【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
私は伊地知虹夏、女子高生だ。
失恋のショックで落ち込んでいるお姉ちゃんを労り、リョウにもバカにしたりするのはやめるように伝えているけど。
あいつ、ここぞとばかりに「ドンマイ、星歌さん」とか言いやがった。少しの間だけ出禁にしてお弁当も分けるのもやめる。折角、お姉ちゃんが幸せになれると思ったのに、よりにもよって、あの酒飲み魔神がお嫁さんだったなんて………。
ミツルくん、もしかして見る目なし?
そんなことを考えながらリョウの「お金を貸して」というメールを無視する。まったく、ちゃんと反省するまで私は許さないからね。
「虹夏、私はどうすれば…」
「うえっ!?わ、私に聞かれても…」
私はお姉ちゃんみたいに男の人とお付き合いしたりした経験とかないし。それどころかミツルくんぐらいしか長いこと話したことないよ。
リョウは男女問わずモテてるのは知ってるけど。さっき無視しちゃったから聞くに聞けない。うぅ、これは八方塞がりやつだ。
「店長は彼のこと諦めるんですか?」
ふとお姉ちゃんの代わりにお店の予算を計算していたPAさんが呟く。ゆっくりと顔を上げて「うるせえ、既婚者に言い寄るなんてできるか」とお姉ちゃんは辛そうに、ホントに辛そうに言い返す。
「私は諦めませんよ。きくりさん、でしたっけ?あの人より私のほうが良いと思わせればいいんですよ、ね?簡単でしょ」
「………そっか、そうだよな」
「お、おねえちゃん?」
「虹夏、がんばるよ私」
「う、ぅん、がんばれ?」
どうしよう。
PAさんの謎の宣戦布告のおかげでお姉ちゃんは立ち直ってくれたけど。よくよく考えたら人として最低の行為をしようとしてるんじゃ………。
それにしてもお姉ちゃんだけじゃなくてPAさんまで落としてたなんてミツルくんはすごいなあ。………リョウは落とされてないよね?
もう胃袋は落ちてるか。
ウ~ン、これはすごく困ったことになっちゃったかもしれない。お父さんに相談するべきなのか。それともお姉ちゃんの頑張りを応援して、ミツルくんとの不倫(になるかもしれない)をすすめるべきか。
えぇ、ほんとにどうしよう。
「………学校にいこ」
正直、失恋したお姉ちゃんの相手は面倒なのでお客さんやPAさんに任せることにした。とはいえミツルくんが来るかもしれないし、それなりに注意だけはしておこうと思う。
「……ん。おはよう、虹夏」
「おはよーっ、リョウ」
「既読無視は辛いからやめてほしい」
「えっ、やだ」
そう言うとリョウはしょんぼりとしながら「ごめん、からかわないから許して」と言ってきた。………及第点としておこう。
〈略奪愛〉
伊地知星歌&PAさん。
きくりさんから羽佐間ミツルを奪い取ってやるという誘惑に負けてしまった女性たち。まだ子供の虹夏ちゃんにはなんとも言えない世界である。ちなみにきくりさんは絶対に羽佐間ミツルを渡さない。