転生銀色バ、銀色に染める   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

遅くなりましたが投稿です。
ってか毎日絶対無理なんで許して……


ではどうぞ


トレーナー

 

 

──第一印象は綺麗な子。

──第二印象はよく分からない子。

──第三印象は……

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

(よし、忘れ物無し!)

 

 鞄の中身を確認して観客席に座る。ターフの上を見れば、ウマ娘達がストレッチをしている。

 

(スカウト……できるかな)

 

 落ち込みかけた心にハッとして頬を叩く。襟に着けられたトレーナーバッチを見て気合いを入れ直す。

 

(ダメダメ。もっと自信満々に振る舞わないと)

 

 今日これから行われるのは選抜レース。このレースは、デビューを目指すウマ娘がトレーナーを付ける為にアピールする絶好の機会。トレーナーとしてはトゥインクルシリーズで輝く原石を見つけてスカウトする良い機会。必死さで言えば絶対数の多いウマ娘の方が断然必死だ。とは言いつつも、トレーナー側もある者は必死にならざるを得ない。

 

(新人だしな。僕……)

 

 突出した才能は大方ベテランや名門のトレーナーが担当する。中堅は見所のあるウマ娘をスカウトする。では一般人の新人はどうだろうか? 良くあるケースは才能を見出されなかったウマ娘を担当する、だ。そして長年かけて実績を作って中堅、ないしベテランへの仲間入りを果たす。

 

(仕方ないとは理解していてもねぇ)

 

 今日だって、良いなと思った子は全部他の実績のあるトレーナーに持ってかれるだろう。ウマ娘にとってトゥインクルシリーズは一生に一度、最初で最後の舞台。対して我々トレーナーは職業として確立されており、今年が駄目だったら来年と続ける限りチャンスがある。ウマ娘側からすれば一度きりのトゥインクルシリーズを駆け抜けるなら頼りになる実績を積んだトレーナーが良いというのは分かる。

 でも、僕のような新人は経験を積まないといけない。経験を積むにはウマ娘をスカウトしなくてはいけない。スカウトを成功させるには実績が無くてはいけない。実績を作るには経験が必要になる。……はあ。

 

(死ぬ気で中央のトレーナーになったのに、学内じゃあ僕も下の下のトレーナーだ)

 

 それでも一縷の希望を求めてウマ娘達を観察する。僕だけが気付けた隠れた才能を持つ子とか居ないかな、とか考えながら見ていると、ある子が目に止まった。

 

(銀髪? 珍しい)

 

 平均より小さい体格、ミドルロングの長さまで伸ばされた美しく銀髪。彼女の髪は太陽の光を反射して淡く発光している。

 

「あの銀髪の子か?」

「うひゃあ!?」

 

 突然背後から声をかけられて凄い声を出してしまう。振り返れば、左側頭部を刈り上げて癖毛を後ろで結んでいる男が僕の後ろの席からターフを見下ろしていた。

 

「っと。すまんな、驚かせた」

「い、いえ、それよりあの子は……」

「アルギュロスレウス。配られたデータとは雰囲気が違うが、確かに彼女だ」

 

 アルギュロスレウス……。タブレットで配布データの検索をかけるとすぐに出てきた。僕も一度全員のデータに目を通したが、彼女の場合は写真と髪色がかなり異なっていた為判別がつかなかった。

 

「そういや挨拶がまだだったな。俺は沖野。一応〈スピカ〉のトレーナーだ」

 

 〈スピカ〉、あの名高い〈リギル〉や〈カノープス〉と並ぶこの学園でも屈指の強者(イロモノ)揃いと言われるある意味でも有名なチームだ。

 

「あの……」

「おっと、そろそろ時間だな。始まるぞ」

 

 自己紹介をしようと口を開きかけた時、ゲートの開く音が響く。目をターフに戻せば、選抜レースは既に始まっていた。

 

「今年は過去一の粒揃いだな」

 

 彼の独り言に内心で頷く。

 

峠走りの推薦枠、ドリフトスピード。

超名門の誇る白騎士、ナイトランサー。

精密体内時計を持つ華麗なる一族、クロックスライダー。

最後の直線最速の3F、ナイトロジェット。

 

