転生銀色バ、銀色に染める   作:アールワイ

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ども、素人投稿者です。

この話から路線を変えていきます。


ではどうぞ


学園

 

 

 生物にとって睡眠とは基本的に必要不可欠なものだ。心身を修復するだけでなく、ホルモンを分泌したり、記憶の整理を行っていたりする。つまり、睡眠をとるという行為は生物である以上避けては通れない現象であり、睡眠時間に多少の差はあれど、それは仕方の無いことなのだ。

 

「レ~ウス」

 

 活発な透き通る声と共に身体を揺らされる。いまだに重たい瞼をこじ開けると、目の前にはこの世のものとは思えない絶世の美少女がいた。

 

「起きないとまた遅刻するよ」

 

 窓辺から注がれる陽光に照らされている彼女の金髪は幻想的なミダースの黄金のようにふわりと揺らめく。私の顔を覗き込む顔は彫塑の様に美しく端整で、シトリンみたいに輝く黄金色の瞳は鏡のように私の寝惚けた顔を写している。

 

「……時間は?」

「ホームルームまで後三十分」

「まだ寝れ……」

「寝れないよ! ほら起きて! 制服は置いとくから朝食摂って、歯磨きしてね!」

 

 そう言いながら私を布団の中から片手で引き摺り出す彼女はインペラトルーチェ。私の()()()()()であり、競う好敵手(ライバル)だ。

 無慈悲にもこの身を包み込んでいた夢への羽衣を剥がされた私は諦めて起きる。

 

「…………」

「もー、寝癖もこんなに」

 

 寮の食堂で向かって歩いている途中はルーチェに髪を梳かされる。流石の食堂もこんな時間だと人気(ひとけ)が無い。食堂のおばさんは慣れたように取っておいてくれてた朝食を受け取ってお礼をしてから近くの席で素早く味わう。

 朝食の内訳は白米、味噌汁、焼き鯖、ほうれん草の胡麻和え、沢庵。

 

「いただきます」

 

 時間が無くとも感謝は忘れない。味噌汁を一口、非覚醒状態で失われた水分と、温かな味噌が沁みる。それから骨を巧く躱しながら鯖を口に次々放り込む。もきゅもきゅとした肉厚食感、旨味と脂の溢れる鯖がなんとも言い難い幸福感を与えてくれる。ほうれん草の胡麻和えもこれまた香りだかくて深い味わい。沢庵のコリコリも良い塩梅だ。結局、食事を終えるまで箸は止まることを知らなかった。

 

「ご馳走様」

「あいよ! 今日もギリギリだね」

 

 食器を乗せた長手盆を返却口に置いて食堂のおばさんにお礼を言う。

 部屋に戻る時、今度は尻尾をルーチェが梳かす。歩きながら器用なものだと思いながら、私は歯磨きとスキンケアを終え、着替えを済ませる。

 

「後何分?」

「後十五分。本当に毎日ギリギリだね」

 

 寮から教室までかかる時間は凡そ十分。なんと五分も余裕がある。

 

「行きますかぁー」

「全く、準備は早いんだから起きるのも早くなってよ」

「それは無理な相談だ」

 

 ()から私はディープスリーパーだった。日に十二時間寝てもまだ眠い。良く寝る子は育つと言うが、私の成長期は()()()()()だ。

 学校鞄を持って寮を飛び出す。軽いジョギング感覚でも私達はウマ娘、ヒトでは考えられない速度で走る。

 

「……壁登れば楽なんだけどな」

「それ前にやって怒られたじゃん。素直に廊下から入ろうよ」

 

 ウマ娘という存在はヒトの何倍もの身体能力を有する。身体の構造はほぼ同一なものの、生み出されるエネルギー量では天地の差がある。何処からその出力が引き出されているのか。研究者達は日々研究を重ねているが、未だ謎の神秘となっている。

 私は二度とたずなさんのあの長ーい説教は御免なので素直に学校に入る。

 

「はぁ、眠い」

「も~」

 

