(何時以来だろうな、コイツと本気の手合わせするの……)
ゆったりと構えるのは最強となった呪術師五条悟。相手の五条悟里の様子を見ながら様子を伺う。
(何時以来だろう、兄様との手合わせは……)
悟里は腰を低く落とし、半身で構える。彼女も似たような事を考えながらに構える。そして、誰の合図ではないが、一陣の風が両者の間を通り過ぎる。それが合図となり、二人はぶつかり合う。
悟は蒼で悟里は朱で互いに距離を詰め、拳を互いに拳を突き出す。
「……」
「――っ!」
悟里の拳は無限に阻まれ、悟の拳は、悟里のもう一本の腕のガードの上からでも深々とダメージを与える。
「どうした、悟里?お前がこれを突破しないと俺にダメージを与えられないのは知ってるだろ?」
「そうですね……!忘れているわけはありませんよ?」
悟里はそのまま空を切った手に呪力を集めて
「術式順転―朱」
朱を放つ。凄まじい重力の衝撃が校舎まで届き窓を大きく揺らす。
「こっちまで被害来そうですね」
「まぁ、来るだろうね」
「おお!悟里さんと悟先輩すごいなぁ!!」
「お前ら私も守れよー」
観客である四人は校舎の入口からその様子を見る。悟里は朱で距離を取ったと思われたが、悟が蒼でそれを許さない。そんな攻防が繰り広げられる。
「夏油はどっちが勝つと思う?」
「私に聞くのかい?……まぁ、順当に行けば悟じゃないか?」
夏油は難しそうな表情をしながらに言う。その言葉に灰原が聞く
「どうしてですか?夏油さん!」
夏油は説明する。
「悟の術式、無下限呪術は周囲に呪力で『無限』を具現化させる事であらゆる干渉を防ぐ術式なんだ。自身が危険と認識するものが自身に近づく程低速化し接触出来なくなるから、基本的にあらゆる攻撃を無効化することが可能なんだ。それが悟の無限だ。それで、悟が勝つという理由だが、悟里ちゃんに無限を突破する手段がないからだ。だが」
「そうと分かっていて、悟里さんは手合わせ受けたんですか?」
「何かあるんじゃない?あの悟里ちゃんを見てると無策とは思わないんだけど」
硝子は朝礼台に腰をかけながらに言う。戦況だけで見れば、悟の無下限呪術に為す術なく攻撃を防がれ、悟の体術に押されながらもクリーンヒットを避けているだけのように見える。だが、硝子と同じように悟も違和感を感じていた。それは、
(何時になったら来るんだ?遷延眼は……。アイツの眼が発動しているのは知っているからこそ……面倒だな)
直に対峙している悟だから分かる。悟里は遷延眼を起動していると。その証拠に悟里の双眼は紅くなっており、不気味に悟を捉えていた。
(けど、アイツの手札に俺の術式を突破できる術があるとするなら遷延眼で、俺が術式を解除する可能性を引き寄せて、無防備なところに叩き込む。そのつもりだろうが、今の俺にそれがないのは知っているはずだ。それで俺にどうやって……?)
違和感。それがどうしても拭い切れなかった。妹の悟里は大馬鹿者で命知らずと言いたいことは多々あるが、愚か者では無い。強くなるという気持ちと貪欲さは誰よりも知っている。体術の鍛錬の時間も、呪力操作の鍛錬も、呪具の把握及び扱いの鍛錬は自分よりストイックに努力を重ねてきたことを知っている。だからこそ
(何をしてきても全力で叩き伏せてやるよ!)
悟は手を緩めない。そして、悟は距離を詰めたタイミングで悟里の腹部に拳を叩き込む。蒼で引き寄せられた一撃は蒼で吸い込む反応を重ねられたものである。それはただの威力向上だけではなく、カウンターを貰ったかのような、無防備で攻撃を叩き込まれたような感覚になる。だが、
「っ!あっ……ぐっ!!」
(っ!コイツ!)
