【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。   作:SUN'S

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自分の好きな男が酒臭い後輩の旦那だったことを知ったせいで「うぅ、ちくしょお…」と呟きながら伊地知星歌は泣いた。しかし、羽佐間きくりは全く気付いていない

あっさりと失恋した。

 

私の経営するライブハウス「STARRY」でアルバイトとして雇っている大学生の羽佐間ミツル。人当たりの良い優しげな好青年、わりと世話焼きで私が困っていたら颯爽と助けてくれる。

 

あいつが好き、あいつが好きだ。そう理解してなんとかアプローチしていたけど。あいつはとっくに別の女のモノだった。しかも私の後輩の中でも一番タチの悪い廣井きくりとだ。

 

「いや、もう羽佐間きくりか…」

 

……………はあ、きくりより私のほうが社会人としてまともだと思ってたのに。いつの間にか羽佐間と結婚していて、私に紹介するのをアイツが忘れていたせいで余計な気持ちを持っちゃったじゃねえか。

 

ちくしょうっ、ちくしょお…。

 

「お姉ちゃん、大丈夫…?」

 

「あ、ああ、大丈夫だよ」

 

私はそう言って虹夏の頭を撫でる。

 

まだ始めたばかりのライブハウスだから安月給だって知ってるクセに平気で私の仕事を肩代わりするし。PAのやつにも気に入られてるし、ほんとに私の心を埋め尽くすくらい好きだったんだよなあ…。

 

「しぇんぱい、遊びにきちゃよおおぉ!」

 

「うげっ、またかよ」

 

ちゃんと気持ちを整理できてないのに「STARRY」へとやって来たきくりを見る。そこにはいつものダサいワンピースとスカジャンじゃなくてカジュアルな装いを着たきくりがいた。

 

不覚にも可愛いと思ってしまった。

 

いや、最初からきくりのやつはかわいい。だから羽佐間のやつもこいつと結婚したんだろう。そうじゃなきゃ引っ込みがつかねえよ。

 

「えと、きくりさん?」

 

「むにゃ?なにぃ?」

 

「ミツルくんとは、どうやって?」

 

おい、にじか?うそだろ?

 

私は二人の馴れ初めを聞こうとする妹にショックを受けながら無関心を装おう。クソ、虹夏のやつはどういうつもりなんだ。

 

「みっくんとはね、私が吐いてるときに会ったんだぁ…あんまりロマンチックじゃないし、気が付いたらいつも一緒にいて………ああ、すきだなあって思ったらもっと好きになっちゃって…たぶん、一目惚れなんだよ、わたしもみっくんもさ」

 

「………なんだよそれ」

 

「はぇ?」

 

「私だって、私だって羽佐間の事が好きなんだよっ!!そりゃあ半年しかっ、アルバイトのときしか会ったことねえし、仲良く出掛けたりなんてしたことねえよ。それでも私は羽佐間のことが……それなのにどうしてお前なんだよッッ」

 

「…おねえちゃん…」

 

ああ、やってしまった。

 

私の言葉にきくりも驚いている。そりゃあそうだよ、自分の旦那が、知り合いの女に好かれてるなんて聞かされたらそうなるよな。

 

「あげない。みっくんはあげない!私みたいなお酒ばっかりでなんにも出来ないヤツに『愛してる』って『好きだ』って大事にしてくれるみっくんを、先輩には絶対にあげないもん!!」

 

そう言うときくりは帰ってしまった。

 

くそっ、やっちまった。これからどうやって羽佐間のやつと会えば、いや、アルバイトをやめるかもしねえ。そうなったら二度とあいつに…。

 

「…コフッ…ゥゥ……ケボォッ……」

 

「またなのお姉ちゃん!?」

 

ごめんね、よわくて

 

 




〈伊地知星歌〉

店長さん。

ライブハウス「STARRY」店長。羽佐間ミツルに好意を寄せていたが自分の後輩と結婚していると知り、なんとか忘れようとしていた。だが、二人の馴れ初めを聞いて自分の本心を叫んでしまった。また後輩と喧嘩してしまい、そのストレスで倒れた。

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