五条悟の妹は悲劇を変えたい   作:皐月の王

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見たい未来のため

悟里は悟に置いていかれないように努力を続けるが、そんな努力を嘲笑うように事件は起こる。悟里が家の務めで呪霊を祓に行った際に重症を負った。もちろん油断なんてしていたということは無いが、話に聞いていた呪霊を祓った直後に別の呪霊が悟里の脇腹を抉る。

 

(新手!?しかも、私が気を抜くのを待っていた……?)

 

悟里は飛びそうな意識を歯を食いしばって耐える。泣きそうになるのも堪える。前世の死因を頭に過ぎらせながら、その呪霊の腕を掴み睨みつける。呪霊は何かを察知し逃げようとするが

 

「させるわけ……ない!」

 

悟里の目が紅く光る。呪霊がこの場から逃げない可能性に固定される。呪霊は何が起こったか理解する前に

 

「術式……順転……『朱』!!」

 

呪力で生み出された重力の塊をゼロ距離で呪霊に放つ。凄まじい勢いと威力で呪霊を壁に叩きつける。それでも祓うには至らない。

 

「っ!」

 

傷口を片手で抑えながら片膝を着く。

 

「あ……はっ……痛いなぁ」

 

苦笑いしながらに考える。明らかに自分が祓った呪霊より等級は上だろうと。悟里に与えられた家の仕事では4〜3級の呪霊が出ると聞いていた。だが、現在相対している呪霊は準1級である。

 

(イレギュラーには……イレギュラーって?そういうの…いいんだけどなぁ。まだ、一桁歳なんだけど……!)

 

それでも呪霊は待ってはくれない。いくら相手が女児だろうが何だろうが、呪霊にとっては等しく呪う対象でしかない。呪霊は体を起こして悟里を見る

 

「ケテ…タスケテ……イタイノ…ナオラナイノ」

 

そんな事を呻きながら鋭い腕を伸ばしてくる。負傷している女児を仕留めるにそれほどの労力は要らないだろう。花を摘む様に命を断つことが可能だ。

 

「なめ…ん…な!」

 

しかし、視界に収まっているのであれば、悟里はその限りじゃない。悟里の双眸が紅く光る。悟里の視界には呪霊の様々な可能性が映し出され、

 

「――――事象・照準固定……!」

 

「!?!?」

 

可能性にピンが指される。そして、呪霊は驚愕する自分がまだ起き上がっていないことに

 

悟里は自身に術式を付与させて、重力の加速を使い、呪霊に近づき。

 

「足りない……んでしょ?だったら……最大であげる……」

 

凡そ一桁の女児の表情とは思えない形相で嗤い、術式に呪力を回す。フルスロットルで

 

「術式順転……出力最大……『朱』!!」

 

呪霊と悟里を中心に十数メートルのクレーターみたいな穴が空き、呪霊に現状の最大級の重力の一撃がぶつけられる。呪霊は抵抗する間もなく、地面の染み見たいに潰され祓われる。そのクレーターの中心で悟里は夜空を見上げて、そのまま糸が切れたように倒れそうになる。が

 

「悟里!」

 

様子を見に来た悟が崩れ落ちる悟里を抱き寄せる。弱々しい呼吸と止まることの無い出血。悟はその傷に無下限を使い出血を抑えようとするが意味が無いことを理解し、呪力で強化した自分の体で、悟里を背負い上げ走り出す。

 

「兄……様……!」

 

「黙ってろ!絶対に死なせねぇから!」

 

悟は『蒼』を使ってでも帳の外の自分の家の世話人が居る所まで無我夢中で駆ける。自分の妹が死にそうになっていることは、まだ幼い悟では受け入れられず走る。悟里は

 

(まぁ、イレギュラーなら……ここで退場も致し方ないかな……)

 

半分諦めていた。ただ、兄の背の中で睡魔に抗うことなく。

 

(最低限は……した……。やばい、眠くなって……兄……様かぁ。なんか兄がいるの……嬉しかったなぁ)

 

悟里はふっと笑うと意識を失う。

 

「悟里!おいしっかりしろ!クソ!」

 

悟は焦燥感にかられながら走り抜けて使用人に悟里を見せる。そして

 

『死なせるな』

 

その一言を告げて祈るように悟里の手を握っていた。結論から言うと悟里は……一命を取り留めたが、暫くは動けなくなったのは言うまでもなかった。その日より、悟里が目を覚ましたのは三日後の話であり、療養生活を余儀なくされたのは言うまでもない。

 

「…ねぇ兄様、稽古行かなくてもいいの?」

 

「あ?お前が何かしないように見張りが居た方がいいだろ?」

 

目を覚ました日より、悟が悟里の部屋に毎日に来ては似たようなやり取りをするようになった。

 

「何かって……何もしないよ。何も出来なんだし」

 

悟里は残念そうに言う。悟里の傷はそれなりの傷で、一週間は安静にしないといけない。残念なことに反転術式を使える術師が居ないのだ。

 

「ふーん、そう言えば、この前外に遊びに行った時のお土産があるけど食うか?」

 

「食べる」

 

土産の甘味を二人で食べて話をする。デジモンの話だったり、呪術師の話、そしてこれからの話。

 

「悟里はこれからも呪術師続けるの?」

 

悟が悟里の隣に座って真面目な話のトーンで聞く。

 

「……そのつもりだよ」

 

「正直に言うと俺は向いてないと思う。弱っちいお前が続けても直ぐに死ぬだけだし?それに、あの時みたいに俺が助けられるとは限らないし、助けを呼ばれてもお兄ちゃんは来られないぞ?」

 

またバカにしてんのかと悟里は怒りそうになったが、表情が少し辛そうだった。口調は相変わらずバカにしたような口調だった。けど、幼いながらも悟は妹の悟里に死んで欲しくないと思うようになった。それ程に、今回の件が違う意味で怖かったのだ。

 

「それでも呪術師すんの?」

 

悟里には覚悟は無い。今回の件で呪術師と言うのがどう言ったものかを、実体験として、現実として知ることが出来た。そこの思考は未だに一般人のそれである。

 

悟里にはしたい事がある。辿り着きたい結末がある。 しかし、呪術の世界の恐怖は身をもって知った。今でも傷は痛むしこれからの事を考えれば何度だって挫けそうになるだろう。

 

だが、悟里の願い(エゴ)は足を止めさせることは無い。その為に悟里は辛い道だろうと、自分がその半ばで倒れる事を、許さない。自分が自分である為に。

 

「うん、続ける。それが、私だから」

 

「……そうかよ。んじゃ、強くなれよな」

 

悟は立ち上がり悟里に背を向けて部屋から出ようとする。

 

「兄様……」

 

「そんな小動物みたいな声出すなよ。……着いてこれるように進んでやるからさ」

 

優しい声で悟は部屋を後にする。悟は廊下を歩きながら、悟里のことを考え苦しそうな表情を浮かべ外を見る。

 

(続けるのかよ……呪術師。あんなになってまで)

 

悟は拳を強く握りしめる。あの時の感触が今でも背中に残っているのだ。悟里から流れる血、消えそうにもなっていく呼吸。声すら聞こえなくなった時は死んだとすら思った。

 

(アイツは頑固な所があるから、何を言っても続けるんだろうなぁ。そして、その度に……)

 

浮かぶ光景はあの日の夜。首を横に振り、再び悟里の部屋を見る。

 

(悟里は強くなる。だって、俺の妹だから)

 

大きく息を吐きその場から離れる悟。何時も着いてきて離れることの無い妹を頭に浮かべて笑う悟。現状唯一自分の無限を解除させて術式を当ててくる異才の妹。

 

(にしても、ズルいよなあの眼)

 

少し苦笑いをして自分の部屋に入り、一日を終える。

 

そして、時は流れて、五条悟は高専に入り、その翌年には悟里も入ることが決定していた。悟が高専に入ってから寮生活になり、別々になった。悟は定期的に連絡を寄越すが、悟里からは何も送らない。理由は、単純に面倒だからである。無事じゃない方がどうかするので、何も心配をしていないのである。

 

「悟里さま、今日の……」

 

「ハイハイ、分かってるわよ。中学生の労働環境考えて欲しいな。見たいアニメがあるんだからぁ」

 

ゆっくりと立ち上がり、外の車に向かう。やる事は今も昔も変わらず呪霊を祓う。ただ、相手の等級は上がり、二級、一級が主になってきた。それほど面倒とも言えるのだが

 

「今回は高専の呪術師と共同で行うそうですよ」

 

「こんな真夜中に大変だねぇ、呪術師は。手当てとか出るの?」

 

そんな事を呟きながら目的の場所に到着する。降りると車は下山し、悟里がポツリと置いていかれる。

 

「まぁ、帰るだけなら、日本の何処に置いていかれても大丈夫だけどさ。ここの座標も覚えたし。でも、山の廃ホテルに女の子一人を置き去りはどうかと思うけどなぁ」

 

そんな事をボヤいていると時間がもったいないと感じたのか、悟里は帳を下ろしてゆっくり一人で歩き始める。

 

「結構いるものね呪霊……。まぁ、関係無いけど」

 

迫り来る呪霊を呪力を込めた殴りや蹴りで祓って行く。少しサイズが大きいもに関しては、腰に下げている呪具の刀を抜き居合で切り伏せる。

 

「さて、本命は?」

 

そうつぶやくと同時に触手のようなものが悟里に飛来する。しかし、悟里に届く前に失速し地面に叩き落とされる。

 

「隠れんぼは嫌いなんだよね〜」

 

そう言いながらホテルをめぐり、行方不明不明者の生存している人を見つけ

 

「持ち運ぶの面倒だから、少し空間に入っててもらおう」

 

悟里は上着を脱ぎ袋みたいにして、その中に数名を収納し手で持つ。服は手で軽々と持つ。服も、まるでそこに人がいるような感じは全くない。

 

「生存者はもう居ないだろうから、炙り出す」

 

そういうと術式を使い外に出てホテルの上を取る。

 

「帳もあるし、廃ホテルだし、潰しても誰も文句は言わないし言わせない。こっちは楽しみのアニメの時間を潰されたんだからね。言いっこなしだ。術式順転・『朱』」

 

廃ホテル全体に高出力の重力の本流を叩き込む。轟音と共に呪霊諸共、廃ホテルは木っ端微塵に粉砕された。

 

「うーん!少し、やり過ぎた?」

 

地面に着地して背伸びをしていると

 

「少し遅れたかと思ったけど、もう終わっていたみたいだね。しかも、派手に」

 

「んあ?」

 

悟里が情けない声を出して振り返ると長身の男性がいた。頭のてっぺんで団子があり、左に前髪を垂らしている容姿の男性だ。悟里がそれが人目で誰かというのが分かった。前世からも知っているが、兄である悟から送られてきた写真の人物。

 

「あなたが、高専の……兄様の友人の夏油傑さんですね」

 

「確かに高専の呪術師で、私の名前は夏油傑で合っているけど、兄様?君のお兄さんって?」

 

悟里は自分の事は話していないんだなぁと内心ため息をつき、一礼をしてから

 

「申し遅れました、私の名前は五条悟里。兄様、五条悟の妹です。来年、私も高専に入学するのでよろしくお願いしますね、先輩」

 

その日、最強の片割れと最強の妹が邂逅した。運命は大きく変わるのかもしれない。




術式:重天呪術(ちょうてんじゅじゅつ)

重力の出力、重力のベクトルの操作、無重力状態にすることが可能。極めつけは、空間に干渉し内部の空間を拡張したり、空間移動も可能となる。

技:術式順転『朱』
主に重力による加速、加重。重力を塊にして放つことも可能。また、身に纏う事で攻撃力をあげたり、自身を浮かせたり、加速させて攻撃も可能。

範囲を絞れば絞るほど威力が上がるが、悟里の呪力出力なら絞らなくても高威力。
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