それを知っていて殴る箇所を誘導し最大限呪力で集中して守れば、ダメージを最低限に抑えることが出来る。そして、想定していたのならば、本当の意味でのカウンターが活きる。
それは異質な呪力を放つために六眼を持つ悟には絶対的に警戒される物でもあるそれは、悟里の手先の空間から歪みと共に現れる。かつては、五条悟の命をも脅かした短刀の特級呪具。
「天逆鉾だと!?」
悟里は左手で掴み悟の腹部を殴りつけている腕に、突き立てる。
「ぐっ!」
刀身が無下限に触れると同時に、無下限呪術はその特級呪具・天逆鉾の術式効果が牙を向く。その効果は刀身に触れた発動中の術式を強制解除させる。つまり、悟の無下限はこの瞬間解除され、腕が天逆鉾に貫かれるという事である。
「ぐっ!」
悟は驚きと痛みで少しだけ行動が鈍る。そして術式が解除されるということは無防備と言うことである。そして
「この瞬間を待っていた!術式反転 碧!」
悟里は碧で悟を引き寄せて、朱で自らを加速させた拳を悟の腹部に叩き込む。
「ぐっ!!おっ…がっ!?」
「うらああァァァああ!!」
悟里の拳は深々と悟を捉え、メキメキと嫌な音を軋ませながら殴り抜く。殴りつけると同時に空いている手で天逆鉾を抜き、悟を大きく殴り飛ばす。悟は数回バウントし転がりながら、体勢を整えて、腹部を抑え片膝をつきながら、口に広がる鉄の味がする原因を吐き出し
「ゴホッゴホッ!キッついなぁ、これが吸い込まれながら殴られる感覚か…。案外気持ち悪いな。それに、はっ……!ここで使ってくるかよ、それ!!」
悟は嬉しそうに口元を拭いながらに悟里に言う。悟里は悟里で
「……全力という話なので。それに鬱陶しいそれを破るには、現状それが最適ですし。そして、いつもの意趣返しはさせて頂きましたよ兄様」
天逆鉾を左手の中で器用に回しながらに言う。それを見ていた夏油が思い出したように
「そうか!彼女に渡したな!特級呪具、天逆鉾!」
「夏油さん!あの呪具はなんですか!あれを出して初めて悟里さんの攻撃が当たったと思うんですが!凄いですね!!」
灰原が少し興奮したように言う。夏油は説明する。あの呪具が悟を悟里を苦しめた呪具であること、その術式効果が、刀身に触れた発動中の術式を強制解除であること
「だが、あれを当てる為に彼女も無茶をしたものだ。そこは直らないものなんだな」
苦笑いをしながらに悟里と悟を見守る夏油。天逆鉾の術式効果はその都度解除を要する。悟から離れた今、術式の解除は無く、無下限は取り戻される。そしてつけた傷も反転術式で治すことが可能。それは悟里も一緒である。だが、
(やっぱりあの蒼の吸い込みパンチ効くなぁ、渾身の呪力でガードしたのに、痛みが引かない……!)
悟里は嫌そうな顔をするが、それは悟も同じである。それだけではなく
(俺の吸い込みの奴にアイツ、朱で威力にブーストして殴りやがった。吸い込みと加速した拳は思いの他残るな)
悟も悟で冷や汗を少し流しながら、少し笑った。
「え?」
その表情に悟里は驚いた。今までの手合わせで悟が笑うことは、悟里をバカにする時くらいだった。だが、今の笑いはそんなんじゃないというのは理解出来た。それは夏油は気づいた。
「そうか、悟。楽しいのか」
一緒に遊んだり、馬鹿な事をして笑うことがあったが、戦って楽しそうに笑うのは初めて見るのだ。さすが兄妹だなと思いながらに、少し寂しさを覚える夏油が居た。
「強くなるって息巻いているだけはあるみたいだな。まさか、久々にその呪具を目にするとは思わな……いや、全力となればお前なら使うよな?悟里」
「当たり前でしょう。現状、私にその無限を突破できる術はこの呪具以外にありませんし、けど……流石にこれはそう何度も使えない、使わせてくれない」
天逆鉾を右手に持ち、逆手構える悟里。
「ああ、分かってるじゃんか、でも通す気なんだろ?」
