯を噛み締める。そして、剣を握る。

 

「ネプテューヌだかなんだか知らないけれど、今ここで私が斃してやろうじゃない!」

 

 そして、大地を蹴り出して前進し、ネプテューヌに向けて剣を突き出した。

 

「……っ!」

 

 ネプテューヌも剣を握り、ブラックハートの剣を受け止める。

 

「ネプ子! うわっ……!」

「きゃあっ!」

 

 武器が纏うエネルギーがぶつかり合う衝撃で、アイエフとコンパが吹き飛ばされてしまった。

 

「あいちゃん! こんぱ!」

「人間に構ってないで! 私に集中しなさい!」

「……このっ! いい加減にしてよ!」

 

 周りの被害を考えない傍若無人な物言いに、遂にネプテューヌは怒りを露わにする。

 

「戦うのは良いけどさ、周りのこともっと考えてよ!」

 

 ブラックハートが飛来し、大地を蹴り出し、ネプテューヌと剣をぶつけ合う、たったこれだけのことで、せっかく形になってきていた町並みがめちゃくちゃになってしまっていた。

 

「あなたもどこかの白い女神と同じこと言うのね。それがどうかしたの?」

「どうかしたの、って……! わたしたち守護女神は、人々を苦しめるために生まれたんじゃないんだよ!」

「人々を守る為に〜ってやつ? 私だって人間を滅ぼす気なんてないわ」

 

 ネプテューヌとブラックハートは、剣を交え合いながら言葉を交わす。

 

「だったら、わざわざ街の中で戦うなんてことしなくたって……!」

「私たちが戦えば周囲の人間に被害が出るけど、それで人間という種が滅びたりはしないわ。現にこの数百年間そうだったしね」

 

 ブラックハートの猛攻に対し、次第にネプテューヌの剣は追いつかなくなっていく。

 

「それに、女神の元に人間が集まることを放置してたせいで戦いを仕掛けるのが面倒になった件もあるから、早いとこ手を打っておきたいのよ!」

 

 ブラックハートは剣技だけでなく足技も使い、ネプテューヌを翻弄していく。

 

「だから、ここであなたを斃しておくとするわ! はぁあっ! 『レイシーズダンス』ッ!」

「ぐ……ぅうっ」

 

 そして、ブラックハートがネプテューヌの剣を押し切り、一閃を入れ込む。

 

「女神化をしないのかできないのか知らないけど、それじゃ私には勝てないわよ」

 

 ブラックハートに蹴り飛ばされたネプテューヌは、後方の建物に激突する。

 

「ネプ子!」

「ねぷねぷ!」

 

 女神同士の戦闘に人間の入れる余地はない。それが分かっているから、手を出さずに見ていたアイエフとコンパであったが、ネプテューヌのピンチに居ても立ってもいられなくなり、ブラックハートの前に立ち塞がる。

 

「邪魔よ。死にたくないならどきなさい」

「どかないわ!」

「ねぷねぷは私たちの……大事な友達です!」

「友達……? 女神と人間が……?」

 

 二人の言葉を、ブラックハートは心から困惑する。

 種として違い、力も違い、寿命も違う女神と人間の間に友情が成立するなど、ブラックハートにとってはあり得ない話だからだ。

 

「私は、人殺しがしたいわけじゃない。けど、どかないのなら、力尽くでどかすとするわ」

 

 剣を握り直し、振りかぶる。

 

「……!」

 

 そして振ろうとする直前。

 

「……まぁこの程度で終わったら面白くないわよね」

 

 ネプテューヌが、ボロボロの体を起こし、瓦礫を押しのけて立ち上がる様子が目に入り、一旦動きを止める。

 

「ネプテューヌ、この二人をどけてくれる? あなただって巻き込みたくないでしょう?」

「そうだね。あいちゃん、こんぱ、わたしは大丈夫だから、二人は安全な場所まで逃げて」

「でも……!」

「大丈夫」

 

