季節は流れて冬になる。悟里は……
「ほら、美々子、菜々子寒いだろうけど起きて。学校あるでしょ?もう、言っている間に冬休みなんでしょ?」
悟里が袢纏を羽織、とある一室の戸を開けながらに言う。その部屋には勉強机が二台あり、それぞれにランドセルがかけられており、布団が二つある。布団には羽毛布団と毛布がありそれにくるまっている美々子と菜々子は芋虫みたいにゆっくり動き出し、
「…はーい」
「…ほら、美々子手を繋いで、顔洗いに行こ」
悟里の声で目を覚まし、目を擦りながら布団から出る。
「ほら、寒いからこれを羽織って」
二人分の袢纏を着せて朝の準備をさせる。引き取ってから3ヶ月が経とうとしていた。悟里は寮生活をしていたが、二人が慣れるまで……今年いっぱいは実家に戻り、二人の様子を見るのと関わると言うのをしていた。最初の頃は村での仕打ちのこともあり、家の大人を見れば怯えるし、悪夢で夜に泣き出すこともあったが、今では、落ち着いて過ごすことが出来るようになった。
その様子を見ていた悟里の世話人をしていた人は
『悟里お嬢様が……立派な母親に……!』
と感涙を流す程だった。当の本人は
『まだ学生だよ!』
と突っ込んだのは言うまでもない。
「よし、二人が準備している間に……私も着替えよ……ふぅ、寒いなぁ」
手に息を吐きかけながら自室に戻り、高専の制服に身を包み、二人の様子を見に行く。するとしっかりと顔を洗い、歯を磨いた後なのかタオルで顔を拭いていた。
「おはようございます!悟里お姉ちゃん!」
「おはようございます、悟里お姉ちゃん」
美々子と菜々子はスッキリした表情で悟里に挨拶をする。
何故、二人が悟里の事を『お姉ちゃん』と呼んでいるかと言うと、最初は『様』付けで呼ばれて悟里が止めるように言い、今度は『さん』となった。その後、
『これから家族みたいに過ごすわけだから、そんなに堅苦しいのもやめようよ』
と言ったところ、『お姉ちゃん』と言う呼び方になった。一瞬存在しない記憶出てきそうになったのは言うまでもなく、それほどに二人の『お姉ちゃん』呼びの破壊力が悟里にはいい意味で大ダメージだった。
「2人ともおはよう。ほら、着替えておいで朝ご飯食べるよ」
「はーい!行くよ美々子!」
「あっ、引っ張らないでよ菜々子!」
二人は廊下を走りながらに部屋に向かう。悟里は一足先に広間に向かう。戸を開けると三人分の和食が準備されていた。少しすると二人がやってきて、
「それじゃあ食べよっか!」
「「うん!」」
三人は手を合わせて
「いただきます」
「「いただきます!!」」
朝食を食べる。悟里の両親や祖父母は先に食べ、悟里は時間をずらして美々子、菜々子と一緒に食べていた。両親と祖父母は美々子と菜々子が住むのには反対はしなかった。説得に時間がかかると思ったがそんな事は無かったのだ。
「悟里お姉ちゃん!聞きたいことあるんだけど!」
朝食の途中、菜々子は思い出した様に悟里に質門をする。
「どうしたの菜々子?」
悟里は湯呑みのお茶を啜りながらに話を聞く。そして菜々子は
「悟里お姉ちゃんは夏油さんのこと好きなの?夏油さんは悟里お姉ちゃんのこと好きだと思うよ!」
「ぐっ!?熱っ!!ゴホッ!ゴホッ!」
その言葉にお茶でむせて咳き込む悟里。その反応をみて菜々子は目を輝かせていた。
「やっぱりそうなんだ!ほら、美々子!私の予感当たったでしょ!」
「そうだね。でも、お姉ちゃんの反応が可愛いから知らないフリをするのも面白かったのに」
「え!?わ、私が夏油先輩の事を!?」
「アレ?違うの?てっきりそうだと思ったんだけどなぁ」
悟里は考える。
(ま、まぁ、夏油傑は好きなキャラだし、闇堕ちと言うか呪詛師に落ちないように徹底的に可能性は潰した。そりゃ、実際に見ると兄様よりモテるだろうなぁとは思うよ。気遣いや言葉使いを見てるとそう思う。と言うか一人の女性視点から見ても好感が持てる)
うんうんと頷きながらに考える。
(最近は、会えると嬉しいし、他愛のない話をするのが楽しいし、体術の訓練で褒められるのは嬉しいし……。頭を撫でられるの嬉しかったなぁ。そういや、お出かけできてないなぁ。一緒に食べに行くって言ったきりだなぁ……。夏油先輩とどこかお出かけ行きたいなぁ)
そう思考に耽った所で我に帰る。そして顔が熱くなるのを感じ
(いやいや!待て待て!何考えているの私!?待って!待って!!つまりそういう事!?)
