忙しすぎてヤベェ。
あるミュージカルに出ることになったんで稽古キツすぎィ!
ぼちぼち投稿します。
ではどうぞ
天候・晴れ、バ場・良、中山レース場。芝2000メートル内回り。観客席には隙間が見えないほどの人がぎゅうぎゅうに詰められている。
皐月賞。
クラシック三冠の一冠を担う本レースは、”最も速いウマ娘が勝つ”と言われている。
一度きりのクラシック、泣いても笑ってもこれが最初で最後の皐月賞。出走する面々もそれぞれに想いを託されている。恩人との約束、大切な人との誓い、あの日見た憧れ、背負った責務、実現させたい夢、みんなの期待。これらは時に輝かしく、時に摩擦し合う人と人とが紡ぐ光。
なんと素晴らしい光景だろうか
「おい」
パドックの舞台袖で眩しい景色を堪能していると、後ろから声をかけられる。振り返れば勝負服に身を包んだドリフトスピードくんが私を睨みつけていた。
ドリフトスピードの勝負服は赤と黒のレースクィーンを基盤としてタイヤやサスペンションといった車の部品が装飾されている。レースクィーンでもフリフリとしたスカートではなくホットパンツスタイル、身体付きの良いドリフトスピードのシルエットを惜しみなくさらけ出している。ウマ娘は筋力の割に見た目の筋肉は付きにくいが、彼女の露見した腹筋は綺麗に割れている。
「どうかしたのかい? ドリフトスピード」
「ハッ、随分と余裕そうじゃないか」
更に一歩詰め寄ってくるドリフトスピード。弥生賞と違い、今はほぼ同じ体格になったから見下ろされることは無い。一瞬ドリフトスピードが狼狽えた後、今にも触れてしまいそうな距離でがんを飛ばしてくる。
「今回は油断も隙も見せねえ。この前と同じようにいくと思うなよ」
つい目を丸くする。何を当たり前のことを、私は勝負服のグレーの中折ハットを深めに被って薄く笑う。
「同じ展開なんて有り得ないね。今日はみんな勢揃いじゃないか」
一番人気。白騎士、ナイトランサー。
二番人気。直速機構、ナイトロジェット。
三番人気。華麗なる時計、クロックスライダー。
四番人気。走り屋、ドリフトスピード。
五番人気。光線砲、レーザーカノン。
六番人気。頂上照準、センターサイト。
この世代を代表する面子が今、この場に揃っている。たった一つの冠を我が手にせんと闘志を滾らせている。
「今日は良い日になる。そうは思わないかい?」
鋭い、それは獲物を捉える獅子でも鷹でもない。尊大なる自信と渇望する肉体が生み出す独特の雰囲気。ドリフトスピードは息を呑む。
「嗚呼、心地良い。先にゲートに行くよ」
スイッチが入ったレウスを前にドリフトスピードは口を開けなかった。闘志は不滅だが、ゲートに向かうレウスをただ見ることしかできなかった。
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一歩、革靴がコツンと鳴る。
二歩、吹き抜ける風でグレーのクロップブレザーとコイル*1が揺れる。
三歩、銀の耳飾りが甲高い金属音を鳴らす。
銀髪銀眼、其の者の銀色はグレーとブラックのスーツスタイルの衣を纏っている。
唯一の白色のシャツ。フォーマルベスト、ネクタイ、ベルト、靴、手袋、ハットのラインは黒。それ以外のクロップブレザーとズボン、ハット、コイルはグレーとなっている。
アルギュロスレウスの抜群のスタイルを妨げることなく存在感を主張する勝負服は、製作者の腕の良さが見て取れる。長い脚、腰の括れ、豊満な胸、芸術的黄金率とも言えるシルエットにスーツスタイルという固まったイメージを着せることで、レウスは現代の芸術そのものだ。
ゲート前に着いたら、既に数人がストレッチをしていた。
凡庸なウマ娘ならこの場の気迫に押し潰されてしまうだろう。だがそんなやわなウマ娘は居ない。GI級、最高グレードの実力を持つ歴代最高の世代。彼女らの持つ強者のオーラはとうにシニア級を凌ぐ。
「順次ゲートに入ってくださーい」
係りの者がレース開始を知らせる。口角が上がるのを我慢する必要は無い。ゲートの中で脱力してその時を待つ。
[ゲートイン完了。クラシック三冠の一冠目、皐月賞が始まります]
スタートは得意だ。何回繰り返してきたと思ってる。
重力に引かれるまま前傾姿勢になる。
[スタートしました!]
最速を自負するスタート。しかし私はペースを上げずに最後方に位置取る。
コースは弥生賞と同一のものである為、解像度の高い策が幾つか頭の中にある。
[先頭に出たのは一番 クロックスライダー]
クロックスライダーの非常識的才能は正確無比なラップタイムを刻めることだ。逃げという脚質はレースの展開を操作できる脚質。気付かれないように自分の得意なペースに持ち込むも良し、脚で全員置き去りにするも良し、他のウマ娘に合わせる必要がない分他の脚質より自由度は高い。
しかし、逃げが勝つには膨大なスタミナと頭一つ以上抜けたスピードが必要となる。私の知る中でそれらを備えているのはクロックスライダーとインペラトルーチェのみ。つまり、状況に応じて二人以外の逃げは計算上レースから除外しても良い。
(ま、ルーチェはいないからクロックスライダーの単逃げなんだけどね)
ここで面子のおさらいをしよう。意識するのは一~六番人気のレコードホルダーズ。逃げはクロックスライダー、先行はドリフトスピードとセンターサイト、差しはナイトランサーとレーザーカノン、追い込みはナイトロジェット。何処行っても誰かにかち合うが、このレースはそういうもんじゃあない。”最も速いウマ娘が勝つ”皐月賞でとるべき行動はただ一つ。
[3コーナーカーブに入って先頭変わらずクロックスライダー。驚異的なハイペースですが、まだ誰も垂れる様子はありません]
勝つべくして勝つ。最終コーナー手前、我は目覚めた。極限の集中状態から生み出される摩訶不思議な光景。
最強とは、
成り上がるもの?
勝ち取るもの?
受継ぐもの?
得るもの?
否、否である!
最強とはそれ即ち、
証明するもの
世界に答えるもの
最も強いと訴えるもの
さあ、唱えよう。王はその身の鎖を一つ解き伏せた。
――――――――――
刹那、世界が変わる。空間そのものが銀色へと、其れは錯覚であった。
銀色の世界、其れは余りにも不思議な光景。
王は静かに、その時を待ち焦がれていた。
我の前に道は在らず、我の後ろに過去は有らず
或るのは唯我のみ
道とは、我が軌跡である
過去とは、我が偉業である
見届けよ! 我が軌跡を!
見届けよ! 我が偉業を!
――――――――――――
肉体が軽い、世界と一体となったようだ。進むことに何の抵抗も感じない。やっと世界が我を受け入れた。
―ギャリギャリギャリ。
鎖の軋む音がする。我に纏わり付く、抑止力ともとれる
[最後方からアルギュロスレウス! 大外から来た!]
レースに関する都市伝説として、このようなものが存在する。
―時代を創るウマ娘は必ず
それが本当なのか、領域とは何なのか、世間に判明しているものは実に不透明。そりゃそうだ、時代に届かないウマ娘に
[は、速い!! アルギュロスレウスが最終コーナーで抜け出した! ナイトランサーが粘るが追い付けない! 二馬身……三馬身……まだ突き放す!]
軽装騎士の勝負服を着たナイトランサーがすんごく睨んできているのがわかる。でも残念ながら、睨んだ所で加速する訳じゃあない。
彼女の表情が見えないのが惜しくて仕方ない。この世界で遅いのは重罪だ。よく悔やんでくれたまえ。
[坂も止まらない大進攻! アルギュロスレウス先頭! アルギュロスレウスが先頭!]
証明が始まる。
[七馬身差でアルギュロスレウスが悠々とゴールイン!!! クラシック最初の王冠を手にしたのはアルギュロスレウスぅ!]
観客が沸き立つ。拍手喝采、大歓声。絶望と崩壊には及ばないがこれもまた中々悪くない。
[タイムは……レコード?! この世代はレコードホルダーばかりだ! アルギュロスレウスもレコードを更新しました!]
三冠を豪語する者はよく指を一本二本と立てていくが、私は指立てはしない。その代わり……
「ウオォォォォォォォ!!!」
我は嘶く。空気を震わし、空に轟く、大地に廻らせる。
我は今一度、世界へ示す。
最強の証明
これは、
次回予告
当たり前みたいな顔で皐月賞を勝ったレウス。そんな彼女に様々な感情を向ける同期達。お願い、折れないで。まだクラシックは始まったばかりよ!
次回「証明」
ではまた!
競走バ編のリメイクいる?(台本形式じゃないやつ)
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いる
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ウマ娘編だけで満足
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欲しい(競走バ編の内容把握の為)