 ネプテューヌの言葉は、優しい声でありながら、強い意志が込められていた。

 それを察したアイエフとコンパは、素直に聞き入れる。

 

「……絶対に負けるんじゃないわよ、ネプ子」

「信じてるです、ねぷねぷ」

「うん、ありがとう」

 

 アイエフとコンパが離脱するまで、ブラックハートは手を出さずにいた。

 先程の斬り合い以上の本気でネプテューヌが自分と戦う覚悟を決めたことを察し、これ以上怒りを煽らずとも真剣勝負ができると判断したからだ。

 

「ブラックハート……恐れてるんだね、君は」

 

 先程の斬り合いに含まれたブラックハートのエネルギーから、ブラックハートの言葉の裏腹にあるものを、ネプテューヌは感じ取っていた。

 

「君は、守護女神女神の使命、人を守るということを投げ出してるんじゃない。むしろ、わたしが思ってるよりももっと重大なことだと思ってる」

「……っ!」

「けど、それをするには、今の不完全な自分じゃダメだ、って思ってるから、わたしたち女神を斃して、完全な存在になろうとしてるんだよね」

 

 ブラックハートの表情が歪む。ネプテューヌの言葉が全て図星だったからだ。

 しかし、ネプテューヌの言葉を遮ろうとはしない。

 

「……っ、そうよ!」

 

 ネプテューヌ以外誰もいない場だからこそ、ブラックハートは数百年誰にも明かすことのなかった本音を吐露していく。

 頑なに否定し自分の心に嘘をつくのではなく、どうせ今から殺す相手だから話して少し楽になってしまおう、と。

 

「あなたは、不完全な存在に守られる世界や人間の姿が、本当に世界のあるべき姿だと思うの⁉︎」

 

 ブラックハートの言葉を、ネプテューヌは真剣に聞き入れる。

 

「ゲ界の民よりも優れた天上の民が滅びた理由は、優れていようが天上の民もまた不完全だったからよ! 不完全な癖に、自らの能力を過信し、足元を掬われ、滅びた! だから、いくら守護女神という使命を受けていようが、私たちが不完全であるなら、未来で同じことが起こるわ!」

 

 自らの創造主はもう世界には存在しない。まから、創造主の意図を、ブラックハートはもう知ることができない。

 だから、自分なりにその使命に向き合い、その結果が、まずは完全な存在へと進化することだった。

 

「私にはわからない! 不完全な癖に守護者であろうとするあなたも! ホワイトハートも! グリーンハートも! 私はそこまで傲慢にはなれないわ! 不完全なくせに、守護なんて大それたものを掲げるなんてね!」

 

 これが、女神ブラックハートの真意だった。

 

「……違うよ、違うんだよ」

 

 そしてその真意を、ネプテューヌは否定した。

 

「完全な存在になんて、わたしたちはならなくてもいいんだよ。けどその理由は、その答えは、君自身が見つけなくちゃいけない」

「なにを……!」

「でも、安心した。君はまだ世界の、人の敵じゃない。だからわたしは、まだ君を斃さなくてもいいんだ、って」

「斃さなくても良い……? 随分と甘く見られたものね……!」

 

 ブラックハートはネプテューヌの言葉を鼻で笑う。

 変身せず自分に追い詰められていたネプテューヌが、まるで自分に勝てるかのような物言いをしたからだ。

 ──というブラックハートの考えは、その次の瞬間に消えて無くなった。

 

「刮目せよ」

 

 ネプテューヌの眼が発光し、電源マークが入ったからだ。

 それは、自分と同じく、女神化をしようとしている合図。

 女神化をすれば、おそらくは二人の実力差が埋まり、ブラックハートに傾いていた戦況が均衡するだろう。

 ネプテューヌは、シェアクリスタル──女神の力の源──を解き放ち、紫色の光に包まれる。

 

「……変身完了」

 

 光が晴れると、女神化を果たしたネプテューヌがそこに立っていた。

 

「女神『パープルハート』、ここに見参よ」

 

 

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