「あんまり時間をかけたくないのに……!」
悟里は悪態を着きながらも任務にあたる。呪霊を祓うだけだが、増え続ける術式を持つ呪霊との戦い。一体一体は大したことは無いのだが、本体にたどり着く前に、増えられて本体を仕留め損なっている。しかも
「しかもなんで廃病院なんて入り組んだ所で追いかけっこしないと行けないのよ……!」
廃病院で呪霊を祓うために走り回る。見つけては祓うが本体ではない。
「くっそ!分身では増殖だから…本体叩かないと……。いや、時間はそんなに無いんだ……。こんな相手に使うのはアレだけど、出し惜しみして助け損なう方が、馬鹿馬鹿しい……!」
悟里は目を閉じて切り替える。そして呪霊に対して紅眼を向ける。
「事象・照準固定…!」
呪霊のあらゆる可能性を観測しピン留めする。呪霊が増殖するタイミングを遅らせる。呪霊は何が起こったか分からないでいたが、その一瞬で決着は着く。
「術式順転 『朱』!!」
建物壁に増殖した呪霊をまとめて重力の塊で圧殺して祓う。
「思ったより時間くった!早く補助監督の所に……いや、直接向かった方が早い!」
悟里は自身の任務が終わるのと同時に門を出現させる。
「行ったことはあるけど、細かく座標をすり合わせしてる時間は無い!こういう時に遠出の任務なんて……補助監督に土産買うように言わないと!事が終わったあとに!」
そして門を繋げて、悟里は門をくぐる。二級呪霊だと思われていた呪霊との戦いで灰原が命を落とす任務。その任務の場所に向い、門をくぐれば空中に投げ飛ばされる。
(座標のミス!だけど問題ない!)
慌てず重力で空中に飛び、灰原と七海戦闘している呪霊に不意打ちを仕掛ける。
「術式順転・朱!」
その一撃は呪霊を捉え、そのまま上半身を重力で押し潰し祓う。一瞬の出来事で二人は驚愕する。そんな二人の前に
「灰原!七海!」
悟里が降り立つ。二人を見るとボロボロではあるが、致命傷という傷もなく、欠損も無い。間に合ったのだ。
「悟里さん!」
「悟里さん……!どうしてここに!」
「なんとなくだけど嫌な予感があったから。というか、あれ、どう見ても一級じゃない?二級じゃないよね?」
悟里は息を吐きながらに言う。上半身消し飛ばしって呪霊を見て言う。
「はい、産土神信仰……アレは土地神です……!一級案件ですよどう見ても……!」
七海は悪態を着きながらも息を吐く。
「とりあえず、お疲れ様。無事でよかったよ。早く休みたいでしょ?ほら門を開くから」
高専との門を開き七海達を誘導する。灰原が門に入ろうとした瞬間、耳に聞こえる。最悪な言葉だ。
『領域展開』
その言葉が耳に入るのと同時に、悟里は灰原を突き飛ばし門に潜らせる。
「悟里さん!?」
灰原が振り向くと同時に門が消え失せていた。そこに悟里は居ない。そこから導き出される答えはひとつ無慈悲な解である。五条悟里は領域展開に囚われた。
「そんな!」
「何があったんですか灰原!悟里さんは!」
突き飛ばされて倒れる形で門をくぐってきた灰原を見て異変を感じ七海が叫ぶ
「悟里さん!僕を庇って領域展開に……!」
「っ!」
七海は驚愕すると同時に消え去った門のあった虚空を見て強く拳を握る。
「どうしたんだ?後輩共〜」
「ボロボロだけど……大丈夫かい?」
知ってか知らずか特級である、悟と夏油が二人に話しかける。七海達は事情を説明する。
「五条さん!夏油さん!悟里さんが!」
その灰原の言葉を聞いた二人は血相を変えて肩を掴み
「「悟里(ちゃん)がどうかしたのか(かい)!?」」
と問い詰める。その表情は灰原達を驚かせる。だが、驚いている場合でもないと言うのを理解しているので七海が話す。