 

そして、社長令嬢の黄金女皇(ゴールドプリンセス)、インペラトルーチェ。

 

 

 前評判だけでも有名な子が既に五人。そのどれもが歴代でもトップクラスの才能を持っている。

 

〔一着はセンターサイト! 差は三馬身! 気持ちのいい快勝!〕

(あの子も凄いな)

 

 そもそもの話、この世代は粒なんて細かいもんじゃない。この世代そのものが歴代トップクラス、誰もが過去で言う所の重賞クラス。目立つ子に注目しがちだが、他の子も目を瞠るものがある。……それでも、僕がスカウト出来るとは思えないが。

 

「沖野さんはど……」

 

 どの子をスカウトしますか、という疑問は口に出す前に消えた。振り返ればそこに彼の姿は無く、見渡せばターフの上でウマ娘に顔面を蹴り飛ばされている。

 

(そういえば……〈スピカ〉のトレーナーは太腿を触る変態だって聞いたな)

 

 気を取り直してレースを見れば、銀髪の彼女が走っている。

 

(先行か)

 

 あの子は逃げの子の真後ろに位置取っている。

 

(……?)

 

 レースの展開としては特に注目する点は無い。しかし、何処か違和感を拭いきれない。

 

(動きが無い?)

 

 レース序盤から中盤にかけては全ウマ娘が位置取り争いでごった返する。今はもう中盤に入っているとはいえ、序盤の形そのままで時が止まったようにバ群に変化が無かった。それに、よく見れば皆走りにくそうだ。

 

(何故? 芝の状態は悪くない。天気も良好。……ん?)

 

 銀髪の子の口角が上がるのが見えた。ほんの少し、一瞬だけだったけど、確かに彼女は笑った。

 背筋が凍り付く。冷や汗が止まらない。まさか、まさか全員を……、出走している全員の位置取りを調整しているというの?

 

(不可能だ。有り得ない)

 

 でも、末脚を持つ子は集団の中に、足取りの軽い先行の子は後方大外に、パワーのある差しの子は先行に、……流石に偶然だ。悪い癖が出た、考えすぎだ。

 

 最終コーナー回って直線。そろそろ逃げの子が垂れる頃合い。彼女は最初にスパートに入る、同時に逃げの子がスタミナを使い切って垂れた。まるで予見していたかのように逃げの子を躱してハナを取ると、垂れる子と一緒に少しだけペースを落とした。先行集団はそれによって内の選択肢を消され、外へと広がろうとした瞬間、

 

 

──ドゴ。

 

 小さい、小岩が落ちたような音量だった。彼女の足音だが、ペースに大きな変化は見られない。

 結果は銀髪の子、アルギュロスレウスの一着。二着との差は()()()。このレースは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(気になるし。声かけてみようかな)

 