悟も構える。互いに反転で傷を治せるが、互いの攻撃は芯に残る。その分ダメージは蓄積されていくのだが、それは互いにダメージを与え合っていること前提である。体術では悟里が不利なのである。悟の攻撃は蓄積されていくが、悟里の攻撃は繋がらない。天逆鉾で解除できた瞬間に攻撃を叩き込むことは多少なりとも出来ているが、友好的な手数で言えば悟が有利である。そして…
「術式順転……!」
4回目の天逆鉾での術式解除。遷延眼を用いての天逆鉾を当てる可能性の引き寄せ、対策を立てようともこれを使い当てていた。そして勝負に出る。悟里は近距離で術式を放つ。それに悟は
「術式反転…!!」
悟も術式を反転させ迎え撃つ。互いに同じ色の読みを関する技。
「朱!!!」
「赫!!!」
互いにぶつかり合う朱と赫の術式は拮抗した後、赫に染められる。しかし、術式順転と術式反転のぶつかり合い、通常の倍の呪力を消費する反転術式による術式反転。最低でも出力は2倍ある。その結果、赫が勝り悟里の朱をかき消し、悟里を大きく後方に吹き飛ばす。
「くっ!」
悟里は体育館に激突し、頭を抑えながらに前を見ると、悟は構えて次の攻撃を放つ。伏黒甚爾を仕留めた、五条家の極地。その構えを見た瞬間、悟里は叫びたい気持ちを抑え切り回避行動を取る。
「虚式・茈」
二つの無限から仮想の質量を高速で押し出される。悟里は朱の拡張で加速させ回避を先に動いていたため左腕の肘から先が消し飛んだ程度で事なきを得た。だが、避ける事を予期していたのか避けた先には悟が居た。
(っ!避けるの織り込み済みかよ!)
「術式反転…赫!!」
二本指の指鉄砲の構えで放たれる。 衝撃波のような攻撃は悟里を襲う。悟里は天逆鉾を盾のようにして受け止めるが勢いは留まることなく、校舎に叩きつけられる。さすがに観戦の四人も言葉が出ない様子だった。肘から先を消し飛ばされ、赫で校舎に叩きつけられた悟里は激痛に歯を食いしばりながらも校舎の瓦礫を無事な右腕で退けながらも
「っ――!!殺す気ですか!?手合わせでそんなもん撃つなんて!!」
「お前なら茈は避けると思ったからな。でも、ここまで本気で攻めてまだ倒れないって、本当に強くなったな」
悟は嬉しそうに笑いながらに言う。悟里からしては冗談ではないと言うのが内心ではある。
悟里は左腕を反転術式でほんの少し遅いが再生させる。さすがにその間は悟も攻撃をしない。
(まさか、茈まで撃って来るなんて、何考えてるんだあのバカ!?私が遷延眼で最低限のダメージで避ける未来を見なければ、死んでいたんだけど!?)
悟里は左腕を再生させると感触と感覚を確かめる。問題が無いのを確かめる。
「腕治ったか?」
「私が反転使えなかったらどうするつもりだったのさ?」
「お前が、術式反転で碧を使っているのを見て大丈夫だと言うのは確認してから使ったからセーフだ」
何がセーフだと言いたいが大きく息を吐き。天逆鉾を重力で歪めている空間…"ポケット"に天逆鉾を入れる。そして素手になった所で歩き始める。悟は『また体術か?』と内心思いながらも近づく。すると、手印を組む。呪力の起こり、そしてそれが順転・反転では無いのは六眼が捉えている。
「まじか……!」
そして何かを察して距離を置こうとする前に、その言霊は紡がれる。
「領域展開『刹那永獄』!!」
悟里はお返しと言わんばかりに、強制停止の無間地獄に引きずり込んだ。
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術式反転『碧』
重力による停滞、引力がメインである。相手を凄まじい力で引き寄せたり、対象の攻撃を誘導することも可能。無下限の蒼のような移動は未知数。
領域展開『刹那永獄』
領域効果は、自身が加速した分だけ相手に重力による停滞を強制する。強時間停止の檻に閉じ込める。呪力で抵抗したとしても、何十〜何千倍率の重力が動きを阻害する。一瞬という刹那に終わりは来ず、停止した無間地獄に囚われる。
悟里の領域はとあるノベルゲームのとあるキャラクター参考にさせて