Verloren Violet   作:烊々

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第三話 「完全」

 

「……む? また創ったのか?」

 

 再び監視という名目でイストワールに会いにきたマジェコンヌが、もうニ個増えた守護者の箱を見て、驚きながら言った。

 

「はい」

「守護者とは、そんなに何体も必要なのか?」

「はい、ゲ界は広いですから」

「程々にしておけよ。私でも庇えなくなる」

 

 釘を刺すことはすれど、強く制止はしない。マジェコンヌは親友に甘かった。

 

「今度は……黒と緑の守護者、か」

「守護者、ではなく『守護女神』と呼んでください」

「女神……ふっ、洒落ている」

 

 マジェコンヌは『C.P.U 002 Noire-Black Heart』『C.P.U 003 Vert-Green Heart』と書かれた箱の中身を見ながら言う。

 女神という呼び名に負けぬほど、美麗な容姿を持つ少女たちだった。

 

「それよりも、前回のと比べて少し大きいな」

「身体を大きくすれば性能が上がると思っていたのですが、特にそういうことはありませんでした」

「そうか。しかし、やはり君はすごいな。我々天上の民をも凌ぐ完全至高の存在をこう何度も創り出せるとは……」

「完全、ではありません」

「む?」

 

 イストワールが創り出した守護女神は、天上の民よりも強い力を持ち長き時を生きる。マジェコンヌにとってそんな存在は、完全で至高の存在他ない。

 しかし、イストワールは守護女神を完全な存在として創ってはいなかったのだ。

 

「マジェコンヌ。何故、ゲ界の民はか弱き命でありながら、滅びることなく小規模な繁栄を続けていると思いますか?」

「いや……そもそも天上の民は、モンスターを放ちゲ界の民の力を削いでも滅ぼそうとはしていないだろう。だから、ではないのか?」

「では、何故モンスターを放つのでしょう? それは、ゲ界の民を恐れているから他なりません」

「恐れ……?」

 

 マジェコンヌは困惑する。

 天上の民にとってゲ界の民など、取るに足らないか弱き命だからだ。

 そんなものを恐れるなどあり得ないからだ。

 

「彼らはか弱き命だからこそ助け合い、力を合わせ、絆を育みます。短き命だからこそ、その一瞬を善きものに輝かせようと全力で生きます。その"不完全"こそが可能性なのです。そして、天上の民はその可能性を恐れている。その恐れが頂点に達すれば、天上の民はきっとゲ界の民を滅ぼそうとするでしょう。それを止めるための守護女神です」

 

 イストワールが、守護女神創造の真意を語った。

 研究者である彼女にとっては、可能性の塊であるゲ界の民は、自らが属する天上の民よりも愛すべき存在となっていた。

 

「だから、私は守護女神たちを不完全な者として創りました。彼女らの心には欠乏感があるように。それに関して彼女たちは苦しむかもしれません。我が子のような者たちが苦しむのは私も心苦しいですが、ゲ界の民の不完全さを学び、共に生きることで、彼女たちはその欠乏感を埋めることができるでしょう」

「……どうだろうな」

 

 イストワールの希望に満ちた言葉を、やんわりとマジェコンヌは否定する。

 

「君は、比類なき頭脳を持ちながら、善性というものを信じすぎているよ。世界はそんなに綺麗ではない」

「それは……そのとおりです。けれど、現実がそうでなくても……いえ、そうでないからこそ、私はそれを追い求めたい」

「天上の民を裏切ることになっても、か?」

「……はい」

 

 誰よりも世界を知り世界を愛しているイストワールが、天上の民以上にゲ界の民を想っている。

 それは、現時点では世界の実質的な支配者である天上の民が、その座を手放すべきであることを意味している。親友の頭脳を疑うことのないマジェコンヌにとって、それは真実なのだ。

 

「私は……君を止めはしない。だが……君のその思想と行動は、必ず他の者に知られるだろう。そして、そうなった時は……」

「覚悟はできています」

 

 イストワールははっきりと言った。

 

「確かに、守護女神が完成すれば、我らとて敵ではないだろうな」

 

 マジェコンヌは、思ってもない言葉を口に出す。

 

