【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
私は羽佐間きくり、ベーシストである。
みっくんと結婚してから久々にインディーズでそれなりに人気を誇っている私の所属する「SICK HACK」へとやって来た。スマホでわりとやり取りしてるけど。私の「おうち無くしちゃった事件」の時に、けっこう揉めちゃったから仕方ないかなあ………。
「おはよおぉーーーっ!!!」
まあ、どうでもいいや。
私はいつものように鬼ころを飲んでから「新宿FOLT」に入ったその時だった。オッサン特有の臭いがダイレクトに鼻を刺激してきた。
はっきりと言えばめちゃくちゃくしゃいっ!
そんなことを思いながら鼻を押さえていると「新宿FOLT」の店長であり、なにかと私が迷惑を掛けちゃっている吉田銀次郎が私を見て驚いていた。
「きくり、あんた生きてたの!?」
「あえっ、銀ちゃん!?」
ウソでしょ、死んだと思われてたの。
あまりにも衝撃的な事実にショックを受けていると清水イライザと岩下志麻も私を見て、あんた生きていたのか!?と言いたげな視線を向けてくる。なんだよお、ちょっとは心配してくれたっていいじゃんかあ……。
帰ったら慰めてもらお、ぐすんっ。
「ごめんごめん。心配してたのよ、きくり」
「そうだよ、きくり」
「ソーデスヨ」
なんか後付けっぽくてやだなあ…。そんなことを考えていると一枚の紙切れを銀ちゃんに渡された。なんだろうか?………えっ、なんで?ちゃんと機材の修理費は払ってるのに、なんで請求書が?
「きくり。あんたが連絡しないからSICKHACKの宣伝も出来ないし、わりと財政難に陥ったからその分は徴収するから」
「あぅ、あんまり手持ちが……」
「え?いつもと違う服着てるじゃん」
「えへっ、そうでしょ」
実はそうなのだ。
今日はいつものヨレヨレなワンピースとスカジャンではなく、みっくんが私のために買ってくれた落ち着いた薄い茶色のプリーツスカートにパフ袖のホワイトブラウスを着ている。
着まわしばかりでオシャレに無頓着な私に似合うコーデだとみっくんは言ってくれた。正直、こんなかわいい清楚コーデだと鬼ころをむちゃくちゃ飲むのは難しかったりするけど。
「追い出されてから良いことでもあっタノ?」
「んふふ。実はね、結婚したんだあ~っ」
「へぇ………ん?」
「なるほど、は?」
「オオ、良かったですネ!!」
「えへっ、ありがとお」
イライザだけは素直に反応してくれた。
銀ちゃんと志麻ちゃんは絶叫してるけど。やっぱり、ロックバンドとしては結婚するのは引退後とかが良かったのかな?なんて考える。
「誰が、誰なの!?あんたみたいな酒カスで人のダメなところを煮詰めたようなゴミカスの中でも最底辺にいそうなあんたを嫁にしたの!?」
「そうですよ!なんで私より先にきくりが結婚できるんですか!?ただの飲んだくれで基本的に酔ってるところしかないきくりが!!」
「二人とも私のこと嫌いなの?」
私は二人の問いかけに聞き返す。
〈新宿FOLT〉
ライブハウス。
羽佐間きくりの拠点。なぜか悪酔いの減ってきた羽佐間きくりに戦慄する客層の悪さの目立つところがあるなど変わったファンとバンドが多い。ちなみにライブハウスの関係者は結婚式には必ず呼ぶと羽佐間きくりは嬉しそうに言った。