 

~~~~~

 

 

 僕は鞄を持ってターフに降りると、彼女は既に数人のトレーナーに囲まれていた。他のレースと比べると華はないけど、選抜レースで一着をとるというのはそれだけ凄いことなのだ。

 

「良いレースだったよ」

「その節はありがとうございました」

 

 一人の男性トレーナーが彼女に言い寄る。彼女の反応から見ても、この選抜レース前に交流があったようだ。出遅れたと思った時、別のトレーナーが話しかけた。

 

「最後の直線、少しフォームが崩れていたよ」

「御指摘、感謝します」

(ん? あれはきっと……)

 

 他のトレーナーが彼女を褒める中、ただ一人彼女にアドバイスを言うトレーナー。私は不思議に思いながらも、彼女を囲む輪に入れずにいる。

 

(うう、近付けないよぉ。はあ、出直した方が良さそう)

 

 このままでは無為に時間が経つだけだと思った僕は、もう諦めて帰ろうとした時、

 

「……」

(こっち見た!)

 

 一瞬だけだが彼女と目が合った。鋭く冷たい目線に心臓が高鳴る。瞬きをした瞬間にはもう彼女はトレーナー達と会話していた。

 

(気のせい……かな?)

 

 結局、僕はこの日一人もスカウトに成功すること無く帰路に着いた。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

 週末、休みの日に僕は近場の公園のベンチに腰掛けていた。

 

「はぁ」

 

 恨めしいほど澄んだ蒼空にため息を吐く。季節柄過ごしやすい気候に感謝しながら自販機で購入した缶コーヒーを開けて一口飲む。落ち着く香りと、微糖と表示されているもののかなりの甘味を感じながら二度目のため息を零す。

 

「はぁ」

「お疲れのようですね」

「ふぁひゃぁ!!」

 

 取りこぼしそうになった缶コーヒーを何とかキャッチして恐る恐る背後を見る。

 

「お疲れ様です。トレーナー」

 

 淡く発光する銀髪、モデル顔負けの美しい容姿、スラリとしたシルエットに気を抜けば囚われてしまいそうになる瞳。この前の選抜レースで話すことが叶わなかった子。アルギュロスレウスだった。

 

「あ、あなあなたたは……」

「私はアルギュロスレウス。スカウトしに来ました、トレーナー」

 

 スカウト? 誰に? 僕に? 何故? 彼女なら引く手数多では?

 頭に浮かんだ疑問をなんとか飲み込む。

 

「えーと、僕を?」

「はい」

 

 彼女はインペラトルーチェと同じく社長令嬢。所作から気品さが溢れ出ている。

 

「ど、どうして僕を?」

 

 訳が分からなかった。僕は実績がある訳でもない、家が超有名な名門の訳でもない。僕の何が彼女のお眼鏡にかなったのかわからなかった。

 

「…………」

 

 鏡のように光を内包する銀瞳で見詰められる。その時、ふと彼女の右脚に違和感を感じた。

 

「やっぱり……」

 

 彼女が呟くと脚の違和感も消える。すると先程よりも何処か確信めいた表情で私に問い掛ける。

 

「貴女、()()()()()()()()()()

 

 豆鉄砲を喰らったみたいな衝撃だった。他の人とズレを感じてはいたけど、自覚は無かった。

 

「それに、()()()

「?」

全てを壊してしまいたい破壊衝動常識という監禁からの脱却底無き自尊と証明欲求。貴女のようなヒトを探してた」

 

─ドクン。

 

 心臓が魂動する。彼女の言葉一つ一つに共鳴する。

 

「私がトレーナーに求める要素は只一つ、世界を呑み込む程の野望。貴女にはそれが有った」

 

 血の巡りが速くなる。身体は熱を帯び、息は絶え絶えになる。

 

「もう一度言うよ。私のトレーナーになって欲しい。私が()()()()()()()()()()特等席で見て欲しい」

 

 彼女は手を出す。その手は魅惑の悪魔のようで、導きを与える天使のようで、()()()()()のようだった。

 僕は考える間もなく手を取った。

 

「僕に、あなたの起こす()()を見せてくれる?」

「ああ、約束するよ。……っと、改めて自己紹介をしよう」

 

 そう言って手を離した彼女は堂々とした佇まいで声高らかに言う。

 

「私はアルギュロスレウス(銀の王)。全てのウマ娘の頂点に立ち、世界を染め上げる()()だ」

 

 獰猛な犬歯を煌めかせながら、瞳を猛々しくギラギラとさせる。

 手を引かれて、君の番だと目で言われる。僕は小さく頷いて、口を開いた。

 

「僕は石晶(せきしょう) 惺名(せいな)。君を世界の王にしてみせるよ。よろしく、アルギュロスレウス」

 

 

 

 まだ陽が穹に在る頃、二人は固く握手を交わした。

 




石晶 惺名 プロフィール

身長:155cm
髪型:黒髪ウルフカット
趣味:ウマ娘の観察
特技:時計が無くても現在時刻がわかる
好きな物:優勝レイ、お金
嫌いな物:虫(蜘蛛は大丈夫)


ではまた!

競走バ編のリメイクいる?(台本形式じゃないやつ)

  • いる
  • ウマ娘編だけで満足
  • 欲しい(競走バ編の内容把握の為)
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