「いいえ、彼女たちは守護者です。破壊者ではありません。私の身を守るために彼女たちを使うなんてことはしません」

「……使えばいいじゃないか」

「え?」

 

 イストワールに届かない声量で、マジェコンヌは弱々しく呟いた。

 

「……いや、なんでもない。今回の評議会への報告も適当にでっち上げておく。じゃあ、またな」

「はい。また」

 

 マジェコンヌは、イストワールの研究室から去る。

 マジェコンヌの表情が浮かない様子をイストワールは訝しむも、友であっても、否、友だからこそ余計な詮索はしなかった。

 

「イストワール……何故そこまで崇高でいられるのだ君は……けれど、その崇高さで命を捨てないでくれ……」

 

 これは、天上の民が世界から姿を消すたった一年前のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      超次元ゲイムネプテューヌ

 

        Verloren Violet

 

        第三話「完全」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 対峙する二人の女神、パープルハートとブラックハート。

 先程と打って変わって、言葉を交わすことなく、剣を振り合う。

 斬り合いながらも、戦場を狭い町中から広大なダンジョンへと移していく。

 

「『32式エクスブレイド』!」

 

 パープルハートは、シェアエネルギーで形成された大剣を頭上に生み出し、ブラックハートに向けて射出する。

 

「『トルネードソード』!」

 

 ブラックハートは、シェアエネルギーを剣に乗せ、エネルギー刃を形成し、巨大な斬撃で迎撃する。

 両者のエネルギーの剣が砕け、間髪入れずに接近し合い、再び剣を振り合い、距離を取り、再び接近して斬り合う。

 移動と攻撃のペースがどんどん加速していき、両者の発するシェアエネルギーが火花のように迸る。

 

「『ネプテューン・ブレイク』!」

「『インフィニット・スラッシュ』!」

 

 そして、そのスピードを維持したまま、お互い必殺技を放つ。

 戦場の空に轟音が響き、紫と黒の二色に煌めく。

 

「「はぁああああっ!」」

 

 両者ともに最後の一閃を繰り出し、シェアエネルギーが爆発する。

 

「……」

 

 視界が晴れると、ブラックハートは倒れ、パープルハートは立っていた。

 

「……私の負けよ」

 

 力を使い果たし、変身が解けたブラックハートは、素直に敗北を認めた。

 

「さぁ、私のシェアクリスタルを取り込んで、完全な存在へと近づくといいわ」

 

 ブラックハートの言葉を、パープルハートは首を振って拒否する。

 

「私には必要ないわ」

「……情けのつもり?」

「いいえ、私は完全な存在になんてなるつもりはないもの」

 

 パープルハートはブラックハートに手を差し伸べる。

 

「あなたも完全な存在になんてならなくていいのよ。完全でなくったって、あなたはそんなに魅力的な人だから」

「何言うのよ……」

「それでも、どうしてもその目的を諦められないのなら、また挑んできなさい。人々に被害が出ないようにするから、いつでも相手になるわ」

 

 ブラックハートは、差し伸べられた手を取ることはなかった。

 しかし、パープルハートを拒絶したのではなく、自分の力で立ち上がるという意思表示だった。

 

「後悔しないことね……今度は私が勝つわ……!」

 

 そして、なんとか自力で立ち上がったブラックハートは、ボロボロの身体を引きずりながら去って行った。

 

「ネプ子!」

「ねぷねぷ〜!」

 

 ブラックハートが去った直後、アイエフとコンパがパープルハートに駆け寄る。

 

「信じてたです〜! ねぷねぷなら勝つって〜!」

「ありがとうこんぱ。あなたたちの祈りのおかげよ」

「それにしても、逃して良かったの?」

「私は良かったと思ってるわ。彼女は彼女なりに世界に向き合っていた。いつか、守護女神に相応しい者になってくれる、私はそう信じてる」

「……そう。あんたがそう思うならいいわ。じゃあ、早速帰って復興作業よ。幸い犠牲者は出なかったし」

「ええ、帰りましょうか」

「は〜い!」

 

 戦いを終え、帰る場所へ向かう三人を、夕焼けが照らしていた。

 

