それと、悟お疲れ様!宿儺との戦いかっこよかったよ!ゆっくり休んでくれ……。
暗い意識の底で悟里は自分の意識を知覚する。
(生きているの?それとも……。いや、死んだでしょ、どう考えても)
途中から覚えていないが、喉を天の逆鉾に貫かれ、そのまま切り裂かれ、蹴られたまでは覚えている。その後からの記憶がほとんど無い。
(ゆっくり落ちていく感覚って……何だろう…。いや、やる事は出来たんだから悔いなんて……)
深く暗い底に落ちていきながら考える。本当に悔いは無いかと。
(無い……はず……)
言い聞かせるように内心呟く。夏油が非呪術師に絶望するであろうきっかけはなく、天内も黒井も生きている。悟は反転術式を会得して甚爾相対しているだろうと。自分の役目は終わったと。だけど、
(兄様は怒るだろうな…。それに灰原の件が残ってるし……。何より、このまま死んだから……夏油先輩に嘘つくことになるなぁ。なんか、全部嫌だなぁ、死にたく……ないなぁ)
悔いなんて無かったはずだった。でも、振り返った瞬間に目に入ったモノは無数の過去を写した欠片である。悟と甘味を取り合った日々、夏油と初任務で写真を撮った日、七海と灰原の三人で任務終わりに行った回転寿司の思い出。
それを見た時に自然と涙が溢れた。
(何だ……まだ、未練があるじゃん、悔いがあるじゃん)
力の入らない体に力を入れる。そして自身を鼓舞する。ここまで譲れない感情に身を委ねて来た。
(だけど、まだ、終われない。終わりたくない…!)
そう、抗うように強く思い、願った。その瞬間、意識が途切れる。
「……あっ?」
目を覚ます寮の自室だった。自分の体を見ると、自分の浴衣寝巻きに着替えられていた。傷の確認をしたかったが、倦怠感に襲われて確認する気が失せた。そんなタイミングで
「おっ?気がついた?気分はどう悟里ちゃん」
家入が部屋に入ってきた。質問をしながら、悟里のベットに腰を下ろす。悟里は倦怠感に抗い状態を起こして、
「悪く無いです」
「そっか、それは何より。ほれ、水」
家入は笑顔でペットボトルの水を悟里に渡す。
「ありがとうございます、反転術式。おかげで助かりました」
「んー?まぁ、確かに反転術式は使ったよ。私が来た時には致命傷の箇所は既に反転術式みたいな後があった。ちょうど……こことここだね」
そう言って家入は悟里の喉元と胸を指でなぞる。
「は、はぁ?」
「悟里ちゃん反転術式使えないよね」
「はい、自分で何度も会得しよとして失敗してますし」
それを聞いた家入は大笑いをして言う。
「じゃあ、無意識でしたんじゃない?悟里ちゃん、自分は才能ないって言うけど、兄貴より凄いとこあるんじゃない?」
「それじゃあ、試しに」
悟里はふと思い立って、自分の指を噛み、出血させる。そして反転術式が使えるか試す。……結果は出来なかった。本当に死の間際の無意識の反転術式だった。その後指の傷は家入が反転術式を施す。
「それじゃあ、私は席を外すよ。そろそろ、君を叱りたいとうずうずしていた怖い君の先輩が来る頃合いだしね」
「え?た、助けは?」
それを聞き、想像に難くない光景を頭に浮かべた悟里は家入に助けを求めるが
「まぁ、仕方ないんじゃない。私も無理に止めて死にたくないし。それじゃあ、死なないようにねー」
手を振りながら家入は部屋を去っていく。身の危険と精神的な危険を感じ取り、窓からの脱出をしようとすると、
「呪、呪霊が見張ってる……!」
顔を引き攣りながら一歩下がると誰かとぶつかる。全く微動だにしないそのぶつかった人物は優しい声で
「ねぇ、悟。お話から逃げようとする後輩がいるんだが、どうしたらいいと思う?」
「そりゃ、そんな生意気な後輩には、キッついお話が必要だよな傑?」
悟里がゆっくり振り返ると、表情は笑っているが目が笑っていない特級呪術師、五条悟と夏油傑が立っていた。
「え、ええと……兄様、ご無事で何よりです!夏油先輩!理子ちゃんと黒井さんは!?」
「理子ちゃんと黒井さんは高専で保護しているよ」
「おう、おかげで呪力の核心を掴んで反転術式が使えるようになった。