口を揃えて言われ、頭を抱える。共に生活するようになった二人にまで言われるのだから相当に分かりやすいのだろうと内心思う。そして、言われるまで無自覚だった自分に驚く。
「そこまで……鈍感じゃなかったと思うけどなぁ……」
「そんなことない」
「悟里お姉ちゃんは十分に……」
とどめを刺す様に双子は言う
「「鈍かったよ」」
それがトドメとなる。
「ってことがありまして……」
「それはぁ、うーん。悟里ちゃんが鈍いのは確かだしなぁ」
悟里は家入と校内の食堂で話をしていた。二人は反転術式のアウトプットが出来るので呪術師の治療に駆り出されるため、待機をしている形である。家入にとっては、悟里が使える事で負担が半分肩代わりしてくれてるので以前より楽になったと喜んではいる。それはそれとして
「それで、悟里ちゃん的にはどうなの勝負に出るの?」
「え、あっ、いやその……!その勇気がないと言いますか……」
「なあに?聞こえないなぁ」
「聞こえてますよね!?」
硝子は笑いながらに宥めてから考える。
(と、言ってもあいつも何だかんだで奥手だしなぁ。それにあの
ホットコーヒーを飲みながらに笑う硝子。そうなっても見てる側としては面白いから全然構わないと言いたいが、せっかくの可愛い後輩が頼ってきているのだ何とかしてやりたいと言うのもある。
(互いに奥手でこういうことでは日和るよねぇ。そうじゃなかったら……はぁ)
考えれば考える程に沼にハマりそうなのを感じる。何とかしてやりたいと考えた数秒前の自分を殴りたい気分になる程に問題は少々複雑である。ふと、グラウンドを見る
「おっ、雪降ってんじゃん」
「ですね、あっ!二人に傘持たせるの忘れてた!」
「雪だから大丈夫でしょ。しかも子どもなんだから喜ぶんじゃない?雪」
そんなことを言った家入は名案を思いついた。半分はやけ見たいな作戦だが、上手く行けば間違いないと思える作戦である。
「良い作戦思いついた」
「え?良い作戦?」
「そう、良い作戦。とりあえず、去年と同じようにクリスマスパーティしようか」
「そんな季節ですもんね。今年は去年より賑やかになりそうですね」
悟里が言う賑やかと言うのは、美々子と菜々子もそうだが、悟が面倒を見ている伏黒姉弟に着いても含まれていた。
「そうかもねー。後は、色々と覚悟を決めさせるだけだし。とりあえず、悟里ちゃん」
「何ですか?」
家入はいい笑顔で言う。それも有無を言わせないほどの圧がかかる笑顔で
「当日逃げない事と、勝負を決める覚悟をする事。逃げたら……そうだなぁ、私の酒付き合うことだね。勿論ただ付き合うんじゃなくて、私と同じペースで同じ量を飲む。いい?」
「え?あの……私達未成年……」
「いい?」
「はい!分かりました!」
その言葉を聞き笑顔のまま言う。
「言質とったから〜まぁ、頑張れぇ」
そう言うと家入は手をヒラヒラと振って食堂を後にする。1人取り残された悟里は去年のクリスマスパーティの事を思い出す。家入の酒を一口付き合ったが最後、潰れるまで飲まされたという事件だ。悟は潰れた悟里を笑って酒を一口飲んで瞬殺。夏油と同期二人は避難、天内は黒井が程よい時間で回収して帰宅したのでこの悲劇を知らない。勿論、二日酔いで特級二人が使い物にならない珍事が起こったのは言うまでもない。
「また……アレが繰り返されるのか……」
戦々恐々としながら外の雪を見る悟里がそこにはいた。
そして別の日
「それ、本気で言っているのかい?硝子」
「うん、すごい本気。見てるこっちも、話を聞く側もおなかいっぱいだからさ……」
三年の教室にて夏油と家入が話していた。
「まだ、その時期じゃ……」
「そうやって自分を誤魔化してたら何時までも悟里ちゃんをモノにできないぞ、ヘタレ前髪」
ジト目で家入は話す。
「一丁前に恥ずかしがって思春期の男子かよ」
「まぁ、何ら間違ってはないと思うけど……」
その夏油の言葉に思わず大きなため息が漏れる。そして気を取り直して
「とりあえず、いい加減、勝負しろと言ってんの私は。からかいはするけど、見ててやきもきするの。何も算段をつけて無いわけじゃないでしょ?」
夏油は黙る。勿論夏油は考えていた。ご飯に誘うことや、美々子、菜々子を連れて遊園地に行くとかは考えた。勿論、美々子、菜々子を保護する前からも色々考えていたが、タイミングが合わなかったり、怖気ついたりと踏み出せていなかった。何より怖いのは今の関係が壊れるかもしれないという思いだった。だが、
「そうだね……私だって、このまま立ち止まるつもりは無いさ」
夏油は窓から外を見ながらに言う。だが、少し肩を竦めて
「まぁ、本人を前にして同じことが言えたら立派だけどね」
そう苦笑いをする。硝子は
「頑張りなさいよ。好きなんでしょ悟里ちゃんが。ここが勝負所だと思うよ、機会は悟里ちゃんと話して作ってあげるから」
硝子はそう言い残し教室を出る。クリスマスパーティの前日、23日その買出しに
「あれ?夏油先輩?」
「悟里ちゃん?」
互いに冬服を着込んでショッピングモールに来ていた。
「家入先輩がクリスマスパーティの買い出しに行くから付き合えって」
「私もそうなんだよ。しかし、肝心の硝子が」
そして互いの携帯にメールが来る。相手は家入からだった。
【そこに相手がいるじゃろ?クリスマスには少し早いが、二人で買い出しをしてついでにデートして来い。進展無ければ祟る 家入硝子】
「っ!」
(硝子のやつ!こんな事を!!)
二人は携帯と互いに顔を合わせて顔を赤くする。だが、
(逃げたらダメだ。私から声をかけるんだ!)
夏油が覚悟を決めて手を差し出し
「硝子は用事で来れなくなったみたいだから、私達で材料や必要な物を買おう。はぐれないように手を握るかい?」
「は、はい」
悟里は差し出された手を握る。そして二人はクリスマスに彩られた街を歩いていく。
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