「それにしても、変身すると随分雰囲気変わるのね」

「カッコいいです」

「ふふ、ありがと」

 

 

 

 

「……私の使命……完全な存在への進化……でも、あの女神……ネプテューヌにとっては使命じゃないの?」

 

 その夜、ブラックハートは、自身の使命について考え直していた。

 

「完全でなくたっていい……か。そうよね……不完全なゲ界の民は……滅びることなく繁栄を続けている……」

 

 真剣勝負における敗北は、凝り固まっていたブラックハートの価値観を変えていっていた。

 

「なら、私も……」

「それでは困るのだ」

 

 声に気付き、身構えようとした時にはもう遅かった。

 黒い槍が、胸を貫いていた。

 

「か……は……っ」

「全く……好機が来たるまで数百年もかかるとは思わなかった」

 

 いくら弱っていようと、女神である自分はそこらのモンスターや人間には負けない。自分を狙う気配を見せた瞬間に対応出来るはずだ。

 だから、反応てまきないスピードで自分に致命傷を与えることができるのは、モンスターよりも強力な存在ということになる。

 

「天上の……民……?」

「間違いではないが、そう呼ばれたくはないな」

「……っ! その声……!」

 

 ブラックハートはその声に聞き覚えがあった。

 かつて、ゲ界に降りてきたばかりの自分たちに『他の女神を斃し、シェアクリスタルを奪うことで、完全な存在へと進化することが女神の使命』だと、言い伝えた謎の声と同じものだった。

 

「さらばだ。女神ブラックハートよ」

 

 謎の人物は、ブラックハートから槍を引き抜き、斬り伏せる。

 

「ぅ……」

 

 ブラックハートは死を悟った。

 そして、女神同士の戦いの宿命が、この人物に仕組まれていたことにも気づいた。

 気づいたところで、もう何もかも遅いが。

 

「イス……ト……ワー……ル……」

 

 薄れ行く意識の中で、自らの創造主の名を思い出し、呟く。

 しかし、創造主たる彼女の願いを叶えることなく、与えられた使命を果たせることなく、女神ブラックハートは光となって消滅していった。

 

「そうだ……イストワール……後二つ揃えれば、君を取り戻せる」

 

 ブラックハートの身体から取り出した黒いシェアクリスタルを手にし、その者は闇夜に紛れて消えていった。

 

 

 

 

 ブラックハートが姿を消してから数週間後、グリーンハートの教会にホワイトハートが訪れ、停戦と協力を申し出ていた。

 二人とも女神化ではない通常の姿で会合しており、今のところ戦意は無いことを示している。

 

「また、その話ですか? お断りいたします」

 

 しかし、グリーンハートはホワイトハートの提案を一蹴する。

 

「わたくしも、あなたの言う守護という使命は果たすつもりですし、実際にそうしています。しかし、完全な存在になるという使命も諦めはしません」

「そんな使命なんて存在しないわ。それに、あなたは私たちに積極的に戦いを仕掛て来ないじゃない」

「まぁ、わたくしたちの決着など数百年数千年かけてゆっくりやればいいと思っていますからね。わたくしたちにはそれだけの時間があるのですから」

 

 グリーンハートは自由な女神だった。己の使命を投げ出すことはなく、しかし躍起になって果たそうとすることもなく、人間を守護しながら、人間たちの作る文化、特に娯楽にのめり込んでいた。教会の彼女の部屋には、ゲーム機や漫画雑誌が無造作に転がっていた。

 

「とにかく、わたくしはあなたやブラックハートと手を組むつもりはございません。お引き取り願いますわ」

「そのブラックハートは、何者かに殺されたわ」

「……殺された?」

 

 ホワイトハートの言葉に、グリーンハートは平常を装いながらも、内心は動揺する。

 この口ぶりでは、ホワイトハートが斃したわけでないのだろう。自分とホワイトハート以外にブラックハートを殺せるような者がこの世界にいると思っていないからだ。

 

