【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。   作:SUN'S

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どこまでも臆病でか弱いきくりさんは「私のこと好きだよね?」と不安げに呟いた。そんな彼女にミツルは優しげに笑いかける

はじめて、私は先輩に反抗した。

 

いつも怖そうな顔のクセに可愛いものが大好きな先輩、大学の頃も何かと引っ込み思案な私に構ってくれた優しい先輩に歯向かってしまった。

 

私は怖いんだ。もしも、もしもみっくんを盗られたら。きっともう立ち直れない。お酒を飲みまくっても酔えなくなって、ぽっくりと誰も知らないところで死んじゃうんだ。へっ、へへっ、ひへへっ、そうだよ、みっくんだって私なんかより…。

 

「…はなれたくないよぉ……」

 

私を抱き締めるように眠っているみっくんの胸元に頭を押し付け、自然と本心を呟いてしまった。ああ、ほんとにどうしようもないくらい、私はみっくんのことが好きなんだ。

 

絶対に渡さない。

 

「すき、すきっ、だいすき」

 

そう言って私は彼にキスをする。

 

この人は私のモノだって先輩に見せつけるために強く根深く私の痕跡を刻み付ける。こうしないと、こうしなくちゃって、私の弱い心が訴える。

 

私のことを愛してくれる大切な人を。こんな身体もちっちゃくて、お酒も弱っちくて意思も弱っちい女を「大好きだよ」って抱き締めてくれる優しい私だけの人を先輩に渡したくない。

 

「………きくりさん、なにしてんの?」

 

「……ま、まぁきんぐぅ?」

 

「ああ、そっすか」

 

「………」

 

「………」

 

そっと布団を頭に被った。ちょっと可哀想な女を見るような目で見られちゃったけど。まあ、これくらいしなくちゃいけないよね。

 

「きくりさん、俺もいいですか?」

 

「えと、なにが?」

 

「男避けのマーキング」

 

あっ、普通にバレた。まあ、そうなるよね。うん、そりゃあ仕方ないけど。私に近寄ってくる男の人なんていないと思うけどなあ?と呟く。

 

なぜか真顔で見られた。

 

「きくりさん、この際だから言うけど」

 

「な、なに?」

 

「きくりさんはかわいいし、ベースも上手だ。きくりさんはかわいくない?いいや、きくりさんは可愛いよ。お酒を飲んでる時だって小動物みたいで愛くるしさMAXだからな」

 

「あの、えと、みっくん?」

 

「だいたい、どれだけ俺がきくりさんを傷つけないように理性を保ってると思ってるんだ。いっつも無防備な格好して、俺が本気できくりさんのこと好きじゃなかったら、ほんとにたたじゃ済まないかもしれないってこと分かってるか?」

 

みっくんに襲われる?

 

それって、あんなことやそんなことも?

 

そ、それはたいへんだなあ………。

 

「……ごめん。怖かったか?」

 

「ば、ばっちこーい、なんて」

 

私は照れながらみっくんを抱き締める。

 

うぅ、ちょっと恥ずかしいかも…!

 

 




〈きくりさんはかわいい〉

羽佐間ミツルの口癖。

自分の奥さんを愛する強さが重すぎて、もはや口癖になってしまった。好きなものは好き。はっきりと言えるのはとても大事なことである。

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