「救援に来てくれた悟里さんが、呪霊を祓ったあと、私達を門で高専に送る瞬間に領域展開と聞こえて、それで灰原を突き飛ばし……おそらく彼女は……」
それを聞いた瞬間、悟と夏油は動き出す。
「その任務の場所はどこだ!」
「いや、その場所なら聞いているから大丈夫だ悟。虹龍を出す、七海と灰原は硝子に傷を治して貰うんだ。よく頑張った。あとは私達に任せてくれ……!」
悟と夏油が飛び出す。悟はたった一人の妹を夏油は大切な後輩の一人を救うべく。二人の最強が動き出す。
「さっきで仕留めたと……思ったんだけどなぁ」
悟里は土地神と対峙する。消し飛ばしたはずの上半身は人間の女性のような体に下半身白蛇の姿をしている。しかしそれは重要な話じゃない。領域内と実質な死刑宣告に近い状態での戦いだ。そして、その攻撃は突然襲い来る。
左肩部が凄まじい激痛を伴い、呪霊が悟里の体、肩部の内側から喰い破り姿を表す。
「ぐっ!くぅ!」
左肩部は血飛沫をあげる。喰い破ってきた呪霊は悟里を襲いかかってくるが、それは呪力を纏った拳で祓うことが出来る。姿を表した呪霊は大したことは無い。だが驚くべきことは
(私の内側から食い破ってきた!?何の前触れも無く……!)
悟里は顔を顰めながらも片膝を着き構える。
【簡易領域】
簡易領域を発動させ中和させる。相手の術式に対して対策をとるのと同時にこの領域を維持できないダメージを与えないと行けない。
(習得しておいてよかったけど……。さて、どう攻略したもの……!)
悟里は驚く。それは
「宿せ……宿せ、我が子を宿せ……」
呪霊が流暢に人の言葉を話したからである。
「へぇ、あの自然呪霊以外にもここまで話せるんだ。そりゃ、領域展開も出来るわけだよね」
削られていく簡易領域の中で構えて術式を放つ。しかし限られた簡易領域の中からでは上手く当てられない。そして
「再び……我が子の……生誕の苗となれ……」
簡易領域が破壊され再び呪霊の術式が牙を剥く。今度は右横腹とから蛇型の呪霊が内側から食い破ってき出てくる
「っ!!!」
食い破ってきた頃から勢いよく出血する。それと同時に呪力が消費されるのも分かる。
(必中効果で何かが私の中に入って、そこから私の呪力を糧に急成長して食い破って出てくる……!厄介すぎる!これ以上は打たせない!)
再び眼を切り替えるのと同時に簡易領域を産土神の近くで展開しようとするが視界が歪む。
(なっ……、ま、さか……!)
「鈍って……いる…」
産土神の蛇の部分である下半身でナギ払われる。それは横腹に諸に入り勢いよく転がる。すぐさま受身を取る
(っ……!出血が多すぎる……!)
内心悪態を着きなが視線を産土神の方を向ける。そして産土神が告げる。
「終わり」
「ご……っが……はっ!?」
蛇の呪霊が再び悟里の体を食い破ってき姿を表す。今度は無慈悲にも悟里の喉元を食い破って現れる。悟里の双眸は一度紅く強く輝くとその輝きは失せ、元の色に戻る。そのまま、悟里は力なく膝から崩れ落ち倒れ伏す。
「……良い苗が入った」
産土神は嗤い、悟里にゆっくり近づく。勝負あり。運命は決められた。
「私の半身を消し飛ばしたのは多めに見よう。その肉体と命を持ってな。命が散る刹那は何度も見るにあたう。永遠でも見れよう」
産土神の背後から10数体の大蛇が姿を現し、悟里に噛みつき産土神の前まで持ち上げる。力なく持ち上がる体は軽く制服も、白髪も血が着いている。そんな悟里を目と鼻の先まで誘導させ
「美しい髪に赤き化粧……素晴らしいぞ……ん?」
しかし、産土神は疑問に思う。
「どういうことだ……出血が……止まっておる?」
再び悟里の顔を見ると紅き双眸が産土神を捉えていた。
「なっ!」
悟里は右腕に噛み付いている蛇を術式で圧殺して、渾身の呪力を込めて、産土神の顔面に拳を叩き込む。