 朝の起床難も、走って教室に着いた頃には多少頭がクリアになっていた。時計を見るとちゃんとホームルームの五分前。教室の扉を開けると、喧騒な声が聴こえてくる。ある者は親しい友人と世間話していたり、ある者は教科書を開いて律儀に予習していたり、ある者は本日提出の課題を必死に解いてたり、個性が出ているクラスメイト達。その全員がウマの耳と尾を持っている。

 

 ウマ娘だけの教室。言うなればこの学園の生徒全員がウマ娘だ。此処は日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称『トレセン学園』。レースで活躍を目指すウマ娘が通う中高一貫校だ。トレーニングセンター学校は全国にあるが、中でも私達が所属している此処は府中の『中央校』。URA管轄下で最大規模の学校だ。

 

 学内の生徒は皆『トゥインクル・シリーズ』を目指して日々研鑽を積んでいる。しかし、栄光を手にするのはほんのひと握り、上澄みの上澄みでやっとチャンスが回ってくる。中央に入るものは例外を除きエリート中のエリート。そんな彼女らも中央で凡才へと成り変わる。天才が凡才に、秀才は愚才に、夢破れし敗者は地方へと転校や引退を余儀なくされるこの世界で最も残酷な業界。

 中央以外の地方『ローカルシリーズ』で好成績を取って調子に乗った奴が中央でバキバキに折られる事なんて日常茶飯事。化け物の巣窟、それが『中央トレセン学園』。

 

 

「おはよう」

「おはようございます」

 

 元気な挨拶で教室の扉を開ける。同い年で括られたクラスとは言えど、その実全員が同世代の競争相手という訳では無い。本格化を迎えてデビューしたグループ、本格化したがトレーナーが中々付かないグループ、本格化を控えたグループ。

 ちなみに、私とルーチェは本格化を迎えていないグループに入る。だからトレーナーも付いていない。

 

 

「おはよう。アルギュロスレウスさん、インペラトルーチェさん」

 

 自分の席に着くと、隣の席の子が挨拶してくれる。黒髪ボブに旗の耳飾りを着けた元気という言葉が似合う子。

 

「おはようモッブモブ」

 

 孤児院育ちだと言う彼女とは席が近いのもあって最初に交友を持った子だ。彼女の夢はあるヒトに恩返しをすることらしい。素晴らしい志だと思う。

 

「またインペラトルーチェさんに起こしてもらったの?」

「早起きは苦手なんだ」

「八時起きは早起きじゃないよ!」

 

 うーんこれは鋭いツッコミ。これは()()()()()()()

 

「はーい、席に着いて。ホームルーム始めるわよー」

 

 担任教師の登場で、教室内は静まる。今日も今日とてつまらない授業の始まりのチャイムが鳴る。

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

「ふぁ~あ」

 

 終業のチャイムが鳴ると、クラスの人達は各々自分の時間を使う。大多数はトレーニングだが、息抜きに遊びに行ったり、勉学に励んだりと様々だ。

 

「授業は真面目に聞きなよ」

 

 前の席のルーチェが欠伸してる私に振り向く。

 

「いや、ちゃんとテスト出るとこだけは聞いてたから」

 

 私は授業中ノートは広げない主義だ。テストなんて要点だけ聞ければ満点を取るのは難しくない。

 

「……地頭が良い人は違うなぁ」

「そう褒めないでくれよ()()()()()()?」

「よし、ターフに行くわよ。()()()()()()()()

()()()()()()の間違いじゃないか?」

 

 お互い威圧しながら教室を出る。()()金髪と、()()()()()銀髪が廊下を照らす。

 

 今日も今日とて私は()()()()()()()()の再演に恋焦がれている。

 

 

 

その少女の運命はまだ始まりもしていない。




予告 次回、選抜レース。

お楽しみにー

ではまた!

競走バ編のリメイクいる?(台本形式じゃないやつ)

  • いる
  • ウマ娘編だけで満足
  • 欲しい(競走バ編の内容把握の為)
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