「私たちを殺せる程の何者かがこの世界のどこかにいる。だから、私たちも力を合わせてその脅威に備えないといけないわ。だからお願い、グリーンハート」

「ベール、ですわ」

「え?」

「女神化していない時は、その名で呼んでください。あなたにもあるでしょう? 女神ではなく人としての名が」

「……ブランよ」

「ええ、ブラン。あなたに従うわけではございませんが、わたくしたちの決着よりもその脅威とやらの排除を優先いたしましょう」

「ありがとう……あ、それともう一つ」

「はい?」

「まだ噂でしか聞いてないけど、四人目の女神がどこかで活動しているらしいわ」

「四人目……?」

「あなたのように人間を守っているらしいけど、ブラックハートを斃したのはその女神かもしれない。あなたも気をつけて」

 

 ひとまず、グリーンハート──ベールとの協力には漕ぎ着けたホワイトハート──ブランだったが、『完全な存在になる』という使命が偽りであることをベールに納得させることはできず、心残りがあるままベールの教会を後にした。

 

「四人目の女神……わたくしが最後の女神ではなかったのですね」

 

 ベールの関心は、ブラックハートが消えたことよりも、四人目の女神に移っていた。

 

「しかし妙ですわね。完全な存在へと進化するために斃すべき女神は二人と言われた筈…………まぁ、一人で考えていても答えなど出る筈ありませんわね。わからないことなら、実際に見て知ればいいのですわ」

 

 

 

 

「いやぁ今回は中々の強敵だったねあいちゃん」

「まさか、あの局面であんな技を出してくるなんてね」

「全くだよ。あの強さのモンスターがあの頻度で出現するんだから、最早わたしたちの前にはどんな天変地異が待ち構えていても不思議じゃないよ」

「まぁでも、私たちが戦いに集中できたのも、留守を任せられるコンパがいてこそよね」

 

 モンスター駆除を終えたネプテューヌとアイエフは、当たり障りのない会話をしながら、教会のドアを開けた。

 

「美味しい紅茶の淹れ方なんて、私できないですよ?」

「なら、わたくしが手取り足取り教えて差し上げますわ。ほら、こうして……」

「あの……こんなに密着する必要ないですよね……?」

「何を仰いますの? 体の動き一つ一つを覚えるのが手っ取り早いのですわ。ほら、右手はこうで左手は……」

「はわわ……!」

 

 すると、コンパが金髪巨乳の麗人に絡み付かれていた。

 

「「だ、誰ー⁉︎」」

 

 目の前の一見危なく見える光景に、ネプテューヌもアイエフも驚愕する。

 

「……あら、帰ってきてしまったようですわね。それではコンパちゃん、紅茶の淹れ方はまた今度ということで」

「は、はひぃ……ぷしゅ〜……」

 

 ネプテューヌたちの教会の中を我が物顔で寛ぎ、あろうことかコンパを弄んでいたその人物に、アイエフは少し苛立った。

 

「初めまして。わたくしはベールと申します。又の名を『グリーンハート』」

 

 その名を聞いた瞬間、アイエフはコートに忍ばせていたカタールに手を置く。

 すると、ネプテューヌがアイエフの前に手を出す。

 

「わたしはネプテューヌだよ! 又の名を『パープルハート』! よろしくね!」

 

 目の前の女神に戦意がないことを既に察していたネプテューヌは、バチバチに敵意を剥き出しにしていたアイエフを諌めるように、朗らかな態度で自己紹介を返した。

 

「パープルハート……やはり……」

「……ん?」

「単刀直入に聞きますわ。あなた、何者ですの?」

「何者、って……君と同じ女神だけど」

「だからわかりませんのよ。女神という存在はわたくし含め三人だと伝えられているのですから。一人減りましたが」

「……減った?」

「それも含めて聞きにきたのですよね。ブラックハートが死にました」

 

 その言葉を聞き、ネプテューヌたちに衝撃が走る。

 

「そして、やったのは謎の四人目の女神であるあなたなのでは? ……と」

「わたしじゃないよ……でも、ブラックハートがやられちゃったのがわたしのせいだ、って言われたら否定できないかも……」

「あ、別に責めるつもりなどありませんわ。やったのならやったで良いんです」

 

 元々、いつかは他の女神を全て倒そうと思っているベールにとって、ブラックハートが斃した犯人を見つけて裁くつもりなどない。自分の中の"未知"を消し去りたいだけであった。

 

「わたし、ブラックハートと戦ったんだ。そしてやっと倒した。命までは奪ってないけど、その時に受けたダメージのせいでモンスターとかにやられちゃったのかもしれないし……」

「それは有り得ません。わたくしたちは女神です。たとえ弱っていようが、モンスター如きに負けることなどありませんわ」

「それはそう……だけど」

「ならば、結局ブラックハートを殺した者は分からずじまい、ですわね。まぁいいでしょう」

 

 考えても答えの出ない物事に時間を割くことは無駄だと考えているベールは、ブラックハートの話をスパッと切り捨てる。

 

「それと、あなたは使命をどう考えてもいますか?」

「使命……?」

「わたくしたちには二つの使命がありますよね。世界の守護と、完全な存在への進化、この二つ」

「……一つ目は分かるけど、二つ目がわからないかな」

「え……?」

「ブラックハートも言っていたけど、完全な存在になることなんて、女神の使命にはないよ。だって、世界は……」

「そんなはずはありません……ならば、わたくしたちの心に巣食うこの欠乏感はなんなのですか」

「欠乏感……?」

 

 その言葉に、ネプテューヌは首を傾げる。

 

「……!」

 

 そして、そんなネプテューヌの反応は、ベールにとって信じられないものだった。

 創造主の願いにより不完全な存在として創られた守護女神は、心に欠乏感を持つ者としても創られており、自分の心にも他二人の女神の心にも当然欠乏感は存在していた。だから、特にブラックハートは、その欠乏感を埋めるために、完全な存在になるという使命に拘っていたのだ。

 

「……その感じですと、あなたにはないようですわね」

「その、欠乏感、ってやつだよね? まぁ、そうだけど……?」

 

 しかし、目の前の女神ネプテューヌは、それを感じていない。

 それは些細な違いのように思えるが、その些細な違いは、両者にとって確執となる。

 不完全故に欠乏感を持つのなら、欠乏感を持たぬ目の前の存在は────

 

「……成程、よく分かりました」

 

 ベールは席を立った。

 その眼には、戦意こそないがネプテューヌに対する確かな敵意は感じられた。

 

「ベール……?」

「次に会う時は、敵同士です。それをお忘れなく」

「ちょ、待ってよ! わたしはベールと戦うつもりなんてな……」

「わたくしにはございます。あなたを倒す理由が」

「理由ってなにさ!」

「あなたはわたくしたちとは違う。それが理由です。では」

 

 ネプテューヌの制止を聞くことなく、ベールは帰って行った。

 

「なんだったのかしら……」

 

 いきなり訪れていきなり帰る、そんな自分勝手なベールの振る舞いに、アイエフは呆れながら吐き捨てる。

 

「完全、完全、って、おかしいよ……」

「……ねぷねぷ?」

「そんなこと、いーすんはわたしたちに望んでないのに……」

「いーすん、さん?」

「いーすん、イストワール。わたしたち女神の創造主で、お母さんみたいなものかな。会ったことはないけどね。もう死んでるだろうし」

「え……亡くなっちゃってるです……か?」

「うん。だからこそわたしがこの世界にいるんだもん。ベールの言うとおり、わたしは他の三人と違うからさ」

「どういうことよ? グリーンハートがあんなに怒ることと関係あるの?」

 

 曖昧なネプテューヌの物言いに、アイエフは容赦なく問い詰める。

 

「……二人には話しておくね。わたし、女神ネプテューヌが生まれた理由と、わたしの創造主であるいーすんのことを」

 

 なるべく話したくはなかった。

 親友であっても、自分は女神で、二人は人間だから。自分が背負う使命に、親友を巻き込みたくなかったから。

 けど、親友に隠し事もしたくなかった。だから、自分が全てを話した上で、親友たちにどうするか決めて欲しい、そう思った。

 そして、それらを全て話したところで、アイエフとコンパがネプテューヌと共に生きるという意思は揺らぐことなどなかった。

 

 

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