その刹那、黒い呪力迸る。周りの蛇諸共、産土神は仰向けに倒れる。
解放された悟里は簡易領域を使い話し始める。
「あー、本っ当に死ぬかと思ったよ」
「なんで……生きて」
「反転術式。こう言うの私覚えが悪いのかもしれないね。前回と今回、二度も死にそうになら無いと覚えられないときた。まぁ、習得する可能性を引き寄せたからというのもあるけど。お陰様で掴んだよ呪力の核心!!」
悟里の3箇所の傷は綺麗に塞がっていた。小さく笑いながらに言う。
「だが、まだ我が領域内!再びそんな矮小な領域など」
「出来るといいね……!」
悟里はニヤリと笑い両手を構えて手を引き寄せるように動かす。悟里の前方が、碧に輝き
「術式反転・『
産土神は引っ張られるように、悟里に近づき、悟里は朱を纏い、引っ張れる力と加速する力で、再び産土神を殴りつける。一度目の黒閃でゾーン状態になった悟里。黒い火花は再び爆ぜる。
【黒閃】
「がっがああああああああぁぁぁ!!!」
産土神に炸裂する2度目の黒閃。さらに、『碧』の引っ張られると『朱』で自ら加速した攻撃の威力は尋常ではない。そのダメージも想像だにしないものである。それは、産土神が領域を維持出来ないほどのダメージとして現れる。
「がっあああ……!!」
産土神は既に疲弊し体を再生させる速度もゆっくりだが、確実に存在している。
「領域が壊れた…か…。さて、まだ抵抗できる?」
「な、舐めるな。人間風情が、この程度で……!」
産土神が半身を起こして怒りを露わにする。満身創痍ではあるがそれでも執念に近い何かで目の前の敵に対して襲いかかる。迎え撃つ悟里は
「だったら、返礼をしないと。蛇の件も反転術式の件も纏めて……」
――手印を結ぶ。
中指を伸ばした人差し指に引っかけ、薬指と小指は曲げて絡ませ紡ぐ。
「領域展開……『
発生する領域は極限の重力の世界。
「がっ!?」
産土神は驚愕する。領域に閉じ込められるのと同時に、数十倍の重力が被せられる。重力という絶対論理の縛鎖。如何なる呪霊と言えどこの拘束からは逃れられない。それと同時に、産土神の体感時間も引き伸ばされていく。
(な……にが……起こって……)
その場から動くことが出来なくなった産土神に瞬間移動の如く接近した悟里は耳元で囁くように言う。
「楽しい時間、心地い時間そんな瞬間が長く続けばいいと思うんでしょ?」
産土神は腕を伸ばそうとしても動かない。まるで時が止まったように動かすことが出来ないのだ。
「私はそうは思わない。その瞬間が過ぎ去るからこそ、次に進める。この領域はそんな一瞬……刹那を永遠に引き伸ばす。私が加速しただけ、その分の停滞を強制する」
悟の領域が無限に情報を伝達し停止させる神秘的の世界なら、悟里の領域は刹那が終わることにない永久停止の無間地獄の世界である。
悟里は1歩下がり
「楽しかったよ」
手をかざして今度こそ『朱』で産土神を祓う。そして領域は消え失せる。
「悟里!」
「悟里ちゃん!」
それと同時に悟と夏油が到着する。途中、蒼の高速移動を交えたり、虹龍で最大速度で駆けつけた二人が目にしたのは
空を照らす満月に手を伸ばして嗤っている。白い髪を自身の血で化粧をした五条悟里だった。
「ハッ…!アッハハハハ!!!手を伸ばしたら届く……!最高だ……私は……まだ、強く……なれ……る」
狂ったように笑う悟里の瞳は紅く爛々と輝いていた。しかし、言い終えると糸が切れた人形のように仰向けに倒れる。
「悟里!」
「悟里ちゃん!」
駆け寄ってくる二人を視界に捉えながら、悟里は
(今回は……怒られる非はないから……)
そう内心で呟き目を瞑る。
手印は摩利支天のを参考にしてます!
感想、お気に入りお願いします!