笑顔で答えてくれているのに圧力が強くなる。悟里は一歩下がった段階で
「「言い残すことはそれだけか(かい)??」」
「お、お手柔らかに」
直後、悟と夏油の拳骨が悟里の頭部に炸裂する。悟里は頭を抑えながらに蹲る。それを許さず襟元を掴み悟は叫ぶ。
「この馬鹿野郎!!いい加減にしろよ悟里!!俺がいつも自分を大切にしろと言ってるだろ!!それなのに……!!そんなに生き急いで何がしたいんだよ!!あんなにボロボロになって笑ってるって…。何が…そうさせるんだよ!!何がお前をそこまで駆り立てるんだよ!!」
悟は全力で思いの丈を叫ぶ。悟里は驚く。何度か喧嘩をした事はあるが、ここまで怒る兄を見るのは初めてだからだ。それも、自分のことを思って。
「俺を庇った時に呪力を解いていたこと、そして、あいつ一人を相手にして、傑や天内達を逃がしたこと。運が良かったから死んでなかったけどな!……硝子がお前を見つけた時、心肺停止状態だったんだぞ!無かったのかよ!お前のその目に、もっと安全に、賭けに出なくて行ける可能性が!一か八かのそんなんしかお前は……!!」
絞り出すように、吐き出すように悟は叫ぶ。腕と声は震えていた。悟にとっては、幼く見て感じた妹の死にそうになっているあの光景が蘇っていたのだ。そんな悟に変わるように、今度は夏油が話す。
「流石に今回の件は擁護出来ないよ悟里ちゃん。君は『死ぬつもりは、毛頭無い』と言っていたが……。あれ嘘だろう?その場の私と理子ちゃんにそう思わせるための自分を止める私たちの思考を一時的に迷わせるための」
「そ、そんなこと!」
「知らないだろうけど、君が嘘をつく時は瞬きの回数が増えるんだよ?」
そう言われて思わず目を抑える
「もちろん、今のは嘘だよ。だけど、自分で証明したね」
「あっ!計りましたね夏油先輩…!」
忌々しげに睨むが、それ以上の圧をかけて夏油は話す。
「先に騙したのは君だろう?君はアレで満足だったかもしれないが、遺された人たちのことを考えたかい?飛ばされたあと、理子ちゃんがパニックになったんだよ?黒井さんが近くにいたから落ち着くことが出来たけど、彼女『自分の為に人が死ぬのは嫌だ、悟里が死ぬのは嫌だ!』とね。私も君が死ぬは嫌だけど、何より許せないのはね……君が自分自身の事をいとも簡単に切り捨てられることだよ」
声色は優しいが怒っているという雰囲気を出してる。それも『次は無い』と言った雰囲気だ。
「……はい、すいませんでした」
「…もう、そんな無茶はしないでくれよ?」
「善処します」
「おい!」
悟が何かを言おうとした時には、悟里は大粒の涙を流していた。
「お、おい」
「違うんです……どうしてなのか分からないんですけど、涙が止まらなくて……」
溢れる涙は留まることなく、悟里にも涙の明確な理由は理解は出来ない。だが、分かることは、悲しいからという理由ではないというものでは無い。嬉しいからと言うのだけは分かった。
そして落ち着いたあと、事の顛末を聞く。襲撃者である甚爾は反転術式で復活した悟が倒した。そして、盤星教は解体。そして、天内については現在、天元が安定しているため、同化は見送る形となった。そして
「これ、アイツから」
悟が呪具を悟里のベットに置く。その呪具は悟里の見覚えがある。それは自分を刺した呪具でもあり、悟を追い詰めた呪具でもある。
「こ、これ!あの人が持ってた呪具!」
「天逆鉾だってよ。術式効果は発動中の術式を強制解除する効果らしい。これで俺の無限を突破してきたというわけだ。それで、俺が勝った時に、遺言と一緒に預かったんだよ。ぶっ壊してやろうかと思ったけど」
「そっか……」
悟里は天逆鉾を握りしめる。そしてより一層の強くならないと行けないと、悟里そう強く思った。
釈魂刀も持たせたかったんですが……無生物の魂すら観測する目が必要って……。フィジカルギフテッドじゃないと無理なのかな?
因みに、悟里が使用している刀も呪具です。いずれ名前を出したいと思っています!
領域展開と極ノ番については考えてあります!
悟里どこまで行けるんだ?