【本編完結】ロックバンドにハマったという一人暮らしの息子を訪ねたら「おしゃけしゅきぃ~っ」と寝言を呟く酒カス美女とベッドで眠っていた。 作:SUN'S
私の妹は小悪魔系なのかもしれない。
そう考えるようになったのは私が失恋(まだ諦めるつもりはない)してからだ。どういう訳なのかは知らないけど、最近やたらとアイツに近付き、チラリとこっちを見たら可愛らしく………いや、ほんとにかわいいほどキレイに笑う。
そりゃあ虹夏はアイツと年齢的に近いし。なんとなくアイツの優しさに惹かれてしまうのも仕方ないとは思うが。どうして、こっちを見るんだ?
「ミツルくん、ちょっと手伝って~っ」
「ん。どれをやればいい?」
「この機材と荷物、あとドラムだね」
「ああ、重いもんなドラム」
「アハハ、そうなんだよねえ…」
二人はすごい仲良しだ。
私の姉フィルターを度外視しても虹夏は世界一かわいいのは一目瞭然だ。まあ、自分の妹が後輩の旦那を奪おうとしているという光景は精神的にクるかもしれない。
いや、確実に胃がヤられる。
そんなことを思っているとリョウのやつがポンッと私の肩を叩き、どこか可哀想なモノを見るような目で私を慰めてくる。やめてくれ、そういうことされたらホントに辛い。
「あ、遅いよリョウ!」
「ごめんごめん。ちょっと道草を」
「山田、お前また食べたな…」
「なんのことやら」
こいつ、また道草食べたのか。
私はリョウのアホすぎる行動に溜め息を吐きつつ、ちょっとだけアルバイトのお給料をアップしてやるべきかと考え、そしたらアイツも長く居てくれるかな?なんて思ってしまった。
「伊地知店長、どうしたんですか?」
「えっ、ああ……なんでもねえよ」
「もうそこでツンツンするからだよ!」
「あれは星歌さんの悪癖だよあれは」
あいつら、こそこそなに話してるんだ?
そんな疑問を持ちながら見つめる。アイツもアイツで、さっさと虹夏に頼まれた作業に戻るし、今日はあんまりしっかりと喋れてないなあ……。
だけど。まあ、今日も話せたんだ。
よし、ということにしよう。
そっちのほうが嬉しいし。自然と笑いそうになる顔をなんとか押さえつつ、なんだか悲しげに私を見つめる虹夏とリョウから視線を反らす。
「こんにちは!!」
「あっ、喜多ちゃん」
「やほ、喜多」
もう喜多ちゃんのやつも来てるのか。まあ、遅れるよりかはましだな。…それにしてもボーカルに寄りすぎてる喜多ちゃんだけでほんとにいいのだろうか?私的には、あともう一人くらいほしいところだ。
「あれ?羽佐間さんだけですか?」
「お姉ちゃんもいるよ?」
「いえ、きくりママもいるのかと」
「「きくり、まま?」」
「はい!ちょっと前にリョウさんと一緒に羽佐間さんのところにお泊まりしたんですよ!その時にリョウさんときくりママがギターを教えてくれたんです!あれは、もうママですね!!」
ふっ、そうか。
…あっ、やばい、泣きそ……。
〈きくりママ〉
羽佐間きくりの呼び名。
リョウちゃんや喜多ちゃんの面倒を見るようになってから母性愛が溢れてしまったきくりさんにつけられたあだ名であり、そのバブみは「新宿FOLT」でも遺憾無く発